イソギンチャク娘
――あれから、一年が経った。
あのイソギンチャク娘と約束した期間は、ちょうど一年。
青年は、それをすっかり忘れていた。
いつしかコイソの存在は、青年にとってなくてはならないものになっていたのである。
それは、性欲を発散する対象としてか。可愛らしい愛玩物としてか。それ以外か。
青年は、同居人(?)に抱く感情の正体を自身でも良く理解していなかった。
「ただいま、コイソ」
大学から帰宅した青年を、コイソはいつものように玄関で出迎える。
「♪」
言葉はまだ喋れないものの、にこにこと笑みを向けるコイソ。
彼女は小さい体でぴょこんと跳ね、青年に飛びついた。
「わっ……それにしてもお前、全然大きくならないな」
青年は荷物を下ろし、コイソの頭を撫でながらベッドに腰掛ける。
そんなコイソの目がきらきらと輝き、そのイソギンチャク状の下半身から触手がしゅるしゅると伸び――
「あ、おい……!」
コイソの下半身から伸びた触手は、青年のズボンの中に侵入していった。
トランクスの中に分け入り、まだ柔らかい陰茎へと……
「あ、う……」
ぎゅるぎゅるとペニスに絡み付くコイソの触手。
慌てて青年はズボンとトランクスを下ろし、股間を露出させた。
その肉棒には触手が螺旋状に巻き付き、すでに大きくそそり立っている。
「コ、コイソぉ……」
コイソにとって前戯のつもりなのだろうか、最初の一回はいつも触手でイかせてくれる。
彼女の触手もまた、極上の快感を与えてくれるのだ。
「……♪」
ぎち、ぐちゅぐちゅ……
粘液まみれの触手を駆使し、優しくペニスを揉み立ててくるコイソ。
肉棒にはみっちりと何重にも触手が巻き付き、もはや隙間も無い。
その中でくにゅくにゅと弄ばれ、青年の頭の中はたちまち真っ白になった。
「ああ、コイソ……! もう……」
「♪」
青年の限界を察したコイソの触手が、カリの部分を丹念に刺激してきた。
カリの外周に巻き付いた触手が、弄ぶように上下される――
「あ、あぁぁぁ……!」
その刺激に青年は止めを刺され、そして一気に絶頂に追い込まれた。
コイソの触手に絡まれたまま、どくどくと溢れ出る精液。
「……♪」
触手が亀頭へと入念に絡み、敏感な表面を優しく這い回ってくる。
サオにはくるくると触手が巻き付き、扱くように刺激された。
こうしてぎゅうぎゅうと締められて精を搾られ、それを触手表面の粘膜で吸収してしまうのだ。
それは青年にとって、射精中のペニスに与えられる甘い刺激そのものだった。
「はぁ、はぁ……」
尿道に残った精液までを絞り上げられ、吸い尽くされて呼吸を荒げる青年。
彼の白濁を触手から吸収し終え、コイソは笑みを浮かべた。
しかし、これで満足した訳ではない。彼女の吸精は、これから始まるのだ。
「♪♪」
コイソはよじよじと仰向けの青年の体によじ登り、触手を器用に使って下腹部に乗っかる。
そして、下半身のイソギンチャク部分を露出させた。
男性器をその中に誘い、精液を吸い尽くす淫猥な口。
その周囲には触手がざわざわとうねり、口内はひくひくと蠢いて蠕動している。
あの穴に包まれ、あの蠢き、あの蠕動をペニスに与えてもらえる――
それを思っただけで、青年は期待感を隠せなかった。
「コ、コイソ……精液、吸って……」
掌に乗るほどのサイズしかない淫魔の子供に、そう懇願する青年。
それに対し、コイソは無邪気な笑みを浮かべた。
そしてオナホールのような吸精口が、彼のペニスの先端にあてがわれた――
くちゅ、くちゅくちゅ……
「ひぃ……!」
青年のペニスが、コイソの吸精口へと吸い込まれていった。
生温かい粘液が満ちたその内部は、まさに精液を吐き出させるための魔孔。
ペニスが粘液にまぶされ、蠢く肉壁に揉み立てられ――
そんな刺激に、青年はあられもなく悶えるしかなかった。
「コ、コイソ……! さ、先っぽいじくらないで……!」
ぐちゅぐちゅぬるぬるの肉が、くにくにくに……と亀頭部分を押し包んでくる。
敏感な部分を集中的に刺激され、青年はたちまち恍惚にひたっていた。
「ふあ、あ――」
「♪」
とろけそうな快感に表情を失ってしまう青年を眺め、コイソは笑みを浮かべる。
無邪気にも見えるその表情の中には、一抹の淫猥さが潜んでいた。
そんなコイソに眺められながら、青年は絶頂へと押し上げられていく。
うにうに蠢く粘膜はペニスを何重にも押し包み、先端を甘く優しく責め嫐っているのだ。
「あ、ああぁぁ――」
挿入してから10秒にも満たないうちに、青年は果てていた。
コイソの中に、どくどくと注がれる精液。
それはじゅぷじゅぷと吸い上げられ、コイソの餌となる。
これが、コイソの食事なのだ。
この種族はおそらく、こうやって養分を採っているのである――
精を吸われる恍惚に浸りながら、青年はそんなことを考えていた。
「……♪」
にっこりと微笑みながら、コイソは青年のペニスをちゅぽんとイソギンチャク部分から吐き出した。
彼女の吸精は、一日につき必ず二回なのである。
決してコイソは、それ以上の回数を吸うことはない――
それというのも、初めてコイソに精を吸われた日の翌日に青年は寝込んでしまったからだ。
十回以上もの射精により、彼は疲労の限界を迎えてしまったのである。
ベッドで横たわったまま丸一日動けない青年の横で、コイソはすんすんと泣き続けるしかなかったのだ。
それによっぽど懲りたのか、それから一日三回以上は精を吸おうとしないのである。
「あの時は大変だったよな。もう一年も前か……」
「♪♪」
楽しそうにベッドをころころと転がるコイソを眺めて、青年が目を細めていた時だった。
不意に、来客用のブザーが室内に鳴り響いた。
時刻は十時過ぎ、来客にしては少し遅い。
「……ん? 今頃誰だろうな」
青年はコイソに布団を被せ、そしてベッドから立った。
「はい、どちらさま――?」
がちゃりとドアを開ける青年の前に立っていたのは、どこかで見覚えのある艶やかな女性。
非常にスタイルの良い体躯に、黒いカーディガン。そして黒のロングスカートを履いている。
そして彼女は、まるで当然のように部屋へと上がってきた。
この人は、確か――
「……♪」
コイソは布団をはねのけ、ぴょこんとベッドから床に下りた。
そのままぴょこぴょこと飛びはね、女性の上腕へと嬉しそうに飛びつく。
――そうだ。この人は、コイソの母親。
そこで青年は、一年間の約束の存在に初めて思い至った。
一年が経ったら、コイソはもう――
「ふふ……久しぶりね、コイソ」
女性は、コイソの頭を撫でながら優しく微笑んだ。
「♪♪♪」
「あらそう。良かったわね」
「……♪♪」
「うんうん、それは感謝しないといけないわね」
女性は軽く頷くと、呆然と立ち尽くす青年の方に顔を向ける。
「約束通り、きちんと娘を育てて貰ったみたいね」
「あ、はい……」
青年は、視線を彼女の下半身に移していた。
一見、非常に綺麗な女性に見えるが……そのスカートの膨らみは、どこか不自然。
それより、彼女はコイソを迎えに来たのだろう。
それはすなわち、コイソは海に帰ってしまうということ――
「感謝のしるしに、ご褒美をあげるわ」
「え……?」
不意に女性――イソギンチャク娘は、両手で自らのスカートをゆっくりとまくりあげた。
その中にじゅるじゅると渦巻いていたのは、無数の触手。
彼女の腰から下は逆さのイソギンチャクと化し、そこから生えた無数の触手が足代わりに接地している。
そして逆さイソギンチャクの胴部分がぐにゃりと曲がり、その大きな口腔部を青年の方に向けた。
ちょうど女性器の位置に、イソギンチャクの口がぐちゅりと開いているという形だ。
「……!」
青年の視線は、その淫らな口腔に吸い寄せられていた。
そこはコイソの吸精口よりも複雑そうで、粘膜とヒダが何重にも内壁を覆っている。
そこから大量の粘液がどろりと溢れ、ねっとりと糸を引いて床に垂れていた。
「あ、あ……」
ぐにゅぐにゅと蠢き、妖しく収縮している口内。
グロテスクではあるものの、それがどれだけの快感を与えてくれるのか青年は良く知っている。
彼の股間は張り詰め、そしてズボンの下で限界まで勃起していた。
「……いらっしゃい。おちんちん溶かしてあげるから」
「そ、そんな――」
僅かに怯えた表情を見せる青年に、イソギンチャク娘は妖艶に笑いかけた。
「安心なさい。本当に溶かしたり、食べたりはしないわ。娘の恩人だもの、ねぇ――」
そしてイソギンチャク娘は、青年の前に立った。
すっとジーパンのベルトに手が伸びると同時に、ズボンと下着が下げられる。
たちまち、限界まで大きくなったペニスが露出していた。
「もうこんなになって……何をしてもらえるのか、分かってるみたいね」
青年の体に身を寄せ、その首に腕を回してくるイソギンチャク娘。
同時に触手がしゅるしゅると伸び、彼の腰に巻き付く。
こうして完全に獲物を捕らえ、そしてイソギンチャクの口腔が青年のペニスへと迫ってきた。
「あ、あ――」
唐突な成り行きと戸惑い、そして快感への期待で、青年は何も出来ない。
ただ、己の肉棒を捕食しようと迫ってくる淫らなイソギンチャクを眺めるのみ。
「ふふ、天国を感じさせてあげる……」
ちゅぷ……と、亀頭先端がイソギンチャクの口にあてがわれた。
「ひぃ……!」
粘膜同士の接触は、青年にとろけるような快感をもたらす。
ひくひくとした蠢きが直に亀頭に伝わり、それだけで青年は身を震わせていた。
ぐむぐむ、にゅ、にゅ……
イソギンチャクの内壁は巧みにうねり、青年のペニスを奥へ奥へと引き込んできた。
傘のように張り詰めたカリの部分がずるずると内壁を擦り、腰が抜けそうな快感を味あわせてくる。
「あ、あ、あ……!」
青年は恍惚にひたりながら、イソギンチャク娘に体を預けていた。
ペニスはゆっくりとイソギンチャクに吸い込まれ、奥へと引きずり込まれる。
彼の肉棒を包み込んでいくのは、ぬるぬるとぬめり、ぐにゅぐにゅと蠢く粘膜。
深く咥え込まれるにつれ、四方からみっちりと迫る圧力も増していく。
「お、あ……」
触手が彼の体をしっかりと捕らえているため、腰を引くこともできない。
そして、とうとうペニスの根本までがイソギンチャクに咥え込まれてしまった瞬間――
「あ、あ、あああぁぁぁぁぁ……!」
青年のペニスが、ひくひくと脈動を始めた。
あまりの快感に耐えきれず、射精が始まったのだ。
「うあぁぁ……!」
どく、どく、どく、どく……と断続的に吐き出される精液。
亀頭部に密着している粘膜はくちゅくちゅと収縮し、まるで精を吸い上げるかのように蠢く。
青年は温かくぬめったイソギンチャクの口腔内で、最後の一滴まで精液を迸らせたのだった。
「はぁ、はぁ……」
肉棒を根本までイソギンチャクに咥え込まれたまま、青年は荒い息を吐く。
「……早いのね。もう漏らしちゃったの?」
くすり……と笑うイソギンチャク娘。
そんな言葉も、恍惚に浸る青年には届いていない。
イソギンチャク娘も、この刺激に耐えられる男などいないことが分かっていながら言っているのだ。
「どう、気持ちよかったでしょ?」
「は、はい……気持ちよかったです」
素直にそう答えながら、青年は腰を引こうとした――
しかし触手は彼の腰をがっちりと引き寄せ、ペニスを抜かせようとしない。
「え……?」
「これだけで終わりのはずがないでしょう。
もっとぐちゅぐちゅにして、精液搾り取ってあげる……」
ぐちゅ……! ぐにぐに、みちっ……!
粘膜がじっくりとペニス全体に密着し、魔孔全体が妖しく蠕動する。
青年はイソギンチャク娘の細い肩にしがみつき、表情を歪ませていた。
「ひぃ……! や、やめて……! 溶けちゃう……!」
「おちんちん気持ちいいでしょう。溶かされる感触を味わいなさい。
本当に溶かしたりはしないから、安心する事ね」
「あ、ああああぁぁぁ……!」
くにょ、ぐちゅぐちゅ、にゅるるるる〜〜
イソギンチャクは、青年のペニスを奥深くまで咥え込んだまま全体をうねらせた。
まるで咀嚼されるかのような、消化されるかのような甘い感触。
うにゅうにゅと内壁が蠕動するたびに、複雑なヒダに覆われた粘膜がにゅるりとペニスのあちこちに絡む。
まるで、不規則に至る所を舐め回され、揉み立てられるような刺激。
「溶けちゃう……溶けちゃうよぉぉ……」
ぬめった粘膜に包み込まれているだけでも気持ちいいのに、ペニスをぐちゅぐちゅにされる感触が与えられているのだ。
青年はイソギンチャク娘にすがりつき、快楽の悲鳴を上げ続けるのみ。
股間を嫐る快感は、コイソの吸精口よりも遙かに粘着的で、遙かに執拗だった。
「……」
イソギンチャク娘の上腕にくっついたまま、不機嫌そうな表情を浮かべているコイソ。
それにも青年は全く気付くことなく、ただその狂おしい快楽を享受していた。
「ほら、我慢しないで出していいのよ」
ぬるぬるの内壁がぎゅっと収縮し、彼のペニスを妖しく絞る。
またカリの下のくびれの部分には、肉のリングのようなものが巻き付いてきた。
「ひぃっ……! そ、そこ……!」
にゅち、みちみち……
そのリングに弱点をじっくりと締め上げられ、青年は悶絶していた。
内壁全体はにゅるにゅると脈打ってうねり、ペニス全体を刺激して射精をうながす。
「あ……出る、出るっ!!」
ペニスをぐちゅぐちゅと貪られ、青年はこみあげてくる射精感を抑えることができなかった。
「あ、ああぁぁぁぁ――!!」
そのまま腰を揺らしつつ、イソギンチャクの中に精液を注ぎ込んだ。
あまりの快感に、彼の顔は緩みきってしまう。
「ふふ……」
どくどくと精液を吸い上げながら、イソギンチャク娘は目を細めた。
「あ、あ、うぅ……」
天にも昇るような感触を味わいながら、よだれを垂らして射精する青年。
まるで、ペニスがとろけているかのような感触――いや、本当に溶かされているのかもしれない。
イソギンチャクに包まれてペニスがドロドロに溶解され、精液ごと啜られていく――
そんな狂おしい快感を、恍惚と共に青年は味わったのだった。
「ふふ、楽しんでもらえたようね……」
そんな囁きと共に、腰に絡んでいた触手は青年の体を解放した。
彼の精液を数分のうちに吸い尽くした魔孔から、ペニスがぬるりと抜ける。
「あ……」
青年は、自身のペニスが溶けていないことを確認して思わず安堵していた。
それほどまでに、イソギンチャクに啜られる感触は甘美だったのだ。
あのまま溶かされて捕食されても、構わないと思えるほどに――
「……ぅぅ」
全身から、みるみる力が抜けていく――
快感の残滓によって青年は虚脱し、床の上にすとんと尻餅をついてしまった。
そんな彼に、イソギンチャク娘は柔らかな視線を送る。
「そういうわけで、私『達』は海に戻るわ。もう、あなたとも会うことはないけれど――」
「……」
コイソは母親の上腕を這い登り、その耳に何やらひそひそと告げた。
「あら、そうなの……?」
「……♪」
「仕方がないわねぇ……」
何やら娘と言葉を交わし、イソギンチャク娘は再び青年に向き直る。
「……それじゃあ、また会うことになるかもしれないわね」
そう言いながら、イソギンチャク娘はくるりと背を向けた。
「あ……」
なんとか引き留めようとする青年。しかし疲れ果てた体は全く動かない。
コイソはそんな青年に無邪気な視線をやり、その小さな右腕をぴこぴこと振った。
バイバイ、とそう告げているのだ。
「コイソ――」
「……じゃあね、人間」
ドアがばたんと締められ、そして青年の視界からイソギンチャク母娘は消えた。
足音もないまま、ドアの向こうで気配だけがすっと消え失せる。
今ドアを開けたとしても、二人の後ろ姿すら見ることはできないだろう。
コイソは、海へ帰ってしまったのだ――
「コイソ……」
自分以外に誰もいない、怖いほどに静かな部屋。
その静寂で、青年はコイソが去ってしまったことを実感する。
コイソのいない生活、それがにわかに訪れたのだった。
To Be Continued...
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