クモ娘


 

 青年は、今まさに帰宅途中だった。

 大学のサークル活動が長引いて、もう夜の8時を回っている。

 そして近道の公園を抜けようとした、その時だった。

 

 「あ痛ッ!」

 何もないところで転んでしまう青年。

 思わず足元を見たが、そこは何の変哲もない地面。

 おかしいなぁ。何に引っ掛かって転んだのに――

 そう訝しながらズボンの土を払おうとしたとき、青年は妙なものに触れた。

 これは、糸――? 粘ついてるけど、妙に頑丈で……

 

 「わっ! うわっ! うわっ!」

 右手で触っていた糸が、いつの間にか左手にも絡まっていた。

 それを払おうとして身体を動かすと、またも彼はバランスを崩す。

 右足が何かに引っ掛かり、そのまま青年は転倒――しなかった。

 ハンモックのようなものに引っ掛かり、彼の身体は空中で止まったのだ。

 

 「な、どうなってんだ……!?」

 その状態から体勢を戻そうとするが、丈夫な糸のようなものが体中に絡み付いてきて動けない。

 これは、一体――

 そこへ、会社帰りであろうサラリーマンが近付いてきた。

 「すみません、あの――」

 しかしサラリーマンはまるで彼の言葉など聞こえていないかのように、歩み去ってしまう。

 無視した……? いや、彼は眉一つ動かさなかった。

 まるで、こちらの姿が見えなかったように――

 

 そして、青年は気付いた。

 公園の木やら街頭やらのあちこちに、たくさんの糸が絡み付いていたのだ。

 まるで、公園全体がクモの巣のように……

 どう考えてもおかしい。

 こんなものがあったら騒ぎになるはずだし、さっきまで自分も糸の存在に気付かなかったじゃないか。

 

 「それでさー」

 「あはは……」

 談笑しながら、2人の女子高生が通りかかる。

 こんな時間だから、おそらくクラブ帰りだろう。

 「おい、助けてくれ! なぁ――」

 しかし二人は青年の叫びをまるで無視、無邪気に会話を続けている。

 そして、二人の進行方向に青年はいた。このまま方向を変えずに進めば、当然ながら正面衝突だ。

 それでも女子高生達は、彼の存在に気付いていないかのように直進してきた。

 ぶつかる――!?

 しかしその瞬間、女子高生は青年の身体をするりとすり抜けた。

 女子二人は、何事もなかったかのように歩み去っていく。

 いや、彼女達にとっては本当に何事もなかったのだ。

 

 「なんだよ、これ……!」

 青年はにわかに嫌な予感を抱き始めた。

 今まで生きていた世界から足を踏み外し、まるで違う世界に踏み込んだような感覚――

 「そう、ここは私の世界」

 まるで青年の心中の疑問に答えるかのように、辺りに女の声が響いた。

 コツコツと靴音を立てて、一人の若い女性が歩み寄ってくる。

 いかにも高貴そうな顔立ちで、フォーマルドレスを纏った美女。

 服装や雰囲気は大人びているものの、年齢は大学生である自分と同じくらいに見える。

 「あっ、お願いします。ちょっと助けてくださ――」

 青年は女にそう声をかけた瞬間、おかしなことに気付いた。

 この女性には、自分の姿が見えている。

 今までいた世界から足を踏み外した、という感覚が正解ならば、この女性は――

 

 「ええ。貴方は私の巣にかかって、こっちの世界に来てしまったのよ。もう元の世界には戻れない」

  ふ……と笑い、女性は告げる。

 「巣……!? こっちの世界……!?」

 彼女の言葉に、たちまち頭が混乱する青年。

 それに、先ほどからこの女性はまるで青年の心を読んでいるかのような応答をしているのだ。

 この女性は、明らかに普通ではない――青年はそう直感した。

 「元の世界からは、こっちの世界に干渉する事はできない。こちらから見る事はできるのだけど。今、体感したでしょう?」

 「そんな……僕は……」

 彼はようやく、自分の置かれている状況を理解した。

 自分は、本当に異世界へ足を踏み入れてしまった。

 でも、元の世界に帰れないって言うのは――?

 

 「それは、私の真の姿を見れば分かるわ。もう元の世界になんて戻れない事を、本能で直感できるはず――」

 「え……?」

 唐突に女性のドレスが裂け始めた。彼女の背中から、何か棒のようなものが何本も突き出てくる。

 いや、あれは足だ。蜘蛛のような、節足動物特有の足が六本。

 さらに女性の下半身は毒々しく膨れ始め、人間の足は姿を消す。

 とうとう女性の下半身は、まさにクモそのものになってしまった。

 クモ娘――そんな言葉が、青年の脳裏に去来する。

 

 「分かった? なぜ元の世界に帰れないか……」

 その刹那、クモ娘の姿が消えた。

 いや、信じられないほどの速度で接近してきたのだ。

 彼女は素早く鋭い足の爪を振るい、青年の身体に突き立てた――ように見えた。

 しかし彼の身体には、傷一つとて付いていない。

 彼を拘束している糸すら切らず、青年の衣服だけを完全に切り裂いたのだ。

 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その余りの恐怖に、青年は絶叫する。

 自分は今から、このクモ娘に捕食されてしまう――彼女の言葉通り、青年はそう確信した。

 あの糸に全身を絡め取られ、繭状にされ、少しずつ食べられていくのだ……

 

 「でもその前に……私と楽しみましょう」

 明らかに青年の心を読んでいるクモ娘は、淫靡な笑みを浮かべた。

 「まずは、その縮こまってるモノを何とかしないと――」

 「え……?」

 青年は、思わず自らの縮み上がっている股間を見た。

 自分がペニスを露出している事に気付き、今更ながら羞恥心が沸いてくる。

 目の前に命の危険があるにもかかわらず、人間とはそういう事を思わず気にしてしまう生物なのだ。

 「レディを前にして萎えているなど、なんと失礼なおチンチンなのでしょう」

 彼女のクモの下半身が、くいっと青年の方に向けられた。

 クモそのものである腹部の先端――出糸突起がくぱぁと開き、白い粘液のかたまりが飛び出す。

 それはクモの糸なのであるが、まだ空気に触れて間もないために粘液状なのだ。

 普通のクモならこれを体外で紡ぐ事によって糸状化させるのだが、クモ娘は自らの意思で自在に行える。

 そんな白い粘液が青年の右肩から右胸部分に当たり、彼の身体を白く染めた。

 「あ、あぁぁ……!?」

 青年は、粘液を掛けられた部分から奇妙な感触を受ける。

 粘液は彼の皮膚にねっとりと絡みつき、ねばつくような快感を与えてきたのだ。

 「それ、触れてるだけでも気持ちいいでしょう。さらに――」

 粘液は一部が糸状化し始め、しゅるしゅると青年の上半身に絡みついてきた。

 彼の上半身は、粘ついたクモの糸にがんじ絡めにされる。

 さらに、その糸の束は彼の体をぎちぎちと締め上げ始めた。それも、どこか艶かしく。

 苦痛を与えるために締められているのではなく、むしろその逆――

 

 「あっ……! ああぁぁぁぁぁ……」

 粘りつく快感と締め上げられる快感を同時に味わい、青年の顔が快楽に歪み始めた。

 「ふふ……貴方は縛られるのがお好きみたいね」

 ネバネバと粘つきながら、くいくいと締め上げられる――上半身にそんな刺激を受け、徐々に青年のペニスが膨張を始めた。

 首から下、そしてヘソから上を繭状に覆われてしまい、青年は声を上げながら身悶える。

 ペニスは完全に反り返り、天を向いて自己主張していた。

 「縛られて、絡められて……それで気持ちよくなっちゃうなんて、なんと情けない」

 嘲ったようなクモ娘の言葉すら、青年の性感を増大させる。

 脈動する青年のペニスからは、先走り液の雫が糸を引いて垂れた。

 「あらあら、よだれまで垂らして……」

 その雫は、張り巡らされているクモ娘の糸の上にぽたりと落ちた。

 たちまち雫は糸に吸収され、クモ娘は自らの唇をペロリと舐める。

 

 「うぅ……ッ! ああぁぁ!!」

 しかし青年は先走り液を垂らすばかりで、射精にまでは辿り着けない。

 それも当然だろう。ペニスには、何の刺激も受けていないのだから――

 もう青年の頭からは、捕食される恐怖など完全にどこかへ消えている。

 彼は快楽を求め、陰茎への直接刺激をひたすらに切望していた。

 早く、早くペニスにも糸を絡めて嫐ってほしい……!

 

 「ふふふ、それ以上は自分でしなさい」

 しかしクモ娘は、彼の欲望を突き放すように冷たく告げた。

 その言葉を実証するように、青年の上半身を覆っていた繭の一部が裂け、彼の右腕だけが露出する。

 「……ぇ?」

 期待が大きく裏切られ、青年は捨てられた子犬のような目でクモ娘にすがった。

 「自分でしなさい。せっかく、右手を自由にさせてあげたのだから」

 「そ、んな……いやだ……」

 青年は、必死でクモ娘に嘆願する。

 「お願いだから……前も、糸で……」

 しかし彼女は腕を組んだまま、動こうとしない。

 

 「あ、あぁ……」

 青年は、もはや射精のことしか考えられなくなった。

 もう、とにかく出してしまいたい――

 彼は自由になった右手で、上半身のほとんどを覆っている繭の一部を掴む。

 ねちゃっ……と糸を引き、粘糸と粘液でぬめる掌。その手で、自らのペニスを握った。

 「あッ! ああああぁぁぁぁ!!」

 粘糸をペニスに塗りつけ、青年は快楽の声を上げる。

 さらに繭から粘糸を掴むと、必死で自らの陰茎に塗りつけ始めた。

 息を弾ませ、粘液と粘糸の絡んだ手で自らのぺニスを扱く――

 「あ……気持ちいい、気持ちいいよぉ……」

 通常の自慰では得られない快感に、青年は夢中で右腕を動かしていた。

 

 「ふ、ふふ、あはははははははは……!!」

 そんな青年の動作を見て、クモ娘は哄笑する。

 「なんて哀れ、なんて惨め、なんて無様……! その痴態に免じて、貴方のおチンチンもたっぷり縛ってあげる」

 「う、うぁぁッ!!」

 青年のペニスに絡んでいた粘液が、クモ娘の意思によってするすると糸状化し始めた。

 そのまま股間にしゅるしゅると絡みついて、粘つきながら覆いこんでくる。

 瞬く間に肉棒には糸がぐるぐるに絡み、白く染め上げられてしまった。

 「あ、あ、あぁ……」

 じんわりとペニスをくるみ込んでくるネバついた感触に、青年は泣き笑いのような表情を浮かべていた。

 その心地よさに、たちまち昇天してしまいそうになる。

 「こうして欲しかったんでしょう? おチンチンを糸でぐるぐる巻きにされて、嫐られて――

  男の弱点を絡め取られて、弄ばれる――こんな風に」

 クモ娘は、ペニスに絡んでいる粘糸を巧みに蠢かせた。

 ネバネバの糸がカリや亀頭、尿道口に絡んで、優しくきつく締め上げてきて――

 「あ、あぁぁぁぁぁ……!」

 ねちゃ、ぎちぎち、ぬるぬるぎちぎち――

 そんな甘い感触に、青年は喘ぎながら身をよじる。

 「ふふ……まるでイモ虫」

 クモ娘は、糸によってぐるぐる巻きにされたペニスを見据えて言った。

 彼女の粘糸に絡められた肉棒は、哀れなイモ虫そのもの。

 巣に掛かった獲物は、じっくりと締め上げられ、嫐られる運命にあるのだ。

 そんな責めを受けた青年の顔は、たちまち愉悦に歪んでしまう。

 「あ、あぁぁぁぁぁ、出るぅぅッ!!」

 艶かしい刺激に屈服するように、イモ虫がびくびくと脈動を始めた。

 サオの根本から敏感な先端まで、糸をくまなく絡み付かれた状態での射精。

 どぷ、どぷどぷどぷどぷ……

 締め上げられているせいか、精液は飛ばずにそのまま尿道口からドクドクと溢れ出した。

 「あぅぅぅぅ……」

 ネバネバの感触を敏感な亀頭粘膜で味わいながらの、脱力感を伴った心地よい射精。

 垂れた精液は糸を伝い、クモ娘の体内に吸収されていく。

 青年のイモ虫は捕食者の糸に絡め取られ、その体液を吐き出したのだった。

 

 「なんて惨め、おチンチンを縛られて出してしまうなんて……」

 クモ娘は、嘲りの笑みを見せた。

 「オスのおチンチンっていうのは、人間のメスの中に入れて使うものなんでしょう?

  粘糸に絡み付かれて漏らしてしまうなんて、オス失格だわねぇ……」

 「う、うぅぅ……」

 巣に絡まったまま快感の残滓に震える青年の顔を、クモ娘は覗き込んでくる。

 そして、蜘蛛の腹部の先端にある突起――粘糸がたっぷりと詰まった肉の壷を青年の股間に向けた。

 「じゃあ次は……もっとみっちり包み込んであげるから、覚悟なさい」

 その出糸突起がひくひくと蠢き、その口がむぐむぐと開いた。

 そして内部から、びゅっと粘糸が発射される。

 その粘つく白い塊は、青年の股間にびちゃりと振り掛かってしまった。

 「あ、ああッ!! うぁぁぁぁぁ〜!!」

 青年のペニスや玉袋、下腹部にねっとりとまとわりつく粘糸。

 それは触れている部分にぬるぬると粘りついて、甘美な快楽を送り込んでくる。

 温もりと粘りで敏感な部分にまとわりつかれ、青年は身をよじっていた。

 ぎしぎしと巣が揺れるものの、彼を捕らえている強靱な糸はびくともしない。

 「ふふふ、おチンチンをもみくちゃにしてあげる」

 青年の股間を覆う粘液はしゅるしゅると糸状化し、肉棒や下腹部を白く染める。

 ペニスを覆う糸の量は先程の比ではなく、たちまち彼の股間には白い繭が出来上がってしまった。

 棒は魔性の糸で何重にも巻き付かれ、ぬるぬるぎちぎちと締め上げられていく。

 それは、じっくりといたぶられるような快感そのもの――

 「あぅぅぅぅぅぅぅッ!! あ、あぁぁぁぁぁッ!!」

 「どう? 私の糸はお気に召されて?」

 捕食者の表情で、クモ娘は尋ねる。

 青年の答えは、快楽に満ちた表情と息も絶え絶えの喘ぎ声だった。

 「は、あ、あぁ……」

 「ふふ、言葉も無いみたいね」

 「あぁぁぁ…… うぁぁぁッ!!」

 にゅちゃ、にゅちゃ……ぎちぎち、ねちゃねちゃ……

 ペニス全体が白い繭に覆い込まれ、青年はあられもなく悶えていた。

 その内部では粘糸がねちゃねちゃと絡みつき、天にも昇るような感触を与えてくるのだ。

 青年はたちまち限界まで追い詰められ、繭の中でペニスがびくびくと震える。

 「きもちいい……ちんちん、きもちいい……」

 「粘糸で犯されるのが、そんなに病み付きになったのかしら?

  人間のメスとセックスするより、粘糸でおチンチンもみくちゃにされる方が好き?」

 「あ、ああああぁぁぁぁ……!!」

 くすくすと笑うクモ娘の眼前で、青年はあっけなく果ててしまった。

 どく、どく、どく、どく……

 ペニスをみっしりと包む白い繭の中に、そのまま精液が放たれてしまう。

 それはやはり糸を伝って吸い上げられ、クモ娘の体内に吸収されていった。

 「美味しい精液を出すのね、貴方……」

 「あぐ、あ、あぁぁぁぁ……」

 ますます締まりと粘りを増していく粘糸が、彼のペニスを責め嫐る。

 びゅくびゅくと精液を吐き出していた肉棒がくいくいと締め上げられ、最後の一滴まで搾り取られてしまった。

 青年をたちまち昇天させ、なおも精を吸い上げ続ける粘糸の繭――

 彼は快楽だけではなく、恐怖すら感じ始めていた。

 このままでは、発狂するまでペニスを嫐られ尽くしてしまう……!

 「あ、はぁ、ああぁぁ……」

 青年は喘ぎながら、股間を貪る繭を引き剥がそうとする。

 しかしペニスを覆いこんでいる繭は、青年の力などでは剥がすことなどできない。

 そして、魔の繭は絶えず青年の股間に快楽を送り込んでくるのだ。

 「ッ……! ううぅッ!」

 彼は息を荒げながら、必死で自らの股間の繭をかきむしった。

 「は、離して……これ、ダメだよぉ……」

 「あらあら。さっきまではおチンチン縛ってほしがってたのに、今度は剥がしてほしいの?」

 腕を組み、呆れたような表情を浮かべるクモ娘。

 にゅちゃ、ねちゃ、ぎちぎちぎち……

 繭の中では、ペニスに粘糸がねっとりと絡み続けていた。

 その甘美な感触が、青年を容赦なく高みへと押し上げていく。

 「はなして…… はなして…… 出るぅ…… これ、はなして……」

 「出しちゃいなさい。単なる糸の繭の刺激に屈して、みっともなく射精しなさい」

 ふふふ、とクモ娘は笑った。

 その出糸突起から粘液が迸り、必死で繭を引き剥がそうとしていた右手の動きすら封じてしまう。

 「おチンチンをそんな繭に包まれて、喜びながらどぴゅどぴゅ射精して……本当に哀れな子」

 「あ、ああぁぁぁ!! で、出るぅぅッ!!」

 またも快感に屈し、青年のペニスは粘糸の繭の中に精液を噴き上げた。

 粘糸はぎちぎちねちゃねちゃと絡みつきながら、さらなる射精を促す。

 「ああぁぁ……! も、もう、やめてくれぇぇぇ!!」

 目を潤ませ、涎を垂らしながら懇願する青年。

 これ以上続けられたら、本当に精神が崩壊してしまう――

 

 「あっそう。じゃあ、離してあげる」

 クモ娘が軽く指を鳴らすと、青年の股間を覆っていた繭が弾けて消えた。

 露出したペニスからは、今までその部分を責め嫐っていた粘液や粘糸がねとねとと垂れる。

 「え……?」

 股間を包んでいた感覚が消失し、青年は驚きつつ顔を上げた。

 もしかして、解放してくれるのか……?

 「そろそろ、私の身体で直接オチンチンを嫐ってあげるから――」

 すっ……とクモ娘は青年に体を寄せてきた。

 そのまま、六本の足と二本の腕で青年の身体をギュッと抱きすくめてくる。

 「え…… な、何を……!」

 突然の事態に、表情を強張らせる青年。

 彼の脈打っているペニスには、蜘蛛の醜悪な腹部が近付いてきた。

 先端の出糸突起がくぱぁ……と口を開ける。

 その内部では、白い粘糸がぐちゅぐちゅと渦巻いているのだ。

 ピンクの肉壁はひくひくと震え、まるで青年を誘っているかのよう――

 「え……! ま、まさか……」

 出糸突起は、彼のペニスを咥え込もうと迫ってきたのだ。

 「この中で搾精してあげる。おチンチンを粘糸でぐるぐるのねちゃねちゃにして、天国へ連れてってあげるわ」

 「あ……あ……やめろぉッ!! やめてくれぇぇぇッ!!」

 青年は全身をよじって逃れようとするが、糸にがっちり束縛されて腕一本動かせない。

 このままクモ娘の獲物になる以外に、選択肢は残されていないのだ。

 「ふふ……観念して、私の中でドクドク精液吐き出しなさい」

 

 くぷっ……と、クモ娘の出糸突起は青年のペニスを包み込んだ。

 たちまち、内部に詰まっていた粘液がペニスにねちょねちょと絡みこんで締め上げ始める。

 「ああ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 鈴口も、亀頭も、カリも、根元まで粘糸が絡み付いてきて、妖しく粘りながら責め嫐ってきた。

 ねちょ、ねちょぬちょ、ねちょぬちょにちゃねちょ……

 どぷっ、どぷどぷどぷ……!

 出糸突起が織り成す刺激に、青年は瞬く間に射精を迎えでしまう。

 痙攣しながら、彼はクモ娘の体内に精液を注ぎ込んだ。

 「は、はぅ……」

 それは、まさに天にも昇るような快感。

 青年は恍惚の表情でよだれを垂らし、クモ娘の出糸突起の感触を存分に味わっていた。

 そこは本来、生殖にも搾精にも使われる器官ではないにもかかわらず――

 

 「ふふ……まだまだ搾ってあげる。今度は、中でおチンチンぐちゅぐちゅに掻き混ぜてあげるわ」

 青年のペニスを呑み込んでいる出糸突起内部が、妖しく撹拌され始めた。

 通常は、粘液を体内で掻き混ぜて粘度を低めるという動作。

 しかしこれを人間の男性器に味あわせれば、壮絶な快感となるのだ。

 「ふふふ、どう? 前に搾り取ってあげた人なんて、この感触で失神しちゃったわ」

 「あああ、あああああああああああぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ……!!」

 余りにも強烈な快感に、青年は狂ったような声を上げた。

 ペニスに粘液や粘糸が絡まりながらぐちゅぐちゅに掻き回され、彼は人間が受けるには強烈過ぎる快感を味わう。

 ぐちゅぐちゃねちゃにゅちゃねちゃねちゃねちゃねちゃ……

 どく、どくどくどく…… どぷ、どくどく……

 常識を超えた快感に、青年は何度も連続して絶頂を迎えた。

 「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……!!」

 ペニスから精液が迸っては、クモ娘の体内に無慈悲に吸い上げられていく。

 淫魔の搾精器官は、基本的に男へと与える快感を女の意志によって調整できる。

 そうでなければ、たちまち男は発狂、もしくはショック死してしまうだろう。

 そんなことになれば、美味しい精を存分に搾ることはできない。

 しかしクモ娘の出糸突起は搾精器官ではなく、その蠢きにペニスを巻き込んで射精させているだけ。

 彼女にとっては生理的な動作――それに男性器を突っ込ませるだけで、男は狂ってしまう。

 それがクモ娘にとって、面白くてたまらない。

 彼女は、獲物が壊れても構わないままに弄んでいるのだ。

 

 「五回分ぐらい、一度に出したみたいね……どう? 天国でしょう?」

 「ああ、おぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 クモ娘の声は、もう青年に届いていない。

 彼のペニスは粘糸の撹拌に巻き込まれて、地獄の快楽を味わっているのだ。

 「っが……!! ああ、ああぁぁぁぁぁぅッ!」

 唯一自由に動く首を反り返らせ、涎を撒き散らして絶叫する。

 ペニスからは、快楽の証である精液が何度も何度も噴き出した。

 容赦も無く、慈悲も無く、彼は精液を搾り取られ続ける。

 これは、交尾などではない。青年をひたすらに嫐る強制射精だ。

 

 「ふふ、もっとお出しなさい。貴方の精液、カラになるまで搾ってあげるから」

 ぎゅるぎゅるぎゅる、ぐちゅぐちゃ、ねちゃにゅちゃねちゃねちゃ……

 どぷっ、どぷどぷどぷ…… どぷ、どくどく……

 「ううッ……!! ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 青年の絶叫が、夜の公園に響いた。

 もう誰も聞きとめる事がない、そんな虚しい絶叫が――

 

 

 

 

 

 そして、どれだけの時間が経ったであろうか。

 ちゅぽん……と、クモ娘は出糸突起から青年のペニスを抜いた。

 その連結部に、一筋の糸が引く。

 「さて、どうしようかしら……?」

 彼女は、息も絶え絶えである青年の顔を覗き込んでくる。

 「貴方、精も肉も美味しそうね。このまま食べてしまおうかしら?

  糸でぐるぐる巻きにして、繭にした後に消化液を注入するの。

  身動きできない繭の中でじっくりと体が溶かされて、ドロドロにされるのよ」

 「……!!」

 青年は、自らを待ち受ける運命に戦慄していた。

 このクモ娘の餌食にされる――どこか、官能的な響きがあるのも否めない。

 「それとも、私に飼われたい? 巣に持ち帰って、永遠に嫐ってあげようか……?」

 「う、あ……」

 解放の道はない。

 ならば――青年は決断した。

 

 食べられたい

 持ち帰りされたい

 

 

 



この娘さんに搾られてしまった方は、以下のボタンをどうぞ。




一覧に戻る