魔法少女淫魔ミーティ




☆★☆お・ネ・が・イ♪☆★☆



ミーティからのお願いだよっ☆

この物語を読むときは、部屋を明るくして、少し離れて見てねっ★

じゃないとぉ〜、ミーティアフォーレンをお見舞いだぁっ☆



☆★☆★START!★☆★☆



〜願い事を、流れ星に向けて三回唱えれば、星が願いを叶えるわ〜

………ったく、いつの時代の迷信だよ。流れ星の光が何なのか分かってんのかよ。

あれは大気圏に無謀にも飛び込んで燃え尽きた印だぞ。強烈な摩擦で起こった熱が、光を纏うだけだ。

そもそも星に願いが届いたとして、叶うのは何年後だ。消えた星は言うに及ばず、今ある星だって何億光年の距離だぞ?願いの速さが光より速かったとしても、そうそう叶うものじゃないだろ。寧ろ叶っているのなら今の俺はこの世界を恨む。絶対恨む。

「………」

ま、そんなこと考えていても、ベランダの窓全開で落下防止の柵にもたれ掛かりつつ、流れ星が来るかを今か今かと待ち続けている時点で、説得力もあったもんじゃねーが……!



「彼女くれ彼女くれ彼女くれぇ〜っ!」



俺が切迫しているんだからしょうがない。大学に入って、恋の気配もなく一年過ぎようとしているこの時期なのだから。

「………アホらし」

あらかた叫び終わってから、虚しさを抱えて部屋に戻ろうとした、



そんな時だった。



………ォォォォォ………

「――ん?」

今、何か妙な音が外から聞こえたような……。文字化すると怨霊のそれか気合い入れる声にしか見えないが、それとは違う、空気を貫いているような音。

「流星か?」

まさか、と俺の意識は否定する。それならもっと前に鳴っている筈だ。だとすると俺には関係ない――?



………ォォォォォオオオオオオオオ――



――ってデカくなってやがる!?音が明らかに!?何なんだよ!?

俺がベランダに出てみると――!?



………オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!



「なっ……何だありゃ!」

明らかに炎か何か纏ったものがこっちに来やがる!?いやまてよ?そんな筈はない。空高くから落ちてきたものがまさか自分の今いる場所にピンポイントで落ちてくるなんて事有るわけ無いだろ……常識的に考えて。

「………」

暫くしたら、きっと軌道を外れていることが分かるだろう。そうに決まってる。寧ろそうであってくれ。この年でB.G.M.ドンワナクローズマイアーなんて経験したくねぇから。



………オオオオオオオオオオオッ!!!!!!!



そんな小さな祈りとは裏腹に、未確認発火物体は……明らかにこっちに近づいてきてんじゃねぇかっ!?



「………………………ィィィィィィィ――」



「――っあ?」

な……んだ……?明らかに人声らしきものが聞こえたんだが……?……少し前にテレビで見た、声でガラスを割る誰かの声から、ミッキー補正を無くしたような――少女ヴォイ?

「……アホらし」

どこまで飢えてるんだ俺は!きっと空気を切り裂く音がそんな風に聞こえるだ――け!?



「――ィィィィィィィィィイイイイイイイ――」



その瞬間、俺は未確認飛行物体の正体を見た――気がした。

何か妙な飾り付けの棒に跨がって、先の折れ曲がった三角帽子を被った、秋葉だか夏の伏魔殿だかに毎年潜む誰かが着るような痛々しい服装をした――少女。

その目は、明らかに俺を捉えていて、しかも滅茶苦茶に目を輝かせていて――!



「あ……ああ……」

目が合って、俺は悟った。この少女、絶対俺を狙ってやがる。



ァドワナクロ〜ズマイア〜♪



背後で聞き覚えのある曲が流れてきた。このまま動かなきゃ確実に俺にぶつかるだろう。だが――足が動かねぇ。あの少女の目に、魅入られちまったんじゃね〜か、そう、思うほどに――!



「――イイイイイイイイイイイヤァッホォォォォォォオオ☆」



少女のテンションが最高潮に達したらしい声が響いた、その瞬間――!?



「――はや?」

少女の手から……棒が消えた?落ちたんではなく、文字通り消失したのだ。

暫く空中で手探りなり呼び寄せるらしき行動なり様々に振る舞ったあと、器用に正座して目を瞑っておよそ三秒。



「……てへ☆」

頭をこちんと叩いて舌を出す、ドジっ娘と呼ばれる属性を持つものが行う誤魔化しらしき行動を何故か俺目線で行うと――まさか?



「キャアアアア〜〜〜〜っ☆」

「なぁっ!」

いきなり自由落下しやがった!様々に体勢を変えながら――それでも器用に俺の方へ落ちてきやがる!

「どうする……!どうするよ俺……!」

ライフカードよ!俺に力を!



『無理』



「って俺のバカぁぁぁぁぁぁっ!」

何でこの場でライフカードの助けを借りようとしてんだよ!しかも無理って出てんじゃねぇかっ!

落ち着け……落ち着け俺……カードを地面に叩きつけてどうする。――こういう時はミリオネア式だ。



A.助ける

B.放置

C.呼ぶ

D.星の果てまでテレポテーション♪



さぁどれだ!って待てや俺!明らかにD.はおかしいだろ!capsuleファンにキレられるぞ!

まぁ論外だ。あとの三つは――!?

「キャアアアア〜〜〜〜っ☆」



って高度の余裕がねえっ!高高度降下低高度開傘の傘がねぇ以上少女は落下するしかねぇ!なら俺がする事は、



ベランダの柵から思い切り身を乗り出して、腕を伸ばした。

腕が折れたって気にしねぇ、そんなつもり、だった。



落下少女は相変わらず霧揉みのまま猛烈な勢いで俺の方へ落下していく……届くか……っ!?





「キャアアアア〜〜〜〜っ☆」



ぱふっ!



こっ、この少女俺の顔に見事にヒップアタックをかましてきやがった!勢いを殺しきれねぇ俺の顔に、これでもかと言うくらい白桃を押し付けてきやがる――!?

「――〜〜〜〜っ!」

こ、この瑞々しくモチモチとした感触、仄かに香る糖蜜のように甘い香りはまさかこの少女――!



HA☆I★TE☆NE★E♪



「………てへへ、着地しっぱ〜い☆」

……いや、俺的、男的には大成功ですとも。はい。

少女の尻の下で無意識に顔をにやつかせながら、落下の勢いを受けて部屋まで三回転、ベッドの木枠に頭をぶつけた俺の意識は、究極の勢いでブラックアウトしていった……。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



「はぁっ?魔法少女ぉ〜?」

はっきり言って、余程の事がない限り信じたくない、寧ろ言った奴の頭を鉄格子のある部屋で診察してもらいたいくらい痛い発言を、堂々と俺にかます少女に、俺は疑いの発言をぶつけた。つーかあの登場シーンさえなけりゃ、即座に部屋から放り出していただろう。

「そうだよ〜☆えっへん☆」

さして存在しない胸(推定AA)をそらして自慢げな格好をする少女。

「いや、威張られても困るんだが………」

幸いなことに、親兄弟姉妹は旅行中なので数日ほど帰ってはこない。なので俺の部屋に突然現れて「解堂(かいどう。あ、これ俺の名前な)!あんたそんな幼い子をどこから連れてきたの!しかも家に連れ込んだりして!ま……まさか誘拐……?」や「あ、兄貴……通報しますた」、「うっわ……見損なったよ。お兄ちゃんそんな趣味だったんだね……」的誤解を受けるある種のお約束的展開は絶対あり得ないことが、俺のせめてもの救いだ。

「幼馴染みの娘とかは〜?」

「残念だが男だし、しかも家は遠い。……ん?」

今、俺は口に出してたか?

「ん〜ん?心を読んだだけだよ〜☆」

「あぁそうか、テレパスを使ったのかあっはっは……そぉい!」

つ〜事は、こうやって思っている事も全部……。

「この魔法少女ミーティにはお見通しなのダ☆筒抜けなのダ☆」

「思考から台詞を繋げるなっ!」

あぁやり辛いっ!しかもその語尾は何だ!?〇鈴か!?

「俺の頭ん中の言葉に反応すんなっ!」

「は〜い☆」

いかにも元気っ子、といった雰囲気満開で少女――ミーティが答えた。微かに覗く八重歯が、さらに外見的な幼さを付与している。

………っはぁ。って何批評してんだ俺。そもそも俺にロリペドの趣味はねぇよ。

――あ、頬膨らましてやがる。気にしてんのか。まぁ当たり前だが。

しっかし――。

「つくづく、すげぇ服装だな……」

ピンクを基調にした、ある意味毒々しい色合いのドレス、所々ワンポイントのように、紫色のリボンが、まるで蝙蝠のような形をして取り付けられている。

スカートのような部分にもふりふりフリルが付いており、後ろからはピョコンと、先端が鏃状になった、紺色の尻尾が飛び出している。

………尻尾?つーかよく見ると、背中からは、蝙蝠のような皮膜に被われた羽が二対ついてるんだが。しかも微妙に動いてるんだが。

ぁゃιぃ。

このιょぅι″ょ、ぁゃιぃ。

「なぁ……」

「んむ?」

冷蔵庫に入っていた箱アイスを直食いしているミーティに、俺は尋ねた。

「その服………何で悪魔風なんだ?」

「ん〜?悪魔っ娘スタイルは最近の魔女っ娘の流行なのダ☆」

成る程、まぁ色々と釈然としないがそれは置いておこう。

「………どうして俺のところに落ちてきた?」

「迷惑だった?」

瞳をうるうるさせながら顔をアップにして俺に迫るミーティ。人、特に男はこれを反則と呼ぶ。何故か分かるかねアンダーソン君?

「い……いや、迷惑じゃないんだが……」

上目使い、しょぼくれた眉、乙女座りが強調する脆さ……つまり全てがMAXXに可愛いんだからしょうがない、断るに断りきれねぇ。しかもそこまで迷惑、ってわけでもねぇから困る。

「よかった〜☆」

ほっとしたように目をぱっちり開けるミーティ。口許からひょっこり覗く八重歯が何とも可愛らしい。漫画やゲームと言う異世界上での出来事が、今俺の目の前で行われている……が、俺の疑問は?どうせ考え読んでんだろ?

「うんっ☆」

「なら迷惑云々除いて答えてくれねぇか?どうして俺んとこに来たんだ?」

ミーティは、口許に人差し指をつけて「ん〜☆」と考えると、ぽんっ、と手を打って、手にいつぞやの棒を呼び出し――!

「カモンスクリーン☆」

くんくるくるん☆と指揮棒を振るように、あるいは体操のリボンのように棒を動かした!

「なっ!」

棒の先端の飾りが輝くと、俺とミーティの中間辺りにある部屋の壁に、何やら黒い靄がかかり始めた!それは徐々にハイプラズマ液晶テレビのような、巨大で薄い直方体へと変化していき……。

「あ……!」

これが何かのトリックなら、是非とも科学者の皆さんに暴いてもらいたいところだ。俺の理解を超越してやがる。

魔法とは、こういうことさ。

……どこかのハードボイルドピッグのような台詞が思い付いたがそれはさておき、これで間違いなく、ミーティが魔法少女である事は疑いがなくなったわけだ。

初めて見た魔法に呆然とも感動ともつかない感情を抱いた俺をよそに、ミーティは黒い靄に棒――魔法のステッキを向け、何やら作業をしている。端から見ると、まるでお絵描きをしているようにも見える。

「――ふ〜♪」

魔法のステッキを右手に、左腕で満足げに額の汗を拭うミーティ。さて、完成品は……と。





『ねがい→じゅしん→やってくる!

あいのまほうつかいミーティ!』



……そこには、クレヨンで描かれたミーティが、デフォルメされたステッキで文字を指している絵があった。指された文字は準々に眩しく光って、まるでどこぞのフローチャートのようになっている。

「………愛の、魔法使い?」

俺の呟きを、耳さとく聞きつけたミーティは、嬉々として話し始めた。

「そうだよ〜☆ミーティは、お兄さんの願いをお空で聞いて、叶えてあげようとここまで来た愛の魔法使いなのダ☆」



『彼女くれ彼女くれ彼女くれぇ〜っ!』



あの叫びが、このある意味胡散臭い魔法少女の耳に……?

空気が、仄かに甘くなっている気がした。気のせいだろうか……。

「お兄さんの願い、想い、欲望、強く願う心……それらは星に乗って、あたしに届くの……その中でも、もっとも強かった願いを、あたしは叶えてあげたい……だから、お兄さんのところに来たんだヨ☆」

ミーティの発言が、それとなくもっともらしく聞こえてくる……ってか理由としてこれ以上無いくらい現在の状況に合ってやがる……。

「…………」

俺は少し呆けているらしい。一度頭を大きく左右に振って、コップに入っていたジンジャエールを一気飲みした後、腕を組んで考えてみることにした。



さて、では諸君。

目の前に魔女っ娘、あるいは魔法使いと言う、無を有に出来るトンデモ能力の持ち主、しかも自分の願いを叶えてくれると言う。さらには自分の願いは相手にとって理解済み。

さぁ……どうする?俺の答えは――。



「……俺の願いを、叶えてくれるのか!?」



「もちろんだよっ☆」

俺の問いかけに、心からの笑みを浮かべ、ミーティは答えた。



「る・らる・るくる・ぶるぁ・あんぐるふ・ぶるすこぁ・もるすぁ・る・らる・くるふるうら・る〜」

何か不思議な呪文を唱えながら、目の前でグル〇ルのク〇リのように、杖で部屋に魔方陣を書いているミーティ。つーか時々殴られた時の叫びやらファー〇ーの声やら混じっている気がするのは気のせいか?気のせいじゃないよな?

……まぁ眺めることしか出来ない以上は、何も口出しできねぇが………。

「――ぼ〜いん・ご〜りん・え〜りん・だ〜いん・あいん・つぁいん・ど〜まん・せ〜まん・えれく・れ・るとぅせ――」

……呪文詠唱が終わりに近づいてきたらしい。いよいよミーティの躍りも激しくなってきた。跳びはねる度にフリル付きスカートが捲り上がり、傷一つない可愛らしいお尻と微かに濡れた筋、しゅるりと滑らかに動く尻尾(作り物だよな?)が露になる。万華鏡のように現れては消え、かと思えば次の時には現れ、まるで命を持ったように動き回る。

そしてミーティは――某CCの第二期における杖の、天使の羽をそのまま蝙蝠の翼に変えたような魔法のステッキを振り上げた。



「――ミーティの名に於いて万象に命ず!愛を望む者に滔々たる愛を捧げよ!エール・ド・エーム☆」



眩いばかりの……ピンク色の光。それがステッキについた紫の羽根からまるで新体操のリボンのように溢れ出し、俺の部屋全体を染め上げていく――!

それはある種幻想的な風景だった。

彼女と俺を取り囲むようにぐるぐると回る光のリボン。まるでそのまま飛んでしまうのではないか、そう感じさせるほどにミーティのスカートはヒラヒラと捲り上がり、尻尾も羽根もふるふると風に震え、はためくドレスから伸びた細く雪のように白く脆い腕は、力強く魔法のステッキを天に向けている――。

彼女の足元の魔方陣が光った、次の瞬間、



「ィィィィィィイイイイイヤァッホォォォォォォオ☆」



満面の笑みでミーティはステッキを振るい、光のリボンは外へと一気に溢れだした。

俺はその風景を、ぼんやりと眺め……る……だけ……で………?

「ん………」

あ……ら………ま………ぶ………た………が………。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



……っふぅ★

さって、お兄ちゃんには眠ってもらって、あたしは準備に大忙しなのダ☆まずはお兄ちゃんについて色々知らないとね☆

「ディテール☆」

あたしの目の前に、A4版紙くらいの大きさの石板っぽいものが出現する……あ〜も〜!もっと飾り付けてぇっ!

……うんうん☆ケーキ屋さんのメニューみたくなってキュート☆

「えっと何々……?」

あたしは、ひとまず必要なものだけピックアップした。ん〜、寂しいんだねお兄ちゃん……へ〜、あの学校がお兄ちゃんのなんだ〜☆

「なら………☆」

あたしは指先を軽く舌で舐めると、指を一回パチンと弾いて――★

「『エーム・ド・エイビス☆★☆』」



魔方陣が、桃色から青色、紫色へと変化したのが確認できた。よ〜しっ、これでお兄ちゃんも………★

じゃ、あたしも、お兄ちゃんが目を醒ます前に……Escape To The Sky☆

「明日をお楽しみにッ★

それじゃ、Au revoir☆」



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