ユダの揺籠


 

 「ぐっ……!」

 一瞬の誘惑を振り払い、青年は腰を引いて耐える。

 その先端に搾精肉が触れ、尿道に優しく触れた。

 まるで、舌先でつつかれているかのような刺激――

 

 「安心なさって下さいね。『淫魔の肉』は、おちんちんの先をくすぐる程度しかしません。

  そして、その状態で射精させてしまう事も絶対にありませんから――」

 「え……? あ、ああああぁぁぁぁ!!」

 『淫魔の肉』が尿道口で甘くうねり、青年の背に大きな震えが訪れた。

 駄目だ、もう出る――

 

 「え……?」

 スッ……と、『淫魔の肉』の刺激が収まった。

 青年の我慢汁が垂れ、搾精肉を濡らす。

 「分かりましたか? 貴方が自らの意思でおちんちんを『淫魔の肉』に浸さない限り、絶対に射精はできません」

 マルガレーテはそう断言した。

 「これで、遊戯のルールは全て終わりですわね。理解なされたかしら?」

 「く、あぁ……」

 射精を強引に遮られるという、何ともいえない焦燥感。

 しかし『淫魔の肉』は、ふたたび密着している尿道口を責め立ててきた。

 やわやわとくすぐり、先端にキスをするように吸着してくる。

 「あ、ああ…… やめて……」

 快感に腰が沈み込みそうになったが、何とか踏ん張って免れた。

 そんなペニスを内部に誘い込むべく、『淫魔の肉』は尿道口を甘くくすぐってくる。

 さわさわ…… ぬる…… ちろちろ…… 

 ぬめった感触が亀頭の先端で渦を巻き、青年は快感に表情を歪ませた。

 彼のペニスが、さらなる刺激を求めてピクピクと律動する。

 頭の中が、真っ白に――

 

 「うぁ……、もう……!!」

 そう叫んだ瞬間、再び彼を責め嫐っていた刺激が止んだ。

 青年の押し上がった射精感は、不完全燃焼のままに冷まされる。

 先端からは先走り液が滲み、糸を引いて垂れていた。

 「こ、こんなの……!」

 青年は、目を潤ませてマルガレーテに視線をやる。

 もう、こんな拷問から解放してほしい。

 これ以上焦らされたら、頭がおかしくなってしまう。

 

 拷問の愉悦を存分に楽しみながら、マルガレーテは嗜虐的に口元を歪ませた。

 「射精したいんですか? ふふっ、簡単な話ですよね。

  そのまま腰の力を抜いて、おちんちんを『淫魔の肉』に浸してしまえばいいのですから――」

 「そ、そんな……」

 「『淫魔の肉』も、それを今か今かと待っていますよ。

  貴方が腰を突き入れるだけで、嬉々としておちんちんを咥え込んで、精液をたっぷり搾り取ってくれるでしょうね」

 「あ、あぁ……」

 青年は絶望の呻きを漏らした。

 彼女の言葉に嘘はない。ただ、その行き着く先が『死』なだけ――

 

 

 「さて、十分の時が経ちましたね」

 懐中時計に視線をやり、マルガレーテは時間を宣告する。

 ――まだ、たった十分……!?

 青年は、余りの長い残り時間に身を震わせる。

 「う、ああぁぁぁぁ!! また!!」

 ……ちろ。ちろちろちろ……

 『淫魔の肉』がぐねぐねと蠢きながら、再び尿道口をくすぐってきた。

 もはや彼のペニスは、先走り汁でドロドロである。

 「く、くぁぁぁぁぁッ!!」

 力を抜いちゃダメだ。

 そうしないと、この搾精肉槽の中に……

 腰に、力を……!!

 

 「ふふふ……頑張りますわね。少しでも力を抜いたら、天国へ連れて行ってくれますのに。

  貴方のおちんちんにぐにゅぐにゅと絡み付いてきて、何度も何度も絶頂へといざなって貰えますよ」

 「だ、だめだ……!」

 何が駄目なのか、もはや自分でも分からない。

 死ぬのを恐れての拒絶なのか、これ以上の我慢を不可能だと悟ったのか――

 

 誘惑に屈し、腰の力を抜く

 それでも耐える

 

 

 


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