牛人 其の三 『山海民口伝』より




強い力に逞しい体、そして知恵を持っているというのに、現在では牛人は全く見られなくなった。

牛人を討伐した猛者の話は無く、牛人の亡骸を見たという話も聞かない。

ただその数を減らし、いつの間にかいなくなったのである。

牛人がどこへ行ってしまったのか、その行方はもはや知れない。

         (『山海民口伝』より)









草を掻き分けながら、人影が山の中を進んでいた。

道は無く、生い茂る木々により空も望めないが、人影の足取りに迷いは無かった。

背の高い草を掻き分け、山の中腹に出来た小さな広場に異様な仮面が姿を現す。

それは横倒しの黒い三日月と二つの黒丸から成る、記号化された笑顔の面であった。

白く光沢のある仮面の表面に、途切れた木々の天蓋の隙間から差し込む月の光が当たる。

「・・・・・・」

二つの黒丸が、木々の隙間から覗く山々に囲まれた小さないくつかの灯火を捉えていた。

「ふん」

仮面の奥から高く澄んだ声が響くと、人影が歩き出した。











二つの黒丸の先にあった集落は、牛人の支配下にあった。

村を襲撃し、抵抗するものを殺し、村人を一所に集めると、牛人たちは思い思いの相手を村の若者から選び出した。

そして日が暮れるまで、彼女らは自分の相手と楽しんでいたのだ。

今、村の広場には大きな焚き火が焚かれ、十数人の牛人と若者が囲んでいた。

揺れる火の光を受けながら、牛人たちの巨躯と若者の身体が妖しく照らされていた。

牛人が上になり下になり、一人の若者を二人の牛人が挟みこみ、複数の若者を一人の牛人が侍らせたりと、思い思いの行為にふけっていた。

まさにそこでは、饗宴が繰り広げられていたのだ。











「んぶ・・・んちゅ・・・ん・・・!」

猪の皮を側に置いた牛人が、少年と唇を重ね合わせながら抱き合っていた。

牛人が胡坐を掻き、その上に少年が座るような姿勢だ。

互いに唇を求め、舐め、しゃぶり、啜り、吸いあっていた。

二人の身体は興奮に火照り、溢れだす汗が全身を濡らしていた。

少年の上半身は牛人の巨大な乳房に挟まれ、下半身は腹回りの肉に埋まっている。

汗にぬめる胸の谷間で少年は上半身をくねらせ、折りたたまれた腹の横一文字の谷間に埋もれる下半身を揺らした。

彼の皮膚が、ぬめる彼女の肌によって愛撫され、甘い快感がもたらされる。

牛人は少年の肌を楽しみながら、少年の口に覆いかぶさり、舌を挿し入れた。

すると彼は積極的に舌を突き出し、侵入した巨大な舌に絡めた。

二人の口内で舌がうねり、粘度の高い唾液が混ざっていく。

牛人のへそに差し込まれていた小さな肉棒が、歓喜の震えと共に精液を放った。

腹部の谷間に、熱い感覚が広がる。

「んん・・・!」

小さく息を漏らしながらも、彼女は分厚い脂肪の下の腹筋を波打たせ、へそに収まる少年の屹立を刺激した。

幾度も放たれた精液と先走り、そして二人の汗が混ざり合ったものが、淫猥な音を立てながら肉棒に纏わりついた。

「ん・・・んん・・・!」

身体を強張らせながら、少年が甘い吐息を漏らした。

そして、彼女の求めに応えるべく、少年はまた身体を揺すり始めた。















別な場所では、熊の毛皮を脱ぎ捨てた牛人が仰向けになり、少年を一人体の上に乗せていた。

二人は巴の形で重なって、焚き火に照らされながら饗宴を楽しんでいた。

「はぁはぁはぁ・・・」

「ほーら、もっとしっかり」

荒く息をつきながら、指先を揃えた右手で自信の膣を抉る少年に、牛人は声をかけた。

指の関節が膣壁を抉る感触が何とも心地よい。彼は昼間とはもはや段違いの腕前になっていた。

「んんっ・・・!」

背骨を這い登ってくる快感を堪えながら、彼女は頭を持ち上げ、手で弄んでいた少年の陰茎を咥えた。

根元をぽってりとした唇で軽く締め付け、舌で唾液を塗りこんでいく。

微かな塩味のする先走りを味わいながら、彼女はたっぷりと屹立を愛撫した。

「ひぅっ・・・!?」

少年が裏返った声をあげ、全身を硬直させた。

彼女は慌てて口から陰茎を解放すると、脈打つそれに触れぬよう注意した。

やがて肉棒の脈動が収まり、後僅かで届くはずだった絶頂が、少年から遠のいた。

「イきたかったら、アタシと一緒に・・・な?」

射精を防げたことに内心ほっとしつつ、彼女は余裕があるかのように言った。

両腕で乳房ごと彼の胴を抱きしめ、軽く揺すってやると、少年の全身がまた強張った。

「・・・・・・!」

ようやくやる気になったのだろう。少年はいつの間にか止めていた腕を、再び動かし始めた。

牛人のねっとりとした愛液にまみれた手が、大きく広がった膣口を出入りした。

指の関節や手の甲の筋に、牛人の柔らかな膣壁が絡みつき、愛液を塗りたくっていく。

その纏わりつくような肉の動きに、少年は強い興奮を覚えていた。

もし、ここを出入りしているのが手ではなく肉棒であったら?

そんな想像をするだけで、彼の屹立は今にも射精しそうなほど張り詰めるのであった。

だが、彼女を絶頂に導くまで射精はできない。

そのため、彼はふと浮かんだ雑念を振り払い、一心に手を動かし続けた。

手の動きに愛液が泡立ち、ぐちょぐちょと淫靡な音を立てる。

膣を出入りする手の動きに回転を加え、より強く肉襞を掻き分けていく。

「あっ・・・んふっ・・・!」

突然強くなった陰部からの刺激に、彼女は漏れそうになった嬌声をかみ殺した。

そして大きな快感の波が通り過ぎるのを待つと、彼女は眼前で屹立する肉棒を口に含んだ。

「あぁぁっ!?」

脈動を繰り返していた逸物が、彼女の唇に締められると同時に爆ぜた。

煮えた精液が、断続的に勢い良く彼女の口内に放たれていく。

「あぁぁぁぁぁっ!!」

彼女は苦味と生臭さをたっぷり味わいながら、迸る精液をせき止めるように亀頭に舌を被せ、ずるりと嘗め回した。

少年の背筋が反り、手の動きが完全に止まる。

「うあぁぁぁぁっ!あぁぁぁぁっ!」

余りの快感に声を上げる彼をいたぶるように、牛人は脈打つ肉棒を舌で擦り、唇で扱いた。

やがて、口内の半分が精液で満たされるほどの射精を経て、彼の絶頂は終わった。

「っはぁはぁはぁ・・・」

荒く息をつく彼を尻目に、彼女は精液を嚥下すると口を開いた。

「あーあ、一人でイっちゃって・・・おしおきだね・・・」

「あぁ・・・」

どこか期待に満ちた声を、少年は漏らした。



















そんな饗宴が、焚き火の周りを囲むように幾つも行われていた。

そして、村人達が囚われている家屋を背にするようにして、一際大柄な牛人が饗宴を楽しんでいた。

肌は浅黒く、肉付きも他の牛人よりも良かった。

彼女は身に纏った虎の皮を肌蹴ながら、二人の男を相手にしていた。

一人の腰を片手で掴んで持ち上げ、その陰茎をしゃぶっている。

もう一人を乳房に背中を預けるように抱き寄せ、空いた手で屹立を弄っている。

「うわぁ・・・」

「あぅ・・・」

強烈な快感に顔をゆがめながら、二人は射精を続けていた。

持ち上げられた男は、己が放つ精液を嚥下するたびに蠢動する牛人の舌によって、絶頂に押し上げられたままだった。

抱き寄せられた男の大きく弧を描くように飛んでいた精液は、もう漏れ出す程度の勢いしかなかった。だが、牛人の体臭と手技によって彼の絶頂は引き伸ばされていた。

二人の絶頂はいつまでも続くかのように思われたが、やがて限界が訪れた。

「うぁ・・・ぅ・・・」

「ぉ・・・ぅ・・・」

小さなうめき声を漏らすと、二人の身体が完全に脱力した。

どうやら体力が尽きて失神してしまったようだ。

「じゅず・・・ずじゅじゅ・・・ん・・・」

尿道に残る男の精液を唇で扱き出してから、彼女はようやく陰茎を解放した。

二人の男を側に転がすと、牛人は背後を振り返りながら言った。

「おい、次を連れてきな」

「はい!」

古い狼の毛皮を身体に巻きつけたやや小柄な牛人が、見張りに経っていた家屋の戸を開き、中を覗き込んだ。

家の中には老若男女、饗宴に参加していない村人が残っていた。

だが、大人の男は全て床に転がされており、頭を楽しませられそうな者はいなかった。

どうやら村の男は、さっきの二人で最後だったようだ。

「すみません頭、もう男がいなくて・・・」

「ガキでも良いから、早く」

頭の言葉に、見張りはそれ以上の怒りを招かぬようすばやく行動することにした。

「そこと・・・そこの、来い」

見張りに名指しされた、まだ幼さの残る少年二人が、恐怖に顔を引きつらせながら母親にしがみついた。

だが、周りの村人達は抱き合う二組の母子を無常にも引き剥がすと、家屋の入り口へ追いやった。

牛人に従わねばどうなるかを、村人達はしっかり学習しているようだった。

「ほら、ついて来て」

足を踏ん張り、踏み止まろうとする二人を軽々と持ち上げると、彼女は焚き火の側へ歩いていった。

「お待たせしました」

「おう・・・って、本当にガキだなオイ」

見張りの連れて来た次の相手に、彼女は呆れたように声を上げた。

「あの・・・何なら寝ている男を叩き起こしてきますが・・・」

「いや大丈夫だ、こいつらでいい」

見張りの提案を退けると、彼女は二人の少年を受け取った。

そして、胡坐をかいた左右の太腿の上に、一人ずつ座らせた。

「ほらほら、泣くな泣くな」

余りの恐怖と不安にがたがた震える二人に、そう語りかけた。

両腕を二人の肩に回し、抱き寄せてやる。

柔らかな乳房に、二人の顔がうずもれた。

牛人の温もりと柔らかな身体、そして立ち込める汗の香りを味わっているうちに、二人の震えが治まっていく。

「・・・落ち着いたな」

緊張を解いて身体を任せる二人に、彼女は優しい声で語りかけた。

少年達が乳房の向こう側に目を向けると、そこにあったのは村人を蹂躙する化け物などではなく、微笑むふくよかな女性の顔があった。

身体は見上げるほど大きく、頭からは小さな角が生えてはいるが、二人にはもうただの女性にしか見えていなかった。

そして、二人はようやく自分達が牛人の巨大な乳房に上半身を埋めていることに気が付いた。

「ん?どうした?」

顔を赤らめ、逃げるように身をよじり出した少年達に、彼女は問いかけた。

「もしかして、おっぱいが気になるのか?」

「い、いや・・・」

「別に・・・そんな・・・」

「ふふふ、嘘は駄目だ」

一発で彼女は二人の嘘を見破った。

身に纏った虎の皮からまろび出る乳房に、少年達の頭をぐりぐりと押し付ける。

片方だけでも一抱えはありそうな褐色の球に、二人は一瞬呼吸を封じられた。

吸い付くような手触りの肌が、汗によってしっとりと潤い、二人の肌を圧迫する。

抵抗するように二人は、彼女の乳房に手を当てもがいた。

だが、二人の肩に回された腕は、がっちりと身体を押さえ込んで離さなかった。

二人の鼻腔と意識を、牛人の体臭が占めていく。

そしていきなり、彼女は両腕を二人から離した。

「ぶはっ、はぁはぁはぁ・・・」

勢い良く乳房から顔を引き離して、少年達は空気を貪った。

興奮か窒息によるものか、二人の顔は赤かった。

「嘘つきにはお仕置きだ」

「う、嘘なんて・・・」

少年の片方が、小さな声で反論した。

「だったらなんで、あたしのおっぱい掴んだままなんだ?」

彼女の指摘に、二人はようやく乳房に指を埋めたままであることに気が付いた。

二人の身体も既に牛人の腕から解放されており、立ち上がって逃げることが出来る状態だった。

だが、二人は呆けたように彼女の太腿に腰掛け、その褐色の肌に身体を預け乳房の柔らかさを愉しんでいた。

「ふふ、おっぱいしゃぶってもいいんだぞ・・・?」

笑みを浮かべながら、彼女は乳房を軽く持ち上げて見せた。

二人の視線が自然と、その先端についた桃色の大きな乳輪と乳首に集まった。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

少年達の内部に、気恥ずかしさが生まれる。

だが、その一方で何ともいえないモヤモヤした感情が、二人の胸のうちに生じていた。

舐めたくないけど舐めたい。

甘えたいけど甘えたくない。

矛盾した感情が、二人を圧迫していく。

「・・・・・・ぅぅ!」

片方が小さく呻くと、がばと乳房に覆いかぶさって乳首に吸い付いた。

我慢が出来なくなったせいか、彼は貪るように乳首を舐め、しゃぶり、啜った。

「お、こっちは正直だねえ」

乳房に吸い付く少年の頭を軽く撫でてやりながら、彼女はもう一方に視線を向けた。

「ほら、あんたも我慢しなくていいんだよ?」

「・・・!」

吹っ切れたように、もう一人も乳房に吸い付いていった。

両手でその巨大な乳房を抱きかかえ、柔らかさを堪能しながら一身に乳首を貪る。

二人の少年を見下ろしながら、彼女はニヤニヤと笑っていた。

「・・・んぷはっ・・・!」

興奮に顔を紅潮させた少年達が、瞳を潤ませながら彼女を見上げた。

「ねえ・・・助けてぇ・・・」

「身体が・・・熱いよぉ・・・」

身体をぶるぶると震わせ、彼女の腹に屹立した小さな肉棒が押し当てられている。

だが、それ以上どうしたら良いのか分からず、ただただ自身の内なる欲求に耐えているようだった。

「じゃあ、二人ともそこに寝て・・・」

彼女の指示に従い、二人は太腿から降りると足を互いに向けるようにして、地面に寝そべった。

牛人はその場に立ち上がると、身に纏っていた虎の毛皮を脱ぎ、地面に落とした。

二人の瞳が、肉付きの良い褐色の肉体に釘付けになる。

彼女は尻や乳房を揺らしながら片方の少年の身体をまたぐと、足を屈めた。

腰がゆっくりと下がり、女陰が大きく広がって粘液が滴った。

「え・・・?何・・・?」

肉棒に愛液の雫を受けた少年が、巨大な彼女の尻に向けて問いを放った。

「ふふ、すぐ気持ちよくなるからな・・・」

彼女はそういうと、屹立する小さな肉棒を、一息に女陰でくわえ込んだ。

「うぁぁあああああっ!?」

股間を包み込んだ熱くて柔らかな感触に、少年は驚きの声を上げた。

未発達な肉棒は細く短く、牛人の大きな膣の入り口程度までしか達していなかったが、それでも膣壁は彼の肉棒を迎え入れ、愛撫していた。

粘度の高い液体が、皮を被った屹立に擦り付けられ、襞の凹凸が肉棒の凹凸をなぞっていく。

「な、なに・・・あぅっ!?」

淫猥に動く膣の感触に、少年は身を捩じらせ涙声を漏らした。

「え?何・・・?」

彼女の身体の向こうから届く声と、彼女の膣に飲み込まれる肉棒に、もう一人の少年が不安げに声を上げた。

「気持ちいい、って・・・それより、今度はあんたの番だ・・・」

そう呟きながら、彼女は口を開いてねっとりと糸を引く唾液を、自分の乳房の間に垂らした。

そして上半身を倒すと、仰向けに寝そべる少年の腰をその巨大な乳房で包み込んだ。

褐色の谷間に肉棒が収まり、腰から溢れた肉が地面に触れる。

「ひぁぁぁぁっ!?」

温かく、滑らかな肌が唾液のぬめりを帯び、彼の肉棒を包み込んだ。

その感触に、少年は裏返った声を上げた。

「ふふ・・・」

上目遣いに少年の表情を見ながら、彼女は自身の乳房を両手で挟み、軽く動かした。

ぐちょぐちょ、と湿った音があたりに響き、少年の顔が快感に歪んだ。

「あぁぁぁぁっ!あぁぁぁぁぁ!」

牛人の膣に挿入している少年は、肉棒への刺激によるものか上半身を起こそうともがいていた。

彼女はその動きを悟ると、乳房による愛撫を続けたまま地面に膝をつき、下半身を軽く持ち上げた。

膣から肉棒が引き抜かれそうになり、少年は必死に腰を持ち上げる。

まるで女陰が少年の身体を持ち上げるようにして、彼の身体は起き上がっていた。

「あぁぁぁ・・・!」

膝をがくがく震わせながら、彼は牛人の巨大な尻にもたれ掛かった。

熱を持った柔らかな肉体が、彼の上半身を受け止めた。

一方乳房の間では、少年の肉棒に絡みつく液体に異質なものが混ざり始めていた。

少年の先走りだ。

すでに数度の絶頂を迎えてはいたが、彼は精通していなかったので大量の先走りを漏らすだけに止まっていた。

だが、それでも絶頂と肉棒にもたらせる快楽は変わらない。

「あぁぁっぁぁ・・・」

裏返った嬌声を上げながら、彼は乳房の間から逃れるように身をよじった。

だが、巨大の乳房のせいで自由に動けず、結果更なる快感を彼に与えるに止まった。

「うぅぅ・・・」

「ふふ・・・たまにはガキも良いもんだ・・・」

少年達の嬌声を愉しみながら、彼女は乳房を掻き分け、うずもれている少年の肉棒の亀頭を咥えた。

そして皮を半ばまで被ったそれを、軽く舌で愛撫してやる。

「はぁぅっ!?」

上ずった声と共に屹立が大きく脈打ち、しょっぱい粘液がどろりと溢れ出た。

苦味の混じった塩味を愉しみながら、彼女は露出した亀頭と皮の縁の隙間から、尖らせた舌先を挿し入れた。

「あぁぁあぁっ・・・?」

微かな痛みに、少年が声を漏らす。

彼女は構うことなく、包皮の内側を舌先でねっとりと探り、その奥にたまった苦い垢を掘り出し、味わった。

濃厚な風味が、彼女の口腔を支配していく。

「うぁぁぁぁ・・・」

「あぁぁ・・・あぅ」

乳房と尻で、二人の少年が嬌声を上げていた。

二人とも与えられる快感のとりこになり、自ずと腰を自分から揺すっていた。

やがて絶頂が訪れ、大量の先走りが溢れ出る。

射精も無い上、異常な興奮と快感のせいで彼らの屹立がしぼむことは無かった。

「あぁ・・・ぁ・・・」

「あぅ・・・ぅ・・・」

快楽と絶頂が、二人の意識を削っていく。

だが、その場から逃げたいという医師が最初に削り取られたため、二人はなされるがまま快感に囚われていた。

やがて、二人はそれぞれ最後の絶頂を迎えると、そのまま気を失っていった。













「もう終わりか・・・」

完全に気を失い、倒れ伏す二人の少年を見ながら褐色の牛人は呟いた。

辺りを見回せば手下の牛人のうちの半分が、相手が失神したため饗宴を終えている。

どうやら今日はこのぐらいにしておいた方がよさそうだ。

「んっ・・・」

軽く伸びをし、体を揺らして筋を解す。

そして、焚き火を囲む手下に声をかけようとした瞬間。

「宴は終わりか?ふん」

背後から澄んだ高い声が響いた。

牛人はとっさに拳を握り、振り向きざまに背後にいた何者かを殴りつけていた。

重い衝撃と共に背後にいた何者かが吹き飛び、村の家屋の一つに突っ込んでいった。

「しまった・・・」

相手を確認せずに殴りつけたことに、彼女はようやく気が付いた。

だが、手ごたえからして仲間の牛人ではないだろう。

そう楽観的に判断していた。

「ふん、返事の代わりに拳か」

壁にあいた巨大な穴から、先ほどと同じ声が響いた。

「!?」

驚きに、牛人の表情が強張る。

ただでさえ力が強い牛人の中でも、さらに力強い彼女の拳を受けたのだ。並みの妖怪では立つことすらままならないはずだ。

だが、声の主は苦痛すら滲ませること無く、淡々と言葉を連ねていたのだ。

じゃり、と家屋の中から瓦礫をふむ音がし、壁の穴から顔が覗いた。

正確に言うとそれは顔ではなかった。

白い、光沢ある楕円形の面に、二つの黒丸を目とし、横倒しの三日月を口とした笑顔が描かれていた。

「全く、返事ぐらい返しても良いだろう」

面をつけた何者かは、穴の縁に手をかけると、家屋の外に出てきた。

そこに立っていたのは、赤だった。

波打つ赤く長い髪は炎のようで、身に纏ったゆったりとした着物も炎を纏っているように見えた。

上から下まで、赤色に包まれながら、そいつは立っていた。

「・・・人間の女か」

そいつの身長と胸元の大きなふくらみから、牛人はその正体を推察した。

人型の妖怪ならばいくらでもいるが、わざわざ自分から牛人の一団に接触するような奴はいない。

この村を救いに来た仙人だという可能性もあったが、仙人ならば説得に背後から話しかける以外の方法を取るだろう。

だから彼女は相手を人間、せいぜい道士ぐらいだろうと考えていた。

「人間?ふん」

彼女の言葉に、下らない冗談でも聞いたかのように相手は鼻を鳴らした。

「このわしが、人間だと?笑わせるな」

「・・・この村を助けに来た、というわけじゃないのか?」

「わしは貴様らに一つの提案をしに来たんだ。人間も虫も一緒、人里の一つ二つぐらいどうでもいい」

ゆっくりと歩み寄りながら、仮面の人影はそう言った。

「提案?」

相手の言葉に、牛人は引っかかった。

「そうだ。貴様ら、わしの島に来るつもりは無いか?」

白磁のように白い手を差し伸べながら、相手は続けた。

「妖怪しか住んでいない、妖怪のための島だ」

「・・・それで、あたし達は何をすればいいんだ?」

「何もする必要は無い。水も食い物も山のようにある。

島の者は全て平等だから、強い妖怪に媚びへつらうこともない。

ただ、わしの島でわしの定めた規則に従って生きていれば、それでよい」

食物や人里を求めてさまよう必要が無い。

彼女は、そう言っていた。

「へぇ・・・なかなか、よさそうだな・・・」

微かに興味深げな気配を滲ませながら、牛人は言った。

だが、続く言葉は了承の言葉ではなかった。

「でも、あたしらがあんたの島を頂けば、あんたの規則に従う必要も無いわけだ」

鋭い笑みを浮かべながら、彼女が手を振って合図を送る。

すると今まで焚き火を囲んでいた牛人たちが、拳を構え、得物を取り、赤い女を囲むようにじりじりと移動し始めた。

「じゃあ、叩きのめされる前にとっとと案内してもらおうか、お前の・・・いや、あたしの島に」

「・・・・・・くはははは」

牛人の言葉に、仮面の女は愉快そうに笑った。

「『島を頂く』か!規則について聞いたり、話も聞かずに断る妖怪はいたが・・・『島を、頂く』!

くははははははははは!」

数人の牛人に囲まれているというのに、彼女は笑いながら続ける。

「まあ、規則というのも『他の妖怪と争わない』というだけだが、これは手間が省けた。貴様らは間違いなく、他の妖怪どもと争うだろうな!

くははははは!」

「・・・それで、どうするのさ。大人しくあたしらを案内するか、叩きのめされるか」

「くはははは・・・・・・・・・」

牛人は問いかけに、笑顔の面の笑声が止まった。

不意の沈黙に、焚き火が立てる木の爆ぜる音だけが、辺りを支配した。

「別にどうということは無い」

沈黙を破って、澄んだ声が響いた。

「もう一度尋ねるだけだ」

その一言と同時に、褐色の牛人の身体が吹き飛ばされた。

「っ!?」

数間の距離を、地面に何度かぶつかりながら飛ばされ、地面と背中が擦れて止まった。

「貴様!」

すぐ側にいた牛人が、手にした棍棒を振り上げながら走り寄る。

そして赤い髪に覆われた頭頂めがけて、その太い丸太を振り下ろした。

だが、丸太は掠るどころか彼女に触れることなく、地面に叩きつけられた。

「え・・・?」

突然逸れた振り下ろしの一撃に、牛人は間の抜けた声を上げた。

「邪魔をするな」

短い一言と共に、牛人の身体を衝撃を襲った。

大きな弧を描きながら、彼女の巨体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。

「さて、牛人よ」

よろよろと身を起こす褐色の牛人に向け、笑顔の面の奥から言葉が紡がれる。

「もう一度聞くが、わしの島に来る気はないか?」

「へっ・・・だれが・・・」



ぼきん



牛人の言葉を、鈍い音がさえぎった。

音の源に、牛人たちの視線が集まる。そこにあったのは、二の腕の辺りで不自然に折れ曲がった、牛人達の頭の腕だった。

「っが・・・!」

「貴様はどうやら、わしの島には肌が合わないようだな」



べき ごき ぼきん



「がぁ・・・!」

反対の腕と両脚が不自然にねじれ、骨が折れる音と共に苦痛のうめきが漏れる。

支えを失った彼女は、その場に倒れこんでしまった。

「さて・・・このまま全身を押し潰してやってもいいのだが・・・どうする?」

笑顔の面が、牛人のそばに歩み寄ってきた。

「一思いに押し潰されるか、少しずつ砕かれるか・・・それとも喰われるか」

「ま、待って・・・従う、から・・・」

恐怖と苦痛に涙を滲ませながら、彼女は自身を見下ろす二つの黒丸に懇願した。

「・・・あぁ、仲間の牛人のことなら安心しろ」

納得がいったかのように、笑顔の仮面が数度上下に揺れた。

「貴様が死ぬところを見れば、きっと従うだろうからな」

揺れる焚き火の明かりを背に、仮面に描かれた笑顔が深まった。













そして、全てが終わった後、彼女は焚き火の方へ向き直った。

焚き火を囲んでいた牛人たちの多くはその場にへたり込んでおり、座っている地面を濡らしている者もいた。

「さて」

赤く、巨大な水溜りを背後に、二つの黒丸が牛人たちを一瞥した。

「これから貴様らをわしの島まで案内してやろうと思うが・・・ついて来ない、という者はいるか?」

その問いに、牛人たちは勢い良く首を左右に振った。

赤い水溜りに浮かぶ幾つもの破片と、耳に染み付いた悲鳴と音がそうさせたからだ。

「いないようだな・・・ふん」

彼女は水溜りの側を離れると、脱ぎ捨てられた虎の毛皮を拾い上げ、焚き火に放り込んだ。

「では準備をしろ!すぐに出発だ!」

仮面の奥から、声が響いた。

「妖怪の島、方丈島へ!この葉奪破の島、方丈島へ!」

赤い髪に赤い衣を身に着けた葉奪破は、どこまでも楽しげに言った。






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