妖魔の城


 

 かつかつと足音を立てながら、壮麗な城内を進む僕と沙亜羅。

 迷宮のようになっているのかと思いきや、ひたすらに一本道である。

 そしてしばらく進むと、大きな木製の扉に突き当たった。

 

 「行き止まり……いや、先に抜けられるみたいだな」

 どうやら、扉に鍵は掛かっていないようだ。

 しかし、この奥で何が待ち受けているかは分かったものではない。

 「気をつけろよ、沙亜羅。罠があるかもしれないし、待ち伏せされているかも――」

 「まどろっこしい。こうすればいいのよ!」

 沙亜羅は突然にサブマシンガンを抜き、前方の扉に銃撃を食らわせた。

 無数に放たれた弾丸が木製の扉を貫通し、部屋の中へと浴びせ掛けられる。

 マガジン一つ分の弾丸が全て部屋の中に撃ち込まれ、ようやく沙亜羅は射撃を終えた。

 「……これでいいでしょ。行くよ、優」

 「おいおい、なんて無茶な――」

 僕がそう言いかけた次の瞬間、沙亜羅の銃撃によって穴だらけにされたドアが僅かに開いた。

 その隙間から飛び出してきたのは、ピンク色の触手……いや、舌?

 「えっ……!?」

 完全に不意をつかれた沙亜羅は、その体をしゅるりと舌に絡め取られる。

 「こ、この……!」

 まさに、一瞬の早業。

 僕が反応するよりも早く、舌に絡め取られた沙亜羅の体が部屋の中へと消えてしまった。

 ほんの一瞬で、沙亜羅は扉の向こうへと引き込まれたのだ。

 「沙亜羅ッ!」

 僕は扉を蹴破り、一気にその部屋に踏み込んでいた。

 次の瞬間、ぐらりと視界が揺れる。

 「こ、これは……?」

 部屋の中には、甘い香りが充満していた。

 まるで、ピンク色のような周囲の空気。

 不快ではなく、むしろ陶酔感を伴いながら体の力が抜けていく。

 意識が朦朧とし、思考が深い闇へと落ちていく――

 やはり、罠だったのだ。

 意識が混濁していく中で、僕は二人の少女の人影を見たような気がした。

 

 

 

 

 

 「……う、うん?」

 ふと、目を覚ます僕。

 ここは……どうやら、さっきの部屋だ。

 室内には窓があり、綺麗な夜景が映っている。何階に相当するのか分からないが、かなり高いことは確実。

 どうやら僕は、しばらく意識を失って――

 「な、なんだこれ!?」

 立ち上がろうとした瞬間、僕は異常に気付いた。

 座ったままの体勢で、僕は木製の椅子に腕を固定させられていたのだ。

 腕は背もたれの後ろに回され、錠で固定されている。

 そしてズボンや下着は膝まで下ろされ、萎縮した股間が露出させられていた。

 これは――!?

 

 「起きるのが早いです。普通の人間なら、まだぐっすりなのに……」

 次の瞬間、部屋に響いた少女の声。

 「すごいよねー。さすが侵入者、普通の人間より頑丈なのかな?」

 しかも、聞こえてきた少女の声は二人分。

 いかにも無邪気そうな女の子と、落ち着いた雰囲気の少女である。

 いつの間にか部屋にいたメイド服の二人は、揃って僕の顔を覗き込んできた。

 「じゃあマイちゃん、どっちが搾っちゃうー?」

 「えっと……メイちゃんはいつも男の人を搾り尽くしてしまいます。今回は私が頂きたいです」

 「やだよー。ボクが一番搾りもらうのー!」

 あどけない少女二人は、そんな会話を交わしている。

 メイと呼ばれた少女は、ボーイッシュなショートカットの娘。

 いかにも健康的な雰囲気で、大きな瞳に楽しそうな色を浮かべている。

 人間でいえば中学生程度だろうか、だがその胸はかなり大きい。

 エプロンドレスの胸の部分の膨らみが、自己の存在を強く主張していた。

 そしてマイと呼ばれた少女は、ロングヘアの内気そうな娘。

 いかにも健康的で元気溌剌なメイと相反し、実に物静かな雰囲気を携えている。

 やはり年齢は中学生程度、そして胸の膨らみも寂しいものだ。

 双子なのか、顔付きは非常にそっくりな二人の美少女――

 しかし、その雰囲気は全く相反していたのだった。

 

 「さ、沙亜羅は……!? 沙亜羅はどこだ!!」

 僕は何よりもまず、沙亜羅がどこへ消えたのかを尋ねていた。

 「沙亜羅って……あの女の子? ひょっとして、キミの彼女?」

 メイとかいう少女は、にんまりと目を細める。

 「その方は、アステーラ姉様が連れて行かれました」

 そう答えたのは、マイとかいう少女。

 「アステーラ……姉様だと? お前達の姉か?」

 そいつが、あの長い舌の主か……?

 「ううん、違う違う。アステーラ姉さんは、ボク達の先輩なの」

 「私達姉妹は、お優しいアステーラ姉様を心から慕っております」

 ……つまり、この二人よりも格上で先輩のサキュバスというわけか。

 こいつらは、この城内のメイドも兼ねている。

 そういう仕事には、当然ながら厳しい上下関係があるのだろう。

 「そのアステーラとかいうヤツに、沙亜羅はさらわれたんだな!?」

 「ええ。しかし、アステーラ姉様は心優しい人。沙亜羅という方に危害を加えたりは致しません」

 実に丁重な態度で、マイはそう告げた。

 「……そうそう。その沙亜羅みたいに、野蛮なことはしないから」

 一方のメイは、いかにも批難めいた目で木製の扉に視線をやる。

 その扉は、沙亜羅の銃撃によってボロボロになっていたのだ。

 「今頃きっと、アステーラ姉さんに体中ナメナメしてもらってるよ」

 「素敵です……アステーラ姉様の舌技を思い出しただけで、私――」

 メイは目を細め、マイはなぜか頬を赤らめていた。

 「キミも、アステーラ姉さんに捕まえられたほうが良かったかもねー♪

  気持ちよすぎてオシッコ漏らしちゃうまで、オチンチン舐めてもらえるんだよ?」

  ずいっと僕に顔を近づけてくるメイに対し、マイは眉を寄せる。

 「メイちゃん……その言い方では、私達がハズレみたいです」

 「そーか、そーだね。ボクだって、アステーラ姉さんには負けないよー!」

 そう言いながら、メイは豊満な胸を突き出した。

 「ボクのおっぱい、大きいでしょ? このおっぱいでキミのオチンチン挟み込んで、たっぷりいじめてあげる♪」

 「な……!?」

 メイド服の上からでもはっきり分かる、その豊かな胸。

 それを誇示するように揺らしながら、メイは僕にくりくりした瞳を向けていた。

 「ボクのおっぱい、凄く柔らかいんだよ。このおっぱいで挟まれて、キミ、何秒ガマンできるかな?

  どれだけ頑張っても、関係なく搾り取っちゃうんだけどね。何度も、何度も……あはは♪」

 淫らな言葉を並べながら、屈託のない笑みを見せるメイ。

 僕のペニスは、みるみる大きくなっていった。

 「あ〜! もう反応しちゃった! じゃあ、さっそく始めようか……」

 いそいそと胸元のボタンを外すメイ――その肩を、マイがぐいっと引っ張った。

 「メイちゃん、いつもずるいです。私も、獲物さんと遊びたいです……」

 ロングの金髪を揺らし、マイは頬を膨らませる。

 「でも〜、マイちゃんオチンチン挟めるほどおっぱいないじゃん。ねぇ?」

 メイは、僕に同意を求めてきた。

 どう反応すれば良いのか分からず、僕はただ呆然とするのみ。

 「た、確かに挟めるほど胸は大きくないですけど……!」

 マイは、口をきゅっとへの字に曲げていた。

 「お、おっぱい以外の場所なら挟めます! 太股とか、脇の下とか、膝の裏とか……」

 メイへの対抗心を滲ませながら、おずおずと告げるマイ。

 「なるべく、上手に気持ちよく精液搾ってあげますから……おっぱいより、そっちの方がいいですよね?」

 僕は思わず、マイの下半身に視線をやってしまった。

 膝から上は高級そうなスカートで隠されており、そこからすらりとした足が伸びている。

 きめ細やかな肌に、少女特有の柔らかそうな肉付き。

 その白く綺麗な太股に自分のペニスが挟み込まれるところを想像しただけで、股間が奮い立ってしまう。

 「あ、また反応しちゃった……。でも、この獲物はボクがもらっちゃうんだから」

 「メイちゃん、強引。ずるいです……」

 そうは言ったものの、すごすごと部屋の隅へと引き下がっていくマイ。

 どうやら、彼女達の間で話が付いたようだ。

 

 「えへへ……♪」

 メイはメイド服の胸元をはだけ、あどけない顔付きに不釣り合いなほどの巨乳をあらわにする。

 こぼれんばかりの豊満さにして、形は全く崩れていない。

 その綺麗な胸に、僕の視線は吸い寄せられてしまった。

 ペニスをびくびくと揺らしながら、おそらく僕は乞うような表情を浮かべていただろう。

 「えへへ、ムニムニ挟まれて、揉み込まれて、ドピュドピュって何度もイかされたいでしょ?」

 メイはたわわな胸を揺らしながら、にこやかに淫らな言葉を並べた。

 「お兄さん悪い人じゃなさそうだから、死ぬまで搾ったりしないよ? ずっとボクの獲物だけどね……くすくす」

 「な、そんな――!」

 ――そうだ。

 場の雰囲気に呑まれていたが、僕は囚われの身なのだ。

 とにかく今は、沙亜羅を助け出さなければならない――

 そんな信念が今、揺らぎかけていることは否定できない。

 捕らえられた沙亜羅が危険な目に遭っていないというのは、まず間違いなく事実だろう。

 こいつらは、捕らえた獲物を弄ぶことに悦びを見出す連中。せっかくの獲物を傷付けることはないはず。

 そして男の淫魔など存在しないということが、別の意味でも沙亜羅の身の安全を保証している――

 いや……僕は、何を考えているんだ!?

 それは、沙亜羅をこの連中の手に委ねてしまうということじゃないか!

 

 「あれ、どうしたの? おっぱいでイかされたくないの……?」

 そう囁くメイの言葉は、まさに悪魔の囁き。

 少しでも気を抜けば、喜んで彼女の獲物になってしまいたくなる。

 そして、僕は――

 

 

 獲物になる

 拒む

 


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