グランドール事件


人形の放つ妖艶な気配に、俺は気を取られてしまった。

十数メートルは離れているはずの距離が詰まり、人形から立ち上る香りが鼻をくすぐり、手を伸ばせば届きそうな錯覚を覚えた。

身体に満ちていた緊張が途切れ、全身の筋肉が緩む。

「・・・伍堂っ!?」

俺の異常に気が付いたのか、鉄が声を上げる。

彼女の声に、意識と緊張感が戻る。

だが、遅かった。

「ぎゃんっ!」

鉄が、別な箇所から飛び掛ってきた人形の蹴りを受け、短い悲鳴を上げながらコンテナの上を転がった。

「鉄っ・・・!」

彼女の名を呼びながら、俺は銃をコンテナの上に降り立った人形に向け、引き金を引こうとした。

しかし、銃は弾丸を放つことなく、俺の手を弾きながらあらぬ方向へ飛んでいった。

「な・・・」

とっさに顔を横に向けると、そこには離れたコンテナの上にいたはずの、猫足の人形が立っていた。

「・・・ふっ」

人形が笑みを浮かべた瞬間、その頭部を覆う金髪が揺れ、俺の腹を衝撃が貫く。

視界が暗転し、意識が急速に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に感じたのは、股間を包む生温かさだった。

「う・・・うぅ・・・」

「あら?お目覚め?」

倦怠感と微かな痛みにぼんやりする意識に、高い声が届いた。

声の源を確認するため、俺は閉じていた目蓋を上げた。

すると、数メートル先で輝く蛍光灯と、コンクリートの壁面が目に入った。

俺がどこかの部屋で床に置かれたマットレスの上に仰向けに寝かせられている、ということを理解するまで、数瞬の時を要した。

「俺は・・・う・・・」

顔を上げると、俺の頭を微かな疼痛が襲った。

「ほら、無理しないの・・・ふふ」

再び届いた声に、俺は頭痛を無理矢理意識の外に追い払い、目の焦点をあわせた。

すると、仰向けに横たわる俺の下半身に、金髪の女がうつぶせに乗っているのが目に入った。

短い金髪に、白い肌。

きめ細かな皮膚に覆われた背中は締まった腰へと続き、やや大きな尻の向こうには猫科の動物めいた脚があった。

そしてその豊かな乳房の間に、俺のペニスが埋もれていた。

「お前は・・・あうっ・・・」

声を上げようとした瞬間、女が乳房の間から露出する俺の祈祷をぺろりと舐めた。

明瞭になった温かさと柔らかさ、そして微かにざらつく舌の感触が、俺の言葉を奪う。

「ん?私?私は戦闘人形GU-02。アンタを捕獲した褒賞として、一時間だけ自由にする権利が与えられてるの・・・」

両手で自身の乳房を圧迫し、俺のペニスを揉み立てながら女、GU-02はそう説明した。

「ちなみに時間が来たら、アンタの身柄は第一魔力供給室へ移動させられるわ」

言葉を連ねると、彼女はその桃色の舌でねっとりと亀頭を舐った。

断続的に襲ってくる快感のおかげで、思考がまとまらない。

しかしそれでも、俺は一つの言葉を搾り出すことに成功した。

「くろ・・・がね・・・は・・・?」

「クロガネ?あぁ、あの淫魔ね。多分改造されているんじゃないかしら。私みたいに」

そう答えると、GU-02は大きく口を開き、乳房の間から突き出る亀頭を咥えた。

生温かく、濡れた口腔の感触が、俺に襲い掛かる。

「っ!」

人工物とは思えない、唇や舌の蠢きに、俺は全身を硬直させた。

「んっ・・・んん・・・」

時折くぐもった声を漏らしながら、人形は両手で乳房を寄せ、擦り、口内の亀頭を舌で舐った。

しっとりと汗で湿った皮膚が俺の竿に吸い付き、尖った舌先が鈴口をぐりぐりと穿る。

背骨を甘い快感が這い登り、俺の意識が追い詰められていく。

そして、GU-02の舌が一際強く鈴口を抉った瞬間、俺は限界に達した。

「うぐっ・・・!」

短い、くぐもった声と共に腰が跳ね、人形の口内に精液が迸っていく。

「んっ・・・!ん・・・」

低い声を漏らしながら、彼女は口内に注がれていく白濁を飲み込んでいった。

やがて射精の勢いが弱まり、止まると、GU-02は唇をすぼめて鈴口を吸い、尿道に残る残滓を啜った。

「ん・・・ぷはっ・・・かなり、濃かったわよ・・・ふふ」

亀頭を口中から解放すると、彼女は乳房で竿を挟んだまま俺を見上げ、妖艶に微笑んで見せた。

ぞくり、とくる作り物のはずの笑みに、俺の肉棒は再び屹立していた。

「ん・・・また固くなってきたわね・・・じゃあ今度は・・・」

GU-02は乳房に当てていた手を離すと、俺たちを乗せているマットレスに手をついた。

そのまま俺の身体を這うように、自身の身体を滑らせ始めたのだ。

二つの乳房の谷間に亀頭が埋もれていき、汗に滑る肌が竿を擦っていく。

膨らんだ裏筋は、谷間の奥の皮膚を擦り、鳩尾から薄く浮かぶ腹筋へと降りていった。

そして亀頭が乳房に埋もれ、彼女の腹筋の上部に裏筋を押し当てているところで、GU-02の動きが止まる。

柔らかな乳房に亀頭を包まれ、腹筋の溝にペニスを押し当てていると言う刺激に、俺は顔を顰めながら耐えていた。

「どう・・・って、聞くまでもない様ね・・・ふふ」

俺の表情を見ながら、彼女は小さく笑った。

彼女の呼吸に合わせて胸郭が収縮し、腹筋が小さく波打つ。

その動きは乳房を揺らして亀頭を擦り、腹筋の溝で裏筋を揉むこととなった。

俺と彼女の腹筋の間でペニスが脈打ち、乳房の間で亀頭から先走りが滲み出る。

「時間はあまりないから・・・我慢しなくていいのよ・・・」

「うぁ・・・あぐ・・・」

言葉と共に彼女が身をくねらせ、汗に濡れる乳房と腹筋が俺のペニスを擦る。

柔らかいながらも固い腹筋の感触と、そんなところに擦り付けているというある種異常なシチュエーションに対する興奮が、俺を高めていく。

快感により亀頭が膨れ、汗と先走りにぬめる乳房の間で擦れる。

やがて、二度目の絶頂が俺を襲った。

「うぁ・・・あぁ・・・!」

全身が硬直し、彼女の腹筋を押し上げながらペニスが脈打ち、谷間の奥めがけて精液が迸っていく。

「熱・・・んっ・・・」

放たれる精液の感触に、GU-02は動きを止め、小さく囁いた。

程無くして二度目の絶頂が終わると、彼女は自身の乳房を手で支えながら、上体を起こした。

「ほら見て・・・こんなにたくさん・・・ふふ・・・」

乳房を左右に広げながら、彼女は谷間に吐き出された俺の精液を見せ付ける。

そして、指先で谷間の精液を掬い取ると、彼女は指を口に含んで見せた。

「ふふ・・・美味し・・・」

艶っぽい笑みを湛えながら、彼女は肌に付いた精液を掬っては舐めていた。

 

 

 

 

 

 

数分後、一通り乳房の間を綺麗にすると、GU-02は猫足を床について俺の上で腰を屈めた。

「それじゃあ今度は、ここに貰うわね・・・」

自身の秘所に手を伸ばし、広げながら彼女は言う。

俺のペニスは先程の痴態により、すでに屹立していた。

広げられた彼女の女陰から、溢れ出した粘液が糸を引きながら俺のペニスに滴る。

「あうっ・・・!」

生温かい粘液の感触に、俺の声と共に肉棒が跳ねた。

彼女は脈動に合わせて揺れるペニスに手を伸ばすと、優しく指を添えて固定し、腰を屈め始めた。

「ふふ、入るわよ・・・」

「あ・・・あぁ・・・!」

粘液にぬめる膣口が亀頭を捉え、やわやわと揉みながらペニスを受け入れていった。

柔らかく温かな、肉の感触が俺のペニスを包み込んでいく。

「あぁ・・・あぁ・・・!」

彼女の膣内は幾重にも折り重なった襞に覆われており、柔軟な膣壁が波打ちながら押し入ってきた肉棒を受け入れていく。

やがて、彼女の尻と俺の太腿が触れ、女陰がペニスを根元まで加えたことを悟った。

亀頭が、カリが、裏筋が、襞に絡み付かれ、粘液を塗りたくられていく。

肉棒へ注ぎ込まれる快感に、俺はただ震えながら声を漏らすほかなかった。

「まずは一回・・・」

その言葉と共に、膣全体がきゅっと締まった。

「っ!?」

限界ぎりぎりまで追い詰められた俺の意識に、大きな快感が注ぎ込まれる。

結果、一瞬にして俺は絶頂に達し、GU-02の膣内に精液を放っていた。

「ふふ・・・三度目なのにこんなにたくさん・・・」

腹の奥に注がれる粘液の感触に、人形は笑みを浮かべていた。

だが、三度目の射精が終わる前に、彼女は腰を揺すり始めた。

前後、左右に、或いは円を描くように。

「ま、待て・・・あぐっ・・・!」

「ほら頑張って・・・もう時間がないわよ・・・」

動きに合わせて複雑に変化する膣の締め付けと、波打つ襞の感触に仰け反る俺に向けて、彼女は愉悦の篭った声で囁いた。

否応なしに興奮が高められ、終わりかけていた射精が勢いを取り戻す。

「あぁっ・・あぐぁ・・・!」

敏感なペニスを嫐られ、刺激を注ぎ込まれ、射精を維持させられるのはもはや苦痛に近かった。

ペニスからの柔らかさと温もり、射精の開放感と快感と、苦痛が一度に脳に届き、ごちゃ混ぜになりながら俺を絶頂に留まらせる。

連続する射精が俺の意識をどろどろに溶かしていく。

「うぁぁ・・・あぁぁ・・・」

「ふふ・・・ほら、もっと・・・もっと・・・!」

腰を揺すりながらGU-02が上体を倒し、俺の胸に自身の乳房を押し付けた。

柔らかな乳房が俺の胸を擦り、固くなった彼女の乳首がアクセントを添える。

蕩けた意識でも、押し当てられた乳房の感触は興奮を高め、射精を維持する役割を担っていった。

「あぁ・・・あぁぁ・・・!」

「もっと・・・もっと・・・もっと・・・!」

互いの吐息を感じられるほどに顔を寄せながら、GU-02は俺の顔を眺めながら腰を揺すり続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺はGU-02から解放されると意識を失い、いつの間にか別な部屋に移動させられていた。

そこはかなり広い円形の部屋で、床には等間隔に幾つもの台が並び、天井には何本ものレールがぶら下げてある。

レールには幾つもの自走式のフックが掛かっており、室内を縦横無尽に行き来していた。

俺は床に並べられた台の一つに固定され、露出したペニスを屹立させている。

台からは何本もの管が伸び、俺の腕や首筋にその先端が埋まっていた。

「はぁはぁはぁ・・・」

天井のレールを伝い、高速具に身を固定された淫魔が、息も荒く俺の真上まで移動してくる。

「あぁ・・・おちんちん・・・!」

屹立するペニスに向けて淫魔が首を伸ばすと、拘束具全体が傾いて頭が下がり、彼女の唇が亀頭に触れる。

「んっ、んむ・・・!」

「あぅ・・・」

ようやく届いたペニスを彼女は頬張ると、すぐに舌を絡め頭を上下に振って唇で扱き始めた。

ただでさえ卓越した淫魔の技術に必死さが加わり、強い快感を生み出す。

程無く、俺は達してしまった。

「あぐっ・・・!」

「んん!ん・・・!」

口内に迸る精液を受けとめ、嚥下すると、彼女はペニスを口から解放した。

「ぷはっ・・・あぁ・・・足りないよう・・・もっと・・・もっと・・・」

彼女の言葉に応えるように、頭の方が下がっていた拘束具が動き、今度は下半身が俺のペニスの真上に来る。

拘束具は股間部分が大きく開いており、丁度開脚姿勢で固定された彼女の女陰が露出していた。

「おちんちん・・・おちんちん・・・!」

彼女の求める声にあわせ、拘束具とフックを繋ぐ支柱が伸び、屹立したペニスが淫魔の膣に飲み込まれた。

「あぁっ!」

「うぁ・・・!」

柔らかな肉に包まれた、と感じた瞬間、激しい蠕動と強い締め付けがペニス全体を襲い、一瞬で絶頂に押し上げられた。

「あぁんっ!一杯っ!」

膣奥を叩くように噴出する精液の感触に、淫魔が声を上げた。

そのまま数度精液を搾り取られると、淫魔の膣からペニスが引き抜かれ、自走式のフックが高速具に包まれた彼女を次の台の元へと運んでいった。

「・・・っはぁ、はぁ、はぁ・・・」

立て続けの絶頂を終え、俺は次の淫魔が来るまでの束の間の休息に身をゆだねた。

微かな振動と共に首筋の管から血管に何らかの薬剤が注ぎ込まれ、全身を支配する疲労感が消えていった。

ここ『第一魔力供給室』は、人形の話しによると『人形工房』を包む結界を維持するため、淫魔に精液を与えて魔力を搾り取る施設らしい。

恐らく松田隊長や竹内、梅宮の三人もここにいるのだろうが、俺には助けるどころか探すことも出来なかった。

任務失敗は明らかだったが、俺にはもうこの『第一魔力供給室』精液を淫魔に注ぎ続けるほか、できることは何もない。

「はぁはぁ・・・精液ぃ・・・」

二十代ほどの、ブルネットの淫魔が俺の上に移動してきた。

彼女を縛る拘束具が傾き、露出した女陰が俺のペニスの真上に来る。

「はぁはぁはぁ・・・」

挿入されるまでの一瞬まで、俺は休息を貪り続けた。

機械音と共に拘束具の支柱が伸び、俺のペニスが淫魔の膣へ飲まれていった。

快感が脳を侵し、精液が膣内に迸っていく。

何かを忘れているような気がするが、思い出すことは出来ない。

でも、それでいい。

思い出したところで、何かできるわけではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンクリートがむき出しの、格納庫を思わせる無骨な空間に何十人もの人間がいた。

いずれも銃器を手にしており、緊張を滲ませながら部屋の奥に設置された大きなリングに向かっていた。

そしてリングの真正面には、身の丈三メートルはあろうかという、光沢を帯びた鈍色の甲冑が屈んでいた。

『・・・・・・時間だ』

リングの前に置かれた、巨大な甲冑が低い声を放った。

『現在時刻0500をもって、『人形工房』本部施設の封鎖解除作戦を終了。ジョンソン砲による目標の破壊を行う。

担当術者は、全員発射体勢に入れ』

甲冑はしばしの間を置いて、小さく呟く。

『・・・・・・すまない・・・』

そして、迷いを断ち切るかのように高らかに宣言した。

『ジョンソン砲、発射』

 

 

 

 

海の真ん中に赤く輝く球体が浮かんでおり、球体を囲むように艦隊が配備されていた。

幾隻か軍艦の甲板に光が宿り、藍色の空に向けてほぼ同時に飛び上がった。

光は放物線を描きながら天に昇ると、赤い球体めがけて一直線に落ちていく。

光は球体を通り抜け、球体の中にあった城に命中した。

瞬間、球体の中が光で満たされた。

そして光が消えた時、海の上には城も、赤い球体も無かった。

ただ何も無い海面を、艦隊が取り囲んでいるだけだった。






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