妖魔の城


 

 疲れていた俺は、アパートに戻ってすぐ眠りに就いた――そのはずだった。

 

 「ん……? ここは……?」

 ふと目覚めてみると、全く見覚えのない場所。

 ちょうどあのノイエンドルフ城内のような、実に豪華な一室だ。

 そんな不思議な場所で、俺はだだっ広いベッドに体を横たえていた。

 「これは……夢か……?」

 夢にしては、奇妙なほどに現実感を帯びている。

 視覚も聴覚も、嗅覚さえしっかりしている状況――

 ただ、なぜだか体は全く動かなかった。

 これは、いったい――

 

 「ここは、夢の世界――のようなものだ」

 「ウ、ウェステンラ……!?」

 唐突に、部屋の中に現れたのはウェステンラだった。

 この異変の原因は、こいつなのか――?

 「お前、いったい何をした……?」

 「ここは、現実世界とは異なる異空間――夢を媒介にし、我が生み出した仮想世界だ。

  とは言え単なる夢ではなく、現実とも密接にリンクしているのだが――

  ――まあ貴様の至らぬ頭では、夢みたいなものと理解して問題はない」

 偉そうに講釈を垂れるウェステンラ。

 「なぜ、体が動かない……?」

 「我が、そういう風にしたからだ。そうでなければ、抵抗するだろう……?」

 そう言いながら、ウェステンラはひょいとベッドに乗ってきた。

 「お、お前……何を……」

 「今日は良く働いたな、啓。我から、褒美をやるとしよう――」

 「や、やめ……」

 ウェステンラは寝転がったまま動けない俺にのしかかり、そのまま唇を重ねてきた。

 「ん、んん――」

 柔らかい唇の感触と、ほのかな温もり。

 そして、甘い味が口の中に広がる。

 「……ぷはぁ。こんなことをされたら、現実世界なら抵抗するだろう?」

 唇を離し、ウェステンラは微笑んだ。

 「と、当然だ……!」

 「だから、この夢の世界に連れてきたのだ――」

 そう言いながら、ウェステンラは俺の顔を覗き込む。

 「さて、どうしてほしい……? 思い通りの快楽を与えてやるぞ……?」

 「ぐ……そんなの、いらん……!」

 「やれやれ、強情だな……」

 そう呟いたウェステンラは、ふと何かを思い付き――にんまりと笑みを浮かべた。

 「そう言えば、貴様――我の耳が、ずいぶんとお気に入りだったな」

 ウェステンラの尖った耳が、ぴこぴこと小動物のように動く。

 「ほぉら……お前の大好きな、我の耳だぞ」

 「……確かに、その尖った耳は可愛くて仕方がないと思っていた」

 誰が、お前の耳なんぞ気に入るか――

 ――なんだ? 本音と建前が逆になってしまったぞ――!?

 「おい、今のはいったい……!」

 「言ったではないか。ここは、我が生み出した世界。我のルールで動くのだ――」

 ウェステンラはにんまり笑うと――そのまま、動けない俺の服を強引に脱がしてきた。

 そして、俺の股間を覗き込み――肉棒を、右手で軽く支える。

 「それでは望み通り、この耳で可愛がってやるとしよう……」

 「う……」

 肉棒に添えられている手の感触だけで、むくむくと勃起してしまった。

 「しかし……耳が好きとは、なかなか変態よのう……」

 「ち、違う……」

 「やれやれ……こんなに大きくしておいて、何が違うのやら……」

 俺の言葉には耳を貸さず、ウェステンラは俺の股間へと顔を近づけてくる。

 そして、顔を僅かに傾け――その尖った耳が、ペニスの先端部へと触れた。

 「あう……」

 思ったよりふにゃりと柔らかく、体温はそう高くない。

 耳たぶでペニスに触れられるのは、なんとも不思議な感覚だった――

 「ほれほれ……どうだ……?」

 そのままウェステンラは、耳をぴこぴこと動かしてくる。

 その動きで、亀頭分がぺしぺしと耳で叩かれ、表面をさわさわと撫でられた。

 「うぅぅ……」

 柔らかい耳たぶが、しゅるしゅると裏筋に擦れる。

 尿道口付近が、耳たぶにさすり回される。

 そのソフトでやんわりした感触は、不思議な快感を生み出した――

 「う、あぁぁぁぁ……」

 「ふふ……そうだ、素直に感じるがいい。そのまま漏らしても構わんのだぞ……?」

 自信たっぷりに笑いながら、ぴこぴこと耳を動かし続けるウェステンラ。

 小動物のように動く耳が、俺のモノをぺしぺしと叩き――

 耳の穴付近の複雑な凹凸が、敏感な亀頭に繊細な刺激を与える。

 「う、うぅ……」

 可愛い耳で、俺のモノを刺激されている――

 その背徳的な興奮だけで、俺はたちまち限界に向かっていった。

 「ん……先走っているのか。変態め……」

 意地悪げに笑いながら、頬ずりするように顔を動かしてくるウェステンラ。

 複雑な耳の凹凸が、ペニスの敏感なところをしゅるしゅると刺激する。

 裏筋も尿道口も耳で耳たぶで撫で回され、そして――

 「あ、あぅぅぅぅぅ……!」

 とうとう、精液がドクドクと溢れ出てしまった。

 白濁はウェステンラの耳に降り掛かり、ねばねばと絡みついてしまう。

 「む……随分と出したな。こうして、我の耳を汚したかったのだろう……?」

 可愛い耳に精液を粘り着かせながら、ウェステンラはくすくすと笑った。

 少女の耳に、たっぷりと白濁を浴びせる背徳感――それは、異様な興奮を沸き起こしていた。

 

 「さて……では、いよいよ本番といくか」

 前戯は済んだとばかりに、ウェステンラは俺にのしかかってくる。

 そして騎乗位の体勢でまたがり――俺を見下ろしながら、少し複雑な表情を浮かべた。

 「なお……どうでもいいが、我は処女だ」

 「あぁ? ……なんだと?」

 ウェステンラが、処女……?

 それは、何かの冗談か?

 サキュバスなのに、どういうことだ……?

 「おい、どういうことなんだ……!?」

 「……さらりと流そうとしていたのに、突っかかるのう」

 ウェステンラは、不機嫌そうに頬を膨らます。

 「……今まで我は、口や尻尾などを通してしか精を摂取したことがない。

  女性器を用いての搾精は、初めてということだ……まあ、大した話ではない。たぶん」

 ――どう考えても、それは大した話だ。

 こいつは少女の外見ながら、何百年も生きているんじゃなかったか……?

 「おい、いいのか……? そんな――」

 「そうだな……最低限の責任は取ってもらおうとしよう。

  四百年以上守り通した処女をくれてやるのだ。代償に貴様の一生を貰ってもなお釣りが来るな――」

 「お、おい……」

 恐ろしいことを言いながら、ウェステンラはにんまりと微笑み――

 おもむろに、腰を下ろしてきた。

 「う……!」

 「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 驚くほど狭いぬかるみの中に、俺のモノがずぶずぶと沈み込んでいく。

 その中は熱くてヌルヌル、肉壁がきゅっとせばまってペニスを押し返しているかのよう。

 初めて迎える異物に対し、きつい締め付けを返しているのだ――

 「……安心しろ。我はサキュバス、破瓜の痛みや苦しみはない。

  まあ……その、少々ヘタかもしれんが……」

 「あ、ぐぅぅぅぅぅ……!」

 返事も出来ないくらい、ウェステンラの蜜壺は心地良かった。

 肉壁の柔らかさと、その締め付けが素晴らしい――これが、上級淫魔と交わった快楽。

 俺はそれを実感し、ウェステンラの下で身を緩ませた。

 「ん……膣内を動かすのは、意外に難しいな。ピストンの方がいいのか?

  ……こうやって、腰を浮かせて……ん……」

 ウェステンラは、腰を上げて俺のモノを抜きにかかる。

 肉壁がきゅっと包み込み、抜けていく俺のモノを名残惜しそうに握っているかのようだ。

 そんな蜜壺の握りをヌルヌルと滑りながら、亀頭の辺りまで俺のモノが抜けていく――

 「……えいっ!」

 するとウェステンラは、一転して腰を沈めてきた。

 ずぶずぶと、狭い肉洞を押し行って亀頭がめり込んでいく快感――

 「あ、あぅぅぅぅぅぅ……」

 そんな挿れる快感をじっくり味わわされ、俺はウェステンラの下で悶えた。

 「なるほど、これで正解のようだな。では、続けるぞ――」

 「あぁぁぁぁぁ……!」

 再びウェステンラは腰を上げ、じっくりと膣内からモノを抜いていく。

 カリがずるずると逆方向に擦れ、柔肉に握り込まれながらも引き抜かれていく感触――

 「――えい!」

 「あ……! あぁぁぁぁぁぁ……」

 そして、一転して腰を落としてくる。

 狭い肉洞を亀頭が分け入り、ずぶずぶと沈み込んでいく感触――

 その挿入感は、腰が震えてしまうほど気持ちいい。

 そして、再び腰が浮かされ、ペニスをゆっくりと引き抜いていくのだ。

 「ふふ……気持ちいいか?」

 「あぅぅ……す、すごい……」

 腰を浮かして、じっくりと引き抜き――

 腰を落として、ずぶずぶと沈み込ませ――

 快楽のピストンを、ウェステンラはじっくりと与えてくる。

 そんな狂おしい往復刺激に、長持ちするはずもなかった。

 「あ……だめだ……もう……!」

 「ん……出るのか? 中で射精するのか……構わんぞ、出すがいい……」

 そのまま、ずぶずぶと腰を下ろしてくるウェステンラ。

 亀頭を揉み潰すようにしながら、狭くぬめった肉洞をくぐり抜けていく感触――

 「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 そしてウェステンラの腰が最後まで落とされ、ペニスの先端が膣奥に届いた瞬間――

 俺のモノが、どくどくと精を放ち始めた。

 「ん……出ているな……」

 腰を落としたまま、ウェステンラは満足げな笑みを浮かべる。

 その膣奥の中に、俺はたっぷりと精液を吸い上げられたのだった。

 

 「……ふぅ。次は、中を動かしてみるか……」

 「おい、まだ……あ、あぁぁぁぁぁ……」

 ウェステンラの中が、不意にうねうねと蠢き始めた。

 ペニスを巻き込んだまま、肉壁がこまめにうねっているのだ。

 ヒダが擦れながら巻き付いてくるような動きは、気持ちいいの一言。

 このまま、すぐに射精してしまいそうだ――

 「ん、ん……なんだ、結構簡単ではないか……」

 「や、やめろ……やめ……」

 「む……気持ちよくないのか?」

 さらにウェステンラは、ぐねぐねと膣内を動かしてくる。

 絡みつき、巻き付き、揉みしだき、締め付け――

 肉棒に浴びせられる、甘く狂おしい刺激。

 たちまち俺は、蜜壺の中で限界を迎えてしまった。

 「うぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 「あ……」

 俺の射精を膣内で受け止めながら、ウェステンラは驚いたような顔を浮かべる。

 「……なんだ、気持ちよかったのではないか。そうならそう言えばいいのに……つい、瞬殺してしまったぞ」

 そして――勝ち誇ったような、ウェステンラの顔が俺を見下ろした。

 初めて自分の武器の使い方を覚え、それで獲物を仕留めたような顔だ。

 そんな眼差しを受けながら、俺はウェステンラの膣内に精液を撒き散らしてしまったのである。

 搾り取られた、という屈服感を植え付けられながら――

 

 「だらしないのう……つい先刻まで処女だった我に責められて、そのザマか」

 俺に跨ったまま、ウェステンラは満足そうに微笑む。

 「初めて味わう下の口での捕食……なかなか素晴らしいものだな。

  今日は働き詰めで腹が減っている。もう一度くらい、いただくとしようか――」

 「ほ、褒美じゃなかったのか……?」

 これでは、ウェステンラに褒美をあたえているようなものじゃないか――

 「ふ……偉そうな口を叩くなら、少しは抵抗してみろ……ほら、ほら、ほらぁ……!」

 そのままウェステンラは、ゆさゆさと腰を揺すってきた。

 さらに体を前に倒し、俺の方にもたれこんでくる。

 「ん……」

 唇を交わしながら、腰をびったんびったんと打ち付けるように振り立てるウェステンラ。

 「ん、んんんん――!!」

 その激しい腰使いにより、俺のモノは蜜壺の中でこね回された。

 結合部からは、ぬるぬる、ぐちゅぐちゅと淫らな音が響き続ける。

 柔肉は俺のモノを搾るように揉みしだき、そのままじっくりと締め付けられ――

 俺はぐにゃぐにゃに体を緩ませ、ウェステンラのされるがままとなってしまった。

 「ふふっ……だいたい、お前の悦ばせ方は習得したぞ。

  我の膣は、このままお前を可愛がる専用になってしまうかもなぁ……」

 くすくすと笑いながら、ウェステンラはねちっこく俺を責め上げていく。

 まるで、大蛇が獲物に絡むような妖しい腰使い。

 サキュバスに、じわじわと餌食にされてしまう――そんな実感。

 ヒダがにゅるにゅると蠢いて、亀頭やカリを撫で回し――

 俺はそのまま、こみ上げてくる射精感に身を任せた。

 「あぐ……もう、出る……!」

 「ふふ、いいぞ……我の中で、思いっきり果てるがいい……」

 「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 そのまま俺は、腰を突き上げてウェステンラの中に精液を注ぎ込んでいた。

 四回目の射精とは思えないほど、大量に迸る精液。

 それは、ウェステンラの狭く温かい膣内にじゅるじゅると吸い上げられていく。

 「あぅぅぅぅ……」

 俺はウェステンラにしがみついたまま、とろけるように甘い放出感に身を任せた。

 妖しい肉洞に、じっくりと精を搾り取られていく快感――

 ありったけの精を、ウェステンラに捧げる屈服感――

 「ふふっ……こんなにとろけおって。愛い奴だ……」

 ウェステンラは俺を抱き締めたまま、最後の一滴まで精液を搾り取ったのである。

 

 「ふぅ……これで、我は満足したぞ」

 俺の体から、ウェステンラはようやく離れた。

 同時にとろけそうな恍惚感が薄れ、意識や理性が戻ってくる。

 それだけでなく、体も動くようになったようだ。

 「……ったく、訳の分からんことを……何が褒美だ……」

 「相変わらずの強情振りだな。我を慕っておるくせに、素直になれば良いものを……」

 「……ふざけるな。誰がお前なんぞ――」

 「どこの誰だったかなぁ……? 我の屍に泣きすがって『俺を一人にしないでくれー!』と叫んでいたのは……」

 「う、うぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」

 俺は布団の中に潜り込み、芋虫のように身を丸めるしかなかった。

 それは、言わないでくれ。

 それは、もう忘れてくれ――

 その事実は、間違いなく今日一番の大失態だ。

 「ふふっ、照れるな照れるな……」

 ウェステンラは呆れたように、俺から布団を引き剥がした。

 そして、俺の頬へと軽くキスをする。

 「……安心しろ。我はどこにも行かんし、お前を一人にもしない。ずっとずっと、お前の側にいるさ」

 「……」

 俺は、気恥ずかしさに黙り込むしかなかった。

 そんな俺に、ウェステンラは優しく微笑む。

 「……では、今度こそ本当の褒美だ。憎悪と暴力で彩られた貴様の生。少しは夢の世界で癒すがいい――」

 「え……?」

 不意に、視界がぐにゃりと歪み始めた。

 ウェステンラごと、周囲の光景は消えていき――

 そして、一転して草原に変わる。

 涼やかな風、ひどく懐かしい感覚――

 ここは、どこだ――?

 

 「啓……」

 遠くから、どこかで聞き覚えのある女性の声がした。

 「だ、誰だ――?」

 向こうに見える人影は――

 和服を着た、清楚で優しそうな女性。

 眼鏡に着流しの、穏やかそうな男性。

 俺は――なぜか、涙をこぼしてしまった。

 

 

            ※            ※            ※

 

 

 消灯された真っ暗な部屋――

 ベッドで眠る須藤啓の脇で、ウェステンラが静かにたたずんでいる。

 「とうさん……、かあさん……」

 涙をこぼしながら寝言を口走る須藤啓。

 「啓……今は、ゆっくり休むがいい……」

 ウェステンラは優しい顔で、静かに呟いた。

 あの時、マルガレーテが口にした言葉。

 いつか、大きな矛盾が須藤啓の心を引き裂く――

 それがどういうことなのか、ウェステンラには検討がついている。

 「……我は、お前を信じている。だから、お前も――」

 

 ウェステンラの口にした言葉も、夜の闇へと溶けていった。

 

 エピローグ 前編・僕

 エピローグ 後編

 



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