た・ね・つ・け




 浮遊感とともに、いきなりロディの世界の上下が反転した。いきなりの予期しない出来事に悲鳴を上げることも出来ず、枝にぶらさげられた網の中で、ロディは目をしばたたかせる。



「捕まえたよーっ!」

「やったーっ! どんな子どんな子!?」

「高くってわからなーい……。ね、早く下ろしてよー」

「焦っちゃだめよ! いきなり下ろしたら逃げちゃうから、ゆっくりねー!」



 きゃあきゃあと騒がしい声をあげながら、ロディの眼下に集まってくる女の子たち。見上げてくる顔は大人っぽいものからあどけないものまでさまざまだったが、共通しているのは全員が全員、目を見張るような美人だということと……下半身が蛇だということだった。





− た・ね・つ・け −





 網ごと棒に提げられて、ロディは4人がかりで山道の中を運ばれていった。

 興味津々に覗き込んでくる小さな女の子たち。彼女らがまとっている簡単な服の隙間からちらちら見える素肌は、人間のものと変わるところはない。こんな状況でなければ胸がときめいたりもしたのだろうが、ロディはいまそれどころではなかった。網の中で逆さまになったまま、ロディは近くにいる女の子に訊ねる。



「あの……ラミアさん」

「え、あたし?」



 声をかけられた女の子が、少し驚いた顔でロディのほうを振り向いた。窮屈ななかでロディがうなずくと、その女の子は少しむくれて答える。



「あたしはディナよ。ラミアさんじゃないわ。あなただって『人間さん』なんて呼ばれたら変な気持ちでしょ?」

「あ、はい。すみません……。ええと、ディナ……ちゃん。ぼくはこれからどうなるんでしょうか……」

「あなた、変なこと聞くのね。決まってるじゃない」



 にっ、と、笑ったディナの口元に光る鋭い牙。それを見たロディの心に暗雲が垂れ込めた。

 生まれて15年。未来の大物を夢見て都へ上がる最中に、まさか魔物に捕らえられようとは。こんなことなら、実家で農業を継いでおけばよかった。

 そんなことを考えているロディの顔を、ディナが下から不思議そうに覗き込む。



「どしたの? くらーい顔しちゃって。あたしの妹のパパになるの、そんなに嫌?」

「いや、その。短い人生……パ、パパ!?」

「そうよ。いまからあなたは、あたしの村で種付け雄になるの。……人間は気持ちいいんでしょ? もうちょっとうれしそうな顔してもいいんじゃないの?」



 どこかにやけたようなディナにつつかれながら、ロディは混乱に陥っていた。てっきり、これから血を吸い尽くされるとか、そういう目に会うのだとばかり思っていたのに、ディナはどちらかと言えばロディがいい目に会うような口ぶりなのだ。それでも不安が拭いきれないロディは、恐る恐るディナにまた訊ねる。



「そ、そのあとは……?」

「そのあと? さっきのところまで帰すわよ。他に用事ないもん。いつになるかはあなた次第だけど」



 そこまで話したとき、一行は山道を抜け、広い場所に出た。いくつも並んでいる、土とわらで作られた家。簡単な井戸に、小さいが畑もある。

 少し原始的ではあったが、そこは確かに集落だった。興味深げに覗き込んでくるラミアたちに囲まれながら、そのうちのひときわ大きな建物の中へ、一行は入っていく。



「村長、ただいま戻りました」



 建物の中には、ひときわ妖艶なラミアがとぐろを巻いていた。村長、と、呼ばれた彼女はゆっくりと全員を見回すと、ねぎらうように言う。



「皆、お疲れ様。メディーナ……今回はあなたもでしたか?」

「はい。今回は教育も兼ねて……」

「あら、そう……。わかったわ。それじゃあ、ディナは今回参加する者を呼んできなさい。他の皆は、その人間をそこから出してあげて」

「はい、村長様」



 村長に命じられ、ディナがするすると建物を出て行く。それとほとんど同時に、ロディは壊れ物でも扱うかのようにゆっくりと床に下ろされ、絡み付いていた網から解放された。一瞬、入り口のほうを伺うロディ。だが、そこには別のラミアが扉を塞ぐように立ちはだかっている。



「怖い思いをさせてしまったかしら。私はこの村の長、タニア。あなた、名前はなんとおっしゃるのですか?」



 かけられた声にはっとして振り向くと、問いかけたタニアは、柔らかな微笑みを浮かべてロディを見ていた。少し迷った後、ロディは恐る恐る、小さな声で答える。



「ろ、ロディ……です」

「そう。ロディさん、私達のことについては何かご存じかしら?」

「い、いえ……あんまり」



 へたり込んだような格好のまま、ロディは首を横に振った。タニアはその場でうなずくと、視線をちらりとその場にいた別のラミアに飛ばす。無言でうなずいて、建物の奥へと入っていくそのラミア。それを見送った後、タニアはまたロディに視線を戻して口を開いた。



「まず、最初に。私達はあなたに危害を加えるつもりはありません。食べるとか、血を吸うとか、そう言ったことを……少なくともこの集落に住んでいるラミアは行いませんわ」

「は、はい……」



 落ち着いた口調で話すタニアに、ぎこちなくロディはうなずいた。その時、いつの間にか戻ってきていた奥へ行ったラミアが、彼の前にそっと木でできたカップを差し出す。

 さわやかな香りがするそれを、ロディがおっかなびっくり受け取ると、タニアはまた微笑んで言った。



「草茶です。昔、あなたとは別の人間に教えてもらったものですから、毒ではありませんわ。安心なさい」



 言われても、素直に口をつける気にはならず、カップを持ったまま困惑するロディ。タニアは少し苦笑いすると、彼を見つめて言う。



「ロディさん。私達ラミアには、雄が生まれません。ですから、繁殖期にはどうしても人間の雄が必要になります。他の動物のものも過去に試したのですが、人間の雄の子種でなければ、ラミアの子は孵らないのです」

「は、はあ……」

「そこで私達は、繁殖期になると旅人を捕らえ、生殖に協力してもらっております。あまりたくさんの人間を一度にさらうと、騒ぎになってしまうので、一度に数人程度なのですが……。今年は、あなたしか捕まえられなかったので、あなただけに協力していただく形になりますわ。見たところお若いようですし、今年は全部で29個になりますが、それほど時間はかからないでしょう」

「に、29個……っ!?」



 言った瞬間、背後に気配を感じて、弾かれたように振り向くロディ。そこには、詰め掛けたラミア達が、彼に向かって一斉に頭を下げていた。



「そうですね、ひと月……。長くても、ひと月半ぐらいかしら。この時のために、私達は皆、人間の男性を悦ばせる技術を磨いております。精のつく食事もご用意しますから……きっと、退屈はしないと思いますわ」

「あ、あ、あ……」



 あっけにとられるロディの後ろで、タニアはまた、やんわりと微笑んでいた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 別の建物に移されたロディが、見たこともないほど豪華な料理を振舞われたのは夕刻のことだった。朝方に捕まってから何も食べていなかったせいもあり、ロディは空腹に耐え切れず、それを綺麗に平らげた。

 それから数時間の後、すっかり日が落ちて暗くなった建物の中に、薄絹をまとったラミアがしずしずと入ってくる。



「こんばんは、ロディさん。メディーナです。最初は私達からになります。どうぞよろしく」

「あ、は、はい……。え、た、たちって……?」

「やっほー。あたしもあたしもっ」



 ひょい、と、メディーナの陰から、ディナが顔を出した。メディーナと同じく薄衣をまとった彼女を見て、驚いて目を見張るロディ。



「ディ、ディナちゃん。きみ……」

「似合う? ほんとは卵産めるようにならないと作ってもらえないんだけど、自分で作っちゃったんだ」

「あ、うん、可愛い……じゃなくて、どうしてここに?」

「えっへへー……」



 ロディの声にあいまいな答えを返しながら、もじもじと尾の先を揺らすディナ。その隣で、自分の少し膨らんだ下腹部を撫でながら、メディーナが微笑んで続けた。



「次の繁殖期には、そろそろこの子も卵を産めるようになります。ですから、今夜は私の卵の受精と、この子の手ほどきをお手伝いいただきたいのです」

「て、手ほどきって言われても……」



 しゅるしゅると近づいてくるメディーナに、ロディは困惑した表情を向けた。手ほどきをしようにも、彼にはそんな知識も経験もない。人間相手にもしたことがないのに、ましてや異種族に。そんなことを思っていたロディに、メディーナは上半身を寄せながら言った。



「ご心配なく。ロディさんは、ただ楽しんでいただければ、それで……」

「うわ……。は、はい……」



 ロディの薄い胸板の上で、彼を抱きしめたメディーナの、量感のある乳房がむにゅりと潰れる。柔らかく温かいその感触に、ロディは思わず声を上げた。くすりと笑って、メディーナはロディに顔を寄せる。ふわ、と、なんともいえない官能的な香りに鼻をくすぐられ、ロディの鼓動は、この上なく高まっていった。目の前で微笑むメディーナの顔を見つめ、ロディは耳の中で自分の鼓動が聞こえそうなほどの興奮に喘ぐ。



「あっ、ああ。あの、メディーナさん……」

「はい?」

「ぼ、ぼく、こういうことは慣れてなくて、その……」

「あら。そうですか、心得ました。では、最初はとびきりゆっくりいたします。安心して、お任せ下さい。……キスしてもよろしいですか?」

「はっ、はい……っ」



 小さく何度もうなずくロディにもう一度微笑むと、メディーナはちょいちょいとディナを手招きした。待ってましたとばかりに、ディナはふたりのそばへ急いで這い寄る。



「ディ、ディナちゃん……っ」

「へへー、お勉強お勉強。よろしくね、ロディさん」

「あ……う、うん」

「ふふ……。ロディさん、今はこっちを向いていて。ディナも、静かに見ていてね」

「はーい」



 ロディをベッドに押し倒し、メディーナはその上に体を重ねた。膝から下をベッドの外に残したまま大の字になったロディの頬を両手で包み、メディーナは彼に唇を寄せていく。



「ん……」

「んっ!」



 メディーナはゆるく、ロディはキツく目を閉じて、互いの唇を重ねる。添い寝するようにロディの横に寝そべり、ディナは両の拳を口元に当て、その光景を興味津々の顔で、食い入るように見つめていた。



「んふ……」

「んぅ!?」



 そのまま、ちろちろっ、と、唇に舌を這わされ、ロディは思わぬ快楽に、くぐもった声を上げた。ラミアの薄く細く、そして長い舌は細かく動き、唇から背筋にまで伝わってくる、くすぐったいような快楽を送り込んでくる。



「んふ、んむ、んん……」

「んっ、む、ふ、はっ……」



 ちゅ、ちゅ、ちゅう、と、角度を変え、長さを変え、深さを変え、メディーナはキスを繰り返す。そしてそのたびに、ちろ、ちろちろっ、と、唇をくすぐられて、ロディは次第に、頭の中がとろけていくような感覚に浸されていた。こわばった手足から、まぶたから、唇から力が抜け、頬が、首筋が、桜色に上気し始める。



「わあ、ロディさんがピンク色になってきた……」

「あ……っ」



 思わずディナが漏らした呟きに、とろけかけていたロディの理性が蘇った。息がかかるほど近くで、少なくとも見た目は自分と同年代か、それより幼いぐらいの美少女に、彼女の母親と濃厚なキスを重ねるところを見られている。それを意識した途端、かあっ、と、頭に血が上り、ロディはピンクどころか、耳まで真っ赤に染めた。一度キスを中断し、苦笑いするメディーナ。



「ディナ。静かにしてなさいって言ったでしょう?」

「あ……。ごめんなさい、ママ」

「しょうがない子ねえ。ごめんなさい、ロディさん。今、気にならなくしてさしあげますから……」

「え……。ん、むっ。んんんっ!?」



 はっ、はっ、と、興奮に喘いでいたロディの頬をもう一度両手で包み、メディーナはふたたび彼と唇を重ねた。むにゅう、と、またしても胸板に押しつけられる、魅惑の感触。そして次の瞬間、半開きだった唇から舌を差し入れられて、ロディは驚きに目を見開いた。だが、すぐにその目は、メディーナの舌に歯茎をくすぐられて、唇よりもっと甘い快楽に、とろんととろける。



「ん、んん、んんふ……」



 ちゅくちゅくちゅぷと、わずかな水音をさせながら、舌先でロディの歯茎をくすぐり、ねぶるメディーナ。そして、彼女は体の下でロディが弛緩したのを感じ取ると、さらに舌を奥へと差し入れる。しゅる、と、蛇のようにロディの口腔に忍び込んだメディーナの舌は、彼の舌の表をくすぐり、裏側を細かく舐め、根本から抱きしめるように絡めて翻弄した。キスがこんなに気持ちいいなんて、と、いう意識すら快楽にとろけ、ロディはうっとりと目を閉じ、眉を寄せて、時折体を震わせながら、くぐもった喘ぎを上げ続ける。



「ママ、すごい……」

「ん、んん、んんふ、んむ……」

「んっ、んんっ、んんんっ!」



 そして、メディーナが上顎を舌先でくすぐると、ロディはびくんと体を震わせ、シーツを両手で握りしめた。反応の激しさに驚いて身を起こしたディナの下で、ぎゅっ、と、シーツに寄る放射状のしわ。やがて、メディーナがゆっくりと銀糸を唇の間に引きながら身を起こすと、ロディはすっかりとろけきった顔で、ベッドの上にだらりと伸びていた。ディナが顔を寄せて手を振っても、焦点を失ったまま余韻に浸っているロディは、ほとんど反応を示さない。



「ママ、すっごーい……!」

「ふふ。ロディさんは、慣れてらっしゃらないだけよ。ディナも、すぐにできるようになるわ」

「本当? どうしたらいいの?」

「そうね……」



 恥ずかしげにはにかみながら、メディーナは感嘆する娘の耳に、ぽそぽそとキスのテクニックを囁いた。好奇心と興味の入り交じった表情で、ディナは最初はうなずきながら話を聞いていたものの、やがて、しだいにその顔に、困惑と疑問の色が浮かび始める。



「……それだけなの? もっとすごいのかと思ったのに」

「そうね。口で言ってしまうと簡単なのだけれど……。ふふ、いいわ。ともかくやってみなさい」

「あ、いいの? うんっ。それじゃ、ロディさん。次あたしねっ」



 まだ半分陶然としているロディに嬉々として顔を寄せると、ディナは母がしていたのと同じように、彼の頬を両手で包んだ。上気して熱い肌を撫でながら、ディナは目を閉じ、彼の唇に吸いついて行く。



「んんんんー……っ」

「んんっ!?」



 ちゅううっ、と、強烈に吸いつかれ、ロディは大きく目を見開いた。続いて、唇に温かい舌が触れ、ぴちゃぴちゃとそこを舐め回し始める。



「んっふ、んっふ、んんー……」

「んっ!? んんっ!? んむんん……っ!」



 吸われ、舐められ、目を白黒させて悶えるロディ。ふう、と、困り顔でため息をつくと、メディーナはぽんぽんと娘の肩を叩いて言った。



「ディナ、ちょっと待ちなさい」

「んー……っ!? ぷぁ、なに、ママ」

「優しく、って、言ったでしょう?」



 ちゅぽ、と、音をさせて唇を離したディナに、メディーナは片手で自分の額を抑え、あきれ顔で言った。不満げに、少し唇を尖らせて、ディナは彼に覆い被さったまま答える。



「優しくしてるよぉ」

「じゃあ、もっと優しく。ロディさん、苦しがってたでしょう?」



 熱烈すぎるキスに息を詰まらせ、はっ、はっ、と、まだ呼吸を跳ねさせているロディを、ふたりは同時に見る。んー、と、唸って、ディナはもう一度ロディの顔を頬で挟む。と、そのディナの顔を、メディーナがゆるりと両手で包んだ。



「待ちなさいったら。本当に大ざっぱなんだから。教えてあげるから、体で覚えてからにしなさい」

「あ、ママ……んっ」



 身を屈めたメディーナが、ディナの唇を奪う。んっ、んっ、んんっ、と、甘ったるい喘ぎをBGMに、目の前で繰り広げられる濃厚なキスシーンに、ロディは食い入るように見入っていた。やがて、頬を上気させた母娘は、唇の間に銀の橋をかけ、密やかに語り合う。



「わかった?」

「……うん」

「それじゃあ、もう一回やってみなさい」

「はーい……」



 しゅる、と、衣擦れの音をさせてシーツの上を這い、ディナはもう一度ロディに寄り添った。潤んだ瞳と上気した頬の艶っぽさに目を奪われているロディに微笑むと、ディナは両手を彼の頬にのばし、唇を重ねる。



「ん……っ」

「ふ、むっ、んん……!」



 やはりメディーナよりはぎこちなかったが、それでも先ほどよりは、ディナのキスはずいぶん優しくなっていた。少し優しすぎるくらいに舌先をちろちろと震わせ、唇から歯茎、歯茎から舌へと、ディナはキスをエスカレートさせていく。



「んっ、んっ、んむ、んっ」

「んふ、ふ、むっ、ふぅう、んんっ!」

「んー……っ」

「んんんんんっ!!」



 そして、メディーナがやったように上顎をくすぐられて、頭に突き抜ける、むずがゆいような快楽にロディが大きく震えると、ディナは、ぴちゃ、と、音をさせてゆっくりと顔を離し、不安げな表情で訊ねる。



「……今度は気持ちよかった? ロディさん」

「う、うん……すごく」

「あは。よかったー……」



 赤くなりながらロディがうなずくと、にこぉっ、と、ディナはうれしそうに笑った。その笑顔のかわいらしさに、どきん、と、ロディの鼓動がまた跳ねる。ほほえましいその光景を見ながら、メディーナは娘と逆の側からロディに寄り添うと、す、と、手を彼の服にかけた。



「あ……」

「それでは、次に参りましょう。失礼しますね、ロディさん」



 風呂に入った後に与えられた薄い上下を、メディーナはするするとロディの体からはぎ取っていった。重ねたキスにすっかり興奮した陽根が露出すると、ロディは思わず両手でそれを隠す。ふふ、と、浅く笑うと、メディーナは自分の背に両手を回し、もぞもぞと何かをし始めながら言った。



「恥ずかしいかもしれませんけれど、見せて下さいませんか、ロディさん。今日は、この子の教育も兼ねておりますので……。ほら、私達も、もう何も隠しませんから……」

「え、あたしも!?」

「当たり前でしょう? ここも、今日は使うのよ」

「……うー、なんか恥ずかしいなあ」



 メディーナは落ち着いた表情で、ディナは落ち着きなく、胸に巻いていた布を取り去っていく。ふるん、と、大きな乳房と、ぷるん、と、小振りな乳房。母娘の4つの肉珠を目にして、ロディは、ごく、と、喉を鳴らした。その彼に両側から寄り添うと、ふたりはロディの両手に、そっと手をかけて囁く。



「失礼します」

「どうなってるのかなー……」

「あああ……っ」



 隠していた割にはさしたる抵抗もなく、ロディは陽根を覆っていた手を、彼女らに導かれるまま取り払われた。ひくん、ひくん、と、天井を向いて脈打っているそれは、彼の体格から考えると少し大振りで、まあ、と、メディーナがうれしそうな声を上げる。



「どうしたの、ママ? 何かいいの?」

「ディナは初めて見たからわからないかしらね。ロディさんのペニスは、とても立派なのよ」

「へぇー……。立派なんだ。可愛いのに……。ね、触っても大丈夫?」

「ええ。でも、優しくよ。さっきのキスみたいに」

「はーい」



 聞き分けのよい返事をして、ディナは空いている手をロディの陽根に伸ばした。まず触れたのは、真っ赤に充血して脈打っている先端。人差し指でその真ん中あたりに触れると、つんつんとそこをつついて、ディナは呟くように言う。



「柔らかくて硬い……。それで、すっごく熱い……不思議」

「あううううっ!!」

「ひゃ!?」



 何度かつついたあと、形を確かめるように、先端と軸の間のくびれをなぞったディナは、その途端に悲鳴を上げてロディが仰け反ったことに、驚いて手を引っ込めた。その手を胸の前で握り、おろおろと陽根と彼の顔を見比べながら、ティナはメディーナに訊ねる。



「なに、なに!? あたし、何かダメだった!? 優しくしたよ!?」

「大丈夫よ、ディナ。そこは、男の人がすごく敏感に感じるところなの。だから、ロディさんは、気持ちよすぎてびっくりしたのよ」

「そ、そうなの?」

「そうよ。見ていなさい」



 言いながら、メディーナはロディの陽根の先端で震えている、透明な雫に指先を伸ばした。にちゅ、ちゅ、と、それを指先にまとわりつかせるように何度かそこに触れると、もどかしい感覚に、あっ、あっ、と、ロディが短く喘ぐ。十分に指を濡らした後、メディーナはディナがしたように、くびれに指先を触れさせると、ぬるるぅ、と、十分にぬめった指先でそこをなぞった。ディナに触れられたときは電撃的だった快楽が、ぬめりのおかげで甘く和らげられ、ロディは強烈だが丸みを帯びた快楽に腰を震わせて喘ぐ。



「ああぁあぁあ……っ」

「ほんとだ、気持ちよさそう……。あ、あたしももう一回する」

「ふぁあああああ……あぅうっ」



 先走りの雫をすくい取ってはくびれに、亀頭に塗りつけられて、ロディは生殺しの快楽に喘いだ。びくん、びくん、と、激しく脈動する陽根を見て、ディナは目をきらきらさせながら言う。



「なんだか可愛いね……。ね、ママ。それで、どうすれば精子っていうのが出てくるの?」

「ロディさんを、もっともっと気持ちよくしてあげればいいの。そうね、やり方はいろいろあるのだけれど……。まずは、しばらく見ていなさい。種付けだけ、先にしてもらうから」

「えーっ。あたしもしてみたいよぉ」

「ディナ。精子はね、短い時間に何度も出していると、だんだん薄くなってしまうの。ちゃんと種付けをしてもらうには、最初の濃いうちにかけてもらうほうがいいのよ」

「……そうなんだ。はーい……」



 不承不承ながらもディナがうなずいて引き下がると、メディーナは、ロディににこりと微笑みかけた。そして、ベッドサイドに置いてあった小瓶を手に取ると、メディーナはその中身を自分の下半身、鱗を持った蛇体にふりかけ始める。ふわりと甘ったるい魅惑的な香りとともに、ぬめぬめと、灯りを照り返して輝き始める蛇体。その蛇体を、メディーナはロディに寄り添うと、その体にしゅるしゅると巻き付け始めた。腹に、腰に、脚の付け根に、そして陽根まで覆い尽くすように巻き付かれて、ロディは不安げな表情で声を漏らす。



「わ、わ……」

「大丈夫……。痛くはありませんよね?」

「な、ないですけど……」



 見た目よりは柔らかい、メディーナの鱗。弾力は感じるが、硬いというほどではなく、巻き付かれたところは、先ほど振りかけた小瓶の中身のせいか、ぬめぬめとした感触と、爪を肌の上に乗せてくすぐられるような、微妙な感触に包まれていた。正面からロディに抱きついて抱き起こすと、メディーナは、腕の中に彼の細い体を抱きしめながら、背後の娘の方を振り返って言う。



「いい、ディナ。こうやって、巻き付くときも優しく……。しっかり鱗には香油をまぶさなくてはだめよ。腰から、脚の途中ぐらいまで。将来、体の長さが足りるようになったら、胸まで巻き付いてもいいわ」

「うん……」

「巻き付いたら、優しく抱きしめるの。生殖は、とにかく力を入れすぎてはだめ。抱きしめるときは、男の人の顔をちゃんと見て、少しずつね……」

「あぅうう……」



 娘にそう語りながら、ぎゅう、と、メディーナは蛇体を蠢かせ始める。ロディの頭を胸に抱き、ただ巻き付けていた胴で、彼の胴をゆっくりと締め上げるように。腹側は上へ、腰から下は下へ。無数のぬめった鱗に撫であげ、撫で下ろされて、ぞくぞくっ、と、ロディの全身に震えが走った。鱗の洗礼は、当然股間にも浴びせられる。ぞろぞろ、ぬめぬめと休みなく、後孔、袋、根本から先端までをなで上げられ、ロディはたまらず目の前のメディーナにしがみついて喘いだ。



「あぁあ……っ」

「最初は、卵に欲しいので……。ロディさん、済みませんけど、漏れそうになったら言って下さいね」

「は、はひっ。あぅ、でも、でもぼく、もう……っ! あああっ!」

「あら」



 ふ、と、微笑んで、メディーナは動きを止めた。みっしりと巻き付いた蛇体に下半身を心地よく締め上げられて、はっ、はっ、と、喘ぐロディ。その奥で、彼の陽根は、びくん、びくん、と、大きく跳ね、大量の雫を先端から漏らしていた。温かいが勢いはないそれを感じながら、メディーナはロディを落ち着かせようとするかのように、抱きしめた背中を優しく撫でる。



「はぁあ、はぁ、はぁ、あぁ……」

「ロディさん、気持ちよさそう……」

「うぅ……」



 のぞき込んでくるディナから逃れるように、メディーナの胸にロディは顔を埋めた。興奮と恥ずかしさに耳まで真っ赤にして、自分に抱きついてくるロディの頭と背中を撫でながら、メディーナは娘に言う。



「こうやって、男の人を少しずつ気持ちよくしてあげるのよ、ディナ。たくさん気持ちよくしてあげれば、男の人は元気のいい精子を出してくれるの。私達の卵管は長いから、できるだけ元気よく出してもらわないと、卵に届かないこともあるわ。それに……そのほうが、元気ないい子が生まれてくるという言い伝えもあるしね」

「ふ、ふーん……」



 興奮に顔を火照らせ、こくこくとディナはうなずいた。微笑んでうなずき返すと、メディーナは撫でる手を止め、ロディの顔を優しく起こしながらまた訊ねる。



「そろそろ、少し落ち着きましたか?」

「は、ふ、はい……」

「それじゃあ、続きをしますね……」



 ず、と、またメディーナは蛇体を蠢かせ、ロディの下半身を責め始めた。普段は触られても心地よいと感じない尻の表面すらメディーナの鱗になぞられると、ぞくぞくと甘痒い快楽を訴えて、ロディの背筋を震わせる。そして、これ以上は苦しいというぎりぎりの力で締め付けると、メディーナは今度は蛇体全体を、ぬっ、ぬっ、と、上下させ始める。下半身全体がしごかれるような快楽に、ロディはまた仰け反って喘ぐしかなかった。



「ううあっ、メ、メディーナさん、それっ……!」

「お気に召しましたか?」

「め、めしっ、めしましたっ、めしすぎてまた……っ!」



 ロディが音を上げると、メディーナは微笑んでまた動きを止めた。ぎりぎりまでこみ上げていた射精感が引いていくのを感じながら、ロディは、はっ、はっ、と、喘ぐように息を弾ませる。先ほどと同じように、そんなロディの頭や背を撫でながら、メディーナは娘の方を振り向いた。



「ディナは『さざ波』はできるようになった?」

「え、あ、うん。これでしょ……」



 不意に問われて、一瞬面食らったような表情を見せた後、ディナは下半身を伸ばして、難しい顔をしながら、それをくねらせて見せた。地面に置いたロープの端を持って振った時のように、だがそれよりもずっと艶めかしい動きで、彼女の蛇体の中を、うねりが伝わっていく。メディーナの腕の中からそれを見て、ロディは、それが今から自分の下半身で行われることを思って、こく、と、喉を鳴らした。だが、メディーナの方は、娘の技を見て小さなため息をつくと、困ったような笑顔を浮かべる。



「まだ一つ波しかできないの? 練習しておきなさいって言ったでしょう」

「だ、だって……。難しいんだもん」

「巻き付いてやるのはもっと難しいのよ」

「うー……がんばる」



 娘の表情に、ふふ、と、また笑いながら、メディーナは自分の腕の中に視線を戻した。そして、腕の中の種付けの少年が、先ほどの光景を食い入るように見つめていたことに気づくと、笑みを深めながら、彼女は囁く。



「ふふ。それじゃあ、ロディさんにも致しますね……」

「あ、は、はい……っ。あっ、あっ!? あ、ああっ! ひゃああっ!?」



 メディーナの下半身が、小さくうねる。そこで発生した波は、ぴったりとロディの体を締め上げている蛇体に伝わり、くねることで鱗の密度を微妙に変化させた。ちゅちゅちゅちゅちゅっ、と、キスされるような不思議な感覚が、蛇体を伝わって腹を、腰を過ぎ、さらには後孔の上もなぞって、ロディに裏返った声をあげさせる。ふたつ、みっつ、間隔の異なる波も流されて、ロディは下半身をくねらせ、甘い快楽に悶えた。しばらくの後、メディーナはまた動きを止めると、すっかりとろけた顔になったロディを抱いたまま、またディナの方を振り向く。



「男の人が十分気持ちよくなったら、ペニスを卵管に入れてもらうことになるわ。巻き付いたまま体を下げていけば、勝手に入るから、卵管の外で男の人が精子を出してしまわないようにだけ気をつけて、少しずつ下がっていけばいいからね」

「うん……」



 見たことがないほどに艶っぽく上気した母の顔に呑まれるようにうなずくと、ディナはふたりの下半身に顔を寄せる。それを確認すると、メディーナはロディの頭を撫で、ず、ず、と、ゆっくりと蛇体を、彼の下半身のほうへと滑らせ始めた。太股の上の方だけだった尾の巻き付きがふくらはぎの方にまで移動し、ちょうど胸に彼の頭を抱くのにちょうどよかった上半身が、胸同士がふれあうあたりまで降りてくる。その途中で、くちょ、と、柔らかい何かに陽音の先端が触れ、ロディとメディーナは同時に喘いだ。



「あっ……」

「は、うっ」

「ん……。少し、入りました……」

「ね、ねえママ。見てもいい?」

「え……。もう、しょうがない子ねえ」



 ディナの言葉に、一瞬驚いたような顔をしたあと、メディーナは顔を赤くしながらも、恥じらいと呆れの混じった笑みでうなずいた。母の了承を得て、ディナは結合部近くに顔を寄せると、両手を差し込んで、メディーナの蛇体を押しのけ、結合部を露出させる。



「うわぁ、本当に入ってる……。痛くないの?」

「うふふ……。大丈夫よ、ディナ。これはね、とっても気持ちいいの……」



 艶っぽい笑みを娘に向けて、ず、と、さらに体を下げるメディーナ。にゅぷ、と、さらに陽根が卵管へもぐり込み、ロディは、あぅう、と、情けない声をまた上げる。



「ん、はぁ、あぁ、ああぁ……」

「うあ、ああ、あっ、ま、待っ、メディーナさん……っ!」



 鱗とはまったく異質の柔らかさを持つ卵管の中は、粘液のように柔らかく、そして体の外側のどこよりも熱かった。吸い付かれるような密着感を割り開きながら、うねる肉洞に飲み込まれて音を上げるも、メディーナは自身の快楽に夢中なのか、動きを止めようとはしない。歯を食いしばり、息を止めて、暴発を必死にやりすごそうとこらえるロディ。やがて、根本まで卵管に飲み込まれ、ようやく耐えるのも終わりか、と、ロディが体を緩めたその時だった。



「あぁん……っ」

「えっ!? うゃあああああっ!」



 にゅぷん、と、袋までが卵管に飲み込まれ、ぬるぅ、と、ぬめった感触が袋を、そして、ずるりと陽根全体を舐る。その最後の刺激に耐えられず、ロディはメディーナの体で引き絞りに引き絞られた腰の奥の弓の弦を、たまらず手放してしまった。びゅぶっ、びゅぶっ、びゅぶっ、と、味わったことのない強烈な射精感と解放感に、がくがくと体を震わせるロディ。自分の手でしていたときとは比べものにならない、目もくらむような快楽に、頭が真っ白になって、呼吸が詰まる。



「ひあぁあぁあぁあぁーっ!!」

「んんんんんんっ! 熱……っ!」



 絶叫してメディーナにしがみつき、ロディは彼女の卵管に、大量の精を注ぎ込んだ。熱く激しい精の勢いに、同じく悶えるメディーナ。そして、ぐったりとなってしまったふたりを見比べて、ディナは困ったような顔で訊ねた。



「ね、ねぇママ。今ので終わり?」

「はぁ、はぁ、本当は、もう少し、卵管の中で気持ちよくなってもらうつもりだったのだけど……。ふふ、私もだめね。久し振りすぎて、ちょっと失敗しちゃったわ……」

「えーっ! そ、それじゃ、ナディは? 生まれてこられないの?」

「大丈夫……。ロディさんの精子は、ちゃんと届いたから。でも、そうね……もし、失敗して届かなかったときの方法も、教えておくわ」



 虚脱状態のロディを抱いたまま、メディーナは心配そうな顔のディナの頭を撫でると、切なげに眉を寄せ、唇を結んで目を閉じた。ん、と、メディーナが声を漏らすと、ぐったりしていたロディの体がびくんと跳ねる。



「あ、あああああーっ!!」

「んっ、んっ、ん……」

「ひああ、あああっ! ああ、あひいいいっ!!」」

「な、なに!? 何してるの? ママ。ロディさん、びくびくしてるよっ」



 慌てて問いかけるディナ。鳴き悶えるロディを抱いたまま、メディーナは薄目を開けると、娘に薄く微笑んで言う。



「勢いが、んっ、足りなかったときはね……んっ。こうやって、卵管の奥に、出してもらった、んっ、精子を、んっ、吸い上げるの……んっ」

「す、吸い上げるって?」

「お手伝いで、乳搾りは、んっ、しているでしょう? んっ……それを、卵管で、やる感じ、んっ……ね」

「で、でも、ロディさんは大丈夫なの?」



 目を見開き、身も世もないような絶叫を上げるロディの姿は、ディナには苦悶しているように映るのか、彼女はおろおろしながら続けて訊ねた。ふ、と、淫隈さを含んだ笑みを浮かべて、娘にメディーナは答える。



「大丈夫……。男の人は、これをされると、とても気持ちがいいの……。だから、こんなに叫んだりするのよ。ん……っ。ほら、ロディさん、逃げようとはしていないでしょう?」

「あ……本当だ」



 逃げるどころか、メディーナにしがみつき、腰を揺すっているロディの姿に気づくと、ディナはほっとしたような表情を見せた。そこでようやくメディーナが絞り上げるのをやめたのか、ロディはがっくりと頭を垂れると、メディーナの肩にそれを乗せ、絶え絶えに呼吸を紡ぐ。



「はっ……はっ……はっ……はうっ……」

「大丈夫? ロディさん。そんなに気持ちよかったの?」



 虚ろな目でぐったりとメディーナに寄りかかったまま、ロディはごく小さく、首を縦に振った。快楽に浸りきったロディの表情を見て、こく、と、喉を鳴らすと、ディナはメディーナにすり寄って言う。



「ねぇ、ママ。あたしもやってみたい……。ロディさん、気持ちよくしてみたい。いいでしょ?」

「ディナ、それは私じゃなくて、ロディさんに聞きなさい。ね、ロディさん。いかが? ディナの練習に、つきあって下さいますか?」



 しゅるしゅると蛇体の巻き付きを緩めながら、ロディに問いかけるメディーナ。ちゅぽ、と、音を立てて陽根が卵管から抜けると、ロディはまた小さく震えたが、それ以上の反応は返ってこなかった。メディーナの手でベッドに横たえられたロディに、じれったくなったのか、ディナは這い寄って甘えるように体を重ねていく。



「ねぇ、ロディさん……。もうだめ? あたしもロディさん、気持ちよくしたいの……」

「あ、ぅ……」

「ねぇー、お願い。もいっかいキスしてあげるからぁ……」



 ぐいぐいとロディの腕に胸を押しつけながら、首に抱きついて頬を舐め、脚に尾を巻き付けて、ディナは猫なで声で迫った。まだ強烈すぎる絶頂の余韻の中でぼんやりとしていたロディだったが、彼女が唇を重ねてくると、うっとりとした表情のままで、萎えかけた陽根をまたむく、むく、と、みなぎらせ始める。



「ふふ。この子ったら、意外なことが上手ねえ……」



 また天井を向いてそそり立ち始めたロディの陽根を見て、メディーナは小さく笑って言った。ひくん、ひくん、と、脈打ちながら膨らんでいくそれを目の前にし、ちろりと舌なめずりすると、メディーナはディナの肩を軽くつつく。



「ぷぁ……。なぁに、ママ。あたし、また何か失敗してる?」

「ううん。キスは上手よ、ディナ。そうじゃなくて、いい機会だから、これも教えておこうと思ったの」



 顔を上げたディナをそう言って手招きすると、メディーナは恍惚としたロディの下半身で半勃ちになっている陽根に顔を寄せた。同じように顔を寄せたディナは、目の前でひくひくと脈打っているそれを軽くつつき、ぱちぱちと不思議そうに瞬きして呟く。



「なんか、さっきより柔らかい……変なの」

「男の人は、疲れてきたり……疲れていなくても、年をとると、なかなかペニスが硬くならないの。だから、そういう時に、しっかり硬くする方法を教えておくわ。巻き付いて、鱗で撫でてあげるのが本当のやり方だけど、さっきの様子だと、まだ上手にできないんでしょう?」

「う……うん。かけっこなら負けないけど……」

「棒登りとか縄渡りも、きちんとなさいね。……まあ、それはともかく。こういうときはね、男の人のこれをしゃぶってあげると、元気になるのよ」

「へぇー……」



 恍惚から覚めてきたロディは、どこか遠くからふたりの声が聞こえてくることを、ぼんやりと認識していた。と、不意に、ぬるっ、と、したものに陽根が包まれ、彼は、ふぁ、と、喘ぎを漏らして、またシーツを握りしめる。



「そう……牙をひっかけたりしないように気をつけなさい。それで、キスのときみたいに、舌を巻き付けたり……」

「んむ……」



 しゅるしゅると、温かいぬめりの中で、陽根に何かが巻き付いてくる。むくむくと充実していく感覚。巻き付けられた舌でしごかれて、それはさらに強くなった。



「ふぁ。ははふはっへひは……」

「あぁ、あぁはふっ、んん……」

「ん、ひほひよはほうはほへは……」



 くわえたままでもごもごと喋られて、ロディは不規則な刺激に、ぞくぞくっ、と、背筋を震わせた。ディナは、ロディが漏らした快楽の呻きに気をよくしたのか、笑みを浮かべてまた何か呟くと、視線をメディーナに向ける。



「基本は、キスと同じでいいわ。優しく吸ったり、舌先でくすぐったり。男の人のペニスの敏感なところは、さっき話したでしょう?

「わはっは……。ん、ん、ん、んんー……っ」

「あぁ、あぁ、あひぁ、あぅ、ふぁあああっ!」



 ちろちろ、ちろちろ、と、泣き所を舌先でなぶられて、すすり泣くような声を漏らしていたロディの陽根を、ディナはちゅうっと吸い上げた。その吸引は優しかったが、突然変わった刺激に、ロディは思わず腰を突き上げ、それに喉を突かれて、ディナは驚いて陽根を吐き出す。



「んっ! ぷぁ、えふっ、こほ、えぅう……」

「あ……ご、ごめんなさい……」

「あらあら、大丈夫? ふふ、しょうがないですよ。気持ちいいときに、びくってなってしまうのは、誰でも同じですから……」



 娘の背中をさすりながら、我に返ったロディに笑みを向けると、メディーナはそう言ってうなずいた。うー、と、恨みがましそうな目をロディに向け、けほ、と、もう一回せきこんで、ディナは口を拭う。



「うー、しょうがないかもしれないけど、びっくりしたよ……」

「ご、ごめんなさい」

「ほらほら、ディナ。あんまり責めてはだめよ。別のやり方も教えてあげるから……」



 苦笑いして言いながら、メディーナはもう一度ロディの股間に顔を伏せ、ぐい、と、膝に手をかけて、彼の脚を片方持ち上げた。後孔を灯りの下にさらけ出さされ、ロディは驚いて上半身を起こそうとするが、それよりも早く、メディーナの舌が、ちろ、と、後孔の入り口を這う。



「あひっ!」

「わ、そこ、なに? 卵管?」

「男の人には卵管はないのよ、ディナ。ここも、男の人の気持ちいいところなの。ほら……」

「ひぃ、いっ、そこ、そこは、だめっ、や、あああっ!」



 先ほど、鱗で責められたときに、すっかり感じる準備ができてしまったそこを舌でねぶられ、ロディは、両手をメディーナの頭にかけながら、泣き声で悶えた。意識の上では押し返そうとしているのだが、舌がそこで動くと、腕に力が入らず、ほとんどメディーナの頭に手を乗せただけの状態で、ロディはぞくぞくと腰の奥を直撃する、恥ずかしすぎて拒みたいが、気持ちよすぎて拒めない快楽に、高い喘ぎを漏らし続ける。



「あぅう、あぅうううっ、やめ、ひぁんっ、やめて……っ!」

「ふーん……ね、ママ、あたしやる! ここなら、苦しいことなさそうだし……」

「ええ。でも……」

「優しくでしょ? わかってるってば」



 メディーナを押しのけるようにベッドに体を伏せて、ディナは彼の後孔に顔を寄せた。ひくん、ひくん、と、収縮しているそこを改めて見つめ、ディナはくすりと笑って呟く。



「人間の男の人って面白い……」

「ああ、ディナちゃん、やめて、そこ、恥ずかしいよぉ……っ」

「だめー。だって、ペニスしゃぶると、ロディさん、あたしの喉突いたりするんだもん。そういう反応するっていうことは、こっちも気持ちいいんでしょ? いいじゃない」

「で、でもあぁひっ、うぁああああっ、なかっ、いれないでぇっ」



 視線さえちりちりと感じるようで、羞恥に真っ赤になっていたロディの後孔に口を付けると、ディナはいきなり細い舌をその中へ潜り込ませた。ちろちろと後孔の奥の襞をくすぐられ、ロディは足の指を反り返らせて悶える。



「んー……」



 でこぼこしているけど、何もない。舌で奥の感触を探りながら、ディナはくにくにとあちらこちらを押してみた。ひくん、ひくん、と、入り口が舌を締め付けてくる反応を頼りの宝探し。そんなことを繰り返していたディナの舌先が、なにやら硬い感触のものを探り当てる。



「ん……?」

「ひっ!? あぁ、なにっ、そこ、だめえ……っ!」



 ディナが、舌先で、ぎゅっ、と、そこを押し込むと、ロディの後孔がぎゅーっと収縮し、陽根がびくんびくんと震える。何度かやってみて、ロディの反応がいいことに気づくと、ディナは、にーっ、と、笑って、そこを執拗に探り始めた。つつく、こする、はたく、震わせる。狭い後孔の奥で、思いつく限りの動きで、そこを責め立てるディナ。



「あぁっ、あぁあひっ、漏れっ、やっ、おしりっ、あうぅ、あふれるぅっ!」



 ロディのほうは、押し込まれるたびにせり上がってくる射精感と、ゆるめられてそれが引いていく感じに、ベッドの上で背筋を弓なりにそらせていた。ぎゅっと押されると溢れそうに、つつかれるとこぼれそうに、こすられると漏れ出しそうに盛り上がって、またすぐに引いていく。やがて、にゅぽ、と、ディナがロディの中から舌を抜いた頃には、彼はもうすっかりとろけてしまっていた。



「舌が疲れた……」

「あぁあ……」



 弱々しく喘ぐロディを見下ろしつつ、自分の顎や頬を撫でるディナ。そんな娘の姿に苦笑しつつ、メディーナは後ろから彼女を抱くと、その下腹に手を触れて、軽く左右に押した。普段は鱗の下に隠れている、薄桃色の卵管の入り口は、ぬめぬめと濡れて光っている。



「あ、ママ……」

「準備はいいみたいね」

「うん……。ロディさん気持ちよくしてたら、どきどきしてきちゃった。えっと、巻き付いて、そのまま下がるんだっけ?」

「そうだけど……それは、もうちょっと縄とかの練習をしてからになさい。今日は人間式にしましょう」

「人間式……?」

「そう、そのまま前にゆっくり倒れて、ロディさんのペニスを卵管に入れるの」

「ふーん……。うん、やってみる……」



 メディーナに腰を支えられ、言われたとおり、ディナは少しずつ体を前に倒し始めた。ロディの両肩の横に手をつき、高くあげていた腰をゆっくりとおろしていくと、卵管の入り口に、ロディの陽根の先端が触れる。



「あ……っ」

「ふぁ……!」

「大丈夫? ディナ」



 びく、と、体を震わせたディナに、メディーナは肩越しに訊ねた。こくりとうなずくと、ディナはメディーナの手を引っ張るように腰を積極的に進め始める。



「あつくって、ひくひくしてて……。うん、気持ちいい……っ」

「あぁ、あぅう、ディナ、ディナちゃん……っ!」



 メディーナのようなとろける柔らかさはないが、ディナの卵管は、狭かった。吸いつくのではなく、締め上げられる感触。熱いそこは、ひくひくと震えながら、ロディをさらに飲み込んでいく。そして、やがてロディの腹とディナの腹が接すると、にゅぽ、と、また袋まで、彼の陽根は彼女の中に収まってしまった。



「はぁあああっ!」

「あは、入ったぁ……。んっ、あ、ぅん、これ、気持ち、いい……」

「あっ、うぁ、ディナちゃん、そんなに……っ!」

「んんっ……。だって、気持ちいいんだもん……!」



 ディナが、下半身を前に進むときのようにうねらせると、ロディの陽根は彼女の中で右に左に捻られ、引っ張られ、揉み立てられる。襞はなく、のっぺりとした内部は、しっとりと吸いつき、ロディの陽根を快楽漬けにしていた。



「んふぁ、あぁ、あふぁ、いい、いいよぉ、ペニスいい……っ!」

「うぁあ、あぅ、あぁあ、あぁ、あああっ、ん、むっ!」

「んんんっ、んんんん、んん、んんんんっ」



 ロディの首にすがりつき、腰で渦巻きを描き始めたディナ。陽根で卵管をかき回されるのに夢中になって、彼女は無意識にロディの唇に吸いついた。そして、ディナはさらに、ロディの腹や胴に体を巻き付け始める。



「んんっ、んんん、んんっ、んん、んんん、んんー……っ!」

「ぐうううっ、ん、む、んんんんっ!」



 骨が軋みそうなほど強く巻き締められる痛みと、腰がとろけそうなほどの快楽を同時に味わって、ロディがうめいた。さすがに気づいたメディーナが慌てて止めに入るより早く、限界を超えたロディの陽根が、初回と遜色のない勢いで、ディナの卵管に精をぶちまける。



「んんんんんーっ!」



 初めて腹の中に熱い飛沫を浴びたその瞬間、ディナの意識が一瞬飛ぶ。どこかで、みしっ、と、嫌な音がしたような気がしたが、気だるい絶頂の余韻に抗うことは、二人にはできなかった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「……」

「ごめんなさぁい……」



 そして翌朝。村長タニアの前で、メディーナ母娘は、揃ってしゅんと肩を落としていた。奥のベッドには、体に赤い締め付けの跡を幾重にも刻まれ、あちらこちらに包帯を巻いたロディが横たわっている。



「快く協力して下さったロディさんに、こんな怪我を負わせるだなんて……。ディナはもちろんだけれど、メディーナも近くについていながら……」

「申し訳ありません……」

「今回は、ロディさんが許してあげてほしいとおっしゃっていますから、そうしますが……。二度とこのようなことのないように、気をつけて頂戴。特にメディーナ。いいですね」

「……はい」



 ことさらにしゅんとして、メディーナは小さく体を縮める。くるりとふたりに背を向けると、タニアは首だけ振り向けて続けた。



「では、ふたりは責任を持って、引き続き、ロディさんの身の回りのお世話をすること。……申し訳ありません、ロディさん。少し滞在が伸びてしまいますが、どうぞよろしくお願いします」

「いえ……どうせ、予定があったわけじゃないですし、いいです。こちらこそ、しばらくごやっかいになります」



 そして、ごろごろと彼の乗ったベッドを押しながら、二人は村長の家を出た。心配そうに、自分がつけた締め付け跡をなぞりながら、ディナはすまなげに眉を下げる。



「本当にごめんね、ロディさん……。痛かった?」

「ううん、その……あの時は、本当に夢中であんまり……。今も、力を入れなければ大したことないよ」

「うん……。それにしても、村長ったらどうしてあたしよりママのほうに怒ったのかな? 怪我させちゃったのはあたしなのに」



 あの時、のことを思い出したのか、少し顔を赤らめているロディから視線を外すと、不思議そうに首を捻りつつ、ディナはメディーナの方を見た。恥ずかしげにはにかんで、メディーナはディナに視線と答えを返す。



「……実はね。私も、昔やっちゃったの。あなたを産んだ時、私は生殖も初めてで……。あなたと同じで、夢中になってしまって。せっかく来てくれた種付け雄さんの脚とあばら骨を……」

「ひぇえ……」



 ほんの少し青ざめながら、ロディは頭上のメディーナの顔を見上げた。視線に気づくと苦笑いしつつ、メディーナは首を小首を傾げつつ言う。



「そのあとは大変でした。頼み込んで、人間のお医者様に来ていただいたり、別の種付け雄を捕まえたり……」

「……友達の中であたしだけ早生まれなの、ママのせいだったのね」

「……ごめんね、ディナ。それで私、反省してたくさん練習をしたの。優しく、気持ちよくできるようにって。それから、自分の娘には同じ失敗を繰り返させたくなくて、昨日の夜は、まだ卵を産めないあなたにも、力が弱いうちに慣れてもらおうと思って、呼んだのだけど……。やっぱり、私の子なのねぇ」



 ぎゅ、と、隣で一緒にロディのベッドを押しているディナの頭を抱き寄せながら、メディーナは嘆いたが、その声にはどこかうれしそうな響きも混じっていた。柔らかい乳房に横顔を埋めながら、ディナはにこっと笑って言う。



「大丈夫よ、ママ。だって、ママの子だもん。あたしもいっぱい練習して、上手になる。それに、種付けが終わっても、怪我が治るまでは、ロディさん、ここにいるんでしょ?」

「え……?」



 不意に自分の名前が出たことに、ロディは驚いて頭の上のディナを見上げた。メディーナの腕の中からするりと抜け出すと、ベッドの上に顔を乗り出し、ディナは満面の笑みで言う。



「そっちも、協力してくれるよね、ロディさん。あたし、いっぱい気持ちいいことしてあげるから。いいでしょ?」



 かあ、と、赤くなって口をつぐむロディ。だが、口は閉じても、下半身は正直に、かけられたタオルケットにテントを作っていた……。






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