妖魔貴族に花束を 第四話 人間界にようこそ




注!

ご都合主義デス

主人公最強属性デス

gdgdデス

それでもよければスクロール↓













整一はボンヤリと外を眺めていた。

場所は日本全国どこにでもあるような公立高校「三笠高校」の二年七組の教室。

その窓際後ろから二番目の席が……整一の席だ。

その席からは底抜けに蒼い空と、どこまでも続くかと思われる町が……人々の営みが広がっているのが見える。

とかなんとかシットリした感じの始まりだが、別にホームルームが始まるまでの暇な時間の当然の過ごし方であり、特に今日が特別という訳じゃないのは明白だ。

友人が話しかけてこないなら別にすることも無い。



「よっ!整一」

明るい声と共に机の横に現れる男子。

「誰だっけ……」

「うおい!親友忘れんなよ!雄二!三笠のプリンスこと藤原 雄二だよ!びっくりしたよ!」

「俺はお前の昭和なネーミングセンスにびっくりだよ!なんだよ三笠のプリンスって!」

そんなことより!と雄二が仕切りなおす。

「なんだ?やけに嬉しそうじゃないか」

そんな雄二を見て首を傾げる整一。

「ふっふ、そりゃあもう」

ニヤリ、とイヤラシイ笑みを浮かべる雄二。

「な…なんだよ……」

「なんだと思う?なあ、なんだと思う?」

「男にそんな風に聞かれても嬉しくねえ!顔近ぇよ!」

ズズイ、と近寄ってくる雄二の顔を掴んで押し退ける。

「転校生だそうだよ」

そこに冷静な声が割ってくる。

「委員長」

整一がその声の主を見てその肩書きを言う。

ボブカットの黒髪の少女が立っている。

二年七組の学級委員長、宇垣 歩夢。

男っぽいしゃべり方の少女だ。

整一とは幼馴染に当たる間柄である。

「つまりあれか、雄二は転校生に喜んでるのか」

「そういうことだね。彼は転校生を美女だと予想しているんじゃあないかな」

やれやれ、と二人で肩をすくめる。

「そう!美女なのだよワトソン君!」

ズビシ!と整一に指を向ける雄二。

「ヒトに指差すな。あとホームズに謝れ」

「いいから聞け!俺はこの目で確かに見たんだ!白人系の美女二人!」

それを聞き、整一はゲンナリした。

「……お前は俺を絶望させるために来たのか?」

「なんで!?」

白人系で美女二人と言えば整一にはあの二人しか思い浮かばない訳で……。

そしてあの二人がやって来ると言うことは、関わるにせよ関わらないにせよ整一の神経はヤスリに削られる発泡スチロールのようになってしまうこと山の如しである。

その時、歩夢が何かを考え込むように黙りこくった。

「……委員長?」

整一の言葉に、我に返ったような表情を一瞬浮かべる……が、即座に引っ込めて笑顔を浮かべる歩夢。

「おや?整一君は転校生のことを知っているようだね」

「委員長?なんで急に機嫌悪くなってるの?」

笑顔で闘気を溢れさせる歩夢に怯える整一。

「まあいいさ、君と彼女らの関係はその"美人の転校生"達本人に聞くとしよう」



「えー諸君、突然だが転校生が来る」

担任の老教師、田島教諭の声が教室に響く。

田島教諭の言に生徒達はザワザワやりだす。

「静粛に。えーイギリスからやって来たそうだから文化の違いとかあるかも知れん。その辺考慮しながら仲良くするように」

整一はなるほどね、と感心した。

イギリスと言えば観光地の大半が「イワクツキ」で、ゴシックで独特の暗さを持つ国家だ。

そういう意味では「ノイエンドルフ城」とかピッタリだ。

転校生への期待のざわめきが少し大きくなった所で教室の扉が開き、マルガレーテとエミリアが入ってくる。

同時に教室が水を打ったかのように沈黙する。

男子も女子も、二人の美貌に言葉を失ったのだ……。

「初めまして、マルガレーテ・ノイエンドルフと申します」

「エミリア・スカーレットです」

よろしくお願いします、と二人が優雅に頭を下げると同時に、いくつかの溜め息が聞こえた。

「席はそうだな……」

田島教諭が示した場所は……。



よりによってココか……!と整一は内心深く溜め息をついた。

整一の真後ろの席にマルガレーテ。

右斜め後ろにエミリア。

ここまでご都合主義だと溜め息もつきたくなるに決まっている。

当然の如くクラスメイトが群がり、教室の人口密度が一部凄まじいまでになっている。

「俺、藤原 雄二!よろしくね、マルガレーテさん!エミリアさん!」

「好きな食べ物は何ですか?」

「誕生日はいつですか?」

「お姉さまと呼んでもいいですか?」

「趣味は?」

「特技は?」

なんかヤバイ質問があったような気がするが、転校生なら質問攻めくらいは当然だろう。

二人とも当たり障り無い答えを笑顔で答えている。

その前の席で頬杖をつきながら呆れた表情を浮かべる整一。

と、そこで気付いたのだが、自分とマルガレーテの関係を言及してやると言っていたはずの歩夢がそこに参加していないのに気付いた。

視界の隅に映る歩夢に焦点を合わせようとした時……。

「そういや整一とは知り合いですか?なんか本人マルガレーテさん知ってる感じだったけど」

(!?)

雄二がいらんことを思い出しやがってくれた。

「ええ、私とエミリアにとって忘れたくても忘れられない人間ですわ」



…………………………………



マルガレーテの言葉に教室の空気が凍った。

「えっ……と、エミリアさん?」

女子の一人がエミリアの方に顔を向ける。

「はい、マルガレーテ様のおっしゃる通りです。死ぬまで整一様のことは忘れられないと確信を持って言えます」

悪魔だ!

いや、本当に悪魔だけども!

超絶美女二人の言い方は、浮ついた今の男子達に誤解させるには十分過ぎる威力があった。

「せ・い・い・ち・クン?」

雄二の声に促され、後ろを振り向くと……。

殺気を振りまく男子に、汚いモノを見る目の女子。

そして極上の獲物を前にしたように微笑むマルガレーテと澄ました顔のエミリア。

『か…艦長!敵性勢力急激に増大中!撤退を具申します!』

脳内に警報が鳴り響く。

こんな展開漫画か小説の中だけで十分だ!

「とりあえず、死刑だね(はーと)」

「覚えてろよマルガレーテヱヱヱヱヱヱヱヱ!!!」

クラスの男子全員を相手に逃げ回る羽目になったのは言うまでも無かった……。



※ ※ ※



時間は飛んで昼休み。

場所は屋上。

「ったく」

やれやれと疲れた表情で弁当を広げる。

いつもなら購買戦争に参加するか学食に行くのだが、本日は母奈々子が弁当を作ってくれたのでゆっくり頂くことが出来る。

三笠高校は屋上を開放しているため、こんなことが出来るのだ。

暖かければ結構な数の生徒が昼食や談笑などをして賑わうのだが、今日は少し寒いため整一しかいない。

昼休みになった途端整一を尋問……縛り上げて足の裏をくすぐって自白を強要することが尋問であるならだが……しようとする男子達を振り切ってここまで避難して来たのだ。

さすがに何時までも整一を追っていたのでは昼食を食えなくなる……と言う訳で男子達は既に追跡を諦めている。

の、筈なのだが、悪魔の追跡は逃れられなかったようだ。

「ここ、よろしいかしら?」

「……好きにしろ」

向かいに座るマルガレーテを一瞥し、弁当を口に押し込む作業を開始する。

「朝は御免なさい。少し調子に乗りすぎたみたい」

サンドイッチを摘みながらマルガレーテが言う。

「その割には顔がにやけていますよ?マルガレーテさん」

コノヤロウ、という感じで返す。

マルガレーテはクスクスと笑いながら、そうかしら?と小首を傾げる。

「ま、楽しんでるようでなによりだ」

「あら?どういう意味かしら?」

「皮肉とかじゃねーよ。お前人間見下してたから「学校なんか下らない」なんて言うかと思ってたんだよ」

整一の言葉に笑みを深くするマルガレーテ。

「確かに、来るまではそう思っていなかったと言うと嘘になるわね。でも、いざその中に混ざってみたら凄く面白いわ。エネルギーがあって、異質なモノにも物怖じせずに理解しようとがむしゃらに突っ込んでくる。まるであの時の貴方のように……ね」

「……」

「人間は異質なモノ……自分と違うモノを必ず排斥する生物だと思っていたわ」

「そりゃ中にはそういう奴もいるだろうよ。特に日本はそういうのが顕著だけどさ……。でも生き物ってそんなもんだろ?いい奴も悪い奴もどちらでもない奴もいる。どれか一つだけ見て決めるのはオカシイだろ」

「……そうね」

マルガレーテは、言葉を咀嚼するように頷く。

「これがもし言葉を交しただけの人間相手だったら何を綺麗事を、と言えるのだけれど……実行してしまうヒトが相手ではね」

「……」

「褒めてるのよ」

優しげな微笑を向けてくるマルガレーテ。

なんだか気恥ずかしい。

それから二人はしばらく無言で食事をする。

空になった弁当箱をしまいながら、そう言えば、と口を開く。

「エミリアさんはどうしたんだ?」

てっきりマルガレーテにくっついているものかと思っていたのだが……。

「ちょっと…ね」

すっと目を細めるマルガレーテ。

背筋がぞっとするほど艶かしい。

「……マルガレーテ?」

嫌な予感がして確認するように名前を呼ぶ。

「簡単に言うと、貴方にお詫びとお礼を兼ねて私自ら抱いて差し上げようという……」

「おいこらちょっと待て」

「あら?おかしな所があって?」

「一から十までオカシイだろがい!」

整一の抗議は、しかし全くマルガレーテに効果が無い。

「そう嫌がらなくてもいいでしょう?別に吸い尽くしたりする訳じゃないのよ」

そういう問題か?

「嫌とかじゃなくてだな……」

「まさか、愛が無いと性交出来ない、なんて幻想を抱いているのかしら?」

「……流石にそこまで純粋じゃねえよ」

すっ、と近寄るマルガレーテから逃れるように、体を反らす……が、無駄な抵抗に過ぎない。

もうほとんど密着しているようなものだ。

「私がどんな存在か……分かっているでしょう?」

「っつ!」

耳元で囁かれ、理性が吹っ飛びそうになる。

ゼェゼェと過剰なほどの荒い息。

心臓が破裂するかと思う程早鐘を打つ。

「御免なさい、私が我慢出来そうにないの」

どこか切迫した声が耳朶を打った……気がした。

「!」

つい、とマルガレーテと唇が重なる……。

最初の時のほど暴力的ではなく、しかし、二度目ほど優しくもないキス。

抵抗の意思が生まれる前に、舌が口内に侵入を果たす。



ちゅ……くちゅ……



甘いような感じのする軟体が舌を絡めとる。

力が抜けてコンクリの床に倒れ込んでしまうが、それに合わせてマルガレーテが圧し掛かってくる。

制服越しにいい匂いのする柔らかい体が密着し、すでに痛いくらい硬くなっている陰茎が押しつぶされる。

唾液が交換される水音がやけに頭に響く。

当然の如く腰の奥がむず痒くなり、射精まで一気に駆け上がっていく。

もう出る……と、覚悟した瞬間、唇が開放される。

トロリと二人の舌を唾液が繋ぐ。

「フフ、美味し」

マルガレーテがうっとりとした表情で熱に浮かされたように呟く。

「こんなに美味しい精は久しぶり……いえ、初めてかも知れない」

嬉しそうな真紅の瞳に魅入られて、呻き声すら発せない。

「私に三度もキスをさせて、しかも命を保障されて抱かれるのがどれだけ稀有だか分かっている?貴方は特別なのよ」

だからなんだよ、と思いながらも満更ではないのがなんだか悔しい。

当然この状態でそこまで思考出来るのは人間として異常な訳だが、本人に自覚は全く無い。

「整一……」

楽しくて仕方が無い、といった声が上から降ってくる。

いつ脱がされたのか、制服の下とパンツが無い。

マルガレーテが持ち上げたセーラーのスカートの中もすでに無い。

「この……同意無しで…やる気か……」

かなりはっきりした声が下から上がってきたのを、若干の驚愕をもって見下ろすマルガレーテ。

「…本当に驚いたわ、ここまできてまだ抵抗するのね」

流石、と一層嬉しそうに笑う。

「でも、その方がいいかも……」

「なん…ハァ…だよ…?」

整一とて決して余裕がある訳ではない。

マルガレーテが腰の上に座っているだけでいつ射精してもおかしくないほど追い詰められているのは事実だ。

マルガレーテが手加減していなければ今頃とめどなく射精していただろうけど。

「無理矢理交わってもいいのだけれど、私としては合意の上でしたいの。貴方とはね」

整一の頬に手を添え、謳うように言うマルガレーテ。

「それとも、バケモノと交わるのは嫌かしら?」

その時、整一はやっと気付いた。

真紅の瞳に、若干の不安が揺れている。

多分無意識だと思うが、マルガレーテは不安を感じているのだ。



―本当に整一に受け入れられているのか―



この不敵な女王でも不安がっているのか、と逆に安心してしまう。

案外脆い部分もあるのか、なんてこのサキュバスを可愛く思う。

「分かった分かった。ここまでされてやめられたら俺もつらい。頼むから午後の授業に差し支え無いようにな」

自分でもびっくりするほどちゃんと呂律が回った。

「最初からそう言っていればよかったのよ」

そう言って陰茎に膣口をあてがうマルガレーテ。

口調は小馬鹿にした感じだが、微量ながら安堵も混じっていた。

くちゅり、と暖かく湿った感触が整一の陰茎を襲う。

「うぐっ……!」

「もう出そうなのかしら?でも、ここで漏らされたら勿体ないわね」

マルガレーテはくすりと笑って、一気に腰を下ろした。

熱くぬかるんだ膣が整一の陰茎を飲み込む。

「ぐあァ……!!」



どぐっどぐっ……!



これまで我慢していた分もまとめて吸い取られていく。

「っ…………!」

有り得ないほどの快楽に声も出せず、延々と射精が続く。

マルガレーテはそれを穏やかに微笑ながら見下ろしていた……。



「アリガト、本当に美味しかったわ。毎日吸っても飽きそうにないわね」

「毎日吸われたら俺がもたねえって」

ツヤツヤなマルガレーテに対して、軽い倦怠感に襲われてぐったりしている整一。

二人ともすでにキッチリ服を着ている。

「ったく。……五時間目まであと何分も無いじゃねえか!」

ケータイを見て慌てて立ち上がり、早く行くぞ!と手を取ってマルガレーテを立たせる。

「貴方って本当に出鱈目ね」

「はぁ?」

あれだけ吸ったのに、と苦笑しながら呟くマルガレーテ。

「お前ぇ……」

「五時間目は古典でしょ?早く戻って準備しましょ」

澄ました表情で言うマルガレーテに、やれやれと肩を竦めて溜め息をつき歩き出す。

端からから見れば、この二人は恋人同士にも見えただろう……。



※ ※ ※



再び時間は飛んで放課後

場所は通学路の途上

マルガレーテとエミリアに左右を挟まれ、両手に花状態で帰路を進んでいる。

学校の男子、はたまた男性の通行人の殺気と呼んだ方が余程正しい嫉妬の視線を考えれば、素直に喜べないが……。

「あ、そうそう、整一に頼みたいことがあるのだけど……」

マルガレーテが思い出した、という感じで口を開く。

「なんだ?」

「引越しの手伝いよ」

なんでも、あの屋敷は元々エミリア所有のモノだったのだが、週に一回しか帰宅していなかったため掃除も満足に出来ずかなり散らかっているのだ。

城の維持もあり、屋敷には20名程しか連れて来ていないため一人でも多く人手が欲しい……とのことだ。

「魔法とかでやればいいじゃないか」という整一の言葉は、「人間を理解するのに魔法は不要でしょ」というマルガレーテの言葉に封じられた……。

「申し訳ありません、私の不肖のせいで……」

「いいっていいって。気にしないでいいですよエミリアさん。」

別に嫌な訳じゃないし、と苦笑する。

「……エミリアには素直ね」

マルガレーテが拗ねたように呟く。

「……」

委員長と言いマルガレーテと言い……女はよく分からん、と内心溜め息をついた……。



「ただいま」

二人のサキュバスに、一旦家に帰ってから行くことを約束し、帰宅する。

すると、何故か歩夢と両親が居間で深刻な顔を突き合わせている。

「……お帰り、せーちゃん」

能天気な筈の奈々子も真剣な表情をしている。

「あ…うん、ただいま」

何かあったのかとか、それ以前に歩夢がなぜ居るのか、とか疑問が渦巻く。

委員長は確かに小さな頃はよく家に来ていたが、中学校に上がった頃からあまり家に上がることは無くなっていた。

「整一、これから暇はあるか?」

浩介が重々しく口を開く。

「あーっと、悪いんだけど、これからお隣さんの引越しの手伝いに行くんだ」

そう言った瞬間、部屋の空気が一層重くなる。

「「「「…………」」」」

さすがに整一もここまで来ればそれなりに察するモノがある。

両親と歩夢はマルガレーテ達が何者であるか気付いている。

なぜか、とか、これからどうするか、とか気になることは多数あったが、直接聞いても答えてはくれないことくらいは理解出来る。

「……分かった。ただ……」

「私が一緒に行こう」

浩介が何か言おうとするのを遮ったのは、歩夢だった。

「え?」

間抜けな表情と間抜けな返事をする整一を尻目に歩夢は話を続ける。

「学級委員長としてマルガレーテさんと仲良くなるのも悪くないだろうし……」

先程の雰囲気はすでに霧消し、いつもの歩夢に戻っている。

「それに、君のような若くて健全な男子をマルガレーテさんのような美人と一緒にさせてはどんな間違いが起こるか分からないしね」

すいません、もう昼に間違っちゃいました。

「さあ、そうと決まれば早速用意をしようか」

「あ…あぁ」

歩夢に引っ張られるように、準備を始めた……。



二人で学校指定のもっさいジャージを着て、隣の豪邸に向かう。

設定では、数ヶ月前から建設はしていた物件……ということにしたらしい。

暗示の効果と、郊外であることもあり、それで大丈夫だそうだ。

「ごめんください。整一ですけど」

ドアの横にあるインターホンを押し、声を吹き込む。

『今開けます』

ゆっくりと扉が開き、エミリアが出迎える。

「………」

ただ、歩夢を見て沈黙する。

「やあ、エミリアさん。同じクラスの宇垣 歩夢だ。結局学校に居た時には挨拶も出来ずに失礼した。今日は整一君のお供としてあなた方の引越しをお手伝いしようと思って来たんだ。もしかして迷惑だったかい?」

「いえ、整一様のお知り合いならば我々としても信用出来ます。人手も足りませんし、感謝こそすれ迷惑等と言うことはありません。こちらこそ学校で挨拶出来ず失礼いたしました」

「そう言えば貴女はメイド服を着用されているが、どうしてかな?いや、決して似合っていないという訳ではないが……」

「私はマルガレーテ様に仕える従者であり、侍女を代表して学校までお供をしているので……」

「なるほどね。彼女は本物のお嬢様で、貴女は本物のメイドさんな訳だ」

「ご理解頂きありがとうございます」

「……………………………………………………………………………」

なにこの腹の探りあい。

最初から相手と殺り合う気満々の歩夢と、それを察知したエミリアが、それぞれ笑顔と無表情で向き合う。

(胃が破れる……)

キリキリとした痛みを訴える胃の心配をしながら、整一は口を開いた。

「で、俺達はどこをどうすりゃいいんだ?」

「それではこちらへ……」

エミリアを先頭に、屋敷の中へと入って行く。

その途中、エミリアが整一の隣に並ぶ。

(整一様……彼女は何者なのですか?)

(俺の幼馴染でクラス委員長…の筈なんだが……。正直家に帰ってからは正体が分からん。エミリアさんはどう思う?)

(……正直に申し上げるならば、よく分かりません。魔力を持っている気配はあるのですが……あまりに希薄で自覚のある魔力なのか潜在的なものかまでは……)

(あいつも悪魔ってことか?)

(いえ、どちらかと言えばベムハンター……)

「おや?二人で内緒のお話かな?」

「「!」」

後ろで屋敷の内装を眺めていた歩夢が二人に声をかける。

「いや、デカイ屋敷だけど金とかいくらかかってンのかと……」

「整一君、少し失礼だよ」

「あぁ、そうだな」

外面だけ見れば和やかに見えかねないが、どす黒い気配が漂っている……。



「マルガレーテ様……」

とある部屋に入り、本棚を整理しているマルガレーテにエミリアが声をかける。

「あら遅かったわ……ね……」

振り返ったマルガレーテは、歩夢を見て少し口ごもる。

「いらっしゃ……」

マルガレーテが営業スマイルを浮かべた瞬間……。



ブワッ!



「!?」

歩夢の服装が巫女服へと変わり、刀を構える。

「整一君下がってくれ!」

「ちょっ……おま……っ!」

対するマルガレーテもどこからか剣を取り出す。

「あら?穏やかじゃないですわね」

「待……!」

「マルガレーテ様、ここは私が……」

エミリアがマルガレーテをかばうように立つ。

「いえ、エミリア、あなたは下がっていなさい」

「しかし……」

「だからおま……」

「整一君、君は奴らに騙されているんだ!このままでは君は奴らに玩具にされて殺されてしまうぞ!」

「いや、だから……」

「言っておきますけど、自己防衛の戦闘は……私だってしますわよ?」

「はん!自己防衛?笑わせる!」

「だから待……」

急速に高まる殺気。

そして二人は瞬間移動の如く接近し切り結ぶ……筈だったのだが……。

その場に居た誰もがそれを察知出来なかった。

エミリアも、歩夢も、当然マルガレーテもだ。



ガシッ!



「「!?」」

歩夢とマルガレーテは視界が奪われ、困惑する。

ギリギリギリ!

「!?痛い痛い痛い痛い!」

歩夢が悲鳴を上げる。

「頭蓋骨が!割れるっ!割れちゃう!」

マルガレーテも勿論悲鳴を上げる。

「お前ら、人の話を聞けって教わらなかったのか?おいこら」

整一の低い声が部屋に響く。

瞬時に二人の間に滑り込み、腕をクロスさせてマルガレーテと歩夢の頭を鷲掴みにしたのだ。

「「御免なさい」」

二人は満足に動けず、ただ謝罪する。

「あ……あの技は……!」

巨大な魔力を感知して慌てて部屋に入ってきたメリアヴィスタが、その光景を見て絶句する。

「知っているのですか?メリアヴィスタ」

エミリアも目を見張りながらその光景を眺めている。

「あれはアイアンクロー対面式!とある三姉妹の長女が使った技の汎用型!まさか使える人間がいたとは……」

「な……なんですって……!」

Ω ΩΩ<ナ…ナンダッテー!な絵柄になって会話する二人のメイド。

「おい委員長、俺が待てって言ってんだろ?」

「い…いや、言ってはいな…痛い痛い!頭がパーンてなる!御免なさい!ちゃんと話を聞くから!」

「マルガレーテも、躊躇無く殺し合いとかよー。拷問の次は暴力か?」

「でも理不尽じゃな…痛い!御免なさい御免なさい!もうしないから許してぇ!」



こうして整一は、史上初めてマルガレーテに抱かれて生きていた人間。

史上初めて搾精目的以外でエミリアの屋敷に招かれた人間。

史上初めて女王級淫魔にアイアンクローをかけた人間。

などなど、その道の人間が見たら泡吹いて失神するような偉業を次々と……たった一日で打ち立てたのだった……。





続く







































―あとがきと言う名の始末書―





_| ̄|○<実は「続き期待してる」という書き込みを見つけたのは11月に入ってからでした。

カンソウコワクテミラレナカッタ……。





_| ̄|     三三○  スポーンッ!





_| ̄| ..........       ((( ○  コロコロ





_| ̄|               ○<…………





_| ̄|               ○<遅いし無駄に長い上エロ薄い





_| ̄|               ○<…………





_| ̄|               ○<やっぱエロって難しい





_| ̄|               ○<載せてくださったとろとろさん、読んでくださった方、ありがとう御座います。まだ続くのでよければお付き合いください。










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