雪女のデザート




雪女の伝承は日本各地に残っている。最近ではその目撃情報も絶えて久しいが、山奥などには今なお何人もの雪女が棲息しているという。

時には里に降りてくることもあるが、気付く者はいない。科学技術の進んだ現代においては、場違いな美女が突然現れたって、人は不審に思うか不純な気持ちを抱くかのどちらかで、まさか人外の魔物だなんて思うわけがないだろう。



さて、今日の主役は、ちょっとしたきっかけで人間界で暮らすことになった一人の雪女である。こちらの世界では、ありきたりな名前だとは思いつつも、美雪という名前で暮らしている。

なぜわざわざ山奥から降りてきたのかって?

理由は、皆さんもよくご存知だろう。

ほら、山奥で、樵の爺さんと若者が雪女に遭ってしまい、爺さんの方は殺されたけれど、若者の方は見逃してもらって・・・というあの話だ。

実は、似たようなことは日本各地で何度も起こっている。

ただ、必ず雪女に口止めされるので、そのほとんどが明るみに出ていないのだ。



美雪の場合も、同じような成り行きで人間界に降りてきた。

樵ではないにしろ、皆さんのよくご存知のお話と同様のいきさつで、見逃してあげたその若者と交際を始めたというわけだ。



昔話と違うのは、美雪が現代の雪女だということ、若者との間に子どもができていないということ、それから、淫魔の血を引く雪女だ、ということくらいだろうか。



しかし、結末も、もう勘の鋭い皆さんには見えているだろう。

交際相手となった若者ーーーちなみに名前は「トオル」という。漢字は難しいので書かないでおこうーーーは、恐ろしい雪女から「口止めしたら殺すよ」とあれだけ言われたのに、やっぱり口に出してしまう。

その辺りから、手抜きをやめて、詳しい話に入ろうか。



       ☆ ☆ ☆



トオルは今まで美雪と性交に至ったことがなかった。

美雪のことを深く愛していたし、ほとんど虜といってもいいくらいにのめり込んでいたが、なぜかその一歩が踏み出せなかった。今まで付き合った他の彼女とは普通にできたのに。動物的な、危険を知らせる本能で避けていたのかもしれない。

しかし、美雪の本性は淫魔だ。いつまでも逃げ回れるわけがない。トオルの動物としての本能は、オスとしての本能に負けてしまう。

この夜、ベッドの中でトオルは完全に絡めとられてしまった。



美雪の体はひんやりとしていた。

こんな見事な体に、いや、こんなに大好きな女性に、ねっとりと抱きしめられているのだ。これ以上幸せなことはないはずだ。しかし、幸せの合間に恐怖がちらつく。それが性欲をさらにかき立てる。

柔らかい胸がトオルの顔を包み込んでくる。それだけで射精感が高揚してしまうのはどうしたものか。

トオルは美雪の秘部に手を伸ばす。濡れた裂け目に指を這わせると、美雪の体がピクっと動いた。

それを合図に、美雪の淫魔としての本性が現れたことに、トオルは気付いていなかった。



「ねぇ、トオル・・・前に、わたしに似てる人を見たことあるって・・・言ってたわよね?」



言ってたっけ?トオルは必死に思い出そうとする。

だんだん言ったような気がしてきた。

そういえば、言ったことがあるよな。



「その人のこと、話してもらえる?」



いや、全然そんな関係では・・・



「疑ってるわけじゃないのよ。ただ、どんな人だったのかなと思って」



乗せられるようにしてトオルは、「その時」のことを事細かに話してしまう。

残酷な話なのだが、美雪はそのせいで性欲がそがれないように、トオルの性感帯を刺激し続けた。

トオルの話が終わると・・・



「言ってしまったわね・・・言ったら殺す、って約束したわよね」



え・・・!



「その雪女はわたし。もうあなたは生きて帰れないわ」



トオルはもう、どうすればいいのかわからなかった。

せっかくいきり立っていたペニスは、一瞬にして縮み上がった。



「雪女とセックスするって、どういうことだかわかってる?」



そんなこと、わかるわけがない。



「普通の女の子が相手なら勃起して射精するだけだけど、雪女が相手の時は、それだけでは収まらないわ」



勃起以上、射精以上のこと、って何だろう。



「何度も射精するうちに、勃起するよりも固くなって、凍り付いてしまうの・・・そして、全身がどんどん凍っていくの。気持ちいいのよ・・・」



い、、、嫌だ!嫌だ!

いくら叫んでも、美雪は上気した目でトオルを見て、舌なめずりするばかりである。



「そろそろ始めましょうか」



美雪のくちびるがトオルのくちびるを奪う。口の中は暖かい。ひんやりとする体を味わってきただけに、いつものキスよりも熱く感じるくらいだ。

美雪の指がトオルのそれの裏筋をそっと撫でる。

早くも勃起が始まる。



ダメだ!これ以上興奮したら・・・

頭ではわかっていても、興奮を止めることなんてできない。

トオルは次第に、諦めて身を任せてしまう方を選びつつあった。



美雪の入り口がトオルに迫る。

トオルは何となく察した。あの中に入れられたら、「勃起以上」の状況になってしまうのだと。



ずにゅる



あわわあああああっっっっっ!



もう、半分も入っていないうちに射精へと導かれてしまったトオルのペニス。

単なる射精でないというのは明らかだった。

止まらないのだから。



美雪は体を上下に動かし、何度も何度もトオルをイカせる。



「だんだん固まってきたみたいね」



トオルはもはや自分のペニスにほとんど感覚が残っていないことに気付いた。

精液が通る管の役割しか果たしていないのだ。

え?それなら何が気持ちよくて射精しているのかって?

美雪の見事な体、香り、愛撫・・・。それだけで射精するに充分なほどなのだ。

トオルの首筋をぺろぺろと舐める美雪は、もはや獲物を完全に捉えてしまったことを悟った。



トオルの意識はだんだんと遠のいてくる。

もはや感覚が無くなっているのはペニスだけではない。

股間部が全体的に自分のものではなくなったかのように・・・

いや、すでに両足は凍り付いてしまっているのか・・・

自分の体が自分の体でなくなっていくような感覚が、次第に体全体に行き渡り、上半身をもトオルから奪おうとしていた。

感覚がなくなっているにもかかわらず、それは明らかに快感であった。

こんな美しい女性に体を奪われているのだ。

トオルは、こんな快感の中で永遠の眠りにつけるのなら幸せだと思った。



そう思うと、心に余裕が生まれる。

もはや目玉だけしか動かないトオルだが、がんばって自分の体を見てみると、ひとつだけ、やや予想外の状況を見つけることができた。

自分はコチコチに凍り付かされてしまうのかと思っていたが、少々違ったようだ。

多少の柔らかさは残っているかのような見た目だ。

どうなっているのだろう?



「もうほとんど凍っちゃったわね。これからどうなるかわかる?」



これから、殺されるんじゃないのか?



「そうだけど、どうやって殺されちゃうのかわかる?」



そういえば、凍り付いたらそれで死ぬのかと思っていたが、自分はまだ生きている。

美雪の顔がトオルに迫ってくる。



「おいしそうなシャーベットになったわ・・・」



美雪の口元から透明な涎がたらりと垂れてくる。



「食べてしまってもいいかしら」



美雪の声は上ずり、もう我慢できないかのように息が荒くなってきている。

トオルはもう、どうすることもできない。ただ食べられるしかなかった。



美雪がトオルの指先を口に含むと、温かい口の中でそのシャーベットは融け始める。

トオルは不思議な感覚に襲われていた。

感覚が残っていないはずの指先から、淡い快感が伝わってきたのだ。

わずかに感覚が残っていたこと、そして、美雪に食べられているということ。

それが最期の快感をトオルに与えていたのだ。

ごっくん、と喉を鳴らした美雪が、蛇のようにしなやかなお腹をさすりながら言う。



「ねえ、わかる?あなたのお肉、ここにあるのよ」



トオルは、自分の体が美雪の口の中で、舌に転がされて融けて、飲み込まれて、真っ白な喉を通って、その魅惑的なお腹に入っていく様子を想像するだけで、射精してしまった。



「あらあら、まだ出しちゃったの・・・シロップがかかったみたい」



トオルの射精に気付いた美雪は、顔をトオルの下半身の方に移動させる。

さっきまでトオルの体を吸いつくしていた秘部が、トオルの目の前にやってきた。

とろーり、と液体が垂れているのが見えた。

美雪は夢中になってトオルの体を舐め回し、融かして飲み込みながら、細い指で、自らの秘部を弄んでいるのだ。



「どう?私に食べられてるの、気持ちいい?もう手も足も全部食べちゃった」



美雪は自分が食べているその獲物に、しなやかな肢体をこすりつけてきた。



「おいしいわ・・・もうイッてしまいそう・・・」



美雪の喘ぎ声が激しくなってくる。

獲物に覆いかぶさり、だらだらと涎を垂らしながら、獲物の体を融かしては食べ、秘部を弄っては体をうねらすのだった。

トオルは、全身が食べられてしまうまで、食べられているという快感にもだえ続けるしかなかった。



そして・・・



「ごちそうさま。おいしかったわ」



お腹の大きくなった美雪がベッドに1人横たわっていた。








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