グランドール事件


豪華な調度品が並ぶ部屋の中に、大きな机を挟んで一組の男女が向かい合っていた。

一人は禿頭の老人で、椅子に深く腰掛け女のほうを見ている。

もう一人は青いドレスを纏った、金髪の若い女だ。

女は机の前で棒立ちになり、天井を仰いで笑っていた。

笑声が漏れ出す口は大きく開き、その整った顔立ちは歪んでいた。

そして老人は、哄笑する女を無言で見つめているだけだった。

「あは、あはははは、あはは」

「・・・・・・」

彼女は悟ってしまったのだ。老人が自分を作った、本当の理由を。

「あはは、そうだったんですねゼペット様・・・だから、だから私を作ったんですね、あはははは」

笑いながら言葉を重ねるに連れ、彼女の瞳が潤み、目尻に水滴が溜まっていく。

「こんな、こんな理由で私を作り出したんですね、あはははははは・・・」

溢れ出した涙は頬を伝い、顎から雫となってドレスや床へと落ちていった。

「こんな、あははははは、こんな、理由で、あははははははははは、ははは、は、は・・・」

彼女は涙を流しながらひとしきり笑い続けると、不意に口をつぐんだ。

一分、二分と無言の時間が流れていく。

「分かりました、ゼペット様。私、役割を全うします。」

天井を仰いでた顔を下ろすと、彼女はしっかりとした口調で口を開いた。

「貴方が私に求めていた役割を、演じさせていただきます。ですから、準備のため、今しばらくお待ち下さいね、あなた」

彼女は深々と頭を下げると、老人に背を向け歩き出した。

手の甲で軽く顔をこすって涙の痕を消すと、泣いていたとは思えぬほどしっかりとした表情をその顔に湛えた。

そしてそのまま、彼女は足早に部屋を後にしていった。

「・・・・・・」

老人は無言で、彼女の後姿を見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

足元が揺れている。

よほど注意しなければ気が付かない程度の揺れだが、俺は揺れを感じ取っていた。

だが揺れにあまり気を向けることなく、仲間と共に席に着き、投影されているスライドの映像に目を向けていた。

「『人形工房』の非常事態宣言の発令と封鎖から、既に5時間が経過している」

上司の酒田大尉の言葉に俺、伍堂大悟は耳を傾けていた。

「ゲートは機能が停止されており、通信線も切断されている。無線と海上路にいたっては、ほら」

酒田大尉の操作で画面が切り替わり、現在の『人形工房』近辺の様子が映し出される。

イタリア半島西に広がるティレニア海。

幾隻もの船舶からなる艦隊が、鈍く発光する赤い半球体を取り囲んでいた。

「見たとおり、結界によって外部と遮断されている」

駆逐艦に包囲された『人形工房』を示しながら、上司は肩をすくめて見せた。

「まぁ、これが単なる『大図書館』傘下からの離脱宣言をかねたものなら、備品や資料の返却をしたうえで笑顔で送り出してやるんだけどね・・・。

『第二次バアル・ゼブブ事件』、覚えている者は?」

俺も含めた隊員四人全員が、すぐさま挙手する。

「松田、言ってみろ」

「はい」

俺の隣に座っていた、松田隊長がすっくと立ち上がった。

「『第二次バアル・ゼブブ事件』とは19世紀末、ドイツ南部で発生した召喚魔術実験の暴走です。

実験により召喚された被召喚体が、実験施設を中心に直径二キロの範囲を結界で封鎖し、結界内部の生命体及び新たに召喚した下級淫魔たちを捕食した事件のことです」

「ん、そうだ。座ってよし」

酒田大尉の言葉に、松田隊長は腰を下ろした。

「今回の『人形工房』封鎖を、『大図書館』と『帝国』上層部は『第二次バアル・ゼブブ事件』の類似事件と判断した。

そのため早急な解決が望まれるが、施設内部には貸与している資料や『人形工房』独自の技術文書など、失われては困るものが多い。

そこで、我々『帝国』が立てた作戦はこうだ」

酒田大尉の操作により、スライドが切り替わる。

表示されたのは、簡略化された『人形工房』施設とその周囲を包む結界、そして駆逐艦だった。

俺達が今乗っている駆逐艦が、赤く点滅している。

「まず君達の部隊が、結界中和術式の施されたボートで持って施設内部に侵入してもらう。

そして複数存在するゲート施設のうち、先程指定したものに行き、ゲートの機能を復活させる。そうすれば、本隊が突入し、事態を収拾する。

仮に突入後五時間が経過してもゲートが開かない場合は全滅したとみなし、ジョンソン砲による砲撃を行って施設を破壊する。

君達の任務については、以上だ」

話の割りに、意外と簡単そうな任務内容に俺はいささか拍子抜けした。

「だが、油断するなよ」

彼は俺の内心を見透かしたかのように続けた。

「結界内部の様子が分からないゆえ、相手の戦力がどれほどのものかは不明だ。

無人なのかもしれないし、続々と召喚された淫魔が闊歩しているのかもしれない。

下手すれば戦力が足りず、任務が達成できないということも考えうるが、ボートの余裕がほとんど無いから余計な装備は載せられない。

そこでだ、お前らの部隊に戦力となる人員を追加することにした。

おい、入って来い」

上司の合図に、ミーティングルームのドアが開いた。

いっせいに俺達の視線が、ドアのほうへ向けられる。

「銃型淫魔兵器の、鉄だ」

視線の先には、テンガロンハットを被った栗色の髪の女が、不敵な笑みを浮かべて立っていた。

 

 

 

 

 

豪華な調度品が並ぶ部屋の中に、一組の男女の姿があった。

禿頭の老人が背もたれの付いた革張りの椅子に深く腰掛け、その傍らで青いドレスの女が小さな丸椅子に腰掛けている。

女は手にしたアルバムを広げて、笑みを浮かべながら老人に話しかけていた。

「ほら、覚えていますか、あなた?」

貼られている写真の一枚を指し示しながら、彼女は老人に問いかけた。

「二人で休暇をとってアメリカに旅行に行ったときのこと・・・グランドキャニオンを覗き込んで、あなたをヒヤヒヤさせたりもしましたよね・・・」

楽しげに思い出を語る女と異なり、老人は無表情のまま身じろぎもせず、ただじっとしていた。

「・・・楽しかったですよね・・・」

女の言葉に、老人はゆっくりと瞬きをした。

 

 

 

 

 

 

「あーあ、ったくメンドくせえなぁ・・・」

テンガロンハットの女、鉄とやらは、俺達とボートへ向かい始めるなりいきなりそう言った。

「どういうつもりだ・・・?」

同僚の竹内が、低い声で鉄に問いかけた。

「いんや?ただクソ簡単な任務も出来ないガキのお守りは面倒だなぁ、って思っただけだけど?」

「てめぇ・・・」

竹内の、ある種の殺意さえ篭った視線を向けられてもなお、鉄はヒヒヒと笑って見せた。

「ん?何か間違ったことでも言った?あたしがあんたらについていくよう言われたのは、あんたらだけじゃ任務が達成できそうにも無いっていう上層部の認識の表れじゃないの?」

重ねられていく鉄の言葉に、竹内の拳がぶるぶると震え出した。

「そのぐらいにしてくれ、鉄。士気に関わる」

見かねた松田隊長が口を挟んだ。

「竹内も今のうちは堪えてくれ、頼む」

「あぁ、分かってます・・・」

なだめる松田隊長の言葉に、竹内は握り締めた拳を緩め、ゆっくり深呼吸をした。

「おちちゅきまちたかー?竹内くーん?」

「ぐっ・・・!」

「鉄!」

「はいはい、ごめんなさい、っと・・・ヒヒヒ」

松田隊長の言葉に、鉄は笑って答えた。

「伍堂」

隣を歩いていた梅宮が、不意に小声で俺の名を呼んだ。

「何だ?」

「また面倒なのが配属されたね・・・」

「あぁ・・・」

前を歩くテンガロンハットの女の後姿を見ながら、俺は小声で応じた。

「しかし、わざわざ配属させたということは、任務はかなり過酷なものになるのだろうな」

「そうかなぁ・・・」

俺の推測に、梅宮は疑いの声を漏らした。

やがて俺達は甲板に出るとタラップを降りて、用意されたボートに乗り込んでいた。

ボートの表面には、直線と曲線、そして蛇をのた打ち回らせたような模様から成る術式が描かれていた。

『中和術式が結界を中和できるのは、およそ二秒間だ』

始動したエンジンの振動を感じながら、俺は上司の言葉を思い出していた。

『二秒間で結界の術式が変質し、中和術式は用を為さなくなる。だから、お前達にはゲートの再起動以外に帰る方法は無いわけだ』

ボートが動き出し、座席に俺の背中が押し付けられた。

『だが、信じているぞ。きっとお前らが帰ってくるとな』

「もうすぐ結界だ!全員何かに捕まって踏ん張れ!」

松田隊長の声が、俺の思考を中断した。

遥か前方にあったはずの赤い半球状の結界は、もはや眼前で赤い壁となってそそり立っていた。

そしてここまで距離が近づくと、結界が単なる赤い壁でなく、ねじれ絡まりあう曲線が空中に投影され、赤く発光していることが分かった。

直後、ボートの船首が結界に触れた。

青い光がボートの先端から迸り、ボート全体を包み込んでいく。

ボートを包むように投影された青い中和結界が、あらゆる物理・魔術攻撃を拒む結界に穴を開けた。

だが、穴は急速に縮まりつつある。

ボートは一気に穴を潜り抜けると、結界内部に侵入した。

振り返ると、俺の視線の先で結界の穴は音も無く閉じていった。

視線を前に戻すと、結界の描く球体の中央に『人形工房』本部が鎮座していた。

それは海の上に聳え立つ城といった外観をしていた。

無論施設は島の上に建設されているのだが、その島が非常に小さいせいで海面に直接建っているように見えるのだ。

松田隊長はボートを操ると、予定通り島に一つしかない船着場にボートを停泊させた。

ボートから島に上がると、俺は赤く輝く結界を背景にする城を見上げた。

赤い空を背負う城の姿は、まるで童話の世界のようだった。

「よし・・・陣形は打ち合わせどおり、いくぞ」

松田隊長の言葉に、俺達はそれぞれの銃を構えた。

俺の手に収まるAK74はロシア製のアサルトライフルで、精密さには欠けるが、頑丈さに秀でていた。

弾幕を張りながらの戦闘では、精密さよりも頑丈さが求められる。

精密射撃をしたければ、スナイパーライフルで狙撃すればいいだけの事だ。

松田隊長と梅宮を先頭に、俺と竹内を後に置き、四人でXの形に鉄を囲む陣形を取る。

酒田大尉の言葉によれば、鉄の能力は遠距離射撃のようなものらしい。

そのため、鉄が前後左右を見通せながら、彼女自身を守ることが出来るこの陣形こそが最適だと、松田隊長は判断したらしい。

俺たち五人は辺りを警戒しつつ、足早に船着場の広場を通り抜けた。施設内に続く作業員用で入り口にたどり着く。

閉ざされた鉄製の扉に、隊長は手を伸ばし軽く揺すった。

「やはりな、ロックされている・・・梅宮」

「あ、はい」

梅宮は腰のポーチから小型のコンピュータを取り出すと、扉のID認識装置とケーブルで接続した。

「・・・・・・」

コンピュータの液晶の放つ光に顔を照らしながら、彼は黙々とキーを叩き続ける。

そして。

「解除、出来ました」

扉から重々しい音が響くと同時に、梅宮は晴れやかな顔を上げた。

「ご苦労。行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、懐かしい写真が出てきましたね・・・」

古いアルバムに貼られていた写真を示しながら、青いドレスの女が老人に声をかけた。

「あなたと私が初めて会った頃ですよ・・・私はあまり変わっていないけど、あなたはほら、こんなに可愛らしい・・・」

男女が並ぶ集合写真の中から、若い女と少年の姿を指し示しながら女は続ける。

「あなたの私への第一印象は最悪でしたね、『やたらプライドの高い女だ』って・・・最後まで口に出さなかったのは、どうしてでしょうね?」

女の問いに、老人はゆっくりと瞬きをして応えた。

言葉は無いが、女はそれで満足だったようだ。

「ああ、これは・・・」

『アリシア様』

女の耳元で、かすかな雑音と共に無機質な声が流れ出した。

女は顔をしかめると、耳に軽く手を当てて応じた。

「何?緊急の用事以外は取り次がないように、と命じたはずですが?」

『緊急事態です。結界が突破され、ボート一隻が侵入しました』

耳元のレシーバーの向こうからの報告に、女の目が見開かれる。

『幸い中和方式による突破のため、結界は術式を変更して展開中です』

「侵入者の詳細は?」

『人数、装備共に『帝国』一個小隊程度。現在侵入に用いたボートで船着場から上陸し、施設内部に侵入しました』

「分かりました。侵入者への対応は一任します。動きがあれば、逐次報告し、危険物は回収するように」

『了解しました』

小さな音と共に女の耳元から、雑音ごと声が消えた。

女は小さく溜息をつくと、表情を明るいものに変え、手にしたアルバムを老人の前に開きなおして見せた。

「ああ、これはまた懐かしいですね・・・」

女の言葉を、老人はゆっくりと呼吸しながら聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

等間隔に天井に点る蛍光灯の光を頼りに、俺達は通路を進んでいた。

人気は無く、俺達の足音だけが反響して響いている。

「それにしても・・・何が起きたんでしょうね?」

左右を警戒しながら、梅宮がぼそりと呟いた。

「人はいないし、かと言って淫魔が闊歩しているわけでもない」

「ネットワークも非常モードのため、新たな接続は禁止されているし・・・」

「まあ、俺達の任務はゲートの復旧だ。敵が出なければ出ないに越したことはない」

俺達の言葉に、隊長が続けた。

「ん?」

不意に、梅宮が声を上げる。

「どうした?」

「いえ、あそこに・・・」

彼の指差した先、十字にクロスした通路の壁にもたれ掛かるようにして、やや小柄な女が倒れていた。

「怪我人・・・ではないな」

女の腹に開いた大きな穴からのぞく、無数のコード類を見ながら、隊長が呟く。

「ここの人形でしょうか?」

「知るか、寄り道していないでとっとと行くぞ」

「まあ待て、竹内。梅宮、ネットワークに侵入は出来なかったよな?」

「え?ああ、はい」

隊長の言葉に、梅宮は数度頷いた。

先ほど施設内に侵入したとき、梅宮は『人形工房』の回線に接続しようと試みていた。

だが、『緊急事態モード』だとか言って、新規の端末がネットワークに加われないようになっているらしい。

「ですが隊長、それと人形に何の関係が・・・」

「『人形工房』の人形には、最近無線ネットワークが搭載されるようになったらしい」

「ってことは、人形の機能が生きていれば、人形を通じてネットワークに接続できますね!」

松田隊長の言葉に、梅宮の表情が一変した。

「それじゃあ、ちょっと調べてきますね」

「あ!梅宮、待て!」

「大丈夫!すぐに施設を掌握する!」

梅宮は辺りを軽く一瞥すると、竹内の制止を振りきり、人形の下へ駆け寄っていった。

彼は人形の側にかがみこむと、その上半身を倒し首下を覆う髪の毛を軽く掻き揚げた。

そして、露出した首筋の端子の一つに、小型コンピューターから延びるケーブルを挿入した。

「全く・・・梅宮を中心にして、辺りに注意を払え」

「了解」「了解」「あいよ」

隊長の言葉に、俺と竹内、そして鉄が返答を返した。

 

 

 

 

 

「それにしても・・・仲がいいこった」

梅宮を護衛していると、不意に鉄が俺に向けて声を放ってきた。

ぎりぎり俺に聞こえる程度の大きさだったのか、隊長にも竹内も彼女の言葉に反応していない。

照明の影や、天井の通気孔の奥に注意を払いながら、俺は小さく応えた。

「何がだ」

「お前らのことだ。一人飛び出していったのに誰も叱らず、『あいつだから仕方ないか』みたいなツラして。お前らは仲良しクラブか?」

ヒヒヒ、という鉄の笑い声が収まるのを待ってから、俺はゆっくりと口を開いた。

「仲良しクラブか・・・否定は出来んな」

「・・・へぇ?」

「任務や訓練は無論のこと、チームワークを高めるため宿舎は四人で一つの部屋だ。それに最近は、休日の行動パターンまで互いに把握するようになってきたぐらいだ」

一拍の間を挟み、俺は付け加えた。

「もはや、仲間ではなく家族といってもいいかもしれない」

「・・・・・・そうか・・・家族か・・・」

「・・・どうした?」

不意に勢いを失った彼女に、俺はふと問いかけた。

「あ・・・いや、なんでもない。仲がいいのはいいことだ・・・うん」

「・・・・・・」

何かを言いよどむ彼女に言葉をかけるのが、なぜか俺には躊躇われた。

「・・・っして・・・んで・・・出来た!」

何事かを呟きながらキーボードを叩いていた梅宮が、歓声を上げた。

「隊長!接続できました!」

「出来たか。それで、状況は?」

隊長は警戒を解くと、梅宮の側に歩み寄り、屈んで彼のモニターを覗き込んだ。

「現在緊急事態ケース2が発令中で、自発的に外部との接続を遮断しているらしいです」

「緊急事態ケース2の詳細は分かるか?」

「さあ・・・おそらく『外敵の侵入』とか『実験試料体の暴走』とかじゃないかと思いますが・・・」

首をかしげながら、梅宮は自信なさげに答えた。

「おいおい、施設掌握する、って言ってた割にはショボイ答えだな」

「無理言うなよ、繋ぐのがやっとだったんだから・・・」

竹内の呆れたような言葉に、彼は唇を尖らせた。

「とりあえず今は接続しただけなので、今から中央制御室にアクセスして施設のコントロールを・・・」

 

かりっ

 

軽く、引っかくような音を俺の耳が捉えた。

「!!」

銃を構え、とっさに前と左に伸びる通路の向こう側に視線をめぐらす。

同時に隊長も立ち上がり、竹内と共に辺りを警戒した。

「・・・どこだ・・・?」

音の出元を探りながら、竹内が低く呟く。

音の大きさからすると、そう距離は無いはずだ。

反響により大きく聞こえた可能性もあるが、用心はするに越したことはない。

「鉄」

隊長が通路を見通しながら鉄に声をかけた。

「はいよ」

「近くに、何かいるか?」

「さあ?言っとくけどあたしの能力は銃撃で、索敵じゃないからね」

「クソッ・・・!」

役に立ちそうにない鉄に、竹内は舌打ちをした。

「梅宮!作業中断しろ!ここを移動する!」

「え、でももう少しで中央制御室までアクセスが・・・」

「諦めろ!」

未練がましい梅宮を、隊長は一喝した。

「じゃあ、この人形を持っていくぐらいは・・・」

「・・・一人で運べよ。鉄、梅宮と位置を変われ」

「あいよ」

梅宮が小柄な女性型の人形を抱え上げると、俺達は彼を囲むように陣形を組んだ。

通路、照明の影、天井と視線をめぐらせるが、動くものや怪しいものは見当たらない。

(どこだ・・・)

内心の微かな焦りが、じりじりと大きくなっていく。

そして―

 

がしゃ

「え?」

 

何かがぶつかり合う音と、梅宮の間の抜けた声が俺の背後から響いた。

とっさに背後を向くと、梅宮が人形をかかえたまま目を白黒させていた。

いや、違う。人形が梅宮に抱きついているのだ。

「わっ!?」

人形の両脚に力が篭り、梅宮のバランスを崩して声を上げさせた。

そして人形は床を踏みしめると、彼を抱えたまま走り出した。

「梅宮ッ!」

「くっ・・・!」

俺達の包囲を抜け、通路を駆けていく人形に向けて手にしたAK74の引き金を引こうとし、梅宮が抱きかかえられているため踏みとどまった。

銃の威力から考えれば確実に人形の体を貫通したり、兆弾したりして梅宮に当たるだろう。

隊長も竹内も同じ考えに至ったらしく、銃を撃つことは無かった。

俺は腰に下げた拳銃を抜くと、人形の脚に狙いを定め、引き金を引いた。

渇いた音が三度俺の鼓膜を叩き、大きな反動が手にのしかかる。

銃口から飛び出した弾丸が回転しながら直進し、人形の脚に三つとも当たった。

人形の体が大きく揺れ、銃創から循環液が噴出す。

だが、人形は倒れこむことなく足を踏み出し、更に進み続けた。

「くそっ・・・!」

「ヘタクソ」

とっさに次弾を放とうとした俺に、鉄の澄んだ声が掛かった。

視界の脇から、白く滑らかな肌をした右腕が人形に向けて突き出された。

親指は天井を、人差し指は人形の背を指し、残る指は握られている。

顔を向けると、鉄が『ピストル』を構えて笑っているのが目に入った。

「足止めしたきゃ」

言葉と共に彼女の人差し指の先に何かが集まり、形を成していく。

「こうやるんだよっ!」

指先で渦巻く何かが撃ち出され、一直線に人形の下へ飛んでいった。

そして人形の背が仰け反り、吹き飛んだ。

 

どん!どしゃっがしゃ・・・

「わ・・・!あぐっ!」

 

人形と梅宮の体が地面に叩きつけられる音と、梅宮の悲鳴が通路に響いた。

「梅宮!無事か!」

辺りを警戒しつつ、俺達は身を起こしつつあった梅宮の元へ急いだ。

「あ、隊長・・・」

打ち付けたところが痛むのか、彼は体を擦りながら立ち上がった。

「大丈夫か?」

「ええ、まぁ・・・」

どうやら彼を抱えていた人形がクッションになったらしく、特に外傷はないようだった。

「全く、完全に停止しているかと思ったのにな・・・」

「あぁ、気をつけていこうぜ」

「・・・・・・ヒヒヒ・・・」

隊長と竹内の言葉に、鉄の低い笑い声が混ざった。

全員の視線が、遅れて歩んでくる鉄の下に集まる。

「停止しているかと思った?気をつけていこう?なかなか面白いことを言うねえあんたら・・・ヒヒ」

「何だと!」

鉄の言葉に、竹内が声を荒げた。

無意識のうちに俺達は鉄から距離を僅かにとっており、彼女と対面になるよう立っていた。

「ん?意気揚々と敵陣に乗り込んで、早速一人捕まりかけたとか、もうね・・・」

「貴様・・・」

「竹内落ち着くんだ。それに鉄、そう挑発するな」

怒りに拳を震わせる竹内と、嘲りの表情を浮かべる鉄の間に、隊長が割って入った。

「挑発?あたしは事実を言ってるだけだけど?」

「それが挑発というんだ」

「ははぁ、つまり隊長殿はこの間抜けどもを庇うわけでありますか」

ふざけた調子で、鉄が言葉を連ねていく。

「この注意力散漫で臆病で、仲間が攫われつつあるのに銃を構えるだけの間抜けどもを」

重い沈黙が辺りを支配した。

言葉や視線を交わさずとも、怒りが溢れているのが肌で感じられた。

「ところで隊長殿、提案があるんですがね」

「・・・・・・何だ、言ってみろ・・・」

怒気を押し殺しながら、隊長は鉄を促した。

「あたしが少し離れたところで大暴れして、敵をひきつけようと思うんですが?」

「・・・・・・・・・」

「このままあたしがあんたらに付いて行って、あんたらの士気を下げまくるよりはましだと思うけど?」

鉄の言葉に、隊長は黙考した。

梅宮も竹内も、ちらちらと隊長に視線を向け、彼の答えを期待していた。

「・・・・・・分かった、その提案を受け入れよう」

竹内と梅宮の表情が、隊長の言葉に少し緩んだ。

「特別任務だ、部隊を離れて工房区画で陽動を行い、敵の戦力をひきつけろ」

「了解しました、隊長殿」

ヒヒヒ、と笑いながら鉄は命令を受け入れた。

「それと、伍堂」

「はい」

「お前も鉄と一緒に陽動を行え」

「は・・・?」

突然の命令に、俺は驚きを覚えた。

「隊長!何で・・・」

「鉄が命令どおり陽動を行うかどうかの監視だ」

竹内の問いに、隊長は淡々と答えた。

「私は部隊の隊長だから抜けられないし、梅宮も任務に必要だ。そこで残る竹内と伍堂を比較した結果・・・」

「俺の方が鉄と相性がよさそうだ、ということですか」

「あぁ、そうだ」

確かに、隊長の言うとおり竹内より俺の方が衝突が少なそうだ。

「・・・了解しました」

「では、何かあったときは無線で連絡を」

「はい」

俺は言葉を隊長と交わすと、隊の皆から離れ鉄のほうへ歩み出した。

「ヒヒヒ、宜しくな、間抜け4号」

「・・・宜しく」

差し出された掌を握りながら、俺は短く応じた。

それが不満だったのか、鉄は僅かに顔をしかめた。

「それじゃあ伍堂、健闘を祈る」

「気をつけてね、伍堂」

「後ろから撃ってやれ、伍堂」

「隊長も皆も、ご武運を」

「じゃあな、間抜け1号2号3号」

俺達は互いに言葉を交し合うと、それぞれ背を向けて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は辺りに注意を払いながら通路を進み、指定されたゲート施設にたどり着いた。

部屋の中央にリング型のゲートと操作端末が設置されており、部屋の隅には荷物用の巨大なエレベータがあった。

幸い彼らの行く手を阻む人形や、ここを警備する人形の姿は無かった。

「伍堂たち・・・頑張ってるみたいですね・・・」

遠くから微かに届く銃声と爆音に、梅宮がゲートと接続した小型コンピュータを操作しながらぼそりと呟いた。

「あぁ・・・早いところゲートを復旧し、作戦を終了させないとな・・・」

ゲート施設の入り口を固める、松田が小さく頷く。

ほぼ同時に、三人の靴の裏を小さな振動が襲う。

「・・・っと、派手にやってんな」

天井をちらりと仰ぎながら、竹内が漏らした。

戦闘位置を移動したのか、天井に設けられた換気口からより大きな銃声が届く。

「・・・近くなったな・・・」

「・・・はい」

「気を緩めるなよ、竹内・・・」

若干の緊張を滲ませながら、松田と竹内が言葉を交わす。

「梅宮、急げ」

「はい・・・今、ゲートのコントロールを取り戻して・・・あっ!?」

キーボードを打つ梅宮の手が止まり、不意に素っ頓狂な声が上がった。

「どうした?」

「その・・・発電設備がダウンしているせいで・・・ゲートが起動できないんです・・・」

竹内の鋭い問いに、梅宮が顔を上げた。

「ゲートが起動できない?さっきまで弄ってたのにか?」

「設定だとかいった機能の一部は補助電源だけでどうにかなるんですけど、肝心の転送機能を使うには電力が足りないんです・・・」

入り口を固める二人が、互いに顔を見合わせる。

「それで・・・どうすればいいんだ?」

「ここから三つ下のフロアにある発電設備に行って、電力の出力を上げることが出来れば・・・」

「・・・そうか・・・」

松田はしばし黙考すると、口を開いた。

「梅宮、電力の復旧と同時にゲートが起動するよう設定することは出来るか?」

「え・・・あぁはい、一応自動で接続できるようには・・・」

「じゃあその設定を頼む。それが終わったら、電力を復元しに行くぞ」

「隊長!?」

突然の隊長の言葉に、竹内は驚きの声を上げた。

「今、上では伍堂達が敵を引き付けている。その間に、我々が出来ることを全力でやる」

松田はそこまで言うと、手にした突撃銃を構えなおした。

「ついてきてくれるな?」

「・・・はい」「・・・了解」

僅かな間をおいて、二人が松田の求めに応じた。

「よし・・・梅宮、設定は?」

「あ、今・・・終わりました」

小型コンピュータを閉じ、目立たぬようゲートの影に隠しながら梅宮が立ち上がった。

「では、急ぐぞ」

梅宮を挟む陣形を取りながらゲート施設の出入り口から顔を覗かせた。

左右に伸びる通路には、何も見えない。

「よし・・・」

「ちょっと、隊長」

竹内が、足を踏み出そうとした松田を不意に呼び止めた。

「何だ?」

「いくらなんでも・・・銃声が近すぎやしませんか?」

言われてみればそうだ。

微かに聞こえていただけの銃声はもはや、壁一枚隔てたところから聞こえるほどの大きさになっている。

鉄はまだしも、『陽動する』と命じられた伍堂が敵を連れてくるような真似をするわけが無い。

(何かがおかしい・・・)

膨れ上がる違和感に、松田は口元を押さえ、違和感の源を悟った。

「隊長・・・?」

黙考する松田に、不安げに梅宮が声をかけた。

同時に、松田の意識が違和感の源を探り当てた。

「・・・っ!竹内、梅宮!戻れ!」

松田は大声を上げた。

突然の行動にポカンとする二人をゲート施設に押し込むと、手にした銃を左右に伸びる通路に向けながら続ける。

「この銃声は録音だ!」

先ほどから感じていた違和感の正体。それは数分間のペースを保って変化を繰り返す銃撃戦の音だった。

数分おきに繰り返される、全く同じ銃声。

その事実に残る二人もようやく気が付いた。

「恐らく、足音か何かを消すために流してるんだ!」

その声と同時に、左右に伸びる廊下の角から、人形が姿を現した。

事務員、作業員、全裸。

無傷、軽度の損傷、他のパーツを組み合わせたちぐはぐな姿。

様々な格好をした人形達が、廊下の角から現れ、ゲート施設へ向けて近づいてくる。

人形達の足元に狙いを定め、引き金を引きながら松田は叫んだ。

「竹内!お前はエレベータを!」

「了解!」

命令に従い、竹内はエレベータの前に駆け寄ると、扉に耳を当てた。

「隊長、エレベータ動いてません!」

「よし・・・エレベータを呼んで、梅宮は乗れ!竹内は私とここで、ゲートを守るぞ!」

「隊長!?」

梅宮が、うろたえたように松田を呼んだ。

「ここは竹内と私とで『引き付けて』おく!だからお前は発電施設へ行け!」

竹内がエレベータの前を離れると、扉の奥から低い音が響いてくる。

筐体がシャフト内部を移動しているのだ。

「で、でも・・・」

「ここを三人で守って、誰が発電設備を復元するんだ!?」

松田の隣に就き、廊下の向こうからやってくる人形達を銃撃しながら、竹内が後に続けた。

「悩んでいる暇あったら、とっとと発電設備行って隊長と俺を楽させろ!」

「・・・!」

隊長と竹内の言葉に、梅宮はゆっくり大きく頷く。

「了解しました!」

手にした突撃銃を構えなおすと、梅宮はエレベータの扉の前に駆け寄った。

階数表示を見れば、筐体はすぐそこまで来ている。

背後の二人の銃撃は、緊迫を増しつつあった。

だが、梅宮は振り返らなかった。

彼の背後、そしてゲートを守っているのは、彼の仲間だったからだ。

高い電子音と共に、エレベータの扉が左右に開いた。

瞬間、扉の奥から突き出された鋏が、梅宮の身体を掴んだ。

「うぁああああああっ!?」

何が起こったのか理解できず、梅宮は手にした銃の引き金を引こうとした。

だが、弾丸が発射される前に、突撃銃は強い衝撃と共に彼の手の中から弾き飛ばされていた。

「梅宮っ!?」

梅宮の叫びに、二人が振り返る。

するとそこには、宙に持ち上げられた梅宮と二つの影があった。

一つは象の如く太い二本の足とカニのような鋏を備えた、重機を思わせる重厚なデザインの人形だった。

かろうじて人の姿を模したと思える上半身の幅広な肩の間に、黒髪の少女の頭部と胸部が飾りのように取り付けられている。

もう一つは、先の重機人形に比べれば、遥かに人型に近い格好をした金髪の少女型の人形だった。

ただ、太く短い腿と長く細い脛、そして脛の半ばほどにある逆関節になった第二の膝の存在が、その人形を直立したネコ科の大型獣のように見せていた。

そして両者とも、その胴体を光沢のある金属製の装甲で覆っていた。

SH-06侵入者、一体を捕獲」

GU-01、残る二体について無力化と捕獲を遂行する」

二体の人形がそう言いながら、貨物用エレベータの筐体から足を踏み出した。

同時に人形の瞳孔が縦に窄まり、金髪をなびかせながら跳躍した。

「竹内!」

「了解!」

二人が短く言葉を交わすと、竹内が身を反転させながら引き金を引いた。

実を返す一瞬のうちにフルオートに設定された突撃銃が、銃弾をばら撒く。

「・・・・・・」

しかし金髪の人形、GU-01は身を屈めると、竹内の放った銃弾の下を潜り抜け、彼我の距離を詰めた。

「クソッ・・・!」

舌を打ちながら、竹内が目前のGU-01に向けて引き金を引こうとした。

だが次の瞬間、GU-01の足が跳ね上がり、銃を蹴り飛ばされた。

手元から衝撃と共に銃が消え、竹内の感覚が引き伸ばされていく。

GU-01の腕や太ももに刻まれた表皮の継ぎ目さえもが識別できるほどゆっくりとした時間の流れの中、竹内は人形のしなやかな脚が自身の意識を刈り取るのを感じた。

「竹内・・・!」

脱力し、崩れ落ちていく部下の名を呼びながら、松田は腰に手を伸ばした。

ベルトにぶら下がる手榴弾を二つ掴み取ると、ピンを引き抜き左右に延びる通路の端へ、一つずつ投げ込んだ。

(これで何秒か稼げる・・・!)

通路から迫り来る人形達への僅かな足止めをかけると、彼はGU-01に向き直った。

金髪の人形は既に床を蹴り、松田との距離を詰めつつあった。

彼は銃をフルオートに切り替えると、竹内と同じく銃弾をばら撒いた。

今度は滞空中のため、軌道を変えることは出来ないだろう。

そう読んでの銃撃だった。

だが、GU-01の両腕が瞬時に動き、迫り来る銃弾を逸らし、弾き、防いだ。

 

ガチンッ

 

弾倉から銃弾が無くなり、銃の機関部が鈍い音を立てた。

弾切れだ。

しかし、松田は慌てることなく銃身を掴むと、銃をバットか何かのように振りかぶった。

「・・・・・・っ!!」

短い呼気と共に、迫り来るGU-01の顔面に銃床を叩きつけた。

鈍い衝撃が、松田の両腕を襲う。

同時に彼の背後、左右に延びる通路のそれぞれの奥から、手榴弾の炸裂する音が届いた。

床の上をGU-01が数度バウンドしながら転がっていく。

その様を目の端で捕らえながら、松田は突撃銃を捨て、腰に下げていた軍用拳銃を引き抜いた。

「梅宮!今たすけ・・・」

言葉の途中で、重い衝撃が彼の鳩尾を貫く。

視線を下げると、彼の胴に継ぎ目の入った表皮に包まれた腕が食い込んでいるのが目に入った。

彼の両の目が腕をたどり、肘から肩、胴体、そして金髪に包まれた頭部に至った。

そして縦に裂けた瞳孔と、彼の眼が合った。

「そ・・・」

肺から搾り出された空気が喉を鳴らし、松田の身体が仰向けに倒れていく。

ゆっくりと反転していく視界の中、彼は深く抉れた床に気がついた。

それが、GU-01が転がりながらも床を蹴った痕だと気がつくと同時に、彼の意識は深みに沈み込んで行った。

「隊長・・・ぐぁ・・・!」

仰向けに倒れた松田に向けて、黒髪の重機人形SH-06に拘束されたまま梅宮は叫んだ。

だが、言葉半ばにしてSH-06の腕に力が篭り、彼の身体を締め上げた。

GU-01侵入者二体を無力化、確認」

GU-01の言葉がどこか遠くから聞こえる。

彼はぎしぎし軋む骨格の音を聞きながら、懸命に右手を腰に伸ばし、下がっていたものを掴んだ。

そして肘を曲げ、それをSH-06に向ける。

SH-06、侵入者の反抗を確認・・・」

黒髪の人形は、自身に向けられた物体をその目で捉え、解析した。

結果が視界に表示される。

男が手にしていたのは、ただの小型無線機だった。

「危険度低」

音声出力を行うと、SH-06は腕への指令を中止した。

無線機程度なら何も出来ない。そう踏んでの判断だった。

「ご・・・どう・・・!」

無線機を握り締めたまま、梅宮は途切れ途切れに声を漏らした。

「はつ・・・でんしせ・・・つ・・・でんき、を・・・」

GU-01、侵入者との交信を確認。直ちに対処する」

金髪の人形が声を発すると、床を蹴って跳躍した。

そして、右手を繰り出し、梅宮が握り締める無線機を打ち据えた。

「あっ・・・!」

衝撃に無線機が彼の手から吹っ飛び、床の上に転がり落ちた。

SH-06はその巨大な足を持ち上げると、雑音混ざりに音声を発する無線機を踏みつけた。

数百キロを超える荷重に、無線機は粉砕された。

「この・・・あぐっ!?」

SH-06、侵入者の無力化を再確認」

鋏に力を込め、梅宮の身体を締め上げる重機人形。

その凄まじい力がもたらす苦痛に、彼は意識を手放した。

「ゲート施設における侵入者の無力化を完了」

「副団長の指示に基づき、侵入者の処遇を決定する」

失神した三人の上に、二体の人形の声が降り注いだ。

 

 

 

 

 1.松田の処遇を見る

 2.竹内の処遇を見る

 3.梅宮の処遇を見る




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