神曲


 

 「いや、心当たりはないよ……」

 ほんの一瞬だけ、羨ましいという感情が沸き起こってしまった。

 しかし、ここで揺らいではいけない。

 僕は断じて、地獄に落ちるようなことなどしていないのだから。

 「ふむ……まあ、そうだろうな。君が非常に重い罪を犯した、あるいは犯すはずだったことは確かなのだから。

  善行も悪行も為さず、ただ無為に生きた――などというのは君には当てはまらない」

 いとも容易く(しかも僕には納得できない論理でもって)、ベアトリーチェは納得していた。

 「では先を急ぐぞ。あのアケローン川を越えれば、第一圏に到着する」

 そう言いながら、眼前に広がっている川に向かってベアトリーチェは歩き出す。

 アケローン川とやらには渡し船が通っており、その船着き場があるようだ。

 「あひぃぃぃ……!」

 「た、助けてぇぇぇ……」

 あちこちで罪人達がハチ娘やハエ娘に襲われ、周囲に満たされる快楽の悲鳴。

 それを振り払うようにきつく地面を踏みしめながら、僕はベアトリーチェの後に付き従っていた。

 どんな事があっても、犯していない罪など認めてなるものか――そう、心に強く誓いながら。

 

 

 

 

 To be continued...

 

 

 

           ※          ※          ※

 

 

 

 青年「ちなみに、以後の階層はこういう感じらしいぞ」

 ベアトリーチェ「実際の『神曲』と比べて確かめてみるがいい」

 

 

 基本的には各罪人それぞれに1人〜数人の担当官が付き、永遠にその女性の手で罰を行使される。

 なお地獄とは魔界の時空ループ空間に存在するため、他の魔界や人間界とは時間の流れ方が異なる。

 罪人達は地獄という閉ざされた時空間の中で、永遠に責め苦を負うのである。

 なお罰を執行する担当官も死神と同じく職員であり、当然ながら仕事外の時間も存在するようだ。

 ただし地獄(時空ループ空間)にいる罪人の時間感覚では、寸暇なく永遠に罰を行使され続けている。

 

 ・地獄前園

  善行も悪行も為さず漫然と人生を費やした者は、天国にも地獄にも行けずにここへ放置される。

  そして、ハチ娘やハエ娘の生殖の道具にされ続けるのである。

 

 ・第一圏 辺獄

  とりわけ大きな罪はないものの、なんとなく悪徳をなしてきた者が落ちる地獄。また、評価の難しい者もここ。

  とはいえここでは特に受ける罰もなく、大広間にただたむろすることになる。

  この広間から出ることが許されていない以外、罪人達の行動はかなり自由で談笑なども可能。

  またこの広間は罰を執行する担当官達の休憩場所としても用いられ、彼女達から思わぬ悪戯を受けることも。

 

 ・第二圏 愛欲者の地獄

  性欲に狂い、他者に迷惑を掛けた者が落ちる地獄。

  大勢のサキュバスに様々な手段で責められ、強制的に射精させられ続ける。

  なお、女性への強姦に対しては別の地獄が用意されている。

 

 ・第三圏 貪食者の地獄

  暴飲暴食の罪を犯した者が落ちる地獄。

  全身を食物で弄ばれ、舐められ、恥辱の限りが尽くされる。

 

 ・第四圏 貪欲者の地獄

  金に対し貪欲な者が落ちる地獄。

  罪人はそのペニスを女性の口内に納められ、吸われながら舌で刺激を受け続ける。

  亀頭に舌が這い、唇が幹を滑り、口腔粘膜で嫐り上げられ、永遠に悶絶し続けるのである。

 

 ・第五圏 憤怒者の地獄

  度を超えた怒りで周囲に迷惑を及ぼした者が落ちる地獄。

  「スティージュの沼」と呼ばれる妖しい粘液の沼に漬けられ、全身をねっとりと責められ続ける。

 

 ・第六圏 冒涜者の地獄

  神や天使、または上級淫魔など超常の存在を冒涜した者が落ちる地獄。

  様々な射精器具で男性器を責め嫐られ、甘い快感に悶え続ける。

 

 ・第七圏 暴力者の地獄

  生前に度を超えた暴力を振るった者が落ちる地獄で、暴力の種類によって細分化されている。

    ・第一の環 隣人への暴力

     他人に対して暴力を振るった者が落ちる地獄。

     「フレジェトンタの河」と呼ばれる触手の河に投げ込まれ、永遠に絡まれ続ける。

    ・第二の環 自身への暴力

     自殺や自傷行為など、自分自身に暴力を振るった者が落ちる地獄。

     奇妙な植物に包み込まれて全身が一体化し、延々と精液を吸われ続ける。

    ・第三の環 他種への暴力

     自分より弱い動物を虐待した者が落ちる地獄。

     下等な搾精生物に全身をたかられ、精を搾り尽くされてしまう。

 

 ・第八圏 悪意者の地獄

  深い悪意の元で恥ずべき行為を行った者が落ちる地獄で、罪の種類によって細分化されている。

    ・第一の嚢 女犯者

     女性を強姦した者が落ちる地獄。

     大勢の女性に責められ、弄ばれ、凄まじい恥辱を受け続ける。

    ・第二の嚢 自然破壊者

     悪意をもって自然を汚した者が落ちる地獄。

     女性の唾液や糞尿の海に漬けられ、その全身を汚し尽くされる。

    ・第三の嚢 神仏売買者

     神の名を騙って金を集めたり、聖なる物品を売買して金儲けした者が落ちる地獄。

     大小さまざまな箱を並べられ、その中にペニスを突き入れることを強制される。

     その箱の中には搾精生物やサキュバス、搾精器具などが入っており、何をされているのかも分からず射精し続ける。

    ・第四の嚢 汚濁者

     怠惰の余り、全身を不潔にしていた者が落ちる地獄。

     泡にまみれた女性達の手が全身に這い、延々と洗われ続ける。

    ・第五の嚢 汚職者

     自身の地位を悪用し、不当な利益を得た者が落ちる地獄。

     何本もの女性の手に股間をまさぐられ、手淫を永遠に味わい続ける。

    ・第六の嚢 偽善者

     度を超えた偽善行為を行った者が落ちる地獄。

     搾精の魔力がこもった衣服を強引に着せられ、延々と絶頂し続ける。

    ・第七の嚢 盗賊

     盗みを働いた者が落ちる地獄。

     女蛇妖に巻き付かれていたぶられ、そのまま丸呑みにされて消化されてしまう。

     しかし罪人の体はたちまち再生し、その途端に捕食。永遠に捕食され続ける。

    ・第八の嚢 虚言者

     度を超えた嘘吐きが落ちる地獄。

     無数の触手がうねる大きな壷に全身を漬けられ、精を搾られて悶え狂う。

    ・第九の嚢 乳甘者

     度を超えて他者に依存し、甘え続けた者が落ちる地獄。

     何十もの乳房に押し包まれ、全身を責め嫐られることになる。

    ・第十の嚢 詐欺師

     価値のないモノを偽り、高い金で他者に売りつけた者が落ちる地獄。

     全身に様々な液体が塗り付けられ、たっぷりと嫐り抜かれる。

 

 ・第九圏 裏切者の地獄

  最も重い罪とされる、裏切り行為をはたらいた者が落ちる地獄。

  首から下が搾精肉に埋められ、無限の絶頂を体験させられる。

  他にも様々な罰の行使システムが存在しており、最も過酷な階層である。

 

 


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