カードデュエリスト渚


 

 しかし――それでも、やはり『深紅の女騎士ヴァルキリアス』は惜しい。

 僕を負かした張本人のラサイアが、デュエル無効で構わないと言うのならば――

 「じゃあ、無効ということで……」

 僕は、そう口にしていた。

 自分でも、恐ろしく情けない発言であることは分かっている。

 「分かったわ――」

 軽く頷き、ラサイアはくるりと背を向けた。

 「さぞかし骨のあるデュエリストだと思ったけど、私の見込み違いのようね――」

 彼女の失望感は、ひしひしと伝わってくる。

 そして背後を一瞥もせず、彼女はそのまま雑踏に姿を消してしまった。

 

 ……ともかく、僕の手許に『深紅の女騎士ヴァルキリアス』を残すことができた。

 これで以降も、F-タウンでデュエルを続けることができるだろう。

 「うんうん、何か得した気分だな」

 そう呟き、腕を組んで頷く僕――

 デュエリストとしての誇りや、もっと大切な魂を失ってしまったことを――まだ、気付いてはいなかった。

 

 

 

 

 

 そして、あの敗北から一ヶ月――

 あれから、僕は一度たりとも勝つことができなかった。

 『深紅の女騎士ヴァルキリアス』はどこかの誰かに持ち去られ、とっくに失ってしまった。

 それ以降も敗北を重ね、僕のデッキは見る影もない有様。

 ラサイアとの戦いでレアカード以上に大切なものを失ってしまった僕は、もはやデュエリストの資格を返上していた。

 それでは、今もこのF-タウンでデュエルを繰り返している僕は何者なのか――

 

 「うんうん、『魅惑のスライム』に『セクシーエルフ』、『野良ラミア』か……」

 カードショップから出て来た僕は、購入した三枚入りパックの中身を確認する。

 いずれも平凡なカードだが、これでまたデュエルを行うことはできるのだ。

 残りカード十二枚でデュエルを行えなくなっていたが、これで総数十五枚、三回負けても大丈夫なのである――

 ――こういう風に、働いて稼いだお金を、僕はひたすらカードの補充に費やしていた。

 ただ、この町でデュエルを繰り返すためだけに――

 

 「……すみませ〜ん。君、デュエリストの人かな?」

 カードを充填したばかりの僕に対し、十八歳くらいのお姉さんが声を掛けてきた。

 おそらく、カードショップの前に張り込んで狙っていたのだ。

 「は、はい……! そうです……!」

 僕はこくこくと頷き、期待に胸を膨らませる。

 おそらく物欲しそうな視線を、僕は彼女に送っていただろう。

 このお姉さんは、どんなカードを持っているのか。

 どんなカードで、僕を嫐ってくれるのか――

 「ふふ……目を見れば分かっちゃうの。君、ドローンだよね?」

 ドローン――すなわち、「溺れた者」。

 このF-タウンにおいて、勝つ気もないのに快楽目当てでデュエルを繰り返す者のことだ。

 その数はかなり多く、ひたすらカードを買っては快楽目的のデュエルを繰り返している――僕もその一人。

 事実上カードを貢ぐだけの存在であり、まともなデュエリストとしては扱っても貰えないのだ。

 「じゃあ、デュエルを始めようか。私の自慢のデッキで、たっぷり気持ちよくしてあげるからね♪」

 微笑みながら、お姉さんはデッキを抜いたのだった。

 

 

 

 「『精を啜りしワームレディ』、プレイヤーを攻撃〜♪」

 「あ、あぁぁぁぁぁぁ……!!」

 地面から這い出したミミズの女性型モンスターが、僕へと迫ってくる。

 魅惑の笑みを浮かべている顔、そして上半身は美しい女性そのもの。

 しかしその下半身はワーム状になっており、ラミアに似た姿である。

 そんな妖女は次々と僕の雑魚モンスターをぬめった体で絡め取り、愛撫して撃破してしまったのだ。

 そしていよいよ、その攻撃を僕も受ける番になった――

 

 「あ、あぁぁぁぁ……」

 ワームレディはヌルヌルの胴体で僕の体を巻き上げ、たちまち拘束してしまった。

 じんわりと締め付けられ、ぬめったとぐろで全身を揉みほぐされる――それは、粘液にまみれた快楽。

 露出しているペニスがにゅるにゅるとワームの胴体表面に擦れ、たまらない快感をもたらす。

 「あぁぁ……きもちいいよぉ……」

 「ふふっ、可愛い顔。このまま巻き付かれてるだけで漏れちゃいそう? でも、特別にサービスしてあげる」

 お姉さんが軽く指を鳴らすと――頭をもたげたのは、ワームレディの胴部――いや、尻尾先端。

 そこには、見るからに淫靡な吸引口が備わっていたのだ。

 その穴の中に見えるヒダやイボには粘液が絡み、ごぷっごぷっとヨダレのように外にも溢れ出ている。

 『精を啜りしワームレディ』――その名の通り、あの吸引口で男の精を啜ってしまうのだ。

 「男の子だから、気持ちいい穴の中に注ぎ込みたいよね……?」

 「い、入れたい……! その穴、気持ちよさそう……」

 「ふふ……じゃあ、たっぷり出してね」

 僕の全身を絡め取るとぐろを掻き分け、尻尾の先端部分が僕の股間に押し付けられた。

 そして、肉棒にその吸引口が被さっていく。

 ぬるぬるぬる……と、内粘膜に擦れながら――

 

 「あうっ……!」

 その内部は表面と同じくヌルヌルで、温かい締め付けが肉棒を迎えていた。

 ワームレディは淫靡な笑みを浮かべながら、吸引口の中を動かしてくる。

 ヒダがぐにゅぐにゅと擦れ、イボがうねうねと蠢き――呑み込まれているペニスは、甘い快感に包まれていた。

 こんな刺激に、耐えることなどできない――

 「ほらほら、イっちゃえ〜♪」

 快楽に喘ぐ僕の様子を、目を細めて見守るお姉さんデュエリスト。

 彼女のカードに嫐られ、このまま僕は射精してしまうのだ――そんな嗜虐心が、快感を倍加させた。

 「あ、あぅ……! あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 粘っこく蠢く吸引口の中で、精液がびゅるびゅると迸る。

 ヌルヌルの穴の中で射精し、敗北の白濁を注ぎ込んでしまったのだ。

 「はい、君の負けだね♪」

 「あぅぅぅぅぅぅ……」

 僕はワームレディに精液を吸い取られながら、甘い恍惚感に浸っていた。

 デュエルで敗北し、強制的に射精させられてしまう――僕は、その屈辱感と屈服感の虜になってしまったのである。

 ドローン――「溺れた者」と呼ばれる理由が、そこにあった。

 

 

 

 ――こうして僕は、今日も敗北の味を愉しんだ。

 屈服の快楽を味わいたいがためにデュエルを重ね、カードを失っていく。

 そのカードがなくなった後は、稼いだお金をカードに変えて、それを奪われていく――快楽の代償として。

 僕はもう、奈落の底に堕ちていくしかなかった。

 デュエルで犯される快感に身も心も委ね、僕はひたすらF-タウンに溺れていくのである。

 

 

 −BAD END−

 

 



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