Another-Battle of The Lust Demon's Castle






 ※          ※          ※





 エミリアは、ノイエンドルフ城の廊下を歩いていた。

 清楚な雰囲気を醸し出す、涼やかで美しいメイド――もしここに何も知らない人間がいたのなら、そう思うだろう。

 けれど彼女は淫魔――更に言えば、この城の領主マルガレーテに仕える直属のメイドである。その美しさに惑わされた人間の男は、間もなく彼女に完全に骨抜きにされ、搾り取られる運命をたどる。

 今もまたこの城に潜入してきた侵入者を排除する為に彼のいるであろう場所まで向かう矢先だった。

「――エミリア様」

 T字に交わる通路の横から、別のメイドが合流してきた。

 洗練されたエミリアとは対照的に、溌剌とした雰囲気と豊満な胸がはちきれそうな雰囲気のボーイッシュな女の子である。ただいつも能天気でムダに明るい雰囲気はなりを潜め、怒りを秘めたような真剣な表情を浮かべていた。

「……侵入者に、会いに行くんですか?」

 エミリアは無言で肯定した。

地位や実力、あるいはエミリア特有の雰囲気から近寄り難いと評される彼女に声を掛けられる者はほとんどいないが――

目の前にいる少女だけは、会う度に元気良く挨拶してたり、声を掛けたりしてくる。それはメイドとして好ましくない場合も多く、昔は「躾」を何度かほどこしたこともあったが――

「お願いです。その男の処罰、ボクに任せてください」

 そんな、いつも笑顔とお気楽さがトレードマークの娘が深々と頭を下げる。

「――お願いします」

 エミリアはしばし無言だったが――

「マイの仕返し、ですか?」

「……」

「相手は貴方が魅了した男とは違い、アルメール、ひぃなを射殺、そしてマイにも重傷を負わせました。実力的に言えばマイと同じ中級淫魔である貴方が行っても返り討ちにあう可能性が高い。それを私が許すと思いますか?」

「……」

 エミリアはとても合理的な考え方の持ち主だ。

もちろん必要とあらば犠牲を出すことに躊躇いはしないだろう。だが普通なら主人に命令されない限り出来るだけ被害が出るような判断はしない。

ごくまれに感情を出すことはあっても、感情に流されたり、熱意に後押しされることはまずない――

エミリアを知る者は大抵にしてそういった印象を抱くだろう。

 だが――

「……前に教えましたね。まず自分の力量を見極めなければ、一人前のメイドにはなれない、と……」

 エミリアはそう言うと、メイを見つめた。

「ひとりで出来ると冷静に判断するのであれば、止める理由はありません」

「えっ。そ、それじゃあ……」

「マルガレーテ様に害を為す者を駆除する……それが我々メイドにとって、最も大切なこと……それを誰がやったかは問題にはなりません」

「あっ、ありがとうございますっ!!」

 そう言って、メイが飛び出そうとした直前――

「――マイは、無事です」

 エミリアは涼やかな声で、淡々と言った。

「治療もうまくいきました。間もなく怪我も治るでしょう」

 結果を言うと、メイの顔がぱぁ〜っと明るくなる。

「ほ、ホントですか!? ……よ、良かった……」

 メイが安堵の笑顔を浮かべて、はじけるばかりに元気良く言う。

するとエミリアは、表情を変えることなく、淡々と言った。

「それです」

「えっ?」

「淫魔として、貴方の最大の武器。それは、笑顔です。無垢であり、純粋であり、警戒心を完全に解かせてしまう……私は無論、他の淫魔たちにも出来るものは少ないでしょう」

 エミリアは、背を向けて言った。

「……排除の為に立ち向かい、反対に排除されては元も子もありません。勝利の為に、出来ることは初めからしておくことです」

 エミリアは、またもと来た道へ歩み始めていった。

「――メイドとして最も大切なことはご主人様の為にお世話を続けること……死をもって、お世話を放棄するなど、メイドとして最も恥とすべき行為です。……私は、貴方をそんな恥知らずに教育したつもりはありません」

 相変わらず感情が篭っていないような声で彼女は言う。

「――それだけは肝に銘じておきなさい」

 涼やかにそう言って立ち去っていくエミリアの背中に――

メイは彼女に深々と頭を下げていた。



 淫魔でありながらどこかその人間くさい少女――メイ。

 五〇〇年以上生きているエミリアにとって、十数年しか生きていない彼女は、赤子同然の存在でしかないはずだった。

 けれど――

そんな赤子に、エミリアも影響されてしまっているかもしれない。



 ※          ※          ※



――メイちゃん、寒くないですか?

まだボクたちがノイエンドルフ城に来る前、自分たちが淫魔だってことも分かんないまんま、不安で怖くてどうしようもなかった頃――

いつもボクたちは二人だった。

雨の日も、風の日も。

どんな時も二人で乗り越えてきた。

 ――あ、あははっ。ちょっとだけね、ちょっと寒いくらいだよ。

 ――じゃあ、これ貸してあげます。そこで拾ったですよ。

 マイちゃんはにっこり笑って古い布切れを差し出した。でも、マイちゃんだって、ボクに見えないところで体を震わせてるはずだ。

 ――えっ。あ。マイちゃんは大丈夫ですよ……くしゅんっ!

 ――あははっ。ダメだよ、無理しちゃあ。こーゆー時はね。

 ボクはマイちゃんともっと体を寄せ合って、一緒に毛布に包まった。

 ――こうすれば、二人とも温かいよ。

 ――そ、そうですね。

 マイちゃんはなぜか、ボクのおっぱいばっかり見ていた。大きくて何するにも邪魔だからいつもなくなって欲しいと思ってるものなのに、マイちゃんは自分のつるぺたの胸を見てからボクを見て――

 ――これで勝ったと思わないことです。

 ――ほえ? 何が?

 ――ぶううっ……本当に気付いていないところが腹立つですっ!

 マイちゃんは可愛らしく頬を膨らませて言った。

ボクにはとっても愛おしく感じられた……

 

 ――マイちゃん、ありがと。

 ――えっ!? な、何言ってるですか。も、もう……



 自分が淫魔だって聞かされても、このお城で生きていくよう勧められた時も――ボクは何が起こっても大丈夫だって思えた。

 だって――ボクには大切な双子の姉妹がいるんだから。



  ※          ※          ※



「……」

 俺はアサルトライフルを構え、周囲に注意を払いながら敵の居城を突き進んでいた。

 潜入任務はこれまで何度も経験したことがあるが、化け物に占拠された建物ばかり。

 今回のものとは、全く任務の性質が違う。

 知能のある化け物の住処に乗り込むというのは、流石に初めての経験なのだ。

 とは言え、会う敵会う敵みな雑魚ばかり。

 サキュバスというのは油断の塊なのか、こちらを舐め切っているのか――

 

 ――視線の先に、人影が映った。



「――やっほ〜っ♪」

 目の前に現れたのは見飽きたメイド服の、中学生くらいの少女だった。

 ボーイッシュなショートカットをした、見た目は中学生くらいだろうか。だが胸元の豊満な胸だけが自己主張している。

 だが今まであったサキュバスと大した力の差は感じられない。

 俺はアサルトライフルを構えて言った。

「……また雑魚か。いい加減にして欲しいもんだな」

「そっちこそいい加減にしなよっ!」

 目の前の少女は怒った様に言った。

「突然やってきたかと思ったら、出会ったみんな殺して回ってっ! ホントにキミ、人間なのっ!?」

「戦場では生きるか死ぬかだ。殺し合いにいちいち遠慮なんかしていられない。」

 淫魔ごときが、人間の何を知っているって言うんだ。人間がいつまでも、淫魔のエサでしかないと思っているのなら大きな勘違いと言うものだ。

「淫魔と人間は敵同士――出会ったら、戦いになるのは当然だろう」

「だからって、マイちゃんを撃ったのっ!?」

「マイ……?」

 そこで俺はふと思い立った。

 先ほど廊下で遭遇した淫魔の一体――とどめをさす前にテレポートか何かで逃げられてしまったが、そう言えば顔や背丈は瓜二つであったような気がする。

「そうか……お前ら、双子か」

「そうだよっ! ボクはメイっ! あの娘の双子の姉妹だよっ! キミが撃ったせいで、マイちゃん大怪我しちゃったんだからっ!」

「大怪我……とどめはさせなかったわけか」

 俺は初めから殺すつもりで撃ったのだ。

 俺がそう呟いた時、メイは一瞬あっけに取られた顔をしたが、すぐに真剣な――真顔をしてこちらを睨みつける。

「やっぱり、キミは――ボクの知ってる人間さんじゃない……危険な人だ」

「――いつまでも人間が淫魔の獲物だと思うな」

 

 ――ダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!!!!!!!!



 俺は引き金を引き、鉛玉をメイにめがけて撃ち放った。

 アサルトライフルの威力は、中級淫魔の全身を撃ち抜き、ただの肉片に変える……はずだった。だが――

「――消えた?」

 撃つのをやめて前を見ると、先ほどまでいたメイの姿はなく、ただ穴の開いた壁や床だけが存在していた。



「えへへ〜? どこを狙ってるのかな〜?」

 ――ふよんっ♥

 くっ…ああ……

 甘い囁きが、俺の耳に吹き付けられる。

俺の右肩に柔らかな胸が押し付けられ、力が抜けそうになりそうになる……っ!! だが俺はどうにか堪える……!

「くすくすっ……ボクはね。マイちゃんみたいに魔法は使えないし、特別な力はないんだぁ……でもぉ……カラダには自信があるんだから♥ そんな“てっぽう”なんかよりずーっと早く移動できるんだよ?」

 メイは、色っぽくメイド服のスカートの裾を掴み上げた。

「ボクの足、どうかな〜? ふふっ。ボク、体を動かすのが好きでさ、人間クン達の町に行ってストリートバスケとかしてるんだぁ♥」

 ――ふにゅっ♥ ふにゅふにゅっ♥

「ぁ……ああ……」

 押し付けられた胸があまりにもふわふわで……

 ああ…...頭が…ぼんやり……

 気持ち良い……

「ふふっ♥ その時も人間クンのオトコのコって油断しているとバスケットボールじゃなくてボクの体ばっかり見ちゃうんだよね♥

足とかぁ……お胸のボールとか♥ ふふっ♥ 男の子ってついついえっちなこと想像しちゃうんだろうね〜♥ そんなことしてる間にぃ、ボクの“ぼーる・こんとろーる”にこてんぱんにやられちゃうの♥

昼の試合もぉ〜、夜も、ね♥」

 ふーっと優しく耳に息を吹きかけられ、ぞくぞくしてしまう……

「キミ……淫魔が嫌いなんでしょ? 淫魔が嫌いで、だからみぃ〜んな殺しちゃいたいと思ってるんだ? ふ〜ん……だったらぁ、その憎ぅ〜い相手に射精させられたらどうなるかな〜?」

「や、やめ……ぁあ……っ!!」

メイのほっそりとした掌が、俺のペニスをズボン越しにさわさわさわと優しく撫でてくる……! 優しく挑発的な快楽に、俺のペニスがどんどんと大きくなっていく……!

「……絶対に逃がしてあげない……キミはボクの一番 大切なものを傷つけたんだ」

 底冷えするような怒りを秘めながら、冷たい声でメイは言う。

 だが次の瞬間には、先ほどまでと同じニコヤカな笑顔を浮かべていた。

「だ・か・ら、キミには最高の方法で搾り取ってあげるっ♪ ボクの最高のテクニックで、完全な虜にしてあげてぇ……♥ キミ自身がボクのカラダに溺れていくの♥ キミが憎くて仕方がない淫魔に夢中になって、何も考えられなくなって死んじゃうんだよ……くすくすっ♥ 楽しみでしょ?」

「ふっ、ふざけるな……っ!」

 俺は咄嗟にメイから離れ、真正面から銃口を向けた。

 ほとんど零距離で、引き金を引けば目の前にいる淫魔メイドの豊満な胸に風穴が開き、そのまま即死するだろう……

 だが――

「ふふっ♥ そんな顔しないで……ね?」

 メイは恐れるどころか、挑発的に銃口に近づいてきたかと思うと、メイド服の胸元のボタンをそっと外してきた……

 豊満な胸と黒色のブラジャーがあまりに扇情的で、股間が苦しくて仕方がない……!! 更に――

 ――ふにゅふにゅっ♥

 メイの大きくて豊満なおっぱいは、アサルトライフルの銃口をまるで俺のペニスに見立てるように、柔らかく包み込んでいた……

 淫魔メイドのふわふわとした巨乳は、挑発的に、銃口をやわやわと揉み解していく……!!

「くすくす♥ 獲物クンのいけず〜っ♥ もう〜、こんなの小さくって、冷たくて、物足りなぁ〜い……」

 メイは目を細め妖艶な笑みを浮かべて言った。

「ボクが欲しいのはぁ……大きくてぇ、熱くてぇ……我慢汁とろとろのおちんぽなのぉ♥ キミのズボンの下にある“てっぽう”さんをぉ……ボクのおっぱいでムニムニ挟んで、いっぱいいっぱい、どぴゅどぴゅして欲しいのぉ……♥ “たまたま”がぁ……カラッポになるまでぇ♥」

 ふぅ〜っと甘い吐息が吹きかけられる……

 メイのふよふよおっぱいが銃口を優しく柔らかく陵辱していく……!

甘ったるい舌足らずの声が、俺の理性を浸食していった……!!

「ぁあぁああ……っ!」

 俺の頭が桃色の靄に包まれる……

 目の前にいる淫魔に、その豊満な胸の……おっぱいの谷間に、勃起した俺のペニスを突っ込んで、射精させられたい……っ!! もう、何もかも忘れてメイに全てを吸い尽くされたい……!!

 俺は――



抵抗できない

抵抗する






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