女給仕エミリア


 

 「では、失礼致します……」

 忠実な従者エミリアは、自らの女主人にうやうやしく頭を下げていた。

 主人マルガレーテに極めて忠実なエミリアだが――いや、忠実だからこそ週に一度自分の屋敷に帰ることが許されているのだ。

 エミリア不在の間、ノイエンドルフ城では普段の副メイド長が臨時メイド長となる。

 それはすなわち、マルガレーテにとっては食事や家事の質が落ちることを意味していた。

 

 「エミリア。地下に捕らえている男を一人譲るわ。適当に選んで、持って帰りなさい」

 「よ、よろしいのですか……?」

 女主人の思わぬ好意に、エミリアは驚く。

 いかなる気紛れか、時にマルガレーテはこのようなプレゼントを与えるのだった。

 「ええ。充実した余暇を過ごしなさい……ふふっ」

 軽やかな笑みを見せながら、マルガレーテは自分の部屋へと戻っていった。

 ノイエンドルフ城に捕らえられている人間男性は、極めて上質な者ばかり。

 思ってもみない主人からのプレゼントに感謝しつつ、エミリアは一人の男を選び出していた。

 気に入っていた男――というほどの者でもない。

 ただ、どことなく気になっただけの若い青年。

 エミリアは彼を伴い、自分の屋敷へ向かう馬車へと乗り込んだのである。

 当然ながら、その男に自分の境遇を知らされる余裕は全く与えられなかった――

 

 

 

 

 

 青年は馬車に揺られたまま、ひたすらに当惑するしかなかった。

 訳の分からないままノイエンドルフ城とやらに捕まえられ、そのまま冷酷な女城主の戯れで命を落とすところだったのだ。

 そして、そんな彼を救ったのは――なんと、一人の美しいメイドだったのである。

 牢に入れられている頃から、青年は食事などを運んでくるこの女性が気になっていた。

 黒のワンピースに白のエプロンドレス、そして白のヘッドドレス。

 身だしなみも、たたずまいも、その全てが慎ましいメイドそのもの。

 そして、どこか寂しそうな雰囲気――言葉では言い表せぬ寂寥感が、彼女には備わっていたのだ。

 「君は、いったい――」

 なぜ彼女が、自分を救ってくれたのか。

 彼女は、いったい何者なのか――聞くべき事が、青年の頭の中に渦巻いていた。

 「……エミリアと申します。お見知りおきを、御主人様」

 そう名乗ったメイドは、洗練された動きで頭を下げる。

 「エミリア……さん? 僕の名は――」

 名を名乗ろうとした青年の眼前に、エミリアの白い掌がかざされた。

 「――名乗る必要はありません。貴方の名など、これからは何の意味も為さないのですよ――ご主人様」

 「……!?」

 静かに紡がれた言葉には、とてつもなく冷たい響きが備わっていた。

 青年は、背筋が凍り付くような気分を味わったのである。

 しかし、それもほんの一瞬。エミリアの雰囲気は、柔和なものへと戻っていた。

 「その……なんで、僕がご主人様なんですか?」

 自身の境遇を考えて、明らかに眼前のエミリアの方が立場は上のはず。

 自分が敬われる理由など、微塵も存在しないのだ。

 「それ以外に、私は接し方を知りませんので――」

 それだけを言い、エミリアは黙ってしまった。

 「……」

 そして、青年も黙り込む。

 二人の男女は、ゴトゴトと揺れる馬車の中で黙りこくってしまったのだった。

 

 

 

 「お、大きい屋敷ですね……」

 眼前の屋敷を見上げ、青年はそう呟くしかなかった。

 目の前にそびえているのは、大貴族の一家が住むような大豪邸。外観だけでも、目を見張るような豪華さだ。

 このような屋敷に住んでいるという事実だけでも、エミリアの魔界での地位が伺い知れる。

 「……持て余すだけです。ではご主人様、こちらへどうぞ――」

 青年は、屋敷の中へと導かれていった。

 当然ながら、中も驚くほどに広い。

 豪華な調度品が並ぶ玄関口に、先が見えないほど奥まで続く廊下――

 そして、邸内には人の気配も生活臭も全く感じられない。

 邸宅というよりは、放置された別荘のような雰囲気だ。

 「エミリアさん……この屋敷に、他の人は?」

 「ここは魔界ですから、そもそも性奴隷以外に人間などおりませんよ」

 くすり……と、エミリアは微かに笑った気がした。

 青年が、初めて目にした彼女の笑顔だ。

 「そして私には家族もおりませんし、同居人も使用人もおりません。この屋敷には、私一人です」

 「そうなんですか……」

 邸内が恐ろしく広いだけに、中の静まりかえった雰囲気も相当のもの。

 全く生気を感じない、だだっ広いだけの屋敷――それは、恐ろしく寂しいものだった。

 こうして玄関口に立っているだけでも、どこか肌寒いほどだ。

 「では、こちらへ――」

 エミリアの先導に従って、青年は不気味なまでに静まり返った廊下を進む。

 その内装のあちこちは薄汚れ、壷などの調度品にはホコリが薄く積もっているようだ。

 「意外と汚れてるんですね……あっ、すみません」

 エミリアの清潔そうなイメージとは似つかわしくない屋敷の内情に、青年は思わずこぼしてしまう――

 そして自身の失礼な発言に気付き、すかさず謝っていた。

 「お恥ずかしい話です。私がこの屋敷に戻ってくるのは、週に一度のみ。掃除する暇などないのです」

 「すみませんでした……」

 青年は、配慮ない自身の言葉を詫びるしかなかった。

 彼女は週に一度、誰もいない屋敷に帰っているということなのだ。

 手入れする者もいない、理不尽なほど広い豪邸へ――

 

 「では御主人様、この部屋の真ん中へどうぞ」

 青年が通されたのは、まるで牢獄のような石畳の部屋。

 鉄格子の備わった小窓から日光が射し込んでいるものの、室内は薄暗い。

 そして、あたりにはホウキやモップ、バケツや掃除機などの掃除用具が見える。

 殺風景な空間と掃除用具の取り合わせは、やけに奇妙に思えた。

 ここは、掃除用具置き場なのか……?

 

 「真ん中って、この辺かな……?」

 青年は、エミリアの言われるがままに部屋の中心に立った。

 その瞬間、天井から何かがジャラジャラと音を立てて伸びてくる。

 それは、先端に手錠がついた2本の鎖だった――

 「えッ……!? うわっ!」

 状況を把握する余裕もなく、青年はたちまち両手首を手錠に絡め取られてしまう。

 彼の体は『Y』の字にさせられ、その動きを封じられていたのだ。

 エミリアはただ、静かに立っていた――いや、その右手は壁のスイッチに伸びている。

 疑う余地もなく、彼女がこのトラップを作動させたのだ。

 「な……! 何を……! エミリアさん……?」

 青年は目を白黒させながら、身をよじるしかなかった。

 しかし腕は鎖で拘束され、その場から動くこともできない。

 「御主人様の体、さぞかしお汚れでしょう。清めて差し上げます……」

 その次の瞬間、青年は今まで目にしなかったエミリアのもう一つの顔を見ることになった。

 どこか寂しそうな無表情――その裏に、氷のような冷たさが備わっていたのだ。

 男を見下すような眼差しと、狼狽する青年の態度を楽しむような態度。

 エミリアは、もはや男を嫐るサキュバスとしての本能を隠そうとはしていなかった。

 「そのような衣服は邪魔ですね」

 エミリアは軽く右腕を掲げると、まるで見えない刃物を振り下ろすかのような動きを見せた。

 次の瞬間、青年の衣服がすっぱりと切り裂かれて布片に変わり――そのまま、床へと散らばった。

 「ふ、服が……」

 「問題ありません。この先、ご主人様が服を着ることなどありませんから――」

 冷たく告げるメイドの前で、青年の下半身は赤裸々に晒されていた。

 両腕が拘束されているせいで、股間を隠すこともできないのだ。

 エミリアは、縮み上がっている彼のペニスを見据えてくすりと笑う。

 「エ、エミリアさん……? な、何を……!?」

 「清めて差し上げると言ったでしょう? 物分りの悪い御主人様」

 冷たく告げながら、彼女はいつの間にか雑巾を手にしていた。

 そして、水の張ったバケツへと雑巾を浸ける。

 たっぷりと水を染み込ませ、雑巾をぎゅっと絞り――

 雑巾からねっとり糸を引いて滴る様子から見て、それは粘性のある液体のようだ。

 そしてエミリアは、雑巾片手に青年の前へと立つ。

 

 「な、何を……もしかして……」

 もしかして、あの雑巾で自分の身体を拭くつもりじゃ――!

 青年は、そう直感していた。体を清める――彼女は確かにそう言ったのだ。

 「汚い身体を清めるには、雑巾で十分です」

 エミリアはそう告げながら、微かに眉を寄せる。

 「御主人様は、雑巾では不服なのでしょうか?」

 「不服も何も……! 雑巾なんて、体を拭くものじゃ……」

 そう言いながらじたばたともがく青年に対し、エミリアはゾッとするほど冷たい視線を投げかけた。

 「――御主人様には、雑巾がお似合いですよ」

 そして、そのまま彼の右肩に雑巾を押し付けてきたのだ。

 粘性の強い液体が、ぬちゅっと密着してくる――

 「ああッ!」

 そのぬめった感覚に、青年は思わず声を上げた。

 「では、お拭きいたしますね……」

 そう言いながら、エミリアはゆっくりと雑巾を動かし始める。

 ねとねとと彼の体を濡らしながら、無造作に這い回るエミリアの雑巾。

 右肩から右腕、左肩から左腕へと――

 ローションのような粘性の液体を這い回らせながら、その身に雑巾が動き回るのだ。

 「あッ……! ちょっと……!」

 青年は、そのくすぐったさとヌルヌルさで身悶える。

 まるで愛撫のような雑巾さばきは、驚くほど気持ちよかった。

 「暴れないで下さい、御主人様……」

 エミリアは青年の周囲を回りながら、背中や脇腹を丹念に拭いていく。

 そして彼女の雑巾は胸に達し、乳首の上をくりくりと這った――

 「あ、ああぁぁぁぁ……」

 乳首を襲う刺激に青年は喘ぎ声を立てる。

 「あら? 乳首が立ってしまわれましたね」

 エミリアは微かに眉を寄せた。

 「もしかして、雑巾で擦られて性的興奮を覚えたのでは……?」

 そう言いながらエミリアは、まるで弄ぶように青年の乳首を雑巾で擦りたてる。

 何度も擦ったり、雑巾越しに指で挟んで軽くつまんだり……明らかに、ねちっこく刺激してきたのである。

 「ああっ、エミリアさん……!」

 「まぁ、はしたない御主人様」

 そう呟きながらも、エミリアは乳首の刺激をやめてくれなかった。

 表面を優しく擦り上げ、時には雑巾越しにくりくりとつまむような刺激を与え――

 青年は、両乳首の丹念な愛撫に、身を散々に悶えさせたのである。

 

 そして――ひとしきり乳首を嫐り終えた後、エミリアの雑巾は下半身に移動していった。

 へそを中心とした下腹を丹念に拭き、次に膝や脛が清められ――

 「う、ううぅ……」

 ぬめりを伴った雑巾愛撫に、青年は身を竦ませる。

 そして太腿が拭かれ、とうとう雑巾は敏感な内股へと滑り込んだ。

 「あ、ああッ!」

 青年は、雑巾が内股を這い回る刺激に身をよじらせてしまう。

 「あら、くすぐったかったですか? それとも……」

 そう囁きながら、青年のペニスに視線を落とすエミリア。

 雑巾での執拗な肉体愛撫により、そこはすでに限界まで隆起していた。

 先端からは先走り液が糸を引いて垂れ落ち、まるで愛撫を懇願しているかのようだ。

 「……御主人様、自身が何をされているのか分かっておられるのですか?」

 エミリアは眉を寄せると、心から蔑んだような表情を見せる。

 本心では股間への刺激を待ち望みつつも、青年は形ばかりの抵抗を試みるしかなかった。

 「エミリアさん……もう、これ以上は……」

 「これ以上は、何でしょうか。はっきりおっしゃってもらわないと分かりません」

 きっぱりと告げるエミリア

 「あ……」

 青年は、思わず口ごもるしかなかった。

 これ以上はやめて、と言ったら、この美しいメイドは本当にやめてしまうかもしれない――

 そこまで打算的な感情が動いたわけではなかったが、青年はもう形ばかりの抵抗さえできなくなってしまった。

 この瞬間、青年はエミリアの与える快感に屈服してしまったのである。

 

 「……続けてよろしいのですね、御主人様?」

 「……」

 無言の返答は、肯定を意味していた。

 それを了承したエミリアは、雑巾を青年の臀部へと当てる。

 そのまま、お尻の割れ目にそってゴシゴシと何度も擦り――青年は、ローション滴る雑巾のヌルヌル感をじっくりと味わわされた。

 「う、うぐっ……」

 お尻を拭かれるという屈辱の極みに、青年は身をわななかせる。

 まるで動物を世話するかのように、陰部を雑巾で拭かれている――それも、美しい女性に。

 これほど屈辱的なことが、この世にあるだろうか。

 そしてエミリアは、肛門にも雑巾を押し当ててきた。

 「あ! はぁッ!!」

 雑巾越しに、エミリアの指の感触を味わい――青年は、思わぬ刺激に身悶えた。

 「どうしました? 妙な声を上げられて……」

 彼女の操る雑巾は、肛門を清めるかのようにヌルヌルと這い回る。

 なんということか、尻の穴までメイドに掃除されてしまうのだ。

 ここまでの屈辱を受けながら、その肉体的快楽に喘いでしまう――

 青年の味わった興奮と羞恥は、並大抵のものではなかった。

 「やはり……陰部には汚れが溜まっていますね。しっかり洗っているのですか?」

 エミリアは会陰部を丹念に拭き清め、そのまま陰嚢を雑巾で包み込んでくる。

 雑巾越しに、やわやわと玉袋を揉み込んでくるエミリアの手――

 「あ、あぅぅ……」

 その甘美な刺激に、青年は身を震わせて応えた。

 エミリアに、玉袋をじっくりと揉んでもらっている――その快楽に、彼はみるみる溺れてしまう。

 もはや、これは体を拭いているのだという事実も忘れてしまっていた。

 そして次に雑巾で清められる場所は、もうペニスしか残されてされていない――

 快楽の予感に、いよいよ青年は打ち震えていた。

 

 「さて……」

 エミリアはいったん雑巾をバケツに戻し、ローションのような液体に浸してから強く絞った。

 「……では、最も汚いところを清めさせて頂きます」

 そう告げ、雑巾をペニスに巻き付けてくるエミリア。

 ぬめった感触が、隆起した肉棒を容赦なく覆い込んでしまう。

 「エ、エミリアさん……!」

 ペニスを雑巾で包み込まれ、青年は上擦った歓喜の声を上げた。

 それに応じることなく、淡々と手を動かしてくるエミリア。

 彼の肉棒は液体にまみれ、雑巾の中でぐちゅぐちゅと摩擦され始めた。

 ペニスの表面を拭いているはずの動き――それは、青年にとって愛撫そのものだったのだ。

 

 ぬちゅ、ぬちゅぬちゅ、くちゃくちゃ……

 

 「あ、あぅぅぅ……はぅぅ……」

 エミリアの事務的で巧みな手さばきが、青年をみるみる押し上げていった。

 まるで、ペニスをくるみ込まれたまま扱き上げられているような快感。

 しかも、雑巾でペニスを拭かれているという倒錯感が性感を倍化させる。

 このままじゃ、雑巾の中で――

 しかし雑巾の刺激で射精してしまうなど、青年の男としてのプライドが許さなかった。

 「あぐ、うぅぅ……」

 彼は呻き声を漏らしながら、必死で快楽に抗おうとする。

 「どうなされました、御主人様? 口をパクパクさせて、よだれまで垂らされて……」

 「あッ……、あぁッ……」

 しかし、その快楽に抵抗することなどできなかった。

 亀頭が、サオが、ぬめった雑巾でごしごしと擦られる。

 まるで事務的な仕事のように、淡々と作業するエミリアの端整な顔。

 雑巾越しに、指がサオを締め付けながら亀頭を圧迫してきて――

 そして、やわやわと扱き立ててきて――

 「ああッ! エミリアさん……! ああぁぁぁッ!!」

 その甘い刺激に耐えきれず、青年はとうとう絶頂を迎えてしまった。

 

 どく、どくどくどく……

 雑巾の中で精を漏らしてしまうと言う、この上もなく惨めな射精。

 「……どうなされました、御主人様?」

 青年が射精に至ったことに、まるで気付かないような素振りを見せるエミリア。

 雑巾の中でペニスが絶頂の脈動を続けていることに、気付いていないはずがない。

 しかし彼女は素知らぬ振りをしながら、ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅとペニスを雑巾で擦り続けたのだ。

 「ああ……! エミリアさん……! そんなの……!」

 青年のペニスは精液をこぼしながら、雑巾で容赦なく刺激された。

 湿った布越しにきゅっと肉棒を揉み込まれ、尿道に残る精液までを絞り上げられ――

 「あ、あぅぅぅぅ……」

 雑巾の中という、屈辱的な場所に射精してしまう――その惨めさにさらされながら、射精の快楽を味わう青年。

 彼の射精が終わると、エミリアは雑巾を離し――そして、すっと広げた。

 その表面には、白く粘った精液がべっとりと付着している。

 「……汚らわしい」

 眉を寄せ、そう呟くエミリア。

 「性器を拭かれているだけで、漏れてしまったのですか?」

 「……」

 あまりの屈辱に、青年は何一つとして言葉を放てない。

 「随分と、心地よかったようですね。

  ご主人様がお望みなら、雑巾で何度でも身を清めて差し上げますが――?」

 「え……?」

 あれを、何度でもやってもらえる……?

 エミリアの言葉に、青年の心は大きく揺らいでいた。

 「あ、あんな事を……? 何度でも……?」

 「私のようなメイドに、股間まで雑巾でお世話されてしまう存在に成り下がってもいいのならば。

  そこまで堕ちた者は、サキュバスの餌として扱う気さえ起きませんが」

 そう告げながら、エミリアは恐ろしく冷たい視線を青年に向ける。

 「……雑巾で世話をされるだけの存在に堕ちてもいいというのですか?」

 静かながら重い口調で、そう尋ねてくるエミリア。

 それに対し、青年は――

 

 いや、そこまで堕ちたくない

 堕ちてしまいたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いや、そんなのは……」

 堕ちそうになる自分を、青年はすんでのところで否定してた。

 「……」

 エミリアは、どこか安堵したような色を端整な顔に映す。

 しかし、それも一瞬だけ。青年の見間違いだったのかもしれない。

 「当然の話ですね。ここで堕ちてしまうような人間なら、マルガレーテ様の遊戯室で命尽きていればよかった――」

 「そんな……どうして、こんなことを?」

 なぜ自分が、このような目に合っているのか。

 この女性は、自分を助けてくれたのではなかったのか――

 それは幻想で、淫魔とはみんな、人間を玩具だとしか思っていないのか。

 「ご主人様は、私に拾われたのですよ? どう扱おうと、私の自由のはず」

 涼しい顔でそう言いながら、エミリアは精液を吸った雑巾をバケツに沈めた。

 そして彼女は、部屋の脇にあった掃除機を手に取る。

 「例えば……こんな風に、掃除機でご主人様の性欲を処理してしまうことも」

 先端ノズルの部分を外し、スイッチを入れるエミリア。

 ヴゥゥゥ〜〜ン……という吸引音が部屋に響いた。

 「御主人様の汚らしい体液、全部吸い取ってあげますね」

 掃除機を構え、エミリアはにっこりと笑う。

 突然の事態に、青年は驚愕で震えるしかなかった。

 まさか、掃除機で――

 同時に彼の腕を拘束していた天井の鎖が外れ、強制的に直立させられていた青年は解放される。

 「や、やめて……! そんなの……!」

 エミリアから逃れるように背後に退がろうとして、そのまま青年は尻餅をついてしまった。

 彼のペニスは、一度射精したにもかかわらず勃起したまま。

 そんな彼に、掃除機を手にしたエミリアが近付いてくる。

 尻餅をついておののいている青年のペニスに、掃除機のホースの先が近づいてきて――

 

 「では、失礼します」

 エミリアは、そのまま亀頭部を掃除機のホースに吸い込んでしまった。

 たちまちペニスの先端はホースにずっぽりと飲み込まれ、振動を受けながら激しい吸引にさらされる。

 「あ……! うわぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 ヴゥゥゥ〜〜ン、ズボ、ズボボボボボボ……!

 

 体験したことのない強烈な吸引に、自らのペニスがさらされる感触。

 バイブレーターのような激しい振動が、ペニス全体を甘く痺れさせる。

 吸い込まれた空気が、ペニスとノズルの間で独特の振動を生み出しているのだ。

 ペニスが掃除機に吸われ、蹂躙され尽くす――それは、強烈な快感だった。

 「あがぁッ!! ああぁぁぁぁッ!」

 あまりに激しい刺激に、青年は体を震わせながら絶叫する。

 ズルズルに吸い尽くされるような吸引力と、独特のバイブレーション。

 こんなの、耐えきれるわけがない。

 青年の膝はガクガクと震え、腰から力が抜けていく――

 

 「では御主人様、この中に精液を排出されて下さい」

 そう言いながら、エミリアは一気に肉棒の根元までホースに吸い込んできた。

 今まで亀頭部に浴びせられていた狂おしい刺激が、一気にペニス全体に襲いかかってきたのだ。

 「ああッ! うぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ずぽっ、ヴゥゥゥ〜〜ン、ズボボボボボボ……

 

 ホースの中で、自身のペニスがのたうち回っているのがはっきりと分かった。

 掃除機特有のバイブレーションでブルブルと肉棒が震え、吸い尽くされるような吸引を受けている――

 「あぁぁぁぁ……こ、こんな……」

 その刺激の前に、青年の脳髄はみるみる痺れていった。

 頭の中が真っ白になってしまう、初めての感覚。

 自分の股間が、びゅくんびゅくんと脈動しているのが分かる。

 ペニス全体を蝕む振動に、ほとんど無意識のまま射精してしまったのだ。

 「あッ! あッ! ああッ……!!」

 掃除機のホース内で、青年の精液が断続的に溢れていく。

 「射精しましたか……このような器具で吸い出されましうとは、なんと他愛ない……」

 掃除機で青年を射精に追い込みつつ、エミリアに全く容赦する様子はない。

 射精中のペニスを弄ぶように、手にしているホースをくねらせてきたのだ。

 「うがッ! ああッ! ああーッ!!」

 エミリアの手さばきに翻弄され、青年は泣き叫ばんばかりに喘ぐしかなかった。

 そのまま彼女は、青年の溢れさせた精液を全て掃除機で吸い上げてしまったのである。

 ホースから白濁は一滴たりとも溢れることなく、最後の一滴まで吸い込まれたのだった。

 その快感と倒錯感に、青年は脱力してしまう――

 

 「ずいぶん射精なされましたね、ご主人様。掃除機を妊娠させてしまうおつもりですか?」

 嘲ったような、涼やかな笑みを浮かべるエミリア――

 その手に握られた掃除機のホースで、なおも青年のペニスは弄ばれる。

 彼に、恍惚に浸る余裕は与えられなかった。

 「はー、はー……! ああッ!」

 その余りに激しい刺激に、青年は肩を震わせる。

 彼のペニスは全く萎えず、そのまま掃除機に吸われて翻弄され続けているのだ。

 「あら? 小さくなられないという事は、まだ汚い液が溜まっているという事ですね。全て吸い尽くして差し上げます」

 そう呟き――エミリアは、容赦なくペニスを吸い立ててきた。

 パイプを握る手を上下に動かし、巧みなピストン運動を繰り出してきたのだ。

 それは、吸引とバイブレーションの入り乱れたピストン。

 ずぼっ、ずぼぼっ……と、吸引音が激しく乱れていく。

 「あっ……あぐ、あっ! うっと、あぁぁ……!」

 その刺激に、青年は体をガクガクさせながら狂ったような声を漏らしていた。

 ずぼずぼとペニスが吸われ、激しい振動を受け――身悶えするような快感にさらされているのだ。

 

 「エミリア、さん……! やめてぇ、やめてぇ……!」

 「やめてほしかったら、精液を全部吐き出すことですね。少し吸引をきつくしますよ……」

 そう言いながら、エミリアは掃除機のスィッチを『中』に入れた。

 たちまち掃除機の吸引力が増し、青年のペニスはホース内で容赦ない吸引にさらされる。

 

 ヴゥゥゥ〜〜ン! ずぼっ、ずぼぼぼ……っ!

 

 「あああああああああぁぁぁぁぁッ!!」

 掃除機の作動音と吸引音、そして青年の悲鳴が周囲に響いた。

 「掃除機でおちんちん吸われて気持ちよくなるなんて…… どうしようもない御主人様」

 そう言いながら、エミリアは青年への責めを緩めない。

 股間がノズルで弄ばれ、青年は快楽の喘ぎを漏らし続ける。

 溢れ出る先走り液も容赦なく吸い上げられてしまい、青年はみるみる追い詰められていった。

 体はガクガクと震え、じんわりと力が抜けていき、またもや頭が真っ白になっていく――

 さっきの射精の際に、味わった感覚だ。

 訳も分からないまま、甘い痺れの中であえなく果ててしまうのである――

 

 「ああッ……! うあぁぁぁぁぁぁ……!!」

 ホースの中で、ドクドクと迸る青年の精液。

 それを全く意に介さず、エミリアは掃除機を作動させ続ける。

 「……また出しましたか。掃除機、そんなにお気に召しましたか?」

 「も、もうやめてぇぇ……」

 「先程、言って差し上げたでしょう。おちんちんが大きくなるという事は、汚い液が溜まっているということ」

 エミリアはノズルの先を引き上げ、亀頭部分を重点的に吸引させる。

 精液をたちまちのうちに啜ってしまったノズルは、青年の亀頭を容赦なく嫐り回した。

 ずるずるという音が響き、青年は体をビクビクと震わせる。

 「全て吸い出してしまうまで、お掃除は終わりませんよ」

 「そ、そんな……! あぁぁぁ……」

 快楽にわななきながら、青年は戦慄する。

 ペニスが小さくならないのではなく、無理やり与えられる刺激で萎える事が許されないのだ。

 射精しても射精しても、強制的に吸引を受けて勃起させられる。

 つまり、こっちがボロボロになるまで終わるはずのない責めなのだ――

 

 「こんなの……終わらない……」

 「まあ、そうなりますね。御主人様はひたすら掃除機に射精して下されば結構ですので」

 エミリアは、いかにも明白事であるかのように言った。

 「掃除は私の仕事で、御主人様は掃除される側。だから私に身を委ねて下さい」

 「そんな……ああぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 青年を強制的に黙らせるようかのごとく、スイッチを『強』に入れるエミリア。

 吸引は一気に強力さを増し、ペニスを激しく吸い嫐ってきた。

 「あ、あぅ……! あぐ、あぅぅ……」

 彼の敏感な部分はノズルに啜り尽くされ、たちまち青年は押し上げられていく。

 また、頭の中が真っ白になってしまう――

 その甘美な感覚の中で、あっという間に彼は一回分の精液を吸い上げられてしまった。

 「うぅぅぅ、あぁぁぁ……」

 これが、掃除機でペニスを吸われる快感――

 抗っていたはずの青年は、いつしかその快感に酔ってしまっていた。

 掃除機で精液を搾り取られるという屈辱が、快楽にすり替わってきたのだ。

 もっと、これを味わっていたい――

 もっと、精液を掃除機で吸い取ってほしい――

 そんな青年の感情の変化を、エミリアが見過ごすわけがなかった。

 

 「……溺れてしまうのですか、ご主人様?」

 ノズルで亀頭を重点的にいたぶりながら、エミリアは呟く。

 「あ、あぅ……」

 「掃除機で精液を処理されてしまう哀れな存在――そう成り下がっても良いのですか?

  構わないのならば、今後そのように扱いますが……」

 「う、うぅぅぅ……」

 快楽で鈍化している頭でも、何か重要なことが問われているのだけは分かった。

 これから、ずっとこの快感を味わっていたい――

 しかし、それではいけないような気がする。

 「どうなされますか、ご主人様……?」

 そう言いつつも、エミリアはペニスを掃除機で吸い続けたまま。

 ずるずる、ずぼずぼと吸い嫐られる快感が、彼のペニスを蝕み続ける。

 そして、青年は――

 

 それでも、安易に快楽に流されることを拒んだ

 この快感が、ずっと続けられることを望んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だめ……だ……、そんなの……」

 「そう――ですか」

 そう言いながら、エミリアはペニスをずぼっ、ずぼっ、と吸いたてていく。

 青年の頭は真っ白に染まり、またしても掃除機の中で果てていた。

 「うあっ! うあああああああああぁぁぁ!!」

 

 どく、どくどくどく……!

 

 彼は悶えながら、掃除機のホース内に精を噴き上げ続ける。

 「や、やめて……もう、やめて……」

 「精液を全て吸い上げてしまうまでは、終わらないと言ったはずです。全て、この中にお吐き出しを――」

 穏やかかつ冷酷に、そう告げるエミリア。

 掃除機での吸引は、青年のペニスをずぼずぼと嫐り続ける。

 「あぅ……あぁぁぁぁぁぁぁ……」

 こうして、何度も何度も強制的に絶頂を迎えさせられ――

 それが5回を超えたとき、とうとう青年は意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 「う、うぅ……」

 青年が目を覚ますと、そこは湯気の立ち上る空間。

 足元は大理石で、湯気や湿気が立ち込めている――すぐに、ここはバスルームであることに気付いた。

 立ち上がろうとするものの、すぐに尻餅をついてしまう。

 さっき散々に掃除機で吸い嫐られた疲労が、足にまできているようだ。

 「あら、お気づきになられたのですね」

 メイド服姿のままのエミリアは、目を覚ました青年にそう話し掛ける。

 彼女はシャワーを手にし、湯の温度を調整していた。

 「な、何を……」

 「随分と汚れたでしょう? お体をお洗い致します」

 そう言って、エミリアは青年を強引に浴室椅子へと座らせる。

 かなりの体力を消費している彼に反抗する気力はなく、されるがままに座った。

 「熱すぎたらおっしゃって下さいね、御主人様」

 そう言いながら、エミリアはシャワーからのお湯で青年の全身を洗い流し始めた。

 彼女のワンピースもエプロンドレスも着用したままだが、濡れている様子はない。

 服自体が防水なのか、魔法か何かで濡れないようにしてあるのか――まあ、どうでもいい。

 青年は余りにも熾烈な掃除機での責めにより、疲れきっていたのである。

 そして、体を洗ってくれるエミリアにただ身を委ねるのみ。

 ただ、その洗い方はどこか――人間に対するものではない、そんな感じがした。

 

 「エ、エミリアさん……」

 「どうしました? シャワーが熱かったですか?」

 「いえ……」

 シャワーで青年の体を流した後、ボディーソープで淡々と彼の全身を洗うエミリア。

 それは丁寧ながら、極めて無機質で職務的な洗い方だったのだ。

 青年は、まるで自分が犬猫と化したかのような錯覚に捉われる。

 彼女の気まぐれで拾われ、一方的に洗われているだけの存在――

 実際のところ、状況はほとんど同じなのかもしれない。

 

 「――それでは、前もお洗いしますね」

 気付けば、背中も体も洗い流されていた。

 残すは、股間のみ――青年は、ようやくそれを悟る。

 これから、この綺麗なメイドに股間を洗われてしまうのだ――

 散々の辱めを受け、青年は諦めにも似た感覚を抱いていた。

 それどころか、期待のような感情までが沸き上がってきたのである。

 「汚らわしい部分を洗って差し上げますので、少し足をお広げ下さい」

 「……」

 青年は、浴室の椅子に座ったままゆっくりと足を開く。

 彼のペニスは、何度も搾られたせいで縮みきっていた。

 エミリアは掌にたっぷりとボディーソープをまぶし、ぬちゃぬちゃと泡立たせる。

 わしゃわしゃと彼女の手で泡立つ様子を見ていると、青年は興奮を抑えきれなくなってきた。

 これから、あの泡で、あの掌で肉棒を洗ってもらえるのだ――

 

 「……では、失礼します」

 そのまま青年の背後に回り、抱き込むように股間に手を伸ばしてきた。

 右手でペニスを、左手で玉袋を優しく握り、たっぷりと泡を塗りつける。

 「あ、エミリアさん……!」

 青年のペニスは、彼女の手の中でむくむくと大きくなり始めた。

 妖しいぬめりと、エミリアの体温が伝わった泡の温度。

 それが、ふんわりとペニスを包んできたのだ。

 白い泡に覆われていく自らのモノを目の当たりにしながら、青年は興奮に身を震わせた。

 「全て吸い出したかと思えば、まだ残ってらしたなんて……」

 エミリアは眉を寄せつつも、ペニスを洗う動きを止めはしない。

 泡まみれの両手でペニスを挟み込み、みっちりと両掌で包み込んで上下させてくる――

 肉棒の幹の部分が擦り上げられ、ぬちゃぬちゃと刺激されているのだ。

 「エ、エミリアさん……! で、出そう……!」

 「御主人様、これはお体をお洗いしているのであって、性的な奉仕ではありません」

 エミリアはきっぱりと告げる。

 「しかし、これしきの刺激にすら我慢できないのならば仕方ありません。好きに射精なさって下さい」

 「エ、エミリアさん……ああッ!!」

 

 にゅちゅ、にゅちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ……

 

 青年のペニスは泡まみれの手で弄ばれ、股間からは卑猥な肉音が響く。

 彼は表情を歪ませながらその快感を味わっていたが――その限界は、あっけなく訪れてしまった。

 「ああッ! エミリア……さん……うぁぁぁッ!!」

 サオを上下するヌルヌルの刺激に屈服し、どくんどくんと脈動が始まる。

 どくどく……と、青年はエミリアの手の中に白濁を漏らしてしまったのだ。

 ペニスに絡み付いている泡に精液が混じっていき、ねっとりと淫らな糸を引いていく。

 「また汚れてしまいましたか。洗った意味がありませんね、御主人様」

 ひとしきりペニスを擦り上げた後、エミリアは精液の絡み付いた指を開いた。

 指と指の間には白濁の橋が伝い、泡と混ざって粘り落ちていく。

 自分の漏らしたモノが、エミリアの綺麗な掌をあんなに汚してしまった――その光景に、彼は息を呑んだ。

 「この中に……ご主人様のおたまじゃくしが、いっぱい泳いでいるのですね」

 そう言いながら、エミリアは掌に粘り着いた精液を容赦なく洗い流してしまった。

 次に青年の股間へシャワーのお湯を当て、泡と精液を洗い流してしまったのである。

 これで、股間の洗浄は終わった――そう、青年は思った。

 

 「また、最初から洗い直しです。次は我慢して下さいね」

 「え……?」

 予想もしなかったエミリアの言葉。

 青年が呆気にとられる間もなく、エミリアはボディソープを再び掌で泡立て――

 青年のペニスを泡で包み込むと、まるで扱き上げるように洗い始めたのである。

 

 にゅちゅ、にゅちゅ、ごしゅ、ごしゅ、ごしゅ……

 

 「うう、ああぁぁぁ……!」

 ぬめった泡がもたらす独特の快感に、青年は体を震わせて悶えた。

 その体を、エミリアは背後から抱え込むように押さえつけてくる。

 「暴れないで下さい、御主人様」

 エミリアに背後から抱きすくめられ、股間ではエミリアの両手がくちょくちょと動き続ける。

 その細い指がサオへ絡み付き、泡にまみれた亀頭をやんわりと嫐り――

 青年は、エミリアによって与えられる刺激でたちまち昂ぶっていった。

 「……射精されては、また最初から洗い直しになりますよ」

 力が抜けていく青年に対し、そう告げるエミリア。

 その柔らかな掌は、丹念に泡が塗られた亀頭を集中的に洗っている。

 泡にまみれた掌で亀頭をくるみ、やわやわと動かし――

 言葉とは裏腹に、その手の動きはじわじわと青年を追い詰めていくのだ。

 「ああぁぁぁッ……!」

 「ここにも汚れがたまっておられますね。ご自分でちゃんと洗っておられるのですか?」

 エミリアの細くしなやかな指が、ゆっくりとカリの部分を這う。

 カリ、そしてその下のくびれ――男が最もととろける部分を、エミリアの指がとらえたのだ。

 その泡だらけの指がぬるぬると溝を擦った瞬間、青年の限界は訪れた。

 「うう……ああぁぁぁッ!!」

 

 どく、どく、どく……

 

 エミリアに背後から抱きすくめられたまま、肉棒を脈打たせつつ脱力する――

 その開放感と、恍惚感に酔わされる。

 またしても青年はエミリアの指技で絶頂に導かれ、精液を噴き上げてしまったのだ。

 エミリアが肉棒を洗い終えるまで、射精をこらえることが出来ない――

 それは、男にとってこの上ない恥辱であり屈辱だった。

 

 「……御主人様、そんなに私の手を煩わせたいのですか?」

 ねっとりと白濁の絡んだ掌、そして青年へと――エミリアは、蔑んだ視線を移動させる。

 青年の股間をシャワーで無造作に洗い流し、そして掌でボディーソープを泡立て――

 またもや、甘美な洗い責めが始まるのだ。

 「そんな……! こんなの、終わらないよぉ……!」

 「御主人様が射精しなければ済む話です」

 ぴしゃりと告げ、エミリアは淡々とペニスを洗っていく。

 指の腹の部分が、泡でぬめりながら亀頭を這い回り――

 指先でくすぐるように、ミゾの部分の恥垢を洗い落とし――

 親指と人差し指で輪を作り、それが何度も何度もカリを擦り上げ――

 「あ、あぅ……あぁぁぁぁぁぁ……」

 狂おしいまでに甘美な刺激に、青年は耐えるすべすらない。

 ここで漏らせば、また最初から洗い直される。

 それが分かっていながら、あまりに心地よい感触に射精をこらえきれそうにない。

 そんな甘い拷問の中で、青年は――

 

 歯を食いしばり、それでも射精をこらえた

 快楽に流され、エミリアの股間洗いに屈服した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、あぅ……あああ……あぐぅ……」

 何度も何度も、泡まみれの手で精液を搾り出される青年。

 どれだけ射精したかも分からないくらい搾り出されたせいで、その疲労は極限。

 「さすがに、これだけ搾れば射精までに時間が掛かるようになってきましたね」

 そう言いながらも、エミリアは青年のペニスを洗い上げる。

 股間の隅々に指が這い、泡に塗れた掌がペニスを嫐り回した。

 「うう……、あぁ……」

 もう少し。もう少しだけ我慢すれば――

 青年は必死で唇を噛みながら、それが終わるのを待った。

 漏れ出そうになる快感をこらえ、なんとか耐え抜きながら――

 

 「これで終わりです、御主人様――」

 泡をシャワーで洗い流しながら、エミリアは微かな笑みを見せた。

 「はぁ、はぁ……やった……」

 青年は、ようやくそれを耐えきったのだ。

 決して、洗い責めをやめてほしいわけではなかった。

 ただ、目の前の綺麗なメイド――エミリアは、自分が快楽に溺れることを望んでいない気がしたからだ。

 その証拠に――エミリアの浮かべている消え入りそうな微笑は、男を蔑む笑みとは全く別物のようだった。

 

 「よく我慢されましたね、御主人様。ご褒美を差し上げます……」

 そう言いながら、エミリアは右手でしっかりとペニスを握ってくる。

 その左手は、亀頭を包むように伸び――

 「うぐ……!」

 青年は、思わず歯を食いしばっていた。

 「ふふ……今度は、そんなに身構える必要はありません」

 くすり……と、エミリアは笑みをこぼす。

 それはやはり、何度となく見せた侮蔑をはらんだ冷笑とはまるで異質だったのだ。

 「今までは、作業として洗って差し上げただけ。ですが、今度は性的な奉仕です。

  これはご褒美ですので、たっぷり堪能して下さいませ――」

 そう告げると、エミリアはそのまま右手でペニスを扱き立ててきた。

 その動きは、先ほどまでの洗う動作とは意図も目的も全く異なるもの。

 明確な意思を持って快感を与え、青年を快楽の世界に導いていく――そんな動作。

 「おぁッ!! あああ……ッ!!」

 カリがこすれるよう巧みに刺激し、サオを締め付けながら上下するエミリアの右手。

 そして左手の指は、ばらばらに動きながら亀頭をくすぐりたて――丹念に、性感帯を刺激してくる。

 指の腹が亀頭のあちこちを変幻自在に這い回り、容赦ない快感を与えられ――

 奉仕が始まってわずか数秒のうちに、青年は込み上げてくる射精感を抑えきれなくなった。

 

 「エ、エミリアさん……! ああぁぁぁ……!」

 青年は体をのけぞらせて全体重をエミリアに預け、表情を快楽に歪ませた。

 今まで事務的に洗うだけだった彼女の手が、射精させるという意図の下で青年のペニスを嫐っているのだ。

 うっとりしてしまうほどの、とろけるように甘いエミリアの手技。

 青年は表情を緩ませきって酔いしれながら、その手の中でたちまち昇天してしまう。

 「ああッ! ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 どく、どくどくどく……

 「あら……こんなに残っていたのですね」

 精液の噴出する尿道口を、エミリアは左手の指の腹でなぞって弄ぶ。

 さらに右手は射精のリズムに合わせてペニスを扱き上げ、最後の一滴までを搾り出してしまった。

 エミリアの手の中で果て、最高の射精を味わい、青年はそのまま弛緩してしまったのである。

 

 「5秒も持ちませんでしたね、御主人様」

 エミリアは慎ましい笑みを浮かべながら、その手を汚す精液をぺろり……と舐め取った。

 サキュバスとは、精液を貪る妖魔。

 そんなサキュバスであるエミリアが、初めて青年の精液を口にしたのである。

 「あ……あ……」

 自分の漏らした液が、僅かながらもエミリアの糧になるという倒錯感。

 その興奮に下半身は反応をはじめ、またしても肉棒が隆起していく。

 「あら……ご自分の精液がエサにされるのを目の当たりにし、興奮されたのですか?

  そう期待された目をされなくとも――存分に、エサにして差し上げますよ」

 「エサ、に……」

 それは、今からエミリアに精液を搾り取ってもらえるということ。

 彼女に精液を吸い尽くされるならば、それも本望かもしれない――

 そんな思いにとらわれた青年は、もはや抗わなくなった。

 「では、これより本格的に搾精します。私の膣でたっぷり搾り取って差し上げますね」

 「あ、あぁぁぁぁぁ……」

 無表情ながら、どこか艶やかな雰囲気を見せるエミリア。

 あの肉体と交わり、精を吸い取ってもらえる――その期待で、青年の頭はいっぱいになる。

 「では選んでください、ご主人様。これより、私を荒々しく犯し尽くすのがお好みですか? それとも――」

 エミリアは淫靡な笑みを浮かべた。

 「――私に弄ばれ、犯し尽くされるのがお好みですか?」

 「エミリアさんを、犯す……?」

 犯すのか、犯されるのか――青年は、思わぬ選択肢を突き付けられた。

 そして、彼は――

 

 エミリアに犯されることを望んだ

 エミリアを犯すことを望んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……犯して……下さい」

 青年は、熱に浮かされたように口にしていた。

 ――エミリアに弄ばれ、犯し尽くされたい。

 彼女の思うがままに精を搾り尽されたい――

 度重なる倒錯的な責めにより、青年はもはやエミリアの虜となっていたのである。

 

 「ふふ、そうですか。では――」

 エミリアは軽く青年の体を抱えると、バスルームの真ん中に仰向けに寝かせる。

 そして、彼の股間をゆっくりと跨いだ。

 ふんわりと膨らんだロングスカートの裾が、青年の腹や太腿をくすぐる。

 「私の服はどうします? 脱いだ方がよろしいでしょうか? それとも、このまま――」

 「そ、そのままで……」

 「メイド服のままで犯されたいと……分かりました、変態な御主人様」

 エミリアは嘲ったように笑うと、そのままゆっくりと腰を落としてきた。

 長いスカートが青年の下半身全体に被さってきて、自分の肉棒もエミリアの下半身も見えない。

 まるで、スカートで隠されるようなもの――

 そうした見えないという状況が、逆に青年の興奮を高めていた。

 

 ぬちゅ、と青年のペニスの先端がエミリアの膣口に触れる。

 「う、うぁ……!」

 じんわりと温かい入り口――そのぬめった感触に、青年は表情を歪ませた。

 そこは、既に愛液で湿っているようだ。

 「入口で出そうですか? これだけで射精したら屈辱ですよね」

 エミリアは、悪戯げに目を細める。

 「ふふっ。御主人様が惨めな思いをしないよう、一気に食べて差し上げますね」

 そして騎乗位の体勢のまま、エミリアは一気に腰を落とす。

 

 ずぶ、ずぶぶぶぶぶ……

 

 まるでぬかるみに嵌るように、青年のペニスはエミリアの奥深くに沈み込んだ。

 何重ものヒダが青年のペニスをくるみ込み、あちこちを嫐り回す。

 キュッと吸い付いてくる内壁が、ねっとりと密着しながら締め付けてくる――

 その蠢きは、言い知れない快感をもたらしていた。

 

 ぬちゅ……、にゅぐ、ぬちゅちゅ……

 

 「あぁ……エミリアさん……! うぁぁぁぁ!!」

 「どうされました、御主人様? 私、まだ動いていませんが」

 確かに、エミリアはまるで腰を動かしていない。

 それなのに、彼女の膣は青年の精を吸い上げるべく蠢いている。

 ぬちゅぬちゅと、強制的に精液を搾り取るかのごとく――

 

 「私に乗られているだけで、我慢できないのですか? なら、どうぞそのままお出し下さい」

 エミリアは冷たい笑みを浮かべ、青年を見下ろした。

 彼はすでに、エミリアの膣内で限界を迎えようとしている。

 そんなペニスの先端に、何か柔らかいものが艶かしく密着してきた。

 「ああ……なに、これ……!」

 「私の子宮口です。御主人様のおちんちんから精液を吸い上げようとしているようですね」

 まるで他人事のように、エミリアはそう口にしていた。

 もしかしたら、彼女の意思とは関係ない動きなのかもしれない。

 サキュバスであるエミリアの膣は、彼女の意思とは関係なく挿入されたペニスを徹底的に嫐り回そうとする――

 そんな、肉棒がとろけてしまいそうな感触に青年が耐えられるはずがなかった。

 

 「エ、エミリアさん……! うあッ! うぁぁぁぁぁッ!!」

 

 どぐっ、どぷどぷどぷ……!

 

 エミリアの膣内で、ドクドクと青年の精が弾けてしまう。

 本当にペニスが溶けているかのような、あまりに甘い射精。

 子宮口は彼の精液を迎え、ひくひくと蠢きながら彼の亀頭を弄んできた。

 「ううッ! うああぁぁぁーッ!!」

 青年はエミリアに組み敷かれたまま、ドクドクと精液を膣内に送り込み続ける。

 これが、サキュバスの膣内。男に天国を体験させることに特化した蜜壷。

 その機能に翻弄され、彼は放った精液を一滴たりとも残さず搾られてしまったのだ。

 

 「ふふっ、私の中で漏らしてしまわれて……」

 エミリアは微かに笑い、その目に嗜虐の火が点いた。

 いかに冷徹な淫魔であろうと、食事の際は情熱を隠しきれない。

 特に、それが気に入った相手に対してだったならば――

 「――では、そろそろ動いて差し上げますね」

 「……えッ! うわぁぁッ!!」

 エミリアは、ゆさゆさと腰を振り立ててきた。

 揉みあげられ、粘りつかれ、締め付けられ、搾りあげられ――

 青年のペニスは、彼女の膣内でぐちゅぐちゅに蹂躙され尽くしたのだ。

 

 「ああッ! うぁぁぁぁぁぁ……っ!!」

 どく、どくどくどく……!

 青年は激しく身悶えしながら、あっという間にエミリアの中で果てていた。

 彼女が腰を使い始めた瞬間の射精。

 青年は、もはや男としてのプライドを完全に引き裂かれている。

 いや、雑巾や掃除機でペニスを弄ばれたときから既に――

 

 「私、乗馬が趣味なんです。御主人様も乗りこなして差し上げますね」

 青年の腰に跨ったまま、エミリアはゆっくりと体を前に倒してきた。

 その豊かな胸を青年の胸板に密着させ、両腕を彼の首に回す。

 「エ、エミリアさん……?」

 「御主人様、私に体をお預け下さい」

 さらに彼女は、両足を青年の脚に絡めてくる。

 彼女の足に下半身の動きを封じられ、エミリアの体は青年にぴったりと密着した。

 ふわふわのメイド服がさらさらと青年の体にこすれ、独特の感触を生み出す。

 スカートに隠されて見えないが、彼のペニスはエミリアの奥深くに嵌り込んでいた。

 亀頭が子宮口にねっとりと密着し、艶かしい脈動を受け続けていたのである。

 「エ、エミ……!!」

 「どうですか、御主人様。この体勢だと、いかにも搾り取られているという感じがなさるでしょう?」

 エミリアの端整な顔は、青年の眼前にまで接近していた。

 彼女の暖かい息が、青年の顔に当たる。

 「――ではお望み通り、犯し尽くして差し上げます」

 そう宣告した後、エミリアはその状態で激しく腰を振りたててきた。

 「ぐあッ! あああぁぁぁぁぁ――!!」

 どくん、どく、どくどく……

 青年はその腰の動きに抗いきれず、たちまち膣内に射精する。

 射精に反応するように、ペニスの先端を吸い嫐ってくる子宮口――青年は、残酷な快感を刷り込まれていた。

 それでも、エミリアは暴れ狂う青年にしがみついたまま離れない。

 それどころか、ますます腰を前後左右に動かしてくるのだ。

 

 「このまま、じっくりと精を搾り取って差し上げますね」

 「エミリアさん……気持ちよすぎて、もう……! は、離れて……!」

 あまりの快感に恐怖さえ覚え、青年はエミリアを離そうと悶え狂っていた。

 しかし彼女は、青年にしっかりとしがみついたまま。

 まるで武道の締め技のように彼の体に食らい付き、その精を貪欲に搾り上げていく。

 「離してあげませんよ、御主人様。そのまま私の体内に、精液を漏らし続けて下さい」

 「ああ……あ、あああぁぁぁッ!!」

 

 どく、どくどくどく……

 

 青年は、そのままエミリアの中に何度も何度も射精を続けた。

 それでもなお、エミリアの貪欲な食事は続く。

 「ほらほら……ゆっくり腰を回して差し上げます。どうですか、御主人様?」

 「ああ……! エ、エミリアさぁん……!!」

 

 どく、どく、どくどくどく……

 

 延々と続くエミリアの搾精。

 青年は何度も何度も膣内で果て、エミリアの体内に精を注ぎ込み続けた。

 彼の視界は明滅し、もはや正気を保つこともできない。

 このままでは、狂ってしまう――いや、もう狂っているのかもしれない――

 

 どく、どく、どくん……

 

 「ひぁ……た、たすけ……やめ……もう……」

 もはや彼に出来ることは、懇願とも悲鳴ともつかない声を上げ続けるだけ。

 「……音を上げるには早いですよ、御主人様」

 「ああッ! ああぁぁぁぁ……」

 その叫びは、なんの意味も効力ももたらさない。

 ただ、エミリアの嗜虐心を満足させるだけだ。

 

 どく、どく、どくどくどく、どくん……

 

 「ぁぅ、ぅぅぅ……」

 訳の分からない叫びも、徐々に消え果てていく。

 このまま、自分は散々に搾られた挙げ句に死んでしまうのだ――薄れ行く意識の中で、青年はそう悟っていた。

 サキュバスの餌にしてもらえるという甘い幸福感を味わいながら――

 彼の意識は遠くなり、そのまま闇の中に堕ちてしまったのである。

 

 

 

 

 

 春先のような柔らかな日差し。

 ちゅんちゅんと、小鳥の歌う声。

 

 「うぅ……ここは……?」

 ここは――天国なのだろうか。

 だとしたら、天国というのはずいぶんと平凡なところだ。

 洋館風の内装に、ほがらかな朝の日差し。

 自分は、ベッドに寝かされていたらしい。

 

 「……おはようございます、御主人様」

 そう、静かに語りかけてくる声――それは、枕元にいたエミリアだった。

 彼女が、先に天国で待っていてくれるわけがない。

 だとしたら、ここは――

 「昨日はお疲れの様子でしたので、寝床まで運んで差し上げました」

 「え……?」

 青年は体を起こし、周囲と自身の体を見回した。

 確かに、生きている。

 不快感は何一つない、驚くほどリフレッシュした気分。

 昨日、極限まで精を搾り取られたにもかかわらず――

 命を落としたどころか、衰弱さえしていないのである。

 吸い殺されることさえ、自分は覚悟していたというのに。

 

 「昨日はありがとうございました。御主人様のおかげで、楽しい余暇を過ごさせて頂いて……」

 エミリアは、優しい笑みをたたえながら頭を下げる。

 「よ、余暇……?」

 「ええ。何度となく、試すようなことをして申し訳ありません。あれも、他愛ない戯れの一つとお考え下さい」

 「……」

 ――そうだ。

 自分は、エミリアに何度か堕とされてしまうところだったのだ。

 あれは、あくまで遊びのようなものだったということらしい。

 「戯れ――だったんですか」

 「ええ。しかし……もしご主人様が堕ちてしまわれたら、遊びでは済まなかったかもしれませんが。

  安易に快楽に溺れる人間など、嫐る以外の接し方を私は心得ておりませんので」

 不穏な微笑を浮かべながら、エミリアは当然のようにそう口にする。

 あらためて、青年の背筋に寒気が走ったのだった。

 

 「ではご主人様、そろそろ人間界にお帰りになられる頃合いです。

  玄関口にゲートを用意しておきました。それをくぐれば、戻れるはずです」

 「えっ……!?」

 エミリアの言葉に、青年は当惑を隠せない。

 「に、人間界に……?」

 「ええ。元の世界にお戻りになった後は、魔界のことも――私のこともお忘れ下さい」

 静かに、そして穏やかにエミリアは口にする。

 死をも覚悟した自分が、無事に帰ることができるのか……!?

 サキュバスであるエミリアに精を搾り取られながら、命は助けてもらって――

 「いいんですか? そんな、僕を……」

 「さえずりを聞かせてもらった小鳥を、食らってしまうような振る舞いは致しません。

  楽しませてもらった後は、窓から逃がしてあげるのが――私の流儀です」

 そう言って、エミリアは静かに背を向けた。

 「……申し訳ありませんが、これより私は仕事に参らなければなりません」

 「仕事……」

 そう言えば、エミリアはあの妖魔貴族の城に仕えているのだ。

 自宅に戻るのは、一週間に一度だけ――そんなことを言っていた。

 「屋敷内は、好きに使ってもらって構いません。食料もお好きにどうぞ。

  体調が整うまでのんびりなさって、完全に体力が回復してから人間界へお戻りを」

 「あ、でも……」

 「ありがとうございました。そして、こんな事に付き合わせてもらって申し訳ありません」

 エミリアは腰を上げ、そして――

 「では、失礼します」

 そして、彼女は静かに部屋から出て行った。

 エミリアが退室した後、室内に残されたのは絶対的な静けさ。

 心の落ち着くような静寂では決してなく――それは、胸騒ぎがするほどの空虚だったのである

 

 「一週間、か……」

 これから一週間、エミリアは戻ってこない。

 そして帰宅した彼女を迎えるのは、誰一人としていないのだ。

 ただ、一週間分の空虚がそこにあるだけなのである。

 

 ――だからどうした?

 あの女は人間じゃなく、怪物の仲間なんだ。

 人間をさらって拷問する女貴族の、その片棒を担いでいる女なんだぞ――

 青年はあらためて、エミリアに対する憎悪を沸き立たせる。

 そうでも思わないと、自分は――

 

 「さあ、帰ろう……」

 まるで自分に言い聞かせるように呟きながら、青年は腰を上げた。

 その時、枕元に剥き立てのリンゴが置いてあるのに気付く。

 青年に食べてもらうためだろう、ウサギの形に切られたリンゴだ。

 「エミリアさん……」

 彼女の、無表情な横顔が脳裏に蘇る。

 あんな冷酷な女、気にする方がおかしい――そのはずだ。

 表情をほとんど変えず、淡々と人のペニスを弄ぶような女。

 ちょっと寂しそうで、どこか物哀しそうで、とても綺麗な女。

 そんなエミリアの儚い微笑が、なぜ自分の頭から消え去らないのか――

 

 

 

 

 

 それから一週間後、エミリアは屋敷へと戻ってきた。

 そんな彼女の帰宅を出迎えたのは――絶対の空虚ではなく、一人の青年だったのである。

 「――お帰りなさい、エミリアさん」

 どこか気恥ずかしそうな表情を浮かべ、青年は告げた。

 「……どうなされたのです? 人間界にお戻りになったのでは?」

 玄関口に立つ青年を見据え、エミリアは怪訝な表情を浮かべる。

 「その……まだ、体力が回復してなくて」

 そんなのは、ただの照れ隠しに過ぎない。

 エミリアもそれを了承しながら――くすりと、笑みをこぼした。

 「週末まで屋敷に残っていれば、また体力を消費してしまいますよ?

  帰宅した私が、御主人様に何もしないとお思いですか?」

 「……それでも、いいですから」

 青年は、静かに頷く。

 「……あらあら、困った御主人様ですね」

 冷酷な微笑と、それに混じった柔らかな笑みを浮かべるエミリア。

 ――やはり、青年は間違っていなかった。

 彼女は嘲るような冷笑以外に、ほがらかな笑みを浮かべる時もあるのだ。

 

 青年の出迎えを受け、邸内に入りながら――エミリアは、静かに笑った。

 「――では、お体を洗って差し上げますね。この一週間でずいぶん汚れたでしょう?」

 

 

 



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