「でも、私の大好物はもう一つあって――」

　女性は、目を細めて口元を歪めた。

　その笑みが、青年には何故かとても淫靡なものに見える。

　「――それは人間の、せ・い・え・き」

　「せ……精液？」

　「そう。獲物さんのおちんちんの先から出る、白くて美味しい液体♪」

　その瞬間、ツルが青年の服を強引に引き破った。

　衣服はたちまち布片となり、地面にヒラヒラと落ちる。

　会ったばかりの女性に全裸を見られるなんて――いや、こいつは化け物なんだ、恥ずかしがってる場合じゃない。

　それ以前に、今から食べられるのに恥ずかしがっても――いや、何とかして逃げたい、死にたくない！

　そんな様々な思いが、混乱する青年の脳内を駆け巡る。

　「やっぱりおちんちん、元気がないですね……」

　青年の股間を覗き込み、女性はため息をついた。

　わざわざ服を脱がして、一体何を――

　好物は、精液……？　まさか……！

　「ふふふ……　見てください、これ」

　彼女の下半身から、ツタがしゅるしゅると伸びる。

　そのツタの先端には、20〜30cm程度の大きさである壷状の葉が垂れ下がっていた。

　青年の眼前で、誇示するように示される奇怪な葉。

　その壷内部はねっとりとした粘液で満たされ、内壁全体がヒクヒクと蠢いている。

　「ウ、ウツボカズラ……？」

　彼は、震えた声で言った。

　ここにハエなどを誘い込み、消化してしまうはず――

　「ふふふ……これ、食虫植物なら捕虫嚢って言うんですよ。

　　ウツボカズラはこの中に獲物の虫を誘い込んで、閉じ込めた後にじっくり消化しちゃうんですが――」

　その壷状の葉はスススと位置を下げ、青年の腰の高さで止まった。

　「――私のは、捕精嚢。これで、今から獲物さんのおちんちんをぐにゅっと包んじゃいます。

　　人間の男の方はみんな、女の子みたいに悶えながら、精液をこの中にドクドク出しちゃうんですよ」

　この奇怪な壷状の植物の中に、今から自分のペニスを挿入させられる……！？

　彼女の驚くべき言葉に、青年は身を震わせて戦慄した。

　この中にペニスを咥え込まれ、そして強制的に射精させられるという――

　彼の内心の動揺と恐怖と、そして期待を見透かしたかのように、ウツボカズラ娘は柔らかな笑みを見せた。

　「これから貴方は、精液をじゅぽじゅぽと搾り取られちゃうんですよ。

　　『もうやめてー』って泣き叫んでも、い〜っぱい搾り取ってあげます。

　　安心してください。完全に搾り終えるまでは、決して消化したりはしませんから……

　　最後の一滴まで搾られた後は、全身をじゅるじゅる消化されて、私の養分になっちゃうんですけどね」

　「や、やめろ……！　い、命だけは……！」

　青年は歯をガチガチと鳴らしながら、必死で懇願する。

　「た、助けて……！　どうか、命だけは……！」

　彼の懇願を受けたウツボカズラ娘は、春の日差しのような笑顔を見せた。

　「あはは。そんなわがままは聞いてあげません。貴方は、ただ精液を搾り取られるだけの存在に成り下がるんですよ。

　　絶頂して、絶頂して、絶頂して、絶頂して、絶頂して――

　　どれだけイッても、どれだけ騒いでも、もう誰にも気付いてもらえません」

　綺麗な顔に温かい笑みを浮かべ、ウツボカズラ娘は歌うように言った。

　「この森で捕まったまま、私の搾精器官で無機質にドクンドクンと搾られ続けるんです。

　　だいたい、三日ぐらいかなぁ。もう何も出なくなったら、ゆっくりどろどろに溶かして食べてあげますからね。

　　おっきなウツボカズラの中で快楽を味わってもらいながら、全身が消化液に浸されて緩慢に溶けていくんです。

　　緩慢に、緩慢に、緩慢に、緩慢に、緩慢に――どうです、素敵でしょう？」

　ふふふ、と笑う女性。

　青年はただ、ガチガチと歯を鳴らして恐怖におののいている。

　それなのに、これから与えられるであろう快感を期待してしまっている――彼は、その矛盾した感覚を持て余していた。

　「では、覚悟はいいですか？　さっそくおちんちん搾っちゃいますよ♪」

　「や、や、止め……！」

　青年の懇願も虚しく、その魔の袋はペニスに近付いてくる。

　頭をもたげ徐々に勃起していく肉棒が、彼の内心での期待を証明していた。

　彼女がそこまで言う捕精嚢、どんなに気持ちいいのだろうか――

　入れてみたい……でも、逃げないと食べられる……でも、入れてみたい……！

　「あ、あ、あぁ……」

　完全に勃起したペニスに、じわじわと迫ってくる捕精嚢。

　その内部を満たす、ねっとりとした液体。細かなヒダヒダ。ぐにぐに蠢く内壁。柔らかそうな粘膜。

　その捕精嚢を形成する全てが、男性器を絶頂に導くことのみに洗練されていた。

　この中に……、僕のペニスが……

　「や、止めろぉぉぉ――ッ！！」

　青年は恐怖と期待で震えながら、絶叫する。

　「いっぱい声を上げていいですよ。どうせ助けは来ませんから、ふふ……」

　「あ、うぁぁ――ッ！！」

　ぐぽっ……

　粘液に満たされた捕精嚢が、湿った音を立てて青年のペニスを呑み込んだ。

　その中はとろけるように熱く、みっちりとした密度が怒張を根元まで包み込んでくる。

　「どうです？　あったかくて気持ちいいでしょ。でもそれ、まだ動いてないんですよ」

　確かに彼のペニスを咥え込んでいる魔性の植物器官は、ただ温もりを伝えてくるだけである。

　青年は、すがるような目でウツボカズラ娘を見た。

　これを外してくれという意味か、気持ちよくしてくれという意味か……彼自身にも、もはや自らの感情が分からない。

　「ふふ……そんな目をしなくても、たっぷりいじめてあげますよ。それ、搾精開始ー♪」

　「あ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

　ちゅぅぅっ！　じゅぼじゅぼじゅぼっ！　ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！！　ぐにょぐにょぐにょ……

　ペニスに密着したウツボカズラの内壁がきゅっと締まり、ぐむぐむと貪り始めた。

　かと思えば次の瞬間には緩み、なまめかしい脈動をペニスに伝え続ける。

　そして内部に満たされていた粘液自身が意思を持っているかのごとく、内壁に翻弄されるペニスに絡みつく。

　「あ……駄目だッ！　こ、こんなの……、ああッ！　は、離して……」

　青年は、訳の分からない言葉を喚き立てた。

　しかし身体をいくらよじろうとも、ペニスを咥え込んだウツボカズラは離してなどくれない。

　包み込んだペニスを中でぐちゅぐちゅに弄び、そして快楽の世界へと導いていく。

　「あ、ああぁ……うぁぁッ！！　うあぁぁぁぁぁぁぁ！！」

　びゅぐっ、どくどく、どぷ、どくどくどく……！

　人知を超えた快感に、青年は数秒すら我慢できずに射精してしまった。

　彼のペニスを嫐るウツボカズラは、精液をそのままじゅるじゅると吸い上げていく。

　「あらら。もうおもらししちゃったんですか？　ダメじゃないですか、出す前にちゃんと言ってくれないと……」

　ウツボカズラ娘は、大きなため息をついた。

　「この程度の刺激でおもらししちゃうなんて、情けない……」

　ぐにょ、ぐにょ、ぐにょ、ちゅぅぅぅぅ！　じゅぽ、じゅぽ……

　そうしている間にも、ウツボカズラはペニスを貪り続けて青年を追い詰めていく。

　「あぁ……止めて……、うぁッ！」

　「私に何も言わずに出したお仕置きです。ちょっとキツく吸い上げますよ」

　腰に手を当て、眉を寄せて怒ったような表情を見せる女性。

　しかしその目は、嗜虐的な笑みを浮かべている。

　「あ、あ、うぁ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！」

　ちゅぅぅぅぅ！　ちゅぅぅぅぅっ！！　ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！！

　ウツボカズラは、青年のペニスを強く吸い上げて嫐り尽くす。

　男の急所を吸引され、彼はなすすべもなく追い詰められていった。

　「あッ、あッ……　で、出るぅッ！！」

　ちゅぅぅぅぅっ！！　ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！

　どく、どくどくどくどく……！

　余りの刺激に我慢できず、青年はたちまち二度目の精を吹き上げた。

　「うふふ、ドクドク出てますね。イッてる最中でも、こういうことしちゃいましょう」

　射精により律動するペニスを、遠慮なくぐにゅぐにゅと締め上げるウツボカズラ。

　「あッ！　ううッ！　あぁッ……！」

　射精のリズムが大きく乱れ、亀頭の先端から精液が不規則に漏れる。

　その精液は捕精嚢の奥から、ツタの内部を伝ってウツボカズラ娘の身体に吸い上げられた。

　「んんっ、おいしい……。今度は、もっと激しくいきますよ。

　　我慢しないでいいですから、好きなだけおもらしして下さいね♪」

　まるで、少女のような無邪気さで告げるウツボカズラ娘。

　ぐぽっ、ぐぽっという音を立て、青年のペニスを咥え込んでいたウツボカズラが激しい動きを開始した。

　内部の粘液が意思を持っているように亀頭全体にねっとりと絡み、性感帯へ的確にまとわりつく。

　そして、内壁全体でぐにゅぐにゅとペニス全体が締め上げられ、しごかれ抜く。

　多彩な刺激は、残酷なまでに彼のペニスを責め嫐った。

　それは、魔性の快楽による一方的な射精の強要である。

　「っあぁぁ！！　あぁぁ……！　うあぁぁぁぁぁ！！」

　どくん、どぷどぷどぷ……

　身をよじらせ、声を張り上げて青年は絶頂した。

　ペニスは四方八方からぐにゅぐにゅと揉み込まれ、脈打ちながら精液を吐き出し続ける。

　短期間に三度も絶頂に押し上げられ、青年の身体は弛緩していった。

　それでも、彼のペニスは魔の快感に責め上げられて萎える事がない。

　「捕精嚢におちんちんねぶられて、そんなに気持ちいいですか？

　　よかったですね、獲物さん。ウツボカズラにおちんちんいっぱい可愛がってもらえて……

　　さあ、まだまだ休ませてあげませんよ。何回でも何回でもイっちゃって下さいね」

　にゅぐっ……グニュッ、グニュッ、グチュグチュグチュグチュグチュ……

　まるで咥え込まれたペニス全体が撹拌されているような、激しく甘美な刺激。

　さらにウツボカズラはずずずず……とペニスを吸い上げ、蕩けそうな快楽を青年に与え続ける。

　「ああ、うぁぁぁぁぁぁッ！！」

　ドクン、ドクン……とペニスを咥え込んだ捕精嚢から精液が吸い上げられていった。

　粘液がうねうねと亀頭に粘りついて揉み込み、内壁がペニス全体を締め上げ――

　にゅぐにゅぐと蠢く捕精嚢の中に放たれた精液は、ポンプに吸い上げられるようにツタ内部を流れてゆく。

　「あ、おぁぁぁぁぁぁ……！」

　もはや自身の意思など関係なく、絶頂へと強制的に導かれ続ける青年。

　まさに、言葉通り「搾り出されて」いるのだ。彼の表情は、あまりの快楽で歪みきっていた。

　もはや快感に身を委ね、この甘い刺激を欲するのみ。

　「いい……ああ、もっと……」

　「何を言っているんですか、変態さん。これ、愛の営みでもなんでもないんですよ」

　ウツボカズラ娘は、そんな青年の呟きを切って捨てた。

　「大好きな人と赤ちゃんを作るためのおちんちん、搾精器官で無様に啜られ続けてるだけ。

　　貴方の赤ちゃんの素、みーんな吸精植物である私の養分になっちゃってるんです。

　　生殖行為でも、ましてや奉仕を受けてるんでもないですよ。これ、一方的な捕食行為なんですから。

　　それなのにヨダレを垂らして喜んじゃうなんて、本当に哀れで惨めですよね。そう思いません？」

　そう言っている間にも、青年のペニスには最上級の快楽が与えられ続けていた。

　にゅぐっ、にゅぐっ、にゅぐっと脈動し、全てを搾り尽すような蠕動。

　さらに捕精嚢が前後左右に激しく蠢き、強制的なピストン運動の刺激を与える。

　「あ、はぁぁぁぁぁッ……」

　青年は、弱々しい声を上げながら精をドクドクと噴き上げた。

　「あらあら、またおもらしですか……本当に情けない。

　　こんな搾精器官でおちんちんなぶられて、気持ちよくなって、精液ドクドク吸い出されて……

　　本当にみっともないですよね、獲物さん」

　そう言っている間にもウツボカズラは青年のペニスを刺激し続け、彼を何度目か分からない絶頂に導く。

　じゅるじゅるじゅる……というペニスを貪られる音が、残酷なまでに周囲に響いていた。

　捕精嚢はウツボカズラ娘の身体の一部であり、まぎれもなく血の通った有機体。

　しかし青年のペニスを貪る捕精嚢は、とてつもなく無機的に搾精運動を続けているのである。

　このウツボカズラ自体が、男性の生殖器から精を吸い上げる、ある種の捕食器官なのだ。

　「情けない獲物さんには、いやらしい罰を与えなきゃダメですよね。ふふふ……」

　手足や胴をツタで固定され、大の字に広げられていた青年。

　その足首のツタがゆるみ、そのまま彼の両足がぶらりと投げ出された。

　手首だけをツタで固定された青年の身体は、『大』の字から『Ｙ』の字へと変化する。

　同時に、ペニスを貪っているウツボカズラも彼の股間からちゅぽっと離れた。

　「あぁ……うぅ……？」

　もしかして、解放してもらえるのか――？

　そんな淡い期待は、次の瞬間にあっさりと打ち砕かれた。

　地面から、何か大きなものがズズズ……と音を立ててせり上がってきたのだ。

　ウツボカズラ娘に捕まった、この哀れな青年の運命は――