アラウネ・ブルーム
「そうですか……私の玩具になって、弄ばれたいと?」
九条さつきは口の端を歪め、嗜虐的な笑みを見せた。
「――では、場所を変えましょうか」
「……!?」
唐突に、俺の磔にされている巨大な茎がぐらぐらと揺れ始めた。
そして茎は、メキメキと足元の床に沈んでいく――
どんな原理か分からないが、磔にされたままの俺の体は床をすり抜け階下へと引きずり込まれた。
目の前には、学園内の見慣れた廊下。
ミイラと化した男子生徒に、渇きに喘ぐ女子生徒達――ここは、九条さつきが根城にしていた3階のようだ。
いつの間にか巨大な茎は消滅していたが、ツタは俺の全身に絡んで五体を拘束したまま。
と、突然に廊下や壁のあちこちからツタが伸び、あちこちに転がっている男子のミイラをくるんでしまう。
そのまま、男子達の哀れな屍はずるりと壁の中に引き込まれていった。
「な……?」
「いささか興冷めなので、醜いモノは処理させて頂きました。肉を溶かして、栄養にでもしましょうか――」
いつの間にか、俺の前に立っている九条さつき。
「それにしても……懐かしいですねぇ、この校舎も」
俺の全身に絡んだツタは、彼女の右腕から伸びている。
九条さつきの右肘から先が枝分かれしてツタと化し、俺の腕や足をがっちりと封じているのだ。
「私……この校舎の様々な教室で、男子生徒達や先生方に快楽を与えていたのです。お金と引き換えに――」
「え……?」
九条さつきの唐突な告白に、俺は目を丸くした。
学園内で売春……?
それは、いかにも清楚そうな、そしてプライドの高そうな九条さつきに似つかわしくない話のように思えるが。
「ふふ、そんな顔をしないで下さい。湿っぽい話でも、哀れな身の上話でもありませんので。
決して体を売っていた訳ではなく、この手で直接おちんちんを触れる事すら許しておりません」
そう言って九条さつきは、まるで空中にあるペニスを弄るように五本の指を動かした。
その仕草は、とてつもなく淫猥である。
「……私の家は貧しかったのです。この名門校の入試では学力の高さを示し、特待生として入学が許可されたのですよ。
だから学費は免除だったものの、制服や学用品などが我が家の貧しい家計を圧迫していたんです。
そんな中学三年生のとき、私の身の回りの物が次々に盗まれていくという事件が起きました。
上靴から始まって、縦笛や体操服まで――犯人は、クラスメイトの男子でした」
「……」
なぜ、男子がそのような事をしたか――
それは、容姿端麗な九条さつきの姿を見れば容易に想像がつく。
「そしてある日の放課後――誰もいない教室に張り込み、私の机から縦笛を盗み出そうとする男子を捕まえたんです。
なぜ私の持ち物を盗んだのかを問い詰め、その劣情に満ちた下種な行為に私は激怒しました。余りの怒りに駆られた私は――
――その男子を押さえ付け、下着を下ろして、縦笛のマウスピース……吹き口をおちんちんに押し付けていたんです。
こんな事がしたいために私の持ち物を盗んだのか、これで満足なのか、と――私は、とにかく怒っていました」
嗜虐的な口振りで、話を続ける九条さつき。
彼女の目は、確かに妖艶な色を見せていた。
「吹き口を先端に押し当て、ぐりぐりと動かしていると……男子は泣きそうな声を上げ、体を震わせながら射精したのです。
私の笛に精液が粘り付き、とても悲しい気持ちになった――と同時に、男性を弄ぶ事に悦びを感じていました。
そして私は、噂を聞いて私の元に訪れた男子生徒や教師のおちんちんを弄んであげるようになったのです。
それでお金まで頂けるのですから、一石二鳥のありがたい話でした」
「……」
このいかにも清楚な令嬢(実際は貧しかったようだが)に、男性器を弄ばれる……
その倒錯した快感の虜になった者も多かったのだろう。
「こうして50人以上の男性を弄んだのですが……一部の粗忽な男は、私を抱けるものと勘違いしていた様子。
しかし口での奉仕どころか、手で直接触れる事すら許しはしません。最初はそれに不満そうだったものの……
おちんちんを唾でドロドロにしてあげたり、ゴム手袋で擦ってあげたりしたら、すぐに漏らしてしまいました」
九条さつきは、くすくすと笑う。
「こうして私は男性器をモノで弄ぶのが日々の愉しみになり……ネットで、男性のオナニー道具を調べたりもしました。
コンニャクやバナナ、カップラーメン……男という生物の浅ましさを知ると同時に、愉しみの数も増えます。
色々なモノを試し、男性を存分に弄んで喘がせたものです……」
目を細めながら、少女はゆっくりと校舎内を見回した。
「この学校の色々な教室で、私は愉しみに興じました。とても懐かしい思い出です――
……決して他人事ではありませんよ、お兄様? 今から、たっぷりと私に弄ばれるのですから」
九条さつきは、挑戦的な笑みを浮かべて俺の顔を覗き込んできた。
「お兄様は、どの教室で弄ばれたいですか? そこにある道具で弄んで、たっぷりおもらしさせてあげますよ?」
「……」
彼女の話を聞いているだけで、俺の肉棒は隆起していた。
九条さつきに弄ばれたい――その一念だけが、心を支配していたのだ。
そして俺は、どんな趣向で弄んでくれるのかを夢想しながら場所を定めた。