グランドール事件
だんっ!
鈍い音があたりに響き、鈍痛が俺の掌に残った。
遅れて、鉄が床に落ちる音が届く。
「っげほっ、ごほ・・・!」
「鉄!大丈夫か!?」
崩れ落ちた鉄を助け起こしながら、俺は問いかけた。
握りつぶされつつあった器官を解放され、彼女はは咳き込みつつも空気を貪るように吸った。
そして・・・
「うぐ・・・く・・・」
アリシア人形は耳元を押さえながら、低く呻いていた。
髪に隠れていたパーツが破損し、床へぱらぱらと落ちていく様が目に入った。
そして数分前まで浮かんでいた笑みは消えており、後には微かな屈辱と純然たる怒りが残っていた。
「貴方・・・よくも・・・」
ぎりぎり、と歯を噛み締めながら、アリシア人形が呟いた。
俺たちに向けられている視線には、もはや憎悪しか宿っていなかった。
「だい・・・ご・・・」
彼女が弱々しく、俺の名を呼ぶ。
無意識のうちに、俺は腕の中の鉄を庇うように抱き寄せていた。
背中に垂れた彼女の栗色の頭髪が、俺の指先に触れる。
焦げた臭いが、辺りに漂った。
衝撃が身体を打ち、鈍い痛みが全身に走る。
「うぐ・・・」
苦痛に声を漏らし、眼を開けるとコンクリートに囲まれた薄暗い部屋が目に入った。
床からだいぶ離れたところに四角い穴があり、そこからアリシア人形の影が逆光になって映っていた。
「しばらく、そこで大人しくしていなさい」
アリシア人形の静かな怒りを湛えた声と共に、四角い穴が狭まり、完全に閉じた。
後には、完全な闇が残るばかりであった。
「くそ・・・」
俺は微かに痛む頭を振ると、手探りで闇の中を這い進み始めた。
とりあえず、出口か何かを探さなければ。
掌でコンクリートの床を探るうち、何か柔らかいものに指先が触れた。
微かに湿り気を帯びた布と、その奥の弾力のある温かい物体の感触に、俺はその正体を掴みかねる。
だが耳に届くゆっくりとした呼吸音に、すぐに正体に思い当たる。
これは鉄だ。
「鉄!」
彼女の方と思しき部分を軽く叩きながら、俺は彼女の名を呼んだ。
だが、彼女は応えない。
もしや、と言う思いに俺は彼女のむき出しの頭部に指を這わせた。
テンガロンハットはどこに行ったのか、むき出しの頭髪が俺の指に触れる。
そして、指先にぬるりとした液体が触れた。
手を鼻先に持ってくると、一寸先も見えないような闇の中から、鉄のような匂いがした。
「く、鉄・・・!」
思わず抱き起こしそうになるが、済んでの所で踏み止まる。
頭を打った者をむやみに動かしてはならない。救急救護の基礎だ。
俺はとっさに身に着けていたシャツを脱ぐと、簡単に折りたたみ手に持つ。
彼女の頭を横に倒し、血の滲み続ける後頭部に、折りたたんだ布を押し当てた。
そして、側頭部の止血点を圧迫し、止血を試みる。
闇の中に、鉄の吐息だけが響いていた。
そして、どれ程経過しただろうか。
変わらず鉄の止血を続ける俺の眼を、急に差し込んできた光が灼いた。
「くっ・・・!」
眩さに痛みさえ覚えるが、俺は手を離すことなく眼を瞑り、光から顔を背けた。
すると俺の前方に何かが降り立つ音が響き、遅れて目を刺す光が消えた。
「・・・あら、どうしたの?」
アリシア人形の声が、闇から響く。
「・・・こいつが、頭を打って怪我をしている・・・」
出血が止まらず、シャツを通して掌を濡らし始めた傷口を押さえながら、俺は人形の問いに応えた。
「・・・出血が止まらず、意識も無いんだ・・・早く適切な処置を施さないと、手遅れになる・・・頼む、鉄だけでもここから出してくれ・・・」
敵だとか、俺たちをここに放り込んだ張本人だとか、そういう事実に目をを背け、屈辱を堪えながら俺は懇願した。
「・・・・・・そう・・・」
間をおいて、闇の中から声が返ってきた。
「その人は・・・貴方にとってそれほど大切な人なのかしら?例えば・・・永遠にいなくなってしまうのが怖いぐらいの?」
「・・・あぁ」
逡巡しながら、答えを搾り出す。
「鉄は・・・死なせたくない・・・だから・・・!」
「よく、分かったわ・・・どれほど大切なのか」
さらり、と言う衣擦れと共に、何かが俺たちのそばに近寄る気配がした。
そして、俺の腕に柔らかな掌が触れ、ゆっくりとなでながら俺の手の甲から鉄の肩、彼女の首筋へと移っていった。
「でもね・・・」
不意に、アリシア人形の声の調子が変わった。
「私はついさっき失くしてしまったの・・・大切な人を・・・!」
ぼきっ、と鈍い音が俺の側から生じ、ゆっくりと続いていた鉄の呼吸が止まる。
「え・・・?」
首を折られ、絶命した鉄の身体が、俺の手の中で段々と体温を失っていった。
「ふふ・・・これで、おあいこね・・・」
いささか楽しげな声が、俺の眼前で響いた。
「・・・っ、貴様・・・!」
殴りかかろうとした瞬間、俺の肩が強い力で押され、俺はコンクリートの床の上に仰向けに転がされた。
背中を打ち、軽く咳き込む俺の腹に、重く柔らかな何かが乗る。
「貴方達をここに放り込んだ後、私はゼペット様の指示を仰ごうと団長室まで帰ったの・・・」
俺の肩を掌で抑えながら、アリシア人形は鼻先に吐息が掛かるほどの距離まで顔を寄せ、言葉を続けた。
「そうしたら、団長室は跡形も無く破壊されていて、ゼペット様の残骸が少しだけ残ってたのよ・・・。
貴方に分かるかしら?分かるわよね?たった今、大切な人を失くしたんだから・・・!」
声が途切れると同時に俺の胸に顔が押し当てられ、低い嗚咽が漏れ出した。
そこには人工物の塊である人形の姿は無く、大切な人を失くした悲しみを纏った者がいた。
そこには『人形工房』の職員を人形の手に掛けた者の片割れではなく、ただ俺の胸で嗚咽するだけのか弱い女がいた。
「・・・・・・」
俺はどういうことか、身動きが取れなくなっていた。
鉄を殺害され、仲間達を囚われたという憎悪と、俺の上の驚くほど小さな彼女の姿が噛み合わないからだ。
床に放り出された両腕は、アリシア人形を突き飛ばす訳にも、その背中に回す訳にも行かず、中途半端に浮かせたまま硬直していた。
「うぅ・・・う・・・」
しばしの間そうしていると、アリシア人形の嗚咽が次第に小さくなっていった。
「・・・・・・もう、いいわ・・・」
俺の胸から顔を上げながら、アリシア人形が呟く。
「貴方を、犯してあげる・・・」
闇の中でその表情は窺えないが、それでもその声音に混ざるある種の決意を、俺は感じ取っていた。
「犯すって、貴様・・・」
「私はゼペット様によって作られた淫魔人形。淫魔が手に入れた獲物の精を求めるのは、自然なことでしょう・・・?」
俺の両肩を押さえる手が頬に添えられ、闇の中から寄ってきた唇が俺のそれと重ねられた。
「んぐ・・・!」
避ける間もなく重ねられた唇に、俺は声を漏らした。
柔らかな唇が俺の唇を吸い、突き出した舌で撫でていく。
彼女の唾液に俺の唇が湿り気を帯び、注ぎ込まれる甘い唾液をたっぷりと味わう。
「ん・・・んぅ・・・」
キスを続けるうちに次第に俺の身体から力が抜け、意識に靄が掛かってくる。
やがて差し入れられた彼女の舌が、俺の口腔を撫で回す頃には俺は完全に抵抗をやめていた。
まるで、淫魔とキスをしているかのように・・・。
あぁ、当たり前だ。彼女は淫魔人形なのだから。
「ん・・・ぅ・・・ぷはっ」
俺が心中で妙な納得をしたころ、アリシア人形の舌が口腔から消え、彼女が息継ぎと共に唇を離した。
酩酊しているかのように頭はぼんやりとし、息も上がっている。
そしてズボンの中では、俺のペニスがいつの間にか屹立していた。
「あら・・・キス一つでここをこんなにして・・・」
不意に数枚の布越しに俺のペニスに掌が触れ、上ずった声が闇の中から届いた。
掌がズボンから離れ、少しの体重移動と共に俺の腹の上のアリシア人形が身体の向きを変えるのが分かった。
「それほど心待ちにしているのなら・・・犯してあげる・・・!」
言葉と共にズボンのファスナーが下ろされる。
だが、俺の身体は意識に掛かった靄のせいで碌に言うことを聞かず、ズボンの内側に這い入る指に抵抗することさえ出来なかった。
ズボンの中で下着がずらされ屹立した肉棒が、絹の手袋に包まれた彼女の手の中に納まる。
「まずは、手ね・・・」
アリシア人形が手の中のペニスをゆっくりと撫で始めた。
滑らかな絹の手袋が、屹立した肉棒の表面を擦り、甘美な刺激を生み出す。
絹の肌理細やかな生地が、くすぐったさを伴う快楽を俺に与えていた。
「ぐぉ・・・!」
絹の手袋のもたらす予想外の快感に、俺は半ば裏返った声を上げていた。
「や、止めてくれ・・・」
「止めないわ・・・ふふ・・・」
俺の懇願に、アリシア人形は愉悦の篭った声で応えた。
やがて手袋がペニスを擦る衣擦れの音に、水音が混ざり始めた。
ペニスから、先走りが滲み出しているのだ。
屹立に添えられた指が上下するのに合わせて、先走りが絹の生地に染み入っていく。
滑らかな絹の生地がぬめりを帯び、指先を肉棒に絡みつかせながら扱き、俺を追い詰めていく。
そして、彼女のもう一方の手が脈打つ亀頭に被せられると同時に、俺の意識が限界に達した。
「あぁ・・・あぁ・・・!」
途切れ途切れの声と共に、精液が亀頭を包む手袋に迸っていく。
アリシア人形はペニスを握る手こそ動きを止めていたが、その指はやわやわと蠢き、ペニスを刺激し続けた。
やがて射精が終わり、尿道に残る精液が圧迫され、亀頭を覆う掌へ搾り出されていく。
「ふふ、かなり出ましたね・・・」
ペニスを包む二つの掌が離れ、闇の中からぴちゃぴちゃと何かを舐めるような音が響いた。
「しかも精液は上質・・・」
アリシア人形は手袋に吐き出された俺の精液を味わうと、そう評価した。
だが、俺の全身は射精による倦怠感に支配されており、応えることは出来なかった。
「今度は口に出してもらおうかしら・・・」
不意に腹に乗っていた彼女の尻が消え、しばしの衣擦れと動く気配の後、俺の顔に柔らかい物が乗った。
「っ!?」
興奮に霞む意識が混乱に彩られるが、口元に触れた柔らかな亀裂と、そこから放たれるむせ返るような香りに、それが彼女の股間だと気が付いた。
塞がれた鼻腔と口腔から甘い香りが脳に染み入り、自然とペニスが硬さを取り戻していく。
すると、屹立した肉棒を生温かな感触が包み込んだ。
アリシア人形の口腔だ。
「ん・・・んん・・・」
微かにくぐもった声を漏らしながら、彼女は口内に納まる俺のペニスを舐った。
舌が柔軟に蠢き、俺のペニスに絡みつき、表面に唾液を擦り付けていく。
カリや裏筋は勿論のこと、浮かんだ血管や皮膚の皺一本一本まで、丹念に舐めていた。
それに加え唇でペニスを締め、軽く吸い付くことで口内粘膜でペニス全体を圧迫している。
淫魔人形の名に相応しい、卓越した技術がそこにはあった。
「うぁぁ・・・あぁ・・・」
むせ返るような甘い香りの中、俺は顔面を圧迫されながらもどうにか声を漏らした。
だが、霞がかった意識では抵抗すら出来ず、俺は快感を堪えながら嬌声を上げるばかりだった。
「んん・・・」
裏筋と亀頭の継ぎ目をくすぐっていた舌先が、カリを一周してそのまま亀頭表面に螺旋を描きながら這い登ってくる。
口内粘膜は断続的な吸引により肉棒に密着し、唇はきゅうきゅうと竿を締め上げた。
やがて舌先が鈴口に到達し、チロチロとくすぐりながらその先端を尿道に軽くねじ込む。
狂おしいほどの快感の中に、微かな痛みが刺激として注ぎ込まれる。
同時にペニスが吸い上げられ、口内粘膜が密着と圧迫と柔らかさと温もりを伝える。
一息に押し寄せた快感の波が、俺の限界を乗り越え意識のうちになだれ込んできた。
「うぐぉ・・・!」
うめき声と共に全身が硬直し、鈴口をふさぐ舌先を押しのけるほどの勢いで精液が迸った。
「んん・・・!ん・・・ん・・・」
口内に放たれた白濁の勢いに、アリシア人形が一瞬驚いたような声を漏らす。
だが彼女は唇を窄めたまま、一滴もこぼすことなく精液を受け止め、嚥下していった。
心臓の鼓動にあわせ精液が放たれ、口腔が蠢いて更なる刺激が与えられる。
そうやって彼女は俺のペニスから精液を吸い上げると、唇と舌で尿道を扱き上げながら、最後の一滴まで啜り上げていった。
「ん・・・ん・・・っはぁ・・・・・・ふふ、かなり濃くて美味しかったわ・・・」
ペニスを包む口内粘膜と舌の感触が消え、アリシア人形の声が響いてきた。
そして微かな衣擦れと共に、俺の顔に乗っていた彼女の股間が離れていく。
立て続けの絶頂と、しばしの窒息状態により、俺は荒く息をついて空気を貪った。
その間に彼女は俺の頭部から位置を変え、腰の辺りで膝立ちになった。
「それでは・・・ここで味わうことにしましょう・・・」
闇の中から声だけが届くが、俺には膝立ちになりながらスカートをたくし上げる彼女の姿が眼に見えるようだった。
絹手袋に包まれた指が、なおも屹立するペニスに触れ、角度を調整する。
「ふふ・・・頂きます・・・」
亀頭が唇に似た柔らかな粘膜に触れた瞬間、粘膜の亀裂を押し広げながらペニスが沈んでいった。
肉棒がみっしりと詰まった膣肉に包み込まれる。
「うぉ・・・!」
ペニスを包み込んだ柔肉の感触に、俺は声を漏らしていた。
膣壁には入り口から半ばまでに襞が折り重なっており、半ばから奥は細かな粒々が肉壁を覆っている。
幾重にも連なる襞はひくひくと波打ち、ペニスを奥へ奥へと導くように動いていた。
亀頭を包む幾つもの突起は、肉壁の蠢動に合わせて敏感な粘膜を擦ってくる。
一度に訪れた刺激に、俺は数度の射精を済ませているというのに、挿入と同時に達しそうになっていた。
靄が掛かった意識の中で、俺は必死にこみ上げてくる射精感を堪えていた。
「あら・・・入れただけだというのに、もう出そうなんですか・・・?」
強張る俺の全身の筋肉に、アリシア人形が気が付いたかのように言った。
そして彼女の言葉にあわせるように、肉洞が大きく蠢いた。
連なる襞が波打ち、愛液と共に肉棒を啜り上げる。
亀頭やカリ、鈴口までもを覆う幾つもの小さな突起が、肉棒を擦り、くすぐる。
蠢動する粘膜の感触に、俺はペニスが蕩けたかと錯覚するほどの快感を覚えていた。
「あ・・・あぁ・・・!」
間の抜けた声と共に、膨れた裏筋の内側を何かが擦っていく。
ペニスから背筋を這い登ってきた快感に、俺はようやく射精していたことを認識した。
「ん・・・出てる・・・ふふ、美味し・・・」
迸る精液を受け、彼女の膣が歓喜に震える。
波打ち、うねる膣襞がペニスに絡みつき、締め付け、啜り上げていく。
放たれる精液を溢さぬよう、漏らさぬよう、締め付けが増し、奥へ奥へと蠕動と共に吸い上げていく。
蠢き、波打ち、うねる膣壁により、絶頂が引き伸ばされていく。
「あぁ・・・あぁ・・・!」
まさに彼女の膣で精液を搾り取られながら、俺は途切れ途切れの嬌声を上げていた。
「ふふ・・・ふふふ・・・」
闇の中から楽しげな笑声が響き、それに合わせるように腰が揺すられる。
粘液と粘膜が絡み合い、ぐちょぐちょと淫猥な音を立てた。
一挙動ごとに強烈な快感が生まれ、精液の迸りの勢いが増す。
射精と射精の間隔が小さくなり、もはや常時精液を漏らしながら時折勢い良く精液が迸るほどになっていた。
快感と連続する絶頂に意識が蕩けていく。
「あぐぁ・・・・・・あぁ・・・!」
もはや俺には、嬌声と共に精液を放つ他できることは無かった。
そして、どれ程精液を放ち続けただろうか。
「ふふ・・・・・・ふ・・・ふ、う・・・」
不意に漏れ出す彼女の笑声がくぐもり、次第に腰の動きがぎこちなくなっていった。
「ふふ、う・・・うぅ・・・うぅ・・・!」
そして腰が動きを止めると、彼女は上体を倒して俺の胸元に顔を埋めた。
「う・・・うぅ・・・ぐ・・・う・・・」
膣にペニスを収めたまま、胸の上から漏れ出した嗚咽が響く。
いつの間にか膣は蠢動を止めており、俺の射精も止んでいた。
意識を苛んでいた連続絶頂から開放されると同時に、俺の胸元から響く嗚咽に、意識が急速に醒めていく。
「うぅぅぅ・・・うぅ・・・」
「・・・・・・」
倦怠感と疲労感が身体に満ちていたが、俺は無意識のうちに右手を持ち上げ、彼女の髪に触れた。
手を動かすのにあわせ、指の腹を滑らかに髪が滑っていく。
その指ざわりは、まさにいつか触った鉄の栗色の髪と同じだった。
「うぅ・・・ぜぺっと・・・さまぁ・・・どう、して・・・うぅぅ・・・」
嗚咽に混ざり、彼女の声が響く。
細い指が俺の下着のシャツを握り締め、溢れ出した涙が染みを広げていく。
そこで、俺はようやく悟った。
彼女は、アリシア人形は俺を通して主人、ゼペット・オルフェンを見ているのだ。
そして俺もまた、胸の上で嗚咽する人形を通して、束の間の相棒であった淫魔、鉄を見ていた。
「・・・・・・鉄・・・」
闇の中に、栗色の頭髪を垂らし嗚咽する鉄の姿が浮かび、俺は自然と彼女の名を呼んでいた。
快感に蕩けてしまった意識には、実に簡単なことだ。
俺は彼女の髪から頬に指を移すと、優しく力を込めてその顔を上げさせた。
「うぅ・・・う・・・・・・あ・・・」
少しだけ驚いたような表情を浮かべた彼女の顔が闇に浮かぶ。
俺は頭を持ち上げると、彼女の頬に指を添えたまま唇を重ねた。
闇の中で幻視した鉄のそれと寸分違わぬ位置に、アリシア人形の唇はあった。
「・・・・・・」
彼女は無言で俺の、恐らくは彼女の幻視する主人の唇を受け入れた。
唇で触れ合い、舌先で交互に唇を舐め、歯列を撫で合い、舌を絡め合う。
そのまま、心の通わぬキスを俺たちは続けた。
「・・・・・・・・・っは・・・」
たっぷり数分は経過したところで、どちらからとも無く唇を離していた。
その数分の間に、俺のペニスはあれだけの射精を繰り返したと言うのに、彼女の膣内でゆっくりと脈打っていた。
そして彼女の膣もまた、奥から愛液を溢れ出させながら、ゆっくりと膣壁を収縮させていた。
「・・・俺が、上になっていいか・・・?」
「はい、どうぞ・・・」
俺・・・『ゼペット』の申し出に、アリシア人形・・・『鉄』がにっこりと微笑みながら応える。
繋がりあったまま、俺たちは協力して正常位の姿勢をとった。
闇の中、コンクリートの床の上に『鉄』の栗色の髪の毛が広がる。
「ゼペット様・・・」
彼女が両腕を伸ばし、『ゼペット』の首に絡めて抱き寄せた。
俺は成されるがまま引き寄せられ、『鉄』と再び唇を重ねた。
互いの唾液で唇を濡らし、求め合うように舌を絡ませる。
そして、いつしか俺たちは腰を動かし始めていた。
「んっ・・・ん・・・ちゅ・・・」
口元で水音を立てながら、『鉄』が俺の腰に両脚を絡める。
おかげで俺は腰を前後に振ることが出来ず、ぐちゅぐちゅと音を立てながら揺するしかなかった。
しかし、それでも彼女の膣は俺のペニスに絡みつき、十分強い快感を与えてきた。
「ちゅ・・・ん・・・んふっ・・・ふっ・・・」
「ん・・・ちゅ・・・ふぅっ・・・んん・・・」
折り重なる襞がペニスに絡みつき、膨れた亀頭が子宮口を擦る。
腰を小さく揺すりあい、時折声を小さく漏らしながら、俺たちは互いの唇を貪っていた。
「む・・・ちゅ・・・っはぁ、鉄・・・」
「ん・・・んむ・・・ぷは、ゼペット様・・・」
唇を離し、互いの名を呼び、再び重ね合わせる。
下半身では既に、互いの性器の形を覚えるかのようにゆっくりと交わっていたが、俺たちは唇でも交わっていた。
『鉄』と名を呼び合いながら、身体を重ねているという事実に、俺の興奮が高まっていく。
そして、その興奮と『鉄』の膣の感触に、俺の意識は限界に達した。
唇を重ね、舌を深く彼女の口に挿し入れたまま、俺の全身が硬直する。
射精を控えて強張る俺の身体を、彼女は優しく抱きしめながら舌を絡めた。
「ん・・・ふ・・・う・・・!」
短いと息と共に、膣内でペニスがはじけた。
膨れ上がった亀頭が『鉄』の子宮口に押し当てられ、脈動と共に精液が迸っていく。
子宮口は噴出する精液を啜るように亀頭に吸い付き、膣壁を波打たせながら更なる快感を与えた。
その動きは先程俺に加えられたものとは異なり、『ゼペット』を心地よくさせるかのように優しいものだった。
「ん・・・んむ・・・ちゅ・・・」
「む・・・ふっ・・・ん・・・」
優しく、甘い刺激を受けながら俺は精液を放ち終えると、『鉄』と重ねていた唇を離した。
「ぷはっ・・・はぁはぁ・・・」
「ふふ、ゼペット様の・・・こんなに、たくさん・・・」
『鉄』が胎内に注がれた精液の量を感じながら、笑みを浮かべた。
その淫靡さを帯びた彼女の表情に、俺の肉棒は自然と固さを取り戻していった。
「鉄・・・もう一度・・・」
「はい、ゼペット様・・・何度でも・・・」
言葉を交わし、抱擁しあいながら、互いに腰を揺すり始める。
反り返った肉棒で『鉄』の愛液に滑る膣を抉る。
蠢動する膣で『ゼペット』の屹立したペニスをこねる。
「鉄・・・鉄・・・!」
「ゼペット様・・・ゼペットさまぁ・・・!」
互いに闇の中に幻視する相手の名を呼び合いながら、俺たちは交わっていた。
確実に心は通っていなかったが、それでも俺たちは『相手』のことを想いながら、名を呼び、交わっていた。
「鉄・・・くろが、ね・・・うっ・・・!」
限界が訪れ、精液が迸っていく。
『鉄』は俺に合わせて腰の動きを止めながらも、膣壁を蠕動させながら精液を受け止めていった。
「あぁ、ゼペット様・・・」
胎内に広がる熱い粘液の感触に、『鉄』はうっとりと声を漏らす。
そして俺の射精が止み、しばしの休憩を挟むと、どちらからとも無く腰を揺すり始めた。
「鉄・・・鉄・・・!」
「ゼペット様・・・ゼペット様・・・!」
名を呼び合いながら、俺たちは交わり続ける。
彼女が淫魔人形だと言うのならば、生命を精液に変えてでも搾り取ると言う淫魔の能力も再現されているのだろう。
だが、俺は『鉄』に精液を注ぎ続けるのを止める気は無かった。
幻視とはいえ、鉄に最後の一滴まで搾り取られ、命まで啜られるのならばそれでいい。
むしろそれが本望だ。
「くろがねぇ・・・くろがねぇ・・・!」
「ゼペットさまぁ・・・ゼペットさまぁぁ・・・!」
互いの名を呼び合いながら、『ゼペット』と『鉄』は闇の中で交わり続けていた。
どこからとも無く、血の臭いがしていた。
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