クラゲ娘
友人達と共に海水浴に来ていた僕。
海でひと泳ぎした後、人気の少ない砂浜に足を運んでのんびりしていた。
岩場の上に立ち、寄せては返す波を眺める僕――
「ん……? 何だ?」
なにやら、近くから男女が争うような声が響いてくる。
がなりたてる男の声と、か細い女性の声。
場所は、かなり近い。砂浜近くの岩陰だ。
「この! いいから大人しくしろ!」
「いやです〜、離して下さい〜」
「うるせえ、静かにしろ! どうせこんな場所に助けは来やしないんだ!」
「ケダモノです〜」
何やら、実に不穏な雰囲気である。
僕は恐る恐る砂浜に足を下ろし、そっと岩陰を覗き込んでいた。
そこにいたのは、いかにもガラが悪そうな男と可愛い女性。
20代半ばくらいの粗野そうな男は、海パン姿で女性の細い腕を引っ張っている。
そして女はちょうど20歳ほど、長髪にあどけない顔付き。
ひらひらとしたスカートのワンピースを着た彼女は、男に抗うように体をふるふると振っている。
男は強引に彼女の腕を掴み、その場に引き倒そうとしていたのだ。
「静かにしろっていってんだろ! すぐに終わるって!」
「止めて下さい〜、怒りますよ〜」
女性はどこかほんわかした様子で、呑気さすら感じられる。
……が、これは強引なナンパなどといった悠長なものではない。
人気のない場所で、強姦しようとしているのだ。
「くそっ、大人しくしやがれ! ……ちっ、縄でも持ってくりゃ良かったぜ!」
「やです〜。離して下さい〜」
いかにも天然風でのんびりした女性は、体をぶるぶると振って抗い続ける。
それは、非常に脆い抵抗のように見えた。
このままじゃ――
「……」
自慢ではないが、僕は腕っ節に全く自身がない。
しかし目の前の状況を、黙って見ているわけにはいかなかった。
そして、僕は――
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