逆転 120度




地方都市のローカル線に乗り、二時間ほど下ったところに、ある小さな町があった。

真新しい一軒家も多く並んでいるが、民家の敷地より田畑のほうが広いぐらいの田舎だ。

少し遠出をすれば、山にも徒歩でたどり着ける。

そんな町だった。

その町の外れ、民家から遠く離れた山のふもとに、廃工場がひとつあった。

長年の風雨によってコンクリートの壁は薄く汚れ、窓ガラスは割れてなくなり、鉄製の扉や窓枠にはさびが浮いていた。

その廃工場の扉が、人が一人通れそうなほど開いている。

その奥には十分風雨をしのげるだけの、がらんとした薄暗いスペースがあった。

中高生ほどの少年が一人、そこにいた。

工場の屋根を支える柱と柱の間で、手にやたら古い本を持って何事かを読み上げている。

床には火が点った白い蝋燭が五本立ててあり、複雑な同心円状の図形が描かれていた。

「タラッケ デストレ エッカウーラ・・・」

一瞬の間を挟み、朗々と声を張り上げる。

「ピルケ!」

一つの点を中心とする図形が、不意に強烈な光を放った。

「!!」

閃光に思わず目を閉じた少年の頬を、工場内の空気が撫でた。

少年が強烈な光に微かに痛む目を強引に開けると、円の中に胡坐をかく、少年と同じぐらいの年のころの少女の姿が目に入った。

肩に掛かるほどの長さの黒髪に、雪のように白い肌。

乳房は片手に余るほどの大きさで、太ももや尻には健康的に肉が付いていながら、へそを中心に丸く模様が描かれたウェストはきゅっと締まっていた。

なぜそこまで分かるかというと、彼女の肢体を覆う衣服は、水着のように面積が小さく、肌に密着していたからだ。

下半身にいたっては、腰の左右に結び目を設けた所謂紐パンのようなものしか身につけていない。

それは衣服と言うには扇情的すぎた。

「・・・わらわを呼んだのは、お主か?」

その外見にそぐわない古めかしい言葉遣いで、少女が少年に問う。

しかし、少年はその問いに答えなかった。

彼の心中は、驚きによって支配されていたからだ。

床の魔法陣はアクリル絵の具で彼が描いたもの。

蝋燭は彼の家の仏壇から、失敬したもの。

そして彼が手にする魔術書は手書きの日本語で書かれており、しかも駅近くの古本屋の棚に埋もれていたものだ。

彼は二束三文でその魔術書を購入し、そこに書かれていた淫魔召喚の儀式を行った。

本物とは言いがたい魔術書に、本物とは言いがたい儀式。

だが、だめもとで行った儀式によって現れたのは、本物だった。

「やった・・・」

「やった?」

少年の漏らした単語を、彼女は繰り返した。

「やった・・・やった、やったぞ!」

少年の内から驚きが消え去り、その後に沸き起こったのは歓喜だった。

感情の命ずるまま手足を振り回し、やったやった、と声を上げる。

周囲に民家が無く、人が通りかかることもあまり無いと言う事実が、彼の喜びに拍車をかけていた。

「お主・・・人の話を聞かぬか!」

業を煮やしたかのように、跳ね回る少年めがけて少女が声を張り上げる。

「お主は何だ、人を呼びつけておいて、禄に話しもせずに一人で喜びおって・・・」

不機嫌そうに言葉を連ねる彼女の姿に、さすがの少年も歓喜の舞を止めた。

「全く、若者は礼儀がなっとらん・・・それで、わらわに何の用・・・」

自身を呼び出した目的を聞こうとしたところで、彼女は口を閉ざした。

少年の姿を足元から頭の先まで一瞥し、納得したように頷く。

「そうか、筆下ろしをしてもらいたいのじゃな?」

ストレートな彼女の物言いに、少年はボフッ、と息を噴き出した。

「げほ、ごほ・・・ま、まあそうですけど・・・」

「ふん、いつの時代も若い男の考えることは同じじゃて・・・」

そう言いながら彼女は胡坐を解き、両足裏を床について膝を立て、股を大きく広げる。

そして、表面の半分近くが布地からあふれ出している乳房を、衣服越しに両手で揉み始めた。

「さあ、来い・・・」

蠱惑的な彼女の言葉と共に、辺りに甘い香りが広がる。

「ふぁ・・・」

少年はその香りに誘われるようにして、魔法陣へと近づいていった。



ばさり



指の力が抜けたためか、手にしていた魔術書が床に落ちて音を立てる。

「!」

その音に、彼の意識が戻った。

「い、いけない・・・!」

本を拾い上げ、慌てたようにページを捲る。

目的のページに記されていたのは、淫魔を呼んだあとの注意だった。

この魔術書に従って召喚する限り、淫魔は魔法陣の外へ出ることができない。

だが、淫魔の生み出す催淫芳香は魔法陣の外にも効果を及ぼし、間抜けな召喚主を円の内へと誘い込むのだ。

それを防ぐための方法が、その次のページに記されていた。

「ヤンス クルトス ナラディア ホッファ!」

短い詠唱と同時に魔方陣が光を放ち、辺りに漂っていた甘い香りが消え去る。

「な・・・」

自分の芳香が突然消え去ったことに、少女は戸惑いの声を漏らした。

だがその直後、彼女の両手首と両足首に金属製の輪が巻きつく。

輪には一本ずつ極太の鎖が繋げてあり、そのもう一端はコンクリートの床に描かれた魔法陣から生えていた。

「な、何だこれは・・・おい、お主!何をした!」

「いや、この本によると淫魔と直接交わるのは危険だから、こうしなさいって書いてあって・・・」

不安げな声を上げる彼女に向けて、少年は応えた。

彼は魔術書を閉じ、床の上に置くとひょいと魔法陣のうちへ入った。

しかし彼女は、無防備な少年に対し催淫の芳香を放つどころか、指一本動かすことができなかった。

両手両足に巻きつく輪と、床の図形が原因であることは明らかだった。

「それじゃあ・・・」

彼は少女の大きく広げられた股の間に膝を付くと、その股間を覆う布に指を這わせた。

レザーを思わせる滑らかな質感と、その向こうにある柔らかな肉の感触が、彼の指先に触れた。

その柔らかさとすべすべした感触に彼は興奮し、知らず知らずのうちに顔を近づけていった。

「く・・・止めんか・・・!」

彼女の口から拒絶の声が漏れるが、彼は耳を貸さない。

もはや彼は床に這い蹲るようにして顔を近づけ、ただただ彼女の股間を撫でていた。

そして、とうとう決心が付いたのか、彼女の下半身を僅かに包む衣服に手をかけた。

するり、と言う音と共に腰の左右にある結び目が解け、下着が一枚の布と化す。

その下に隠されていた薄桃色の秘裂は、ゆるく閉じられていた。

彼は彼女の内腿に手を添えると、ぐいと左右に押し開く。

外陰唇が広げられ、その奥の綺麗な桃色をした艶のある粘膜が、外気に触れたせいかひくひくと動いていた。

「うわあ・・・」

露になった彼女の陰部に、彼は声を漏らした。

彼の吐息が陰部にかかり、少女の全身が小さくびくんと跳ねた。

「止めろ・・・!」

年端もいかない人間の子供に動きと魔力を封じられ、体をいいように弄ばれると言う事実に、彼女のプライドは甚く傷つけられていた。

だが彼女の身体はその意思に反し、食事の準備をしつつあった。

少年の見ている前で、肉洞が緩んで口を開き、幾重にも折り重なった襞を露出させる。

同時に、その粘膜表面からとろみのある体液が滲み出てきた。

少年はその光景に声を漏らした。

「あぁ・・・」

淫魔の愛液ではあるが、魔法陣の作用により催淫作用は無いに等しい。

だが少年の本能は、広がった膣から立ち上る愛液の香りに刺激された

本能の命ずるまま、彼はそこに吸い付いていった。

柔らかな膣肉と、粘つく愛液が唇に触れる。

「ひぃ・・・!?」

自身の陰部に触れた少年の唇の感触に、彼女は声を上げた。

少年は恋人とキスを交わすかのように、彼女の陰唇を貪り、舌を挿し入れ、愛液を啜る。

淫魔の馥郁たる愛液の芳香が鼻腔を満たし、微かな塩味を含んだ芳醇な愛液の味が舌に染み入っていく。

味覚と嗅覚により彼の意識は興奮に塗りつぶされ、己の衝動のまま舌を膣の奥へ奥へと挿し入れていった。

複雑に入り組んだ肉襞が舌を迎え入れ、ゆるく締め付けてくる。

「んぶ・・・んむ・・・」

「や、やめぇ・・・ひうっ・・・!?」

少年の舌の動きが彼女に快感を覚えさせ、不本意ながら声を漏らさせる。

少年の舌の動きは、自身の興奮と力に任せた技巧も何も無いものであるが、それゆえに遠慮なく彼女の膣肉を抉っていた。

淫魔ゆえに性器の感度などいくらでも変えることができたが、彼女を縛る魔法陣はそれさえも許さなかった。

「ひぃ・・・いやぁ・・・あぁっ・・・!」

人間の少年により快感を与えられ、上り詰めつつあるという事実に彼女は瞳に涙を浮かべて頭を振り、必死に絶頂から遠のこうとしていた。

だが、少年は彼女の反応に見向きもせず、ただ愚直に秘所を吸い、舌を踊らせている。

そして、彼の鼻息は興奮により荒くなり、熱く湿った吐息が彼女のクリトリスを撫で回していた。

「うわぁ・・・いやぁ・・・いやだぁ・・・」

快感により彼女の瞳は潤み、頬にさしていた赤みは全身に広がっていた。

無論体温の上昇に伴い、彼女の全身はしっとりと汗に濡れており、揺れる蝋燭の炎が艶のある彼女の肢体を照らし出していた。

淫魔としての機能をほとんど封じられていながらも、全身を紅潮させた彼女の姿は淫靡で、男の視線を釘付けにするものだった。

だが、彼女の股間に顔を埋める少年の興奮は、限界に到達しつつあった。

「んふぅ・・・んふぅ・・・!」

ぶるぶると全身を細かく震わせながら、舌どころか唇まで使って彼女の陰部を愛撫している。

ジーンズと下着に覆われた彼の股間は、傍目から見てもそれと分かるほど膨張し、染み出した先走りがジーンズに小さな染みを作っていた。

興奮に意識を犯された少年の愛撫に、彼女の意識もまた限界に達しつつあった。

必死に拒んでいた快感が意識に浸透し、理性と屈辱と嫌悪感に塗り固められた堤を崩していく。

「あぁ、やぁ、あぁ・・・!」

もはや意味を成さなくなった言葉を漏らしながら、彼女の眼球が裏返っていく。

拘束されろくに動かない手足に力がこもり、硬直していく。

そして、彼女の意識がはじけた。

「あぁぁぁぁぁぁっ!!」

白目をむき、口を開いて舌を突き出しながら、彼女は絶叫の声を上げた。

快感が堤を乗り越えて意識に雪崩れ込み、快楽でもって理性を溶かしていく。

硬直していた手足や背筋が細かく痙攣し、膣奥の痙攣がさながら噴水のように潮を吹かせた。

陰部を覆っていた少年の顔に、さらりとした液体が大量に浴びせかけられる。

そして彼もまた、絶頂に達した。

先走りによりぐっしょりと濡れ、ぬるぬるとする下着の内側に、怒張したペニスから精液が放たれる。

行き先の無い白濁は無論のことペニスに絡みつき、ぬめりとその熱さを彼自身に伝え、その興奮を更に後押しした。

「あぁぁぁぁぁっ!」

「んぶぅぅぅぅっ!」

盛大に声を上げながら、二人の体ががくがくと揺れている。

そして、ほぼ同時に二人の全身から力が抜け、コンクリートの床に崩れ落ちた。

「はぁはぁはぁ・・・」

「はぁはぁはぁ・・・」

荒く息をつきながら、絶頂の余韻に浸る二人。

やがてしばしのときが流れ、片方が動き出す。

身を起こしたのは、少年のほうだった。

「はぁ・・・はぁ・・・」

彼は荒い息をつきながら、微かに震える手でジーンズのホックを外し、チャックを下ろした。

そして腰に手をかけると、太ももの半ばまで下着ごとジーンズを下ろし、ペニスを露出させた。

彼のペニスはいまだ冷めぬ興奮により屹立している。

先ほどの着衣状態での絶頂により、ペニスには先走りと精液がたっぷりとへばりついており、ほかほかと湯気を上げていた。

「はぁ・・・はぁ・・・」

彼は膝で彼女の脚の間ににじり寄ると、その太ももを脇に抱え、持ち上げた。

彼の唾液と彼女の愛液により濡れそぼり、ぽっかりと口を開いた陰部に、彼の精液にまみれ先走りを漏らし続ける亀頭が軽く触れた。

「い、入れるよ・・・」

微かに残った彼の意識が、もはや宣言としか取れない言葉を口から放たせる。

「あぁ・・・やぁ・・・」

絶頂によりグズグズに崩れ去った彼女の理性が、脊髄反射的な反応を返すが、彼にはそれを聞くつもりは無かった。

太ももを抱えた腕に力がこもり、腰が前に突き出される。



じゅぷ・・・ずぷぷ・・・



淫猥な水音を立てながら、少年のペニスが彼女の陰部に飲まれていった。

「あ、あ・・・ああ・・・」

舌よりも更に太い、赤黒く膨れ上がった亀頭が襞を掻き分けながら侵入していく感触に、彼女は呆然と声を漏らしていた。

鈴口から漏れ出ている先走りと、ペニスに絡み付いている先ほどの射精の残滓が心地よい。

本来ならば膣壁が蠢いて、ペニスに纏わりつく精液を舐め取った後、さらに搾り出そうと波打つはずだった。

しかし魔法陣の作用により、彼女の膣は人間の女と同じように締め付ける程度のことしかできない。

だが、それでも十分だった。

「うわぁ・・・」

ペニスに纏わり付いてくる襞の感触に、少年が顔をしかめながら声を漏らした。

襞が幾重にも折り重なり、奥に小さな突起や粒々が並んだ彼女の名器ともいえる膣は、ゆるく締め付けるだけでも十分な快感を彼に与えていた。

「うぅ・・・あぅ・・・」

少年は情けない声を漏らしながらも、更なる快感を貪るべく腰を引き、突き出した。

腰を引けば、張り出したカリ首が重なった襞によりくすぐられ、快感を生む。

腰を突けば、緩く締まった肉壷をペニスが強引に押し開き、膣壁が緩い締め付けでもって迎え入れる。

蜂蜜のような愛液にまみれた彼女の秘所は、引いても突いても彼に快感を与えた。

そして数度の腰振りで、彼は早くも二度目の絶頂に達した。

「うぅ・・・あぅ・・・あぁぁっ・・・!」

腰を一際深く突き出し、彼女の膣奥を抉る。

瞬間、肉洞内でペニスの鈴口が大きく広がり、奥から白濁が迸った。

「あぁ・・・あぅ・・・!」

顔をしかめ、絶頂に身を震わせる少年の姿を、少女はどこか焦点の合っていない瞳で見つめていた。

やがて射精が収まり、硬直していた彼の全身が弛緩する。

だが、彼が荒い呼吸を重ねるうちに、膣内で柔らかくなっていたペニスに血液が漲り、再び硬度を取り戻す。

「はぁ・・・はぁ・・・!」

彼は荒い呼吸を吐き、疲労を覚えながらも猛然と再び腰を振り始めた。

肉棒が肉壷を掻き分け、襞を抉り、膣奥を突く。

熱く膨れきった亀頭に、こりこりと弾力のある子宮口が幾度と無く接吻を繰り返す。

膣壁が蠢いたり、子宮口が吸い付いてくるわけではないが、それでも彼は快感と興奮に溺れ、彼女の秘所を突き続けた。

「あぁ・・・はぁ・・・あぁ・・・!」

目を閉じ、天井を仰ぎ、己の性欲をただただ少女にぶつける。

淫魔にとって見れば、まさに大当たりとしか言いようの無い状態だが、彼女にはその意識は無かった。

先ほどの少年の愛撫により、彼女のプライドはずたずたに破壊されてしまっている。

そして今彼女は、自分が人間に逝かされたという事実から目をそむけ、思考するのを止めていた。

だが、それでも肉体は彼のペニスに反応し、快感を彼女の脳に伝えている。

熱く、太いペニスが自分の肉壷に押し入っていく感触が心地よい。

彼女の膣奥に注ぎ込まれていく、彼の熱く滾った精液が心地よい。

太腿や内股に触れる彼の肌とその温もりが心地よい。

彼のもたらす何もかもが心地よかった。

快感が意識を呼び戻し、彼女の瞳に光を取り戻させる。

ぼやけた視界では、彼女の両足を抱え込んだ少年が、快感に顔をゆがめながらも懸命に腰を振っている。

その一振り一振りが、彼女の秘所を通じて快感をもたらしていることに、彼女は気が付いた。

相手は、ただの、人間なのに。

一際深くペニスが突き入れられ、熱い亀頭に触れた子宮口めがけて精液が注ぎ込まれる。

「あ、あ、ああぁぁぁぁぁぁっ!」

絶頂の声を上げながら、彼女の中で何かが壊れた。









コンクリートの床に描かれた魔法陣の中に、手足を鎖につながれた少女が倒れていた。

露出度の高い衣装に身を包み、下半身を覆っていたはずの下着は丸められ、床に打ち捨てられている。

そして、広げられた彼女の両足の付け根にある秘裂からは、白く濁った半固形状の粘液がどろどろと溢れ出していた。

「あぁ・・・あぅ・・・」

虚ろな瞳で天井を眺めながら、彼女が意味の無いうめきを漏らす。

少年はその様子を、精液によって汚れすこぶる履き心地の悪い下着とジーンズをたくし上げながら眺めていた。

「うぁあ・・・あぁぅ・・・」

「・・・・・・じゃあ、今日は僕は帰るから。また遊んでやるよ」

ただただうめき声を上げる彼女に向けて、自身の罪悪感を断ち切るように言う。

そして彼は工場の片隅においてあった自分のカバンを手に取ると、工場の外へ向けて歩き出していった。





<続く>






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