一目五先生 『山海民口伝』より




一目五先生なる妖怪がいる。

一目五先生は五匹で一匹の妖怪で、目のついていない四匹が一つ目の一匹に常に付き従っているという。

一つ目は人の未来を見て、天命にどれほど関わっているかを見ることが出来る。

そして天命に大した関わりを持たない人間を見つけると、その者の精気を五人がかりで吸い取ってしまうという。

ここに『山海民口伝』という古文書があり、一目五先生を目撃した男の話が載っている。

以下にその訳を記す。















明の頃のこと、ある宿場町の旅籠に、一人の男が泊まった。

金も無いため、一人部屋に泊まれるわけも無く、男は他の客達と相部屋となった。

彼は広い部屋に並ぶ寝台に横たわり、眼を閉ざして、眠りが訪れるのを待っていた。

だが、どういうわけかその夜は、彼はなかなか寝付けなかった。

閉ざした瞼の裏を見つめながら、他の客が立てる寝息やいびきを聞いていた。

そしてどれほど経っただろう、彼の耳を小さな音が打った。



キィ



かすかな軋む音に、彼は部屋の出入り口に顔を向け、目を開いてみた。

すると閉ざしてあったはずの扉が、ゆっくりと開きつつある様子が彼の目に入った。

ゆっくりゆっくり、彼の見ている前で扉が開いていく。

やがて扉の隙間が両手を並べたほどに開いたところで、小さな足音と共に五つの影が部屋の中に入り込んできた。

窓から挿し込む月明かりに、その姿が照らし出された。

それは人の膝ほどまでの背丈しかない、小人だった。

五人とも肌は白く、緑色の髪を腰まで伸ばした整った面立ちの女の姿をしていた。

ただ五人のうち四人は、顔に皮のような物を巻き付け、両目をふさいでいる。

残る一人も二つの目の代わりに、額の真ん中に大きな一つ目を輝かせていた。

一つ目は、部屋の寝台に横たわる客たちをぐるりと見回すと、側の寝台に近寄っていった。

そして寝台によじ登り、いびきを立てる客の顔を凝視し始めた。

目隠しをした四人も彼女につき従うかのように寝台に登っていく。

「・・・・・・こやつは」

最後の目隠しが寝台によじ登ったところで、一つ目が口を開いた。

「こやつは後に七つの善を成す。喰ってはならぬ」

その一言に、目隠したちが不満げに鼻を鳴らす。

が、一つ目は気に留めることなく隣の寝台に飛び移り、そこで眠る客を凝視し始めた。

しばしの無言をはさみ、目隠したちが全員寝台を移動し終えると同時に口を開く。

「・・・・・・こやつは後に三つの悪と一つの大悪を成す。喰っては成らぬ」

そう下すと、また彼女は隣の寝台へ飛び移っていった。

「・・・・・・こやつは後に三つの善と二つの悪を成す・・・」

「・・・・・・こやつは後に五つの善と七つの大悪を成す・・・」

「・・・・・・こやつは二つの善を成し、死した後に一つの大悪をなす・・・」

「・・・・・・こやつのまだ生まれていない息子は、後に天命に関わる・・・」

口ぶりからすると、どうやら客の未来らしい。

一人、また一人と、一つ目は部屋で眠る客たちを検分し、次第に男のほうへと近づいてきた。

そして、男の隣の寝台まで五匹の妖怪はたどり着いた。

「・・・・・・こやつは・・・」

寝台でいびきを立てる男を検分し終えたところで、一つ目はそれまでとは違う調子で口を開いた。

「こやつは、何も成さない。大善大悪はおろか、善行悪行、微善塵悪すら成さず、福も禄も無い。

こやつの妻との間に生まれるであろう子も、何もなすことなく死んでいく」

一つ目の言葉にあわせ、目隠したちが興奮したように体を揺らし、呼吸を荒くしていく。

「天命に何の関わりも無く、まるで喰われるのを待っているかのようだ。

ここで死んだところで、何も起こらぬだろう・・・」

一つ目は一息つくと、続けた。

「こやつは喰ってもよい」

一つ目の言葉に、目隠したちは眠る客の体に飛び掛っていった。











彼女らは男の体に群がると、一息に彼の着物を破ることなく引き剥がし、一糸まとわぬ姿に仕上げた。

そして彼の両手両足にまたがると、一心不乱に彼女らの両足の付け根を男の体に擦りつけ始めたのだ。

窓から入る月明かりに、目隠したちの紅潮していく顔が照らされていた。

「・・・ぅん・・・ん・・・」

男は目隠したちの行為に気が付いていないのか、低く呻くと再びいびきをかき始めた。

「全く、天命に関わらぬ人間はのんきなものだな・・・」

一つ目が呟きながら、男の体を跨いで両足の間に座り込んだ。

すると彼女は、目の前にぶら下がる男の一物を手に取ると、その小さな手で揉み擦りはじめた。

性器への刺激に、男の一物はむくむくと大きくなっていった。

「こんなものか・・・」

一つ目は片手で一物を撫でながら立ち上がると、もう片方の手を己の秘所へ伸ばし、そこをかき回した。

揃えた人差し指と中指が股の間に消えると、ぐるぐると動かすのに合わせて粘着質な水音が旅籠の大部屋に響いた。

「よしよし・・・」

自身の濡れ具合を確かめ、満足そうに頷く一つ目。

彼女は大きく股を開くと、膨れ上がった男の亀頭を秘所にあてがった。

「ん・・・」

小さな声を漏らしながら、一つ目が腰を下ろしていく。

すると、彼女の三本目の足といってもいいほどの太さの肉棒が、彼女の濡れた女陰に入っていった。

一つ目の肉穴は大きく広がり、眠っている男の一物をずぶずぶ飲み込んでいく。

やがて、男の肉棒は一つ目の女陰に完全に収まっていた。

「く、ふふ・・・こうしてみると、なかなか大きいな・・・」

興奮に顔を赤らめながら、一つ目がそう呟く。

だが彼女の言葉と裏腹に、その腹には男の一物の形どころかいささかのふくらみも見られなかった。

まるで男の肉棒を切り取り、その断面に腰掛けているといってもいいような様であった。

「ん・・・くふっ・・・!」

苦しげに息を漏らしながら、一つ目が腰を持ち上げ、下ろす。

彼女の動きにあわせ、肉壷から男の一物が半ばまで引き抜かれて月明かりをぬらぬらと返し、再び肉壷へと飲まれていった。

「ふぅ・・・くぅ・・・!」

吐息を重ねながら、一つ目は腰を振り続けた。

部屋に響くいびきの中に、男女の交わりによって立てられる水音が響いていた。

そして一つ目の興奮に同調しているのだろうか、目隠したちの興奮もまた、高まりつつあった。

男の四肢に股間を擦り付ける程度であった彼女らの動きは、腕や足にしがみつき腰を叩きつけるまでになっていた。

だが、そこまでしても男が目を覚ます気配は無かった。

「・・・んぐ・・・ん・・・」

男が不意に、小さなうめき声と共に眉を寄せた。

同時に一つ目が腰の律動を止め、のけぞった。

「・・・!・・・・・・!」

目と口を大きく開き、小さく体を震わせながら、一つ目は男の放った精をその小さな体で受け止めていた。

「・・・!」

「・・・!・・・!」

一つ目の絶頂に合わせるように、目隠したちもまた男の手足にしがみつき、絶頂を迎えていた。











暗い、旅籠の大部屋の中に、客たちの寝息やいびきに混ざって、女の荒い呼吸が響いていた。

「かはは・・・ろくに天命に関われぬくせに、なかなかの精だ・・・」

男の目の前で、眠る客の一物を小さな腹に納めた一つ目が、声を漏らした。

「精が美味いのならば、肉もさぞ美味いのであろうな・・・」

一つ目の連ねる言葉に、疲労困憊していた目隠したちが顔をもたげ、半開きにした口から涎をたらしつつある。

一つ目は、四人の目隠したちを一瞥すると、彼女らに向けて口を開いた。

「さあ、喰え」

「――!!」

声にならぬ歓声を上げると、目隠したちはそれぞれがまたがる客の手足の指先に、己の秘所を押し当てた。

指先が目隠したちの小さな割れ目を押し開き、ずぶずぶと飲み込まれていく。

「!・・・!!」

指先の感触にのけぞり、歓喜に顔を歪めながら、目隠したちは客の指を腹の中に納めていく。

しかし指の本数が一本から二本、三本と増えていき、掌までが彼女らの女陰に納まろうとも、その腹は一つ目と同じように膨れることは無かった。



じゅぷ・・・じゅぶぶ・・・



生々しい水音を立てながら手首から上腕へと腕が、くるぶしからふくらはぎへと脚が飲まれていく。

「ん・・・うん・・・」

目隠したちの胎内の感触に、客が表情をゆがめながらうめき声を漏らした。

だが、四人はその様に拘泥することなく、その四肢を飲み続けた。

やがて、目隠したちの女陰は手足の付け根に達すると、彼女らはそのまま客の胴から体を離した。

いかなる方法によるものか、客の手足の付け根は初めからそうであったようにつるりとしている。

「くふふ・・・喰われているというのに、また硬くなってきたぞ・・・」

一つ目が愉悦に満ちた瞳で、四肢を失った客を見ながら、そう言った。

すると、一つ目の膣口が、がば、と大きく口を開いた。

柔らかそうな襞に覆われた赤い肉が、客の腰までを一息に包み、彼女の胎内へと引きずり込んでいく。

そして、また大きく口を開くと、再び客の体を引きずり込んでいった。

蛇が獲物を飲み込むように、少しずつ、少しずつ、客の胴が一つ目の胎内へ消えていく。

「くふ・・・なかなかの、美味だ・・・」

「うん・・・んん・・・」

一つ目の感想に応えるように客が呻く。

そのうち腰から胸、胸から肩へと女陰の中に飲まれていき、最後に男の頭が飲まれていった。

最後まで、その客が目覚めることは無かった。











翌朝、客が一人いなくなったということで旅籠は騒ぎになった。

だがその客の身を案ずる者は居らず、すぐに皆の頭から客のことは消えていった。

男は、昨夜一つ目が言っていたことを思い返していた。

『こやつは、何も成さない。大善大悪はおろか、善行悪行、微善塵悪すら成さず、福も禄も無い。

こやつの妻との間に生まれるであろう子も、何もなすことなく死んでいく』

所詮その程度の人間なのだから、いなくなっても誰も騒がない。

では、自分が消えたとして、皆は騒ぐだろうか?

男はそこまで考えたところで頭を振り、その考えを頭から追い払った。

(だが、もしも―)

男の頭は、なおも考えを紡ぎ続ける。

(だがもしも、その程度の人間が消えずに生き続けたとして、それは幸せな一生なのだろうか?)











男がその答えを得ることは、生涯なかったという。






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