12月24日 三田お姉さんのプレゼント
異様なまでの寒さに、僕の全身が震えた。
カーテンをめくり、窓の外を見てみると雪が降っている。
今日は12月24日、クリスマス・イブ。
本来ならイエス・キリストの生誕を祝う日なのだろうが、日本ではなぜか特別な誰かと過ごす日となっている。
そう、例えば恋人とか。
ましてや、こんなふうに雪が降ればホワイトクリスマス。否応なしにムードは高まっていく。
そして、駅前の巨大クリスマスツリーの前で、こんな会話が交わされるのだろう。
メリークリスマス、○○。
メリークリスマス、○○クン。
ほら、クリスマスプレゼント。
ありがとう。何かな・・・え、これ・・・。
指輪だ。前から欲しかっただろ?
・・・・・・。
どうした、○○?
・・・いや、あんまり嬉しくて・・・。
おいおい、泣くなよ。
ありがとう、○○クン・・・。実はね、あたしからもプレゼントあるんだ・・・。
ん?何だ?
それは・・・あ、た、し(はぁと)
F●CK。死ね。呪われろ。
僕はぶつぶつ呟きながらPCに向き直り、書きかけのレポートに取り掛かった。
何が楽しくて、クリスマスにレポートをしなければならないのだろう。
確かに、この進路を選んだのは僕だが、キーボードと勉学に打ち込むためだけに大学に入ったわけじゃない。
せっかくの一人暮らしの部屋は、講義の忙しさのせいで殺風景なまま。
フィギュアやポスターどころか、漫画一冊おいてない。
呪いの言葉と、自分の境遇に対する不平不満を垂れ流しながらレポートを進める僕の耳に、音が届いた。
しゃん しゃん しゃん しゃん
一抹の爽やかささえ感じさせる、優しげな鈴の音色。
それが、部屋の窓の外から響いてきたのだ。
ふと気になり、再びカーテンをめくってみる。
しかし、いくつかの家が出しているイルミネーションと街灯、そして星月のほかには何も見えない。
「・・・気のせいか・・・」
そう呟いたとき、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、はーい」
誰だろう、もう7時なのに・・・
小さく舌を打ちながら、僕は玄関に向かった。
防犯のためチェーンをかけ、鍵を開いてドアを開ける。
「どちら様・・・」
玄関先に立っていた人物の姿に、僕の言葉は途切れた。
「どうもー、この地区を担当しています、三田と申しますー」
そう言いながら頭をぺこりと下げたのは、赤いブーツに赤のミニスカート、そして赤いコートに袖を通して赤い帽子をちょこんと頭に乗っけた女性だった。
身を包むコスチュームは、すべて縁に白い綿が取り付けられており、手には白い大きな袋を持っている。
年は僕と同じか、僕より少し上ぐらいだろうか?
「本日はクリスマス・イブのため、独身男性の元を訪問してー」
「間に合ってます」
短く告げると、僕はドアを閉めた。
「ああっ!?待って!お願い!とりあえず入れて!中に入れてくれるだけでいいから!話は聞かなくてもいいから!だからお願いぃ!」
ドア越しに、明らかに優先順位が間違っているとしか言いようのない懇願の声を、女性が上げた。
「遠出したのに、このままとんぼ返りじゃ確実に凍死するから!贅沢は言わないから!ほんの十分ぐらいでいいから風の当たらないところに入れてぇ!」
かなりの大声だ。
このままじゃ、彼女が諦める前に、僕がご近所づきあいを諦めなければならなくなってしまう。
がんがんがん、と声に加えて激しいノックがドアを揺らし始める。
「おーねーがーいー!」
「あーもう、分かりました。入れてあげますから、静かにして下さい」
「ううう・・・ありがと・・・」
チェーンを外して開いたドアから、彼女は震えながら入ってきた。
「それで・・・あなたは何?」
風の吹き込まない室内に入り、ようやく人心地のついたらしい女性に僕は問いかけた。
「えー、あたしはこの辺りの地域のサンタクロースをしている、三田という者よ」
コートの懐から取り出した名刺を差し出しながら、蓮っ葉な口調で彼女は名乗った。
受け取ってみると、そこには彼女の名前と、この辺りの地域を担当するサンタクロースだということぐらいしか書かれていなかった。
やたら胡散臭いが、そのことに突っ込むとめんどくさそうなのでやめた。
「えー・・・なんでまた僕のところに?」
「それはあんたがこの一年間いい子にしていたから、プレゼントを渡しによ」
「いい子って・・・僕は子供というにはちょっと・・・」
「法律上、あんたまだ子供じゃない」
まあ、確かに彼女の言うとおりだ。
しかし、納得と同時に疑問が沸き起こる。
「じゃあ、三田さんはまだ行かなきゃいけない所が、たくさんあるんじゃないんですか?」
僕ぐらいの人間も子供だというのならば、彼女が回るべき『いい子』は沢山いるはずだ。
「残念だけど、今年のいい子はあなただけよ」
「え、何で?」
「最近の子供はろくな奴がいないわ・・・どいつもこいつもネットで漫画をただで落として、ニコニコでアニメ見てるんだもん」
「・・・はぁ」
今年は忙しかったせいで、僕はネット自体あまりやっていない。
おかげで今年のアニメや漫画には疎くなってしまった。
久々にお気に入りの掲示板に行っても、『正気じゃないから怖ろしくないもん!いあいあ』という定型が交わされ、もはや僕が入り込めるような隙はない。
しかしそのおかげで、こんな美人の訪問を受けたのだから、幸いというべきだろうか。
「それじゃあ、とっととプレゼント渡すわよー」
袋の口を広げ、中を探りながら三田さんが言う。
「えーと・・・あ、あったあった・・・はい、一年間いい子にしてたわね」
「・・・ありがとうございます」
赤と緑のストライプ模様の包装紙に包まれた箱を、僕は受け取った。
見た目相応の重量感だが、重さが少し偏っているような気がする。
中身はなんだろうか?
「開けてみて」
「あ、はい」
促されるままに、包装紙を止めるテープを丁寧にはがし、包みを解く。
そして包みの下から、僕へのプレゼントの全貌が明らかになった。
目に入ったのは、中身が透けて見えるビニル製の窓のついた髪箱だった。
鮮やかなピンクの地に、恍惚の表情を浮かべる半裸の女の子のイラストが描かれている。
そしてイラストを挟むように蛍光色のオレンジで『サッキュバス この刺激にアナタは絶対に耐えられない!』という文字が躍っていた。
ビニル製の窓からは、シリコンゴム製の透明な筒が覗いている。
何なのだろうか、コレは。
「・・・なんですか、コレ」
答えは分かっていたが、問いかけずにはいられなかった。
もしかしたら間違いかも、という一分の期待に賭けて。
「オナホよ、それぐらい知っているでしょ?」
「いや、僕が聞きたかったのは、何でオナホがプレゼントなんだ、ということです!」
微かな期待を打ち砕かれつつも、僕は声を上げながら立ち上がった。
「いやー、だって年頃の男の子が喜ぶものって言ったら、エロアイテム以外にないじゃん?
変にフィギュアとかDVDとかだと、好みじゃなかったりすでに持ってたときが面倒くさいし」
僕を見上げながら、三田さんは面倒くさそうに続けた。
「それに、そのぐらいのオナホなら安いもんだし」
「いや、いい子か悪い子か判別する技術あるなら、もうちょっと個人の好みを解析して下さいよ!」
「いや、一応解析したのよ?それで今日の昼ごろまでオナホかスーパーマチョXTターボか、って決めかねてたんだけど」
「スーパーマチョXTターボにしろよ、オイ!」
よりによっての選択に、僕は大声を放っていた。
三田さんは僕の声に顔をしかめ、耳を軽く掻きながら言った。
「でもさ・・・あたしがスーパーマチョXTターボ持ってこようって言ったって、どうやって運ぶのよ?」
「う・・・!?」
「それに、あんなでかいものどうやって運べばいいのよ」
「そ、それは・・・」
畳み掛ける彼女の言葉に、僕の声が詰まる。
「後一つだけ言わせてもらうと・・・そんなに欲しいのなら、自分でお金貯めて、買えばいいじゃない」
「がはっ・・・!」
とどめの一言に、僕の言葉が完全に押しつぶされる。
両足から力が抜け、膝を突き手をつき、頭を垂れる。
自分の意思ではないとはいえ、その姿勢は完全に土下座のそれだった。
三田さんは立ち上がると、袋を手に玄関へ向かい、ドアノブに手を掛けた。
「・・・ま、渡すもん渡したし、あたしはもう帰るね」
「うぅぅぅぅぅ・・・スーパーマチョXTターボ・・・金だ・・・金さえあれば・・・」
畳に爪を立てながら、怨嗟と悲哀のこもったうめき声を上げる僕。
「・・・あー、もう!」
彼女は声を上げると、どすどすと僕の側に歩み寄った。
そして畳の上に膝をついて座り、僕の両肩に手を置いて、強引に上半身を引き起こした。
「分かった、お姉さんがスーパーマチョXTターボ分ぐらいのプレゼントをあげるから、もう泣かない!
分かった?」
「え・・・?」
彼女の言葉に、僕は疑問の声を漏らした。
スーパーマチョXTターボぐらいのプレゼント?
全く思い当たらない。何があるだろうか・・・?
プレゼントの候補になりそうなものを、いろいろと思い浮かべていると、彼女はオナホの箱を手に取りながら続けた。
「ほら、ズボン下ろして」
「やっぱり美人局じゃないですか!」
ある種の予想通りな展開に、僕は声を上げた。
「いや、違うって」
「いいや、この後きっと、恐ろしげなお兄さん達が入ってきて指詰めた後人間競馬やらせて借金背負わせられるんだ・・・あー」
「だから、違うって言ってるだろ・・・」
「んでもって、地下の強制労働施設でチンチロさせられ・・・」
「だぁ、もういい!」
三田さんはバリバリとオナホの包装を剥がし、付属の少量のローションをオナホに注ぎ込むと、僕の肩を突き飛ばした。
「うわぁ!?」
あまりの力にバランスを崩し、仰向けになってしまう。
すると彼女は、オナホを手にしたまま僕に背を向けて、腹の上に跨ってきた。
彼女の太股と、その間の柔らかいものがトレーナー越しに腹に触れてくる。
「あんたのプレゼント代分ぐらいのことはしてやるから、そこでじっとしてな」
「ちょ、ちょっと・・・!」
抗議の声を上げる間もなく、ベルトを緩められ、一息にズボンと下着を膝の辺りまでずり下ろされた。
冬の冷たい空気が、開放されたペニスを包み込む。
「あら、割と大きくなってるじゃないのよ」
僕のペニスを確認した彼女が、肩越しに僕へと視線を送った。
無理もない、腹の上には下着とトレーナー越しとはいえ、彼女の女性器が腹に接しているのだ。
数枚の布を隔てているというのに、その感触は異様にリアルに僕に伝わり、興奮を掻き立て、ペニスに血を集めていた。
「ま、コレぐらいなら入るかな・・・?」
「な、何してるんですか!?」
「何って、硬さ確かめてんのよ」
指先で、軽くペニスをつつきながら三田さんは言った。
彼女の指が触れるたびに、興奮が増していく。
「あら?だんだん硬くなってきた・・・もしかして喜んでんの?」
「いや・・・喜んでなんか・・・」
肩越しに振り返りながら、彼女はいたずらっぽい笑みを湛えた。
「ま、後はお姉さんに任せなさいって・・・ほら、ちょっと冷たいけど我慢してね」
いきり立ったペニスに、彼女の指が添えられ、亀頭にオナホと思われる柔らかいものが触れた。
「はい、いっくよー」
その直後、一気にその柔らかいものにペニスが挿入された。
「ひゃあぅっ!?」
快感よりも、柔らかさよりも先に、オナホとローションの冷たさが僕を襲った。
突然のひんやりとした感触に、僕は情けない声を上げてしまった。
しかし彼女は僕に構うことなく、オナホにペニスを収めていく。
「ああ・・・ひゃっこい・・・」
「ほらあたしが入れてやってんだから、ぶーぶー言わない」
ローションの冷たさにペニスは萎えつつあったが、よっぽど柔らかいせいか根元まで入ってしまった。
「ん、これならいけるわね」
彼女は確認するように言うと、手の中でオナホを左右に回転させた。
粘液にぬめるオナホ内部の襞や突起が、ペニスに絡みついた。
「うぉうっ!?」
「あはは、ほら元気になった」
背筋を駆け上る快感に、僕は声を上げた。
彼女の言うとおり、オナホのもたらした軽い刺激によって、僕のペニスには血液が集まり隆々とそそり立っていた。
ペニスの血行がよくなったことで、オナホの内部の構造が手に取るように分かった。
オナホの入り口からすぐのところには、細かい突起が無数に生えている。
そしてそれに続いて、オナホ内部にらせん状の襞が刻み付けられ、襞と襞の間に小さな突起が植えつけられている。
オナホの最奥、亀頭を包み込む部分は袋状になっており、その内側からは細いひも状の突起が無数に生えていた。
細かい突起と、らせん状の襞、そして亀頭を包み込む無数の触手。
それらが渾然一体となり、ローションのぬめりを伴いながら、ペニスに絡み付いていた。
「・・・で、中はどう・・・?」
「な、中が・・・すっごい・・・絡みついてぇ・・・」
オナホのもたらす快感により、舌がもつれ言葉が不明瞭になる。
だが、彼女は僕の様子だけで十分だったらしく、うんうんと頷いて見せた。
「ああ、よっぽどいいらしいね、悩んでよかった」
顔を前に、即ち僕のペニスのほうに向け、オナホを握りなおしながら続ける。
「それじゃあ、動かすわね」
「え・・・?」
ぐりん、とオナホが時計回りに回転する。
根元を囲む細かい突起と、幹を覆うらせん状の襞と、亀頭を包む無数の触手が、一度に蠢いた。
「ひぁあっ・・・!」
細かな突起が根元をえぐり、らせん状の襞が幹を擦り、無数の触手が亀頭をくすぐる。
ペニスに一度にもたらされる異質な三つの快感に、僕は引きつった声を漏らしていた。
「ひぃ・・・ぁああっ・・・!」
「あん?もしかして、もう出そうになってるの?
我慢せずに出したらいいわよ、どうせまだ一回目なんだから」
ぐりん、ぐりん、と途切れることなく、ドライバーでねじを締めるようにオナホを回転させながら、三田さんは言った。
「ほら」
ぎゅうっ、とオナホが握り締められる。
シリコンゴムの素材は彼女の握力を伝え、直にペニスを締め上げた。
オナホ内部の構造物が、ペニスに押し付けられる。
「ひゃぁぁっ!!」
積もり積もった快感と、突然の締め付けによって僕は一気に達していた。
手足を突っ張り、全身を震わせながらオナホの中に精液を注ぎこむ。
「あああ・・・ああ・・」
射精の勢いは次第に収まり、やがて奇妙な開放感と共に終わった。
精液の生温かい温度が、オナホを通じてペニスへ伝わってきた。
「うわー、すごい出たねえ・・・」
感心した様子で、三田さんが漏らす。
「ついさっきまでおちんちん見えてたのに、あんたが射精したら中が真っ白になって、見えなくなったわよ。
はー・・・よくもまあ、こんなに出したわねえ・・・」
「・・・うぅ・・・」
感心するような彼女の言葉に、僕は何ともいえない感情を覚えていた。
オナホは心地よく、一方的に与えられる快感により精液をたっぷりと注ぎ込んでしまった。
だが、それ以上の問題があった。
「ん?何よ、そんな顔して・・・。あ、もしかして傷つけちゃった?」
顔をこちらに向けた三田さんが、声をかけた。
「傷つけちゃったんなら謝るわよ。ピュアハート傷つけてごめんなさい」
「・・・」
なんというか、この人には、デリカシーというものがないのだろうか?
「何よ、その顔は」
「いえ・・・」
「不満だったら、もう一回してあげるわよ」
「いや、そういうわけじゃ・・・あぅっ・・・!」
再び始まったオナホの回転により、僕の言葉は中断された。
その後たっぷり三回、ただしあっという間に搾り取られてから、僕は解放された。
「あー、出た出た、一杯出たー」
オナホの穴を上に向け、精液とローションの混合液が零れぬようにしながら、三田さんは僕の上から降りた。
「さて、これで満足でしょ?」
「ま、満足してません・・・」
「何!?あんた絶倫!?」
「そーいうわけじゃなくて・・・」
息も絶え絶えに、僕は抗議の声を上げた。
「もうちょっと、シチュエーションとかその辺りを考えて下さい・・・!」
「シチュエーションって言われても・・・例えば?」
「・・・例えば・・・」
クリスマス・イブの夜、サンタに付き従う黒サンタの影が、ある青年の下に訪れた。
青年の衣服を剥ぎ、馬乗りになって押さえ込み、用意したロープやギャグボールやディルド、そしてオナホを取り出しながら舌なめずり。
「さあ、今夜を忘れられないクリスマス・イブにしてあげるわよ・・・!」
「とか」
「はーい、サンタさんですよー」
クリスマス・イブの夜に現れた美少女は、サンタだと名乗りながら部屋に上がりこんできた。
「今年はお兄さんしかいい子さんがいなかったので、あたしが今夜はお相手しますね」
そして繰り広げられる、彼女のフェラや手技。
その絶妙な刺激に、僕は何度も絶頂に達してしまう。
やがて興奮のあまり、僕は少女を押し倒してしまうが。
「きゃあ、だめですよー。そっちは結婚してからじゃないとだめって言われているんですー」
そう言いながら、彼女が取り出したのはオナホの箱。
「だから・・・こっちで、許してくれませんか?」
「とか」
「・・・今思いついたのか・・・」
「ええ、まあ」
横になり、下半身を露出させたまま熱弁を振るった僕に、三田さんは気味悪そうな目を向けてきた。
「あー、分かった分かった。つまり今度はそういう風にして欲しいわけね?」
「まあ、簡単に言うとそうです」
彼女はため息をつき、やれやれと言った感じで顔を振るった。
「あーあ、恥ずかしいけど・・・ま、あたしが言い出したことだからしょうがないか・・・」
そして、数度の深呼吸の後、何かを決心したような顔で口を開いた。
「お、お兄さん・・・」
「ああ、でも今はもう体力が限界で動けないので、今日はいいですよ」
「うがー!!」
側にあったオナホを手に取ると、三田さんは声を荒げながらそれを思い切り畳みに叩きつけ、立ち上がった。
「付き合いきれん!もう、あたしは帰る!」
袋をひったくるようにつかみ、玄関のドアをぶち破るような勢いで開き、出て行った。
「あーあ、行っちゃった・・・」
せめて、オナホの片付けぐらいは手伝ってもらいたかったな、と思いつつ、僕はゆるゆると身を起こした。
しゃんしゃんしゃんしゃん
「ん?」
先ほど聞いた鈴の音が、僕の耳をくすぐる。
ふと窓に目を向けてみると、夜空へと上っていく橇の姿が、カーテンの隙間から見えた。
「あー」
自然と、僕の口から言葉が漏れた。
「本物だったのか」
―翌日
目が覚めてから、レポートが書きかけだったことを思い出し、必死の形相でPCに向かう僕の耳に、チャイムの音が入った。
「・・・ったく、誰だ・・・?」
ぶつぶつ言いながらキーボードを打つ手を止め、玄関に向かう。
玄関のドアを開けると、三田さんが立っていた。
「・・・おはようさん」
「・・・おはよう」
視線を足元から頭のてっぺんまで移動させる。
身に纏っているのは、昨夜のサンタコスなどではなく、ジーンズに厚手のコートという、私服といってもいいような衣服だった。
「どうしたのよ?不機嫌そうな顔して」
眉間に皺を寄せ、かなり機嫌の悪そうな表情で彼女が問う。
「ああ、昨日誰かさんが乱入したおかげで、今書きかけのレポートやってるところなんだよ・・・。
で、そっちは?」
「はは、こっちは昨日誰かさんがせっかく用意してやったプレゼントにイチャモンつけてくれたおかげで、そいつが満足するまで滞在するよう命令喰らったのよ・・・」
「へぇ、そいつはご愁傷様」
「あんたもね」
互いに、相手に突き刺さりそうなほど鋭い視線で、しばしの間見つめあう。
「・・・ま、という訳であたしがあんたの部屋に、スーパーマチョXTターボ分まで住み込むことになったってわけ」
ふっ、と視線を緩めながら、彼女が言った。
「とりあえず最初に、昨日の事は謝っておくわ。
『早く帰りたいがために、適当にやってすみませんでした』」
「あ、ああ・・・うん・・・」
突然下げられた彼女の頭に、戸惑いを覚える。
「それじゃあ昨日の事はもう恨みっこなし、おしまい。
さ、早く入れてよ。ここ、寒くて仕方ないわ」
「あん?上がるのか?」
「無論よ、上からの命令なんだから。ほら、料理ぐらいは作ってあげるから・・・」
僕を押しのけるようにしながら、部屋に彼女が上がり込む。
「あ、そうだ。言い忘れてたことがあったわ」
「ん?」
疑問符を浮かべる僕に振り返ると、彼女は言った。
「メリー・クリスマス」
この娘さんに搾られてしまった方は、以下のボタンをどうぞ。
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