「あらあら、食べられるのは怖い？」

　イソギンチャク娘は、ふとうつむいて腕を組む。

　「そうねぇ……　私の頼みを引き受けてくれるのなら、このまま貴方を解放してあげてもいいわ」

　「な、なんでも聞くから、命だけは……！」

　「私の幼い娘を、一年ほど預かっていてほしいの」

　「娘……？　何だって預かるから、どうか助けて……！」

　青年は、ひたすらに懇願した。

　それで命が助かるなら、一年だって十年だって預かろう。

　「――そう、分かったわ。助けてあげる」

　彼の必死な目を見て、イソギンチャク娘はうなづいた。

　青年の体は触手にぐいと持ち上げられ、そのまま徐々に浮上させられた。

　たちまち彼は海面を出て、砂浜まで運ばれる。

　「はーっ、はーっ……！」

　砂浜に座り込み、息を荒げさせる青年。

　すると波間から、イソギンチャク娘の上半身がぬっと姿を見せた。

　「私は、用事で一年ほど北方の海に出かけなければならないの。そんな極寒に娘を連れて行くわけにもいかない」

　彼女は、ゆっくりと顔を上げる青年に告げる。

　「一年経ったら、迎えに行くから。娘をひどい目に合わせたら……　分かってるわよね、どうなるか」

　「わ、分かってる……　面倒はちゃんと見るから」

　青年は息を切らせながら言った。

　大学生である彼は、親元から離れて独り暮らしをしている。

　一年の間ならば、少女一人程度なら十分に養っていけるだろう。

　「面倒と言っても、ほとんど世話の必要はないわ。私達は陸でも暮らしていけるから、貴方の部屋に置いておくだけでいいの。

　　ただし、エサだけはちゃんとあげることね……ふふふ」

　「エサ……？　何を？」

　青年は、危うくこのイソギンチャク娘に食べられるところだった。

　ということは、その娘とやらも肉食なのか……？

　「ふふ、その時に分かるわ」

　イソギンチャク娘は淫靡に笑った。

　「で、その娘はどこに――」

　しゅる。

　青年がそう言い掛けた時、彼の二の腕に何かが巻きついた。

　「な……？」

　青年の腕には、全長20cmほどの物体がしがみついていたのだ。

　それは、人の姿――それも可愛らしい少女の姿をしている。

　ただし、人型なのは上半身だけ。腰から下は、イソギンチャクが逆さになって生えていた。

　そのイソギンチャクの触手部分を伸ばし、少女は青年の腕にくっついてきている。

　「これが、娘……？」

　思ったよりも全然小さい。まるでオモチャのようだ。

　少女はにこにこと笑いながら青年の腕に両手を伸ばし、きゅっと抱きついてきた。

　「あらあら、随分と懐かれたようね」

　イソギンチャク娘は笑う。

　「名前は……？」

　「名前って、この娘の……？　コイソよ。イソギンチャク娘のコだから、コイソ」

　変わった事を聞くわね、といった風にイソギンチャク娘は応える。

　「コイソ……ちゃん？」

　なんか凄く安易な名前だ。

　目の前のイソギンチャク娘とやらは、かなり適当な奴なのかもしれない。

　「じゃあ、可愛がってあげて。一年経ったら、匂いを辿って迎えに行くわ」

　「わ、分かった……」

　イソギンチャク娘は、そのまま海面に沈んでいった。

　海岸に立ち尽くす青年と、その腕にしがみついているコイソを残して――

　「……」

　砂浜にぼんやりとたたずむ青年。

　彼は、今の出来事を夢と思いたかった。

　しかし、そんな青年の腕にはコイソがしっかりと抱きついている。

　「……とにかく、帰るか」

　言葉が通じているのかは分からないが、青年はコイソに語りかけた。

　「……？」

　コイソはまだ言葉が喋れないらしく、きょとんとした表情で青年の顔をじっと見ている。

　その小さな小さな顔は可愛らしいが、下半身はイソギンチャクそのもの。

　たくさんの触手がうねうねと蠢いていて気味悪い。

　とにかく青年は、コイソを連れてその場を後にした。

　青年の下宿先――彼は、午後8時に自宅マンションへ帰り着いた。

　一緒に来た友人達には体調が悪いなどと言って、自分だけ車でとっとと帰ってきたのだ。

　そして青年の上腕には、ずっとコイソがしがみついている。

　彼女はにこにこと笑いながら、彼の二の腕に頬をスリスリさせていた。

　「やれやれ、とんだ事になったな……」

　ベッドに腰を下ろし、青年はため息をついた。

　「これから一年も、この子の面倒を……」

　とは言え、世話を放棄したりすれば自分は間違いなくイソギンチャク娘に殺されてしまうだろう。

　ほとんど面倒な事はないという話だが、エサの件についてははぐらかされたし――

　「まったく、困ったママだよな」

　青年は、そう話しかけながらコイソの小さな頭を撫でた。

　彼女は気持ち良さそうに首を伸ばし、青年の指にすりついている。

　「まあ……　結構可愛いんだけどな、コイソ」

　「♪」

　自分の名前や大体の言葉は通じているのだろう。

　コイソは小さな両腕で青年の指に抱きつこうとする。

　「ほら、よしよし……」

　まるで愛玩動物を可愛がるように、青年はコイソの体のあちこちを優しくつついた。

　コイソは体をくねらせ、青年の動きに嬉々として反応する。

　コイソの上半身は当然ながら裸で、その胸は僅かに膨らんでいた。

　それでも青年はいやらしい気持ちなどなく、ペットと戯れるのと同じ感覚でコイソを撫でる。

　そして青年はコイソの腰から下の、逆さになったイソギンチャク部分にも指を伸ばした。

　「かなり柔らかいんだな……」

　うにょうにょした軟体の感触は、やはりイソギンチャクそのものである。

　触手がうねうねと蠢き、青年の指をつつき返してきた。

　その無数の触手の中心には、うにうにと蠢く口腔のようなものが見える。

　実際のイソギンチャクならば触手で獲物を捕らえ、この部分で呑み込んでしまうのだろう。

　「ところで、エサは何をやれば――ん？」

　イソギンチャク部分をつついていた青年の指に、触手がしゅるしゅると絡み付いてきた。

　そのまま、彼の人差し指はイソギンチャクに引き寄せられていく。

　そこに密生している触手の中心、口腔の部分へ――

　「おいコイソ、何する気だ？」

　「……♪」

　青年の問いかけに対し、コイソはにっこりと微笑んだ。

　――くちゅ。

　青年の人差し指は、そのままイソギンチャクの口腔に飲み込まれる。

　「な、なんだ……！　これ……！」

　青年は、思わず声を上擦らせた。

　その内部は異常なまでに柔らかく、粘液で湿り、ひくひくと蠢いていた。

　口腔内全体が様々な場所を揉み立てるようにきゅっきゅっと締まり、優しく吸い付いてくる。

　まるで人間の口に吸い付かれているような、それと女性器の内部の感触を足したような甘い刺激。

　それが、青年の人差し指に浴びせられたのだ。

　「……？」

　コイソは、首をかしげながら青年の顔を見上げてくる。

　締め付けてられている場所が縦横無尽に変化し、まるでランダムに人差し指のあちこちを揉み立てられているようだ。

　間違いない、これは――

　「？　……？」

　コイソは青年の人差し指に甘美な刺激を与えながら、不思議そうな顔で彼をじーっと見つめる。

　その口腔はうにゅうにゅと青年の人差し指を責め立て、その動きは執拗になってきていた。

　この刺激をペニスに与えられたら、いったい何秒我慢することができるだろうか――

　「……」

　青年は、ゆっくりとイソギンチャクの口腔から人差し指を引き抜いた。

　やや悲しげな表情を浮かべるコイソを脇に置き、彼はジーンズとトランクスをまとめて下ろす。

　彼の興奮を証明するかのごとく、肉棒はすでに大きく隆起していた。

　全体がピクピクと脈動し、先端からは早くも先走り汁が垂れている。

　「コ、コイソ……」

　青年は震える手でコイソの体を掴み、ゆっくりと自らの股間へ近づけていった。

　まるで、オナホールに自らのペニスを挿入するかのように。

　「……？　…………♪」

　最初は怪訝そうな表情を浮かべていたコイソだったが、隆起しているペニスを見てたちまち目を輝かせた。

　しゅるしゅると触手が伸び、眼下のペニスに絡み付く。

　粘液がねっとりとしたたる感触が、青年を悦ばせた。

　「い、いくよ……　コイソ……」

　さっきの感触を、ペニスで味わえる――

　その期待感で唇が震えた。

　そして青年は、そのままコイソの口腔を怒張したペニスに押し付ける。

　自分の肉棒を、コイソの中に――

　――にゅちゅ。

　にゅぐにゅぐにゅぐ……

　「うあッ！　気持ちいい……！」

　亀頭からサオ、そして根元までが一気にコイソの下半身に飲み込まれた。

　ペニスを根元まで咥え込んだその様子は、まさにオナホールそのものだった。

　しかし、そのままオナホールのように上下に動かす必要は一切ない。

　コイソは、青年の精液を搾り取るべく蠕動を開始したからだ。

　「うぁっ！！　ああ……！！　コイソぉぉぉ……！」

　ぐにぐに、うにゅうにゅ、ぐにゅぐにゅ……

　青年は快感でのけぞり、コイソから思わず手が離れた。

　しかしコイソはしっかりと青年のペニスを咥え込み、決して離そうとしない。

　その粘液にまみれた内壁はうねうねと蠢き、彼のペニスにきゅっと密着してくる。

　締め付けられている箇所が絶えず変化し、変幻自在の快感を与えてくる。

　先程、彼の人差し指にしたように――

　「コイソぉ！　気持ちいいよぉ……！　コイソぉ……！」

　青年はペニスを貪られる快感に悶えながら、少女の名を呼んだ。

　彼女は名前が呼ばれるのが嬉しいのか、青年の口からその名が出るたびにキュッキュッと内部を収縮させる。

　さらに、口腔全体がちゅぅぅぅぅと吸い付いてきた。

　「あ、はぁぁぁぁぁ……！　コイソぉぉぉ……」

　甘くペニスを吸引され、青年は挿入してから数秒で限界を迎えようとしていた。

　「……♪」

　それを察したのか、コイソの責めはますます執拗になる。

　内部がねっとりと絡み、内壁がひくひくとまとわり付き、青年の精液を求めて嫐り立ててくる。

　その余りにも粘着的な快感に、青年はとうとう昇天した。

　「ああぁぁ……　コイソぉ！　コイソぉぉぉ……！！」

　どくん、どくどくどく……！

　青年は、コイソの中に白濁液をたっぷりと吐き出した。

　「♪、♪、♪」

　コイソは笑みを浮かべながら、その精液をじゅるじゅると吸い上げていく。

　外部から見ても分かるほどイソギンチャク部分が収縮し、その中に収められている青年のペニスを嫐り回した。

　「おぁぁぁぁ……！　コ……、イソ……！」

　射精中のペニスに容赦ない刺激が与えられ、青年は体をビクビクと震わせる。

　ペニスはコイソの体内で脈動し、最後の一滴までを搾り取られてしまったのだ。

　ようやく射精が終わり、コイソは青年の顔を見上げてニコニコと笑った。

　「もしかして、コイソのエサって……　ああッ！」

　再び、コイソは青年のペニスを締め上げてきた。

　ヒダがねっとりと亀頭に絡み、容赦なく射精を促す。

　「ちょっと、コイソ……！　続けて二回は無理だから……うぁッ！　ああ……！」

　ひくひく、ひくひく……

　亀頭を断続的に締め付けられ、青年は痺れるような快感を味わった。

　内部でねっとりと絡み付いてくる粘液の感触も心地よい。

　その粘液は、青年のペニスとイソギンチャクの口腔との接合部からどろどろと垂れ始めている。

　ぴちゃぴちゃ……　ぐにゅ、うにうに……

　「♪」

　コイソはにっこりと笑いながら、快楽に喘ぐ青年の顔を見つめている。

　ねっとりと、粘つくように与えられる鮮烈な快感。

　「ああ……　コイソぉぉぉ……　もう……！」

　こんな年端もいかない少女に、自分は二度もイかされようとしている。

　得体の知れない器官に肉棒を咥え込まれて、執拗に嫐り尽くされながら――

　「コイソ、コイソ、コイソ……」

　彼女の名を呼ぶたび、コイソは嬉々としてペニスをきゅっと締め上げてくれる。

　青年はその感触に酔い、コイソの名を連呼した。

　「ああぁ……　コイソ、コイソぉぉ……」

　腰がガクガクと震える。もう、限界が――

　ぐにゅ、うにゅ、にゅぐ、にゅぐぐぐぐ……

　「コイソ、出すよ……！　コイソの中に……　うわぁぁぁッ！！」

　コイソに嫐られ尽くし、青年は二度目の限界を迎えた。

　彼女の中でペニスが激しく脈動し、大量の精液を噴き上げる。

　「……♪」

　満足そうな笑みを浮かべながら、自らの体内に注がれた精液をじゅるじゅると吸い上げていくコイソ。

　その吸引はペニスにも及び、青年は性器を啜られて身悶える。

　二度目の精液をコイソは搾り上げ、自らの体内で果てた青年を見上げて満足そうな笑みを浮かべた。

　「あぁ……　うぅぅ……」

　青年は、自らの股間にくっついているコイソに視線をやった。

　二度も彼女の中で射精してしまった……

　それでも、コイソはまだ離れてくれない。

　もしかして、まだ精液を欲しがってるのか――？

　「……？」

　青年とコイソの視線が合い、コイソは首をかくっと斜めにした。

　「コイソ、ちょっと休ませてくれ。最高だったけど、流石に疲れが……」

　「♪」

　コイソは、無邪気な笑みを見せた。

　またもやコイソの内部が淫らな蠕動を始める。

　「あぁぁぁぁ……　コイソ、離してくれぇぇ……」

　青年は両手を伸ばし、股間を貪るコイソに触れる。

　彼女は笑みを浮かべながら、彼の手に頬を擦り付けてきた。

　それでも、ペニスを嫐る動きは全く緩まない。

　「離して……　離して、コイソ……」

　青年はそのままコイソを引き抜こうとするが、がっちりとペニスを咥え込んで離してくれない。

　ハタから見れば、オナホールを両手で揺すりながら自慰をしているかのようだ。

　「♪」

　きゅうっと吸い付き、コイソは青年を一気に射精へ導こうとする。

　さらに触手がしゅるしゅると伸び、陰嚢に絡み付いてきた。

　触手の一本は、青年のアナルにも侵入する。

　「コ、コイソ……ッ！！」

　下腹部から内股に至るまで、縦横無尽に這い回る触手。

　彼の最も敏感な部分はイソギンチャクに咥え込まれ、執拗な責めを受けている。

　「もうダメだ、コイソぉぉぉ……！」

　青年はなすすべもなく、三度目の精をコイソの中に噴き上げた。

　「〜♪」

　コイソはじゅるじゅると白濁液を吸い上げ、うにうにと咀嚼する感触をペニスに伝えてくる。

　「うぁぁぁぁ……　いいよぉ……」

　その最高の感触に、青年は体を震わせて身悶えた。

　「なぁコイソ、そろそろ……」

　「……」

　コイソは大きなあくびをして、眠そうな表情を浮かべた。

　時刻は、いつの間にやら夜の10時になっている。

　「ほら、おねむの時間だろ。ちょっと休もうな」

　「……」

　青年の言葉に応じたのか、そのままコイソは静かに目を閉じてしまった。

　彼の肉棒を、イソギンチャク部分に収めたままで――

　「おい、コイソ。離してから寝てくれよ」

　青年はコイソをつんつんと突付いたが、イヤイヤと首を振りながらまた寝てしまう。

　コイソの内部は先ほどまでのように精液を搾り取ろうと蠕動しているわけではない。

　それでも粘液がぬるぬると絡み付き、彼女の寝息に合わせてひくひくと微かに蠢いている。

　「おい、離せって……」

　引っ張っても、やはりコイソは離れてくれない。

　青年のペニスは、先ほどまでとは打って変わった穏やかな快感にさらされた。

　即座に射精に導かれるほどの刺激ではない。

　だが、それがずっとペニスに与えられ続け、離す事もできないのだ。

　「おい……　コイソ……」

　「ZZZ……」

　じわじわ、じわじわ。

　コイソの内部は、実に緩慢に青年のペニスを責めていく。

　まるで、生殺しのように……

　ねちゃねちゃ……　ひく、ひくひく……　ねちゃ……

　「ああっ、コイソぉ……」

　青年はコイソの中に先走り液を漏らしつつ、喘ぎ声をあげた。

　じっとりと責められ、徐々に高められていく感覚――

　それはじわじわと押し上がり、ついに頂点で弾けた。

　「あぁ、ああぁぁぁぁ……！」

　コイソの中でドクドクと精液を溢れさせ、喘ぎ声を上げる青年。

　彼女は寝ているにもかかわらず、咥え込まれているだけの刺激で屈服させられる――

　ある意味では屈辱的な快楽を甘受しながらも、青年はコイソにたっぷりと精を注ぎ込んだ。

　結局、コイソは一晩中離してくれなかった。

　安らかな寝息を立てるコイソの体内に、青年はその後も四回射精したのだった。

　――そして、翌朝。

　「うう……」

　極度の疲労感を感じながら、青年は目を覚ました。

　いつの間にか、コイソは青年の腕にしがみ付いて眠っている。

　彼はその可愛らしい寝顔を見ながら、彼女の頬をぷにぷにとつつく。

　「この子と、一年も一緒に暮らすのか……」

　青年はため息をついた。

　そして、毎晩のようにコイソに精を搾り取られるのだ。

　「俺、たぶんヘロヘロになるな……」

　しかし彼は、それを不快に思ってはいなかった。

　むしろ毎晩、あんな気持ちいい事をしてもらえるなら――

　コイソに男性器を咥え込まれ、たっぷりと精液を搾り取られる。

　その魅力に、青年はもう抗えなくなっていた。

　これから一年、コイソとの共同生活が始まるのだ。

　「……」

　コイソはようやく目が覚めたのか、ぱっちりと目を開けた。

　そして青年の顔を覗き込み、にっこりと微笑む。

　まるで、『おはよう』と言っているかのように。

　「――おはよう、コイソ」

　青年は、笑って告げる。

　コイソのいる生活、それがにわかに訪れたのだった。