キソウテンガイ(略)
「それにしても、こんなところに人が来るなんて驚きだったわ」
ゆったりとした民族衣装に身を包んだ彼女は、微笑みながらティーポットを手に戻ってきた。
「えぇ、僕も人が住んでいるとは思いませんでしたから・・・あ、すみません・・・」
言ってしまってから失言に気が付き、僕はすぐに謝った。
「ふふ、いいのよ。事実そうなのだから」
そう気分を害したわけではないらしく、彼女は軽く微笑む。
そうして、僕の前に置かれたティーカップにお茶を注ぎながら、彼女は問いかけた。
「お砂糖は・・・いらなかったわね?」
「はい、頂きます」
湯気の立つティーカップを手に取ると、僕は口元に近づけた。
柔らかいお茶の香りが、僕の鼻腔に届いた。
大学の長期休暇を利用して、新種の植物を求めて僕はこの砂漠の国までやって来た。
日中は気温が五十度に達するため昼間は街に留まり、砂漠での探索は基本夜に行っていた。
しかし街の周りに広がるのは、石と既に発見された植物ばかりの乾いた大地だった。
そもそも街の近辺で新種の植物が見つかるはずも無かったが、それでも僕は一抹の期待を胸に砂漠を探索していた。
そして昨夜、僕は時が過ぎるのも忘れて探索を続け、とうとう街へ戻るタイムリミットを過ぎてしまったのだった。
急いで帰路についても街に着くより前に日が昇り、灼熱地獄をさまようことになる。
そのため僕は太陽を避けるため、砂漠で見つけた石造りの廃墟に身を寄せたのだった。
だがそこは廃墟ではなく、今僕とテーブルを挟んでいる女性の家だったのだ。
女性は名をミラさんと言い、彼女の家を砂漠探索の拠点とすることを許してくれた。
「それで、今日はどうだった?何か見つかった?」
「いえ、それが全然」
ミラさんの問いに、僕は苦笑いで応じる。
「どこに行っても既に発見された植物ばかりで、新種のしの字すら見当たりません」
「それは残念ね、ふふ」
褐色の肌に刻まれた桃色の唇に、彼女は軽く笑みを浮かばせた。
その後、僕たちは他愛の無い会話を交わしながら、お茶を楽しんでいた。
「それで、ミラさん。今日はお話があるんですが・・・」
二、三度のお代わりをしたところで、僕はいつか切り出そうとしていた話をすることにした。
「何?急に改まって・・・」
「実はその・・・僕、そろそろ国に帰らなければならないんです・・・」
大学の長期休暇ももうすぐ終わるし、それよりも僕には母国での生活があった。
ミラさんとの暮らしも楽しかったが、いつまでも彼女の厄介になるわけには行かないのだ。
「・・・・・・そう・・・」
僕の突然の言葉に驚いたのか、彼女はしばらく間を置いてから、ようやくそう応えた。
「それで・・・出発はいつ?」
「大体、一週間後の夕方ぐらいには・・・」
「そうなの・・・」
たっぷりの間をおいてから、彼女は微笑みながら続けた。
「それまでに新種の植物、見つかるといいわね・・・」
その微笑みは、どこか寂しげだった。
それから数日、僕とミラさんはぎくしゃくとしていながらも、それまでと同じ日常を歩んでいた。
日が昇る前に僕が帰ってきて床に就き、夕方ぐらいに起きだして雑用を済ませ、砂漠へ探索に出て行く。
その繰り返しだった。
そして出発前日の夕方のことだった。
「ねえ、今日はその・・・伝えたいことがあるから、出かけないでくれるかしら・・・?」
「は、はぁ・・・」
国に帰ると言い出してから、何となく必要最低限以上の会話をしなかった僕には、彼女の申し出を断る理由が無かった。
充てられた部屋の荷物もそのままに、僕は彼女の部屋へ向かった。
「失礼します・・・」
ドアを押し開くと、薄暗い部屋にランプを一つ灯し、ベッドに腰を降ろすミラさんの姿が眼に入った。
「座って」
「あ、はい」
勧められるがまま、僕はベッドの隣に置かれた椅子に腰掛けた。
「あなた・・・ヴェルヴィッチア・ミラビリスって、知ってる?」
しばしの沈黙を置いてから、ミラさんは口を開いた。
「ええ、まぁ・・・」
学名Welwitschia mirabilis。
その姿かたちからキソウテンガイなどと呼ばれる砂漠の植物だ。
この休暇中の探索でも、何度か見かけたことがある。
「普通は寿命が五百年ぐらいなんだけど、この辺りには数千年は生存し続ける種類があるのよ」
「数千年・・・!?」
「あぁ、でもほとんどの場合寿命が尽きる前に砂嵐で砂に埋もれたり、水源が枯れたりして死んでしまうんだけどね。
それでも・・・本当にごく稀に、寿命を全うするほど長生きする個体もいるのよ」
驚く僕に苦笑しながらそういうと、彼女は笑みを消した。
「私、とか・・・」
「・・・え・・・え・・・?」
突然のミラさんの言葉に、僕は理解が追いつかなかった。
今、彼女はなんと言った?
「私はね・・・この辺りにずっと生えていた、ヴェルヴィッチア・ミラビリスなの・・・」
その言葉と同時に民族衣装の裾から覗く、彼女の褐色の両脚が解けた。
しゅるしゅると衣擦れのような音を立てながら、床の上に植物の葉が広がっていく。
「これが、私の本当の姿」
そこには腰から下を、とぐろを巻く帯状の長い葉と化した彼女の姿があった。
「それで、私の伝えたいことっていうのは・・・」
脳が目の前の光景を処理できず、硬直する僕に向けて彼女は続けた。
「私を・・・抱いて、欲しい・・・の・・・」
「・・・・・・・・・」
「きゅ、急にこんなこと言われても困るわよね・・・しかも、私みたいな化け物の女に言われても・・・」
彼女は視線を床に落とし、自重するような口調で言った。
「でも・・・もうすぐで私の寿命が尽きるから、早いうちに種を作らないといけないの・・・それで、あなたに・・・」
ミラさんはうつむかせていた顔を上げると、懇願するように続けた。
「お願い・・・」
「・・・・・・僕で、いいんですか・・・?」
数分の間をおいて、僕はようやくその答えを絞り出した。
ここまで無言だったのは、彼女の姿と突然の言葉に驚いたからだ。
彼女に対する恐怖や嫌悪で口を閉ざしていたわけではなかった。
「え・・・も、もちろんよ」
僕の返答が意外だったのか、彼女も驚きを滲ませながらそう口にした。
「だってあなたは優しいし・・・一緒にいると楽しいし・・・その、できればずっとここにいてくれたら、と思うぐらいだし・・・」
僕に対する好意の源を、彼女は一つ一つ挙げていく。
「でも・・・あなたは国に帰るから、せめてあなたと私の種だけでも、と思って・・・」
どこか、おびえたような気配を帯びながらの彼女の言葉に、僕は耐えられなくなった。
「ミラさん」
彼女の名を呼ぶと、僕は椅子から立ち上がってベッドまで歩み寄り、その肩に腕を回した。
「え・・・」
そして、彼女を抱き寄せながら、呆けた用に声を漏らす彼女の唇に自身のそれを重ねる。
一瞬腕の中で彼女の体が強張り、小さく震えた。
だが、口付けを続けるうちに彼女の緊張が解けていくのが分かった。
「ん・・・んん・・・」
言葉も無く、ただただ僕たちは唇を重ねていた。
しばしの後、僕はズボンの上から足に何かが絡み付いているのに気が付いた。
目を向けずとも分かる。ミラさんの葉っぱだ。
彼女の下半身から生えた帯状の葉は僕の足に巻きつき、優しく動いていた。
僕は彼女の愛撫に応えるように、彼女のむき出しの背中をゆっくりと撫でた。
「んむ・・・ん・・・」
「ん・・・ちゅ・・・」
互いの唇を吸い、舐め、啜りながら、僕たちは愛撫を交わし続けた。
そして、僕たちはどちらからとも無く唇を離した。
「ミラさん・・・僕、もう・・・」
「私も・・・」
言葉を交わすと僕たちは互いの衣服に手を掛け、脱がせていった。
ほどなく、僕たちはベッドの上で向かい合って座っていた。
「あぁ・・・」
ランプの光に照らし出されたミラさんの裸身に、僕は溜息をついた。
「緊張してるの・・・?なら、まずは私がしてあげる・・・」
彼女の姿に見蕩れていたのを緊張によるものと取ったのか、ミラさんが柔和な笑みを浮かべた。
すると、ベッドの上で幾重にも折り重なる帯状の葉が動き、僕の下半身に伸びてきた。
両脚に葉が巻きつき、股間だけが露出した状態になる。
「あ・・・ミラさん・・・」
「力を抜いて・・・楽にして・・・」
一瞬身構えてしまう僕にそう言うと、彼女は安心させるように僕を抱き寄せた。
そして僕の足に葉を絡ませたまま、ぐるりと僕の体をひっくり返した。
ミラさんの上半身と僕の背中が密着し、丁度彼女にもたれ掛かっているような姿勢になった。
「それじゃあ・・・始めるわね・・・」
彼女の言葉と同時に、足に絡みつく葉が波打った。
植物特有のすべすべとした表皮が皮膚を撫で、肉厚な葉がもたらす弾力が足を揉む。
「あ・・・」
両脚を包み込む葉の感触に、僕は声を漏らしていた。
「ふふ」
僕の反応を確かめながら、ミラさんは足への愛撫を続ける。
太腿を擦り、膝をくすぐり、内股を撫で上げ、筋肉をほぐしていく。
複雑かつ柔軟な葉の動きに、僕は幾つもの手によるマッサージを受けているような錯覚を覚えていた。
そして足への愛撫が続くにつれ、僕は心地よさの中に性的な快感を見出していた。
僕が掻いた汗のせいか、彼女の帯状の葉から粘液が分泌されているのか、葉っぱの下からぐちゅぐちゅと濡れた音が響いてくる。
露出した股間で、僕の股間が興奮により屹立していた。
「うぅぅ・・・」
「そろそろ、ここも触って欲しいのかしら・・・?」
いくらか楽しげな声音で、ミラさんはその乳房を背中に押し付けながら、指先で僕の胸板から腹筋をなぞり、屹立したペニスを突付いた。
背筋を電流が走る。
「いひゃいっ!?」
思わず背筋を反り返らせながら、僕は声を漏らした。
「そんなに・・・ふふ・・・」
彼女は僕の体を抱きしめながら低く笑うと、ペニスを突付いた指を後ろへ引っ込めた。
代わりに、彼女の下半身を成す帯状の葉の一枚が、僕の眼前に掲げられた。
「まずはここで・・・ね・・・?」
表面に粘液が分泌しぬらぬらとランプの明かりを照り返す葉を見せつけながら、ミラさんは耳元で囁いた。
淫猥な雰囲気をかもし出す葉の表面と彼女の言葉に、僕の心臓の鼓動が加速していく。
そして、帯状の葉が僕のペニスに根元から巻きついていった。
股間を包み込んだぬめる感触がゆっくりと股間を這い登る。
「っ!!」
僕は全身を強張らせながら、噛み殺した悲鳴を漏らしていた。
だが、上半身はミラさんによって抱きすくめられ、下半身は彼女の葉によって拘束されているせいで、碌に身体は動かない。
その間にも葉はゆっくりとペニスへ巻きついていく。
そして数時間とも錯覚するほどの時間を経て、ようやくペニスの根元から先端までが葉に包まれた。
ぬめりと温もり、そしてほどよい圧迫感がペニスを締め付ける。
「うぅ・・・あぁ・・・!」
「そんなに気持ちいいの・・・?ふふ・・・」
腕の中で身悶えする僕に囁くと、彼女は熱の篭った声で続けた。
「このまま・・・動かしてあげる・・・」
え、と聞き返す余裕も無かったが、直後ペニスを包む葉が動いた。
扱くように上下するわけでも、締め付けを変えるわけでもなく、葉の表面が一つ波打ったのだ。
ペニスの根元で生じた葉のうねりは、巻きついた葉に沿ってペニスの表面を這い回り、亀頭へと抜けていった。
「あぁ・・・」
ぞくぞくとするような控えめの快感に、放心しつつ漏らした。
するとその反応が気に入ったのか、ミラさんは二つ三つと葉の表面にうねりを生み出していった。
蠕動する表皮が、ぬめりと共に僕のペニスを這い登っていく。
刻々と変化する感触は、まるで肉棒に蛇が巻きつき、締め上げているようだった。
「うぁぁ・・・あぁぁ・・・!」
「そんなに・・・声を上げて・・・」
上ずった彼女の声と共に僕の顎に指が添えられ、強引に顔を横に向けさせられる。
驚く間もなく肩越しに乗り出した彼女の顔が接近し、唇が重なった。
そして、音と共に僕の口中に溜まっていた唾液を、彼女は啜り上げていった。
じゅず・・・ずずずずずず・・・
口元から淫猥な印象さえ伴った音が響き、口中の唾液が吸い上げられていく。
それにあわせるように、ペニスを包む葉の蠕動も大きくなっていった。
両足を包む葉、ペニスに加えられる蠕動、背中に押し付けられる乳房。
そして、すぐ目の前にあるミラさんの双眸と唾液を啜り上げられているという事実。
それら全てがない交ぜになり、僕を一息に押し上げた。
「・・・っ!!」
彼女の唇にふさがれた僕の口から声にならない嬌声が響き、全身の痙攣と共に精液が迸った。
心臓の鼓動に合わせるようにペニスが大きく脈打ち、ぬめり蠕動する葉の表皮と擦れていく。
快感が興奮を生み、興奮が絶頂に導き、絶頂が快感を生む。
その連鎖の中で、僕はただただ彼女の葉の内側に精液を注ぎ続けていた。
「・・・っ!・・・っ!」
唇をふさがれたまま、嬌声を上げ続ける。
やがて興奮が引き、射精が収まっていった。
「んん・・・ずず・・・んむ・・・じゅず・・・ん・・・」
一通り口中を啜り終えると、彼女は僕の口内を一舐めして唇を離した。
僕とミラさんの間で唾液が糸を引き、切れていった。
「すごい・・・こんなに出したのね・・・ふふ」
彼女の視線を追って顔を前に向けると、そこには僕のペニスに巻きつく帯状の葉と、その隙間から溢れ出る白濁があった。
漏れ出している分だけでも、普段より多く見えた。
ペニスを包む葉が解け、屹立が露出していった。
葉の内側には、放たれた精液が満遍なくへばりついており、僕の射精が凄まじかったことを示していた。
「私でこんなに感じてくれたのね・・・ありがとう・・・」
葉に付着した精液を見つめながら、ミラさんが呟いた。
すると彼女はその葉を手元に寄せると、付着した精液に舌を伸ばしたのだ。
粘つく精液を舌で掬い取り、葉の表面を舐めてきれいにしていく。
それは葉を掃除しているというより、僕の精液を残すのが惜しいとでも言うべき様子だった。
黙々と精液を舐め取るミラさんの姿に、僕のペニスは再び固くなりつつあった。
「ん・・・これでおしまい・・・」
最後の一滴まで舐め取ると彼女の手から葉が離れ、下半身を成す葉の中に戻っていった。
「待たせてごめんなさいね・・・」
「あ・・・い、いえいえ・・・」
屹立した僕のペニスを目にしての一言に、僕は慌てて応じた。
「あらそう・・・?なら・・・」
言葉と共に僕の両脚に巻きつく葉が解け、粘液の糸を引きながら離れていった。
突然の解放に戸惑いを覚える僕に微笑みながら、彼女は続けた。
「今度は・・・私の中に出してくれる・・・?」
ベッドの上にごろりと横たわると、ミラさんは僕を迎え入れるように両腕を開いた。
すると彼女の下半身をなす帯状の葉もまた、ざわざわと音を立てながら左右に広がり、葉の付け根を晒し出した。
そこにあったのは、まさしく肉の穴だった。
穴の上端では小指の先ほどに膨れ上がったクリトリスと思しき部分がそそり立っており、穴は興奮によるものか意図的なものか大きく左右に広がり、奥深くまでを晒していた。
ランプの光に照らされる穴の内壁は、幾重にも折り重なった肉襞とその隙間から覗く突起に覆われており、呼吸するようにゆっくりと収縮を繰り返していた。
それに加えて内壁を覆う襞はこれでもかというほど詰め込まれており、入り口近くの襞に至っては穴の外にはみ出るほどであった。
そこまで確認したところで、僕の限界が訪れた。
「な・・・なんだこりゃぁぁぁぁぁぁああああああっ!?」
目に入った彼女の器官に向けて、僕は大声を上げていた。
「え・・・?」
「何これ!?何このグロ穴!?」
声を漏らす彼女に構うことなく、僕はベッドの上で姿勢を正し、言葉を続けた。
「女の人のあそこってこんなんなの!?もうちょっと漫画とかに描いてあるみたいに、『縦筋一本』とか『僅かに開いた割れ目からピンク色の粘膜が見える』とかじゃないの!?」
「な、何言ってるの・・・?」
「何この色と形!明らかに『勇者以外立ち入り禁止』っていう意思表示だよね!?」
「うぅ・・・」
ミラさんが小さなうめき声と共に葉を寄せ、自身の股間を隠そうとした。
しかし僕は左右から集まってくる帯状の葉に両手を突っ込むと、強引に押し広げた。
「これでここがミラさんだけ特別な形って言うのなら僕はほっとする!
ミラさんがキソウテンガイだから形も奇想天外って言うのなら問題ない!
最悪人間の女性の中にもこんな形状の人がいる、って事実も受け入れよう!
だって皆グロいんじゃ、だれも突っ込んだりしないじゃない!
突っ込まなきゃ子供生まれないじゃない!?でも子供は生まれているし、人口も増えている!
ゆえに皆が皆グロいというわけではない!
証明終了!ベリーイージー三段論法!」
「やめて・・・やめて・・・」
彼女は顔を覆ってイヤイヤし始めるが、それどころではない。
僕の脳裏に恐ろしい考えが浮かんだ。
「でも、もしこんなにグロくても突っ込むのが男として普通だったら・・・?」
だとすれば世の中の女性全てがこんな形状をしていても何の問題も無い。
いや、問題はある。
「具体的には僕が困る!」
ミラさんの葉から手を離し、天井へ向けて掲げながら僕は叫んだ。
「正直こんなグロ穴に突っ込む気がしない!もしそれで『不能』の烙印を押されるというのなら、僕は喜んでそれを受けよう!」
狂人の国では常人こそ狂人と言うが、一億の悪徳に流されるぐらいなら僕は一つの善を選ぶ。
「これが僕の覚悟だ!これが僕の正義だ!さぁかかってきやがれ世間体!どっからでも相手してやる!」
「うぅぅぅぅ・・・」
拳を構え左右に視線を向けるが、僕の下に届くのは彼女の嗚咽ばかりだ。
どうやら世間体とやらも、口先だけのようだ。
「・・・っ!もしかして・・・!」
不意に新たな可能性が脳裏に浮かんだ。
「もしかして病気!?病気なの!?やがて死に至る病なの!?」
病名グロォマンコクサレテルミタイデス。今僕が名づけた。
症状は生殖器の変形。後は知らない。
「だとしたら大変だ!早く治療しないと!」
しかし無論のこと、僕は医者ではない。
彼女を治療することはおろか、診断することさえ不可能なのだ。
だとすれば、僕に出来ることはただ一つだけだ。
「誰か!助けて下さい!」
天井を仰ぎながら僕は、応えるものもいないと分かっていながら大声で叫んだ。
「僕はどうすればいいんですか!?誰か教えて下さい!教えて!お爺さん!お爺さんじゃなくてもいいけど!」
と、その時だった。
『若人よ・・・』
僕の耳元で、温厚そうな男性の声音が響いた。
『安心しなさい。その女性はあなたが危惧する病には掛かっていません』
「あ、あなたは・・・?」
姿も無く声だけで僕に語りかける何者かに向けて、僕は問いかけていた。
『私はマンコ・カパック。インカ帝国の皇帝の一人です・・・』
「あなたが・・・」
世界史の授業において、恐らく最も教科書に名前の出ないであろう皇帝の出現に、僕はただ驚いていた。
『若人よ、その女性気があまりにもグロいのは、ただ日ごろの手入れが足りないせいなのです』
「し、しかしこの形状はあまりにも・・・」
『その辺は各人の個人差です。安心しなさい』
「そうなんですか・・・」
彼の落ち着いた声音とその言葉に、僕は次第に安堵していく。
『しかし・・・』
「しかし?」
『彼女は今、非常に傷ついています。御覧なさい』
彼の言うまま視線を向ければ、顔を両手で覆い低く嗚咽を漏らす彼女の姿が目に入った。
『彼女の心はあなたの心無い言動により、完膚なきまでに蹂躙されています』
優しい声音の中に、どこか僕を嗜めるような言葉を乗せて、彼は語り続ける。
『今重要なのは彼女の女性器の症状ではありません。彼女の心なのです』
「ミラさんの、心・・・」
『そうです。このままではあなたに傷つけられた心が肉体に影響を及ぼすでしょう』
「ぐ、具体的にはどうなるんですか・・・?」
よせばいいのに、僕は怖いもの見たさを堪えきれず問いかけていた。
『具体的には、まず黒くなります。私もスペイン人どもにやられた時は怒りのあまり『ブラックマンコ』になっていました。
しかし相手のピサロとか言うスペイン人も大人しく私の手に掛かるわけも無く、『デス・ピサロ』となって反撃してきたのです。
『ブラックマンコ』VS『デス・ピサロ』の戦いは七日七晩に及び・・・』
「思い出話はいいですから、どうか続きを」
『失礼、当時を思い出しまして少々興奮してしまいました』
声は小さく咳払いをすると、調子を落ち着かせて続けた。
『黒くなった後は角とか棘、あるいは鋭い爪や翼が生えてきます。
恐らく彼女の場合は、外にはみ出たビラビラが大きく広がって翼になり、内壁からは人の奥歯のような臼歯が一面に・・・』
「ごめんなさいもういいです」
これ以上聞き続けていたら怖い想像図が浮かび上がりそうだと思い、僕は彼の言葉を止めた。
『兎にも角にもウニコール。彼女の心を癒さねば、遠からず彼女の女性器は『ブラックマンコ』と化し、夜の空を広げた翼で飛び回って被害者を襲い、その内壁に生えた臼歯で獲物の肉と骨を噛み砕くことになるでしょう』
「うわあああごめんなさいごめんなさい」
脳裏に浮かび上がる地獄絵図を打ち消しながら、僕は必死に彼と彼女に謝罪し続けた。
『反省しましたか?』
「はい、勿論・・・」
『では、その反省を胸に彼女の側にいてやりなさい』
聞くものに安堵を与える微笑に満ちた声で、彼は続けた。
『健やかなる時も、病める時も、彼女の側に立ち、彼女を敬い、癒し、愛し続けてやりなさい。
そうすれば必ず許される、というわけではありませんが、あなたが償いをしなくてもいいというわけではありません。
あなたは謝罪の念を胸に保ち、彼女を支え続けるのです。
そうすれば、いずれ彼女の心の傷は癒えるでしょう』
「オォ・・・マンコ・・・」
はらはらと涙を溢しながら、僕は彼の名を呼んでいた。
「ありがとうございます・・・ありがとうございます・・・」
『礼を言うのならば彼女に言いなさい。私はあなたの成すべきことを示しただけです。
さて、それではそろそろお別れの時間です』
僕の脳裏に笑顔で小さく手を振る男性の姿を浮かび上がらせながら、彼は続けた。
『若人よ、お元気で』
そしてそのまま声の主、マンコ・カパックは現れたときと同じように掻き消えていった。
「マン・・・コ・・・」
彼の名を呼ぶが返事は無い。どうやら本当に消えてしまったようだ。
「・・・・・・ありがとうございました・・・」
虚空に向けて深々と一礼すると、僕は再びミラさんのほうへ向き直った。
視界の真ん中にあるのは、葉の付け根で大きく口を開くグロ・・・女性器の姿であった。
「よし・・・」
決心を胸に、僕はペニスを手に摺り寄り、グ・・・膣口に亀頭をあてがった。
そして、腰に力を込めた。
へにゃ
萎えたペニスは、僕と彼女の体の間で力なく曲がった。
「オォ!マンコ!やっぱり無理な物は無理です!」
天を仰ぎながら声を上げるが応えは無く、ただミラさんの嗚咽だけが部屋に響いていた。
グロマンコ
正直突っ込む
気がしない
愛があれども
セガレ猛らず
『キソウテンガイをイメググれば分かるけど、どう見てもグロマンです。ありがとうございました。
ところで作者個人としては女性器というのは少々グロいぐらいが好きです。
だってそんなグロい部分を見せてくれるって、信頼されてる証拠じゃない?
それに『あの澄ました委員長サマがこんなグロマンだとはな・・・へっへっへっ』『いやぁ・・・言わないでぇ・・・』とか興奮するじゃないですか。
出来ればその後はお散歩プレイで校内練り歩きだとか、放送室からのオナニー実況放送だとかそういう羞恥プレイをして、放課後は体育館で全男子生徒の相手をしてもらえば最高です。
無論二次元夢小説的なラスト2ページでの大逆転はなしでお願いします。
それはそうと、皆さんはどのような女性器が好きですか?
一言頂ければとても嬉しいです』
了
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