ユダの揺籠


 

 腰から力が抜けそうになり――そして、瞬時に持ち直した。

 駄目だ、駄目だ、駄目だ。

 こんなところで死ぬのは駄目だ。

 青年は、唇を噛んで耐え続けた。

 

 

 「あら、素敵。見直しましたわ」

 マルガレーテは、懐中時計を見る。

 「十五分の時が経ちました。この四倍の時間を耐え抜けば、約束通り解放して差し上げましてよ」

 「よ、四倍……?」

 青年は、苦悶の声を上げた。

 まだ、規定時間の半分の半分。

 思わず、力が抜けそうになる。

 心が折れてしまいそうになる。

 このまま腰を突き入れて、人外の快感を――

 

 「いやだァッ! 死んでたまるかァッ!!」

 青年は、自らを鼓舞するように声を張り上げた。

 彼のペニスを弄ぶ『淫魔の肉』、そんなものに負けない強い意志を――

 

 れろ…… ちろちろ…… ぬろぬろぬろ……

 柔らかな舌が這うように、青年の尿道口は責め嫐られる。

 つ、強い意志を――

 

 れるるるるる…… ちろちろ……

 

 「あ、はぅぅぅぅ!!」

 余りの快感に、彼の口からヨダレが垂れた。

 「も、もう……」

 そして彼が達しそうになる直前、その甘美な刺激は離れていく。

 青年は、徹底的に焦らし抜かれていた。

 我慢汁だけが、ただダラダラと垂れる。

 彼の脳を支配しているのは、狂いそうなほどの焦燥感。

 

 「いやだ…… こんなの……」

 青年は唇を震わせた。

 射精したい。この未終着な快楽地獄から解放されたい。

 でも――

 

 

 

 「ふふふ、これで20分ですわね。腰から力を抜くだけで、たちまち天国に逝けましてよ」

  マルガレーテは可笑しそうに言った。

 「い、いかせて……こんなの、もう……」

 「では、『淫魔の肉』におちんちん可愛がってもらいなさい。

  いっぱい咥え込んでもらって、にゅるにゅると揉み込まれて、じゅっぽじゅっぽと締め付けられて――

  精液、たっぷり搾り取ってもらえますよ。腰から力を抜くだけでね……ふふ」

 「あ、あぁ……」

 ねろねろ…… ちろちろ…… ちゅぷ……

 『淫魔の肉』は、ペニスの先端に再び甘い刺激を送り始めた。

 同時に、マルガレーテは青年の耳元で甘く囁く。

 「男の急所を優しく包み込まれて何度も何度も果て、搾り出された精液は全て吸収されてしまう……

  出しても出しても搾り尽くされる、甘美な連続絶頂。悦びのあまり失禁してしまう男性もいるわ。

  おちんちんから出した液は、ぜんぶ吸い尽くされてしまうの。

  オスとして生まれてきたことを感謝するほどの悦楽を味わいたくはないのかしら?」

 「う、うぁぁぁぁぁぁ……!」

 青年は快楽に顔を緩ませ、身体を震えさせた。

 マルガレーテの囁く快楽を体験してみたい。

 ペニスを甘く包まれ、溶かされるように精を搾られたい。

 腰から力を抜けば、『淫魔の肉』にペニスが沈んでしまうのだ――

 

 『淫魔の肉』に――

 『淫魔の肉』に突き入れれば――

 

 腰を突き入れてしまう

 必死で耐える

 

 

 


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