PANDORA Intermission
浅いまどろみから目覚めると、僕は股間に妙な生温かさを感じた。
「・・・」
スプリングの硬いベッドをきしませながら上体を起こし、妙に膨らんだ毛布をめくる。
すると僕の股間に顔を埋める、赤い髪を後頭部で結い上げ太褐色の肌の少女がいた。
褐色の肩は、興奮によってうっすらと汗ばんで、艶やかに室内の照明を照り返している。
彼女の姿を確認すると同時に、不明瞭だった股間の違和感が、ペニスに絡みつく舌や唇や頬肉の感触となり、快感へと転ずる。
「あ、ラウラ・・・」
「ん・・・んん・・・?」
僕のペニスを咥えたまま、ラウラが上目づかいに視線を向けてきた。
「あいー?」
「咥えたまましゃべら・・・あっ・・・」
彼女の口内の蠢きが、一息に僕を追い込んだ。
「ああっ、ああ・・・!」
「ん!ん・・・ん・・・」
ラウラは口内で噴出する精液を受け止め、嚥下していった。
そして、尿道に残った分まで啜り取ると、ようやくペニスを口から放して言った。
「おはよう、新」
「ああ・・・おはよう、ラウラ・・・」
目覚めたばかりだと言うのに、妙な疲労感を覚えながら僕は応えた。
僕の名前は斉藤新。
ここはバビロンとか言う研究団体の複合実験施設『PANDORA』だ。
2年前、僕はPANDORAの規模拡張に伴う人員追加によって、このPANDORAの監視者としてここに連れて来られた。
同僚は、監視室長のイェーナさんとローラ、そしてなぜか僕のベッドにもぐりこんでいるラウラの三人だ。
「・・・で、何で僕のベッドにもぐりこんでいるんだ?」
「あたしの勤務時間が終わったからよ」
「こっちはまだ5時間ぐらいしか寝てないんだ。だから起きるまで放っておいてって、約束しただろ!?」
「えー、でもあたし我慢できないし」
「我慢してくれよ」
一人用の小さなベッドで、おちないように身を寄せ合いながら言葉を交わす僕とラウラ。
傍目から見れば、完全にバカップルと言ってもいいような状態だった。
「だったら、起きるまで待つから、代わりにおはようのキスをしてくれる?」
「・・・そのぐらいだったら・・・」
「はい、決まり!じゃあ・・・」
んー、と目を閉ざし、唇を突き出しながらラウラが顔を僕に寄せる。
どうやら、いきなりおはようのキスをするようせがんでいるらしい。
「・・・」
僕は胸中で短く嘆息すると、彼女の唇に軽く唇を重ねた。
「!?」
不意にラウラの両腕が跳ね上がり、僕の頭を抱え込んでぐいぐいと唇を押し付けてくる。
突然の行動に、僕は彼女の舌の侵入を許してしまっていた。
「っ!」
ラウラの舌は、単体の生物のように僕の口腔を這い回り、歯茎や頬の内側をくすぐって、舌にその身を絡みつかせてきた。
彼女の異様にねっとりとした唾液が、僕の口内に注ぎ込まれていく。
そして、たっぷり十分は経っただろうか。
ちゅぽん、という音を立てながら、僕とラウラの唇がようやく離れた。
「えへへ、気持ちよかったよ、新」
ラウラは微笑みながらそういうと、毛布の中で僕に抱きついてきた。
彼女の褐色の乳房が、僕の胴体に押し付けられて平らに変形する。
(・・・ちょっと苦かったな・・・)
彼女の口中に残っていた精液の味を思い浮かべつつ、僕は彼女の乳房の柔らかさを感じていた。
「ん・・・入れたい・・・?」
唇を離すと同時に、彼女は僕に問いかけた。
「ほら・・・あたしのここ、こんなになってるんだよ・・・」
ラウラは僕の手を掴むと、自身の両足の付け根へ導いていった。
柔らかな内股や尻の肉の間、女陰のあるところだ。
僕の指先が、唇のように柔らかな粘膜の中へと沈む。
そこはラウラの興奮にあわせて湿っており、乾いた僕の指先を優しく受け入れた。
「い、入れたい・・・」
再び加熱してきた興奮が、無意識のうちに答えさせた。
「いいよ・・・あたしが入れてあげる・・・」
ラウラは僕の体に覆いかぶさるようにし、自身の腰を僕の腰に重ねた。
そして毛布の中で僕のペニスを掴み、その先端を温かな何かに触れさせた。
「ん・・・入れるよ・・・」
言葉と共に、ゆっくりと彼女は腰を下ろした。
亀頭が彼女の女陰を押し広げ、膣内に僕のペニスが納まっていく。
「ん・・・んん・・・」
「ああ・・・」
自らを押し広げていくペニスの感覚に彼女が声を漏らし、僕はペニスを締め付ける膣の感触に声を漏らしていた。
「ん・・・うご、かすね・・・」
「あ・・・うん・・・」
彼女がゆっくりと腰を持ち上げ、下ろす。
膣の締め付けが、ペニスを掴んで離すまいとするように強くなった。
「うぉ・・・」
まるで、膣壁越しに手で扱かれているかのような感触に、僕は声を漏らした。
「ん・・・ん・・・ん・・・」
ゆっくり、ゆっくり、何の技巧もなくただ上下に腰を振るだけのラウラ。
だが彼女の顔は赤く、瞳は潤み、息も荒い。
興奮していることは明らかだった。
そして僕もまた、そんな彼女の姿と、強烈な膣の締め付けに快感を覚え、興奮していた。
同時に、僕の体の上で一生懸命に腰を振る彼女の姿に、いとおしさも感じていた。
「ん・・・ん・・・ん・・・んっ!?」
堪らず、ラウラの頭を抱き寄せ、強引に唇を重ねる。
先ほども味わったほのかな苦味が、口中に広がるが気にはならない。
それどころか、僕は彼女の唇を押し開いて舌をその奥へと差し入れていた。
「ん!?・・・ん・・・」
突然侵入してきた舌に、ラウラは一瞬驚きを示すが、すぐに自身の舌を絡めてきた。
僕のペニスに絡みつき、幾度となく精液を搾ってきた自在に動く舌が、僕の舌を撫で擦る。
「んん・・・ん・・・ん・・・」
無言で互いの唇を貪りあい、互いを抱き寄せ合う。
抱き合っているせいで彼女の腰はほとんど動くなったが、その締め付けと唇、そして僕の腕の中の柔らかな肢体が、僕に心地よさをもたらした。
「ん・・・ん・・・んん・・・」
興奮が高まるに連れ、僕たちは自然と目を閉ざし、作り出した暗闇の中で互いを求め合った。
互いの姿は見えないが、肌に触れる相手の感触だけで十分だった。
限界に達したのだろうか、彼女が一際強く舌を絡め、膣の締め付けが一層強くなった。
「んん・・・んん・・・!」
一瞬で絶頂に達し、体奥で熟成されていた興奮が迸る。
熱い精液を受けた彼女の膣が、悦びに蠢き更にペニスを締め付けてくる。
「ん・・・んん・・・ん・・・!」
絶頂に至りながらも、僕たちは互いの唇を貪りあい続けた。
だが、やがて射精は勢いをなくして止まり、彼女の膣の締め付けも緩む。
「んん・・・ん・・・ぷはっ・・・はぁ・・・」
絶頂が終わり、僕たちは唇を離した。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
体を重ねたまま荒い息をつく僕達。
言葉を交わすことなかったが、僕は腕の中にラウラがいるだけで満足だった。
その後、二人で5時間ほど抱き合ったまままどろんだあと、本格的に僕の起きるべき時間が来た。
「じゃあまた明日もね、新」
そう言うラウラを見送ると、僕はシャワーを浴び、着替えて食事を摂り、仕事場へ向かった。
全く同じ扉が並ぶ居住区を抜け、薄暗い通路を進む。
金属製の扉の前に立ち、もう何百回と打ち込んだ番号を、扉に取り付けられた装置に打ち込む。
ィン ウィィィィィ・・・
モーター音と共に、扉が開いた。
PANDORAの観察施設、通称監視小屋が僕の目の前に現れた。
向かって右手には上と繋がっているエレベーターの扉、左手には天井に届くほど巨大な書類キャビネット、そして向かいには大きな通風口があった。
部屋の中央には大きな机が並べられ、向かい合わせになるように端末が備えられている。
端末の片方に向かっていた女性が、僕に気が付いたように顔を上げた。
「ん?新か・・・ああ、もうそんな時間なのだな」
「お疲れ様です、イェーナさん。交代です」
「分かった」
端末に向かっていた金髪の女性、イェーナさんが大きく伸びをする。
作業着に包まれた大きな胸が強調された。
「さて・・・それじゃあローラ、後は新と一緒に頼む」
彼女は伸びを解くと、向かいの端末に着いている、褐色の肌に赤毛のお下げの少女に向けて声をかけた。
「分かりました」
イェーナさんは椅子から立ち上がると、肩を回し首を鳴らしながら僕のほうへ歩み寄ってきた。
「んじゃ、アタシは戻るからよろしくな」
彼女はそう言いながら軽く肩を叩いた。
僕より上背のあるせいだろう、軽くよろめいてしまった。
「とっとと・・・お、お疲れ様です」
僕の言葉に、イェーナさんは背を向けたまま手を振り、その姿が扉の向こうへ消えた。
「新さん、業務に就いて下さい」
「ああ、はいはい」
ローラの催促に応じ、イェーナさんが向かっていた端末に着く。
モニタ上には、ワイヤフレームで表現されたPANDORAの全容が表示されている。
僕達の仕事は実に簡単。
PANDORA内の被験者の行動を監視し、変わった点があれば記録する。
それだけだ。
それだけを僕を含めた四人で、一人十二時間、六時間おきに交代しながらずっと続けている。
「さて・・・と・・・何か変化は?」
「いいえ、特に何も。新規追加者も脱出者もありませんでした」
「そう・・・」
「ああそういえば、あと6時間で定期メンテナンスに入りますので、私はその準備をしますね」
「分かった」
手垢のこびりついた、薄汚れたキーボードに指を走らせ、コマンドを入力する。
PANDORAのモデル全体の輝度が低下し、生存者が存在する部屋だけが明るく表示された。
その数はたった一つ。
12時間前の勤務のときは被験者は三人だったから、二人が死んでしまったことが分かる。
「新さん、被験者33542号の監視をお願いします。私は故障箇所がないか調べますので」
「ああ、はい」
ローラの言葉に僕は意識を切り替え、コマンドを入力する。
被験者33542号のいる部屋の座標位置を入力して、部屋の内部を走査する。
すると各部屋の壁の中に設けられた赤外線センサと超音波センサの数値を元に、モニタ上にワイヤフレームの被験者の姿が表示された。
被験者33542号は活発に動き回っており、今も隣の部屋へと移動しようと、内壁に取り付けられたはしごを上っているところだった。
部屋の時計に目を向け、軽く計算する。
現在の時刻からすると、彼のいる部屋の隣はトラップ部屋のはずだ。
しかし、そのことを彼に伝える術はない。
見ている間に、被験者33542号は扉を開けて通路に入り込み、トラップ部屋の扉を開くと、床に降り立った。
室内の動体感知センサが作動し、規定の時間を経てトラップを起動する。
機構が扉をロックし、部屋の内壁をスライドさせ、格納してあったケージを開かせる。
ケージから現れたのは、不定形の何か。センサのせいか、僕からはただの塊にしか見えない。
うろたえたようにワイヤフレームのモデルが動き、扉に飛びついて開けようと取っ手を掴む。
しかし扉は開かず、ケージの中にいた何者かが壁を這い登り、被験者33542号の体を覆った。
体をかきむしり、払い落とすような動作をはしごの上で行い、バランスを崩して床の上に転げ落ちる。
赤外線センサの映像が、見る見るうちに上昇していく彼の体温を表示した。
「・・・・・・」
手を伸ばし、端末と端末の間に置かれたファイルを取った。
ファイルの表には「No.33542」とだけ書いてある。
表紙をめくってみると、そこには被験者33542号のプロフィールが書かれていた。
特に何もない、ごく普通の生活を送ってきた男子高校生。
おそらく学生証の写真を複写したのであろう、書類に備えられた写真は真面目で大人しそうな印象を僕に与えた。
「・・・・・・」
やがて、僕の見ている前で彼の動きが弱々しくなり、ついには止まった。
『No.33542 is dead』
モニタに短い一行が表示され、見る見るうちに彼の体温が低下していく。
「被験者33542号、死亡」
僕はそう呟くと、その後の手続きをするべくキーボードに手を走らせた。
彼のこれまでの行動記録を呼び出し、プリントアウトする。
そしてそれを、すでに送られている被験者達のプロフィールをまとめたファイルに加え、書類キャビネットに保管する。
そのようにして、彼の死は記録され、蓄積されるのだ。
かわいそうではあるが、この後に待っているリセットに比べればましだ。
そう考えなければ、やっていられなかった。
不意に、キーボードを打つ音が止まった。
「ふぅ・・・終わりました・・・」
PANDORA中の部屋を、すべてチェックし終えたローラが、背もたれに背を預けながら言った。
「ああ、ご苦労さん」
「いいえ、前回のチェックは新さんがやってくれましたから」
ローラは軽く伸びをすると、指で軽く瞼を揉んで見せた。
「さて・・・定期メンテナンスまで、後3時間ありますね」
時計を見ながら、彼女が言う。
もう被験者はいないし、定期メンテナンスに入る直前だから被験者の追加もないだろう。
だからといって、PANDORAの監視をサボっていいというわけではないのだが、彼女は続けた。
「ところで、新さん・・・その・・・少し、相手をして下さいませんか?」
相手。この場合の相手の意味は、そこまで考えずとも分かった。
だが、勤務時間中は私室に帰るのは、禁止されているはず。
それにいつもは僕の勤務が終わった後で、僕の私室で待ち構えているローラに襲われるのが普通だった。
「なんで?別に定期メンテナンスに入ってからでもいいじゃない」
ほんの数時間前まで、彼女の姉のラウラと肌を重ねていたのだ。
いい加減うんざりする。
「いえ、定期メンテナンス中は、イェーナさんが新さんを借りたいとおっしゃっていたので・・・」
「・・・ラウラは、何て?」
「姉さまは、別に問題ないそうで」
「ああ、そう・・・」
同僚三人して、僕の知らぬ間に僕を貸し借りしているとは。
まるで道具のような扱いに、僕はがっくりとうなだれた。
「ああ新さん、勝手に約束したことについては謝ります・・・その代わり、いつもより頑張りますから・・・」
慌てた様子でローラは立ち上がり、僕に向けて言葉をかけてきた。
いつもより頑張る・・・?
「・・・どういうこと・・・?」
「ええ、ですからそのままの意味ですって」
ローラは、椅子に腰掛けた僕を見下ろしながら、にぃと笑みを浮かべた。
数分後、両腕と両足を、僕は拘束されていた。
両腕は僕とローラの作業着のズボンで肘掛に。
両足はローラの作業着の上着で、椅子の足に結ばれていた。
「どうです?身動きがほとんど取れないっていう気分は・・・」
作業着の上下を脱ぎ、下着姿になったローラが、僕を前に言った。
色気のない綿のブラとショーツではあったが、その白さが彼女の褐色の肌を際立たせ、一種の色気をかもし出していた。
彼女は僕の両足の間に膝をつくと、剥き出しの太ももを撫でながら続けた。
「うふふ・・・姉さまの匂いがしますね・・・どうせまた、勤務時間の直前まで一緒に寝ていたのでしょう・・・?」
「あ・・・うん・・・」
もはや日常の一部となっている、ラウラの添い寝について聞かれ、僕は誤魔化すこともできず素直に答えた。
「ああ、そんなに心配しなくてもいいんですよ、新さん・・・」
内心の不安が表に出たのか、彼女は笑みを浮かべながら言った。
「ただ、今はまだ新さんが姉さまのことを思い出せる、と言うことを確認しただけですから・・・」
彼女の言葉に、薄ら寒いものを感じてはいたが、それとは裏腹に太ももを撫でる彼女の掌が心地よかった。
「あら・・・もう臨戦態勢ですね・・・」
下着の布地を押し上げる僕の股間を目にし、ローラは言った。
彼女は太ももを撫でる手を止めると、そのまま掌を僕の下着のふくらみの上に重ねてきた。
「うふふ・・・硬くて、熱くて、脈打っているのが分かりますよ・・・」
下着越しの彼女の掌の感触と、その言葉により僕の興奮は高まっていく。
彼女は、僕の反応を楽しむかのように掌で亀頭を包み、ぐにぐにと揉んだ。
「ひうっ・・・」
「どうしたんですか新さん・・・いつもより感じていませんか・・・?」
クスクスと笑いながら、ローラはペニスを撫で続けた。
「もしかして、縛られているのが嬉しいんですか・・・?
縛られているのが嬉しいって、マゾですね。
いつも私に一方的に責められているのも、新さんがマゾだからだったんですね」
彼女の言葉が、布越しにペニスを弄る彼女の手と相まって、僕を押し上げていく。
「あら、びくんびくんって、脈打っているのが早くなりましたよ?
私になじられて、感じているんですか?
そんなに気持ちいいのなら、今度から虐めるようにしてあげましょうか・・・?」
彼女自身も興奮しているのか、ローラの頬に赤みが差し、瞳が潤みつつあった。
「新さんが勤務が終わって帰ってきたら、今日みたいに新さんを縛り上げて、床の上に転がすんです。
もちろん新さんにはシャワーも浴びさせてあげません・・・ですから、縛りあげた新さんの下着を下ろしてあげると、汗まみれのくっさいおちんちんが出てくるんですよ・・・こんなふうに」
言葉と共に、ローラは僕の下着に手を掛けて下ろし、ペニスを露出させた。
いきり立ったペニスは興奮によりゆっくりと上下し、鈴口から溢れ出した先走りが亀頭に幾筋ものてらてら光る線を描いていた。
「あらあら、ちょっと撫でて話をしていただけなのに、こんなに涎まで垂らして・・・」
「うぅ・・・」
彼女の言葉に屈辱を覚え、僕は声を漏らした。
「うふふ・・・泣いても無様なだけですよ・・・。
それより・・・もうそろそろ我慢できないんじゃないんですか・・・?」
ローラの指先が裏筋に触れ、亀頭へ向けてつつつと動かす。
微かに触れている程度の刺激だというのに、高まりきった僕の興奮は、それを幾倍にもなった快感として感じていた。
「あうぅ・・・」
「え?何ですか?ちゃんと言ってくれないと分かりませんよ」
「あ・・・ひぅっ・・・!」
亀頭を突付かれ、電流めいた快感が背骨を駆け上る。
このまま両手でペニスを掴んで、力の限り扱きたい。
だが、両腕はがっちりと固定され、動かすことさえままならない。
だから僕には、できることは一つしかなかった。
「お、お願い・・・出させて・・・」
「新さん、それが人に物を頼む態度ですか?」
「お願いです・・・出させて・・・下さい・・・」
僕の懇願に、ローラは嗜虐心に満ちた笑みを浮かべながら続けた。
「私のものになるって、約束できますか?」
「・・・え・・・?」
「私のものになって、休みのときはずっと私から虐められて喜んで、姉さまとイェーナさんのことはずっと相手にしないって、約束できますか・・・?」
手を止め、僕を見上げながら、彼女はそう言った。
見上げられているというのに、ローラの瞳はまるで、彼女から見下ろされているような錯覚をもたらした。
「約束、できますか・・・?」
いきり立ったペニスが放置され、射精したいという欲求だけが膨張していく。
欲求が思考を支配し、僕の判断を固定していく。
「・・・・・・僕は・・・・・・」
「うふふ、冗談ですよ、新さん」
答えようとした僕の言葉を、彼女は遮った。
「あんまり新さんが可愛いものだから、ついつい虐めたくなってしまいました」
いたずらっぽく微笑む彼女の瞳からは、ついさっきまで宿っていた異様な輝きは無くなっていた。
「それより新さん・・・私も我慢できなくなってきたので、一緒にしませんか・・・?」
ローラが立ち上がり、染みのできたショーツを見せる。
彼女の褐色の肌が、綿の布地に浮かび上がっていた。
そのあまりの淫靡さに、僕は一瞬応えるのを忘れていた。
「あ・・・うん・・・」
「じゃあ、新さんは座ったままでいいので・・・」
彼女がショーツを脱ぎ捨てると、両足の付け根にある彼女の女陰があらわになった。
そこはラウラのつつましい女陰とは対照的に、ペニスを欲するかのように口を開いて、涎のごとく愛液を垂らしていた。
ローラは僕の両足をまたいで立つと、ゆっくりと腰を下ろした。
開ききった柔らかな膣肉が亀頭を捉え、蠢きながらペニスを飲み込んでいった。
「うぉお・・・」
ぐにゅぐにゅと、軟体動物の群れにペニスを突きこんだかのように、ローラの膣が蠢き、ペニスに絡み付いてくる。
柔らかな肉が、ペニスを包み込んでうねっていた。
「あは・・・新さんのおちんちん、私の中でビクビク震えていますよ・・・」
僕の肩に手を置き、腰を左右に揺すりながらローラが言う。
彼女の動きにあわせ、うねる膣肉がペニスに押し付けられ、ペニスが嫐りたてられる。
その刺激に、僕の意識はあっという間に臨界を迎えた。
「うぁぁぁっ・・・!」
いきり立ったペニスが大きく脈動し、精液がほとばしる。
「ふぁ・・・ぁあ・・・!」
膣奥に熱い体液が叩きつけられる感触に、ローラは甘く切なげな声を漏らしながら両腕を僕の頭に回し、抱き寄せてきた。
控えめながらも、柔らかな彼女の褐色の乳房が、僕の顔を覆う。
「ぁああ・・・あぁ・・・!」
彼女の甘い体臭を肺いっぱいに吸い込みながら、彼女の体を抱きしめた。
興奮により熱くなり、微かに汗ばんだしなやかな肢体が腕の中にある。
その事実が、僕を更なる興奮に追いやった。
興奮により精液が迸り、彼女の腰が精液貪るようにうねる。
「あぁ・・・ああ・・・」
どれほど絶頂が続いただろうか、僕に限界が訪れ、射精の勢いが小さくなり、やがて収まった。
絶頂を経て、ペニスが少しだけ萎える。
しかし彼女の女陰は、柔らかくなったペニスを咥え込んだまま離さなかった。
「新さん・・・」
絶頂の後のけだるさの中、ローラが囁いた。
「しばらくこのまま・・・抱いていてくれませんか・・・?」
彼女の言葉に、僕はそっと腕に力を込めた。
腕の中の彼女は、先ほどとは違い、とても小さく感じられた。
交わりの余韻を楽しんだ後、僕たちは服に袖を通して、それぞれの端末に向かっていた。
「秒読みはいります・・・60・・・59・・・58・・・」
ローラの声が、監視小屋に響く。
PANDORAはある一定の時間おきに停止し、内部を清掃してから各種メンテナンスを行う。
そのメンテナンスの時間が、目前に迫っていた。
「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0・・・PANDORA、全部屋が初期位置に戻りました」
「了解、PANDORA内部の清掃を開始する」
ローラの声にあわせ、内部清掃のためキーボードに指を走らせた。
めったに打ち込まないコマンドを、マニュアルを見ながら打ち込み、リターンキーに指を添える。
「・・・・・・」
このままキーを押せば、この数百時間の間に見てきた、被験者達の痕跡は消えてしまう。
そうなれば、彼らがいた証拠は、あのキャビネットの中のファイルだけだ。
「・・・新さん」
「・・・あ、ああ・・・分かってる・・・」
指先に力を込め、リターンキーを押し、コマンドを実行する。
「それでは、これよりPANDORAは定期メンテナンスに入ります。業務の開始は24時間後、私とイェーナの担当から始まります」
ローラの事務的な報告を聞きながら、僕は立ち上がった。
たった六時間の勤務だったというのに、全身を異様な疲労が包んでいた。
清掃のせいだろう。
何度やってもなれない作業だが、文句は言えない。
「じゃあ新さん、また明日」
「ああ、また明日」
監視小屋のドアをくぐりながら挨拶を交わし、僕たちはそれぞれの部屋に入った。
「お、お帰り」
扉をくぐると、なぜかイェーナさんが僕の部屋にいた。
彼女は上から支給されるインスタント食品を二人分解凍して、僕の部屋の備え付けのテーブルに並べていた。
「・・・・・・何やってるんですか」
「聞かなかったか?今日一日、アタシはお前を独占できることになった」
「いや、それは聞きましたけど」
「なら十分だ、今日一日夫婦ごっこをする分にはな」
「夫婦ごっこ?」
「そのままの意味だ」
彼女がその豊かな乳房を揺らしながら、はっはっはっ、と笑った。
なぜ笑う。
「とりあえず、言わせてもらおう。お帰りなさい、アナタ」
「・・・・・・」
頭一つは僕より大きなイェーナさんが、そう言う様は少々クるものがあった。
「お食事になさいます?お風呂になさいます?それとも・・・」
「イェーナさん、とりあえずいつもの口調に戻って下さい」
「ん?そうか」
僕の嘆願に、彼女はすぐに応えた。
「それで風呂と飯、どっちにする?」
「じゃあ、食事で」
とりあえず、腹ごしらえをすることにした。
「はぁ、うまかったな」
「ええ、いつもよりおいしかったですね」
テーブルを挟んで、会話しながらの食事は楽しいものだ。
さすがに職場や外の話は出なかったが、上から送られる新聞や雑誌など話題はいくらでもあった。
「さて、ここはアタシが片付けておくから、新は風呂に入ってろ」
「いえ、僕がしますから、イェーナさんが先に」
彼女の言葉に、僕は立ち上がりながら応えた。
一応とはいえ上司だ、上司に食事の準備どころか後片付けまでさせるなんて。
「いや、お前は入っていてくれ」
「いいえ、そんな」
「おいおい新、今はお前がアタシの旦那様なんだぞ?
仕事帰りの旦那様に、片づけをさせるわけには行かないだろう」
イェーナさんは、軽く僕に向けてウィンクをしてきた。
その後、何度かの問答の後、僕は部屋の風呂場に押し込められた。
風呂場とは言っても、バスタブと便器を押し込んだ、小さなスペースだ。
水が飛び散らないよう、シャワーカーテンをかけてシャワーの蛇口を捻る。
たっぷり一分ほどかけて冷水がお湯と呼べる温度に達し、僕はようやくシャワーを体に浴びせ始めた。
ほどよい温度のお湯が、短時間とはいえ仕事の疲れを癒していく。
「はぁ・・・」
全身の筋肉が緩み、ため息めいた声が口から漏れ出た。
「新、湯加減はどうだ?」
「あ、結構です、イェーナさん」
別に風呂を沸かしてあったというわけではないが、彼女の言葉に僕は応えた。
「そうだ、下着持って行ってなかっただろう」
「あ・・・忘れてました」
「アタシが持って行ってやる。どこにしまってる?」
「すみません。収納の引き出しの、下から二段目です」
「えーと・・・あ、あったあった」
しばしの後、風呂場のドアが開く音がした。
「それじゃあ、ここの棚のところにおいておくからな」
「ありがとうございます」
シャワーカーテン越しの、彼女の影に向けて礼を言う。
「いや、礼には及ばんよ」
その言葉と同時に、風呂場のドアが閉じられた。
しかし、彼女の気配は残っている。
それどころか、衣擦れの音さえ届いてきた。
「あの・・・イェーナさん?」
「何だ」
いないだろう、という一抹の期待に賭けて放った呼びかけに、イェーナがシャワーカーテンを開けて応じる。
すでに彼女は下着まで脱いでおり、シャワーカーテンの隙間からその揺れる乳房が覗いた。
「何ですでに全裸なんですか!?」
「いや、風呂場だから服は脱がないとだめだろう」
「僕が入ってるんですよ!?」
「夫婦なんだから、それぐらい普通だろう・・・さあ、詰めて詰めて」
シャワーカーテンをめくりながら、彼女が狭いバスタブの中に身をねじ込んできた。
隅のほうに身を寄せてスペースを作るが、彼女の巨大かつ豊満な肉体は遠慮なく僕の体に密着してきた。
「うん、何とか入れたな」
「な、なんとかって・・・」
背中に密着する、やたら柔らかい二つの丸い球体を感じながら、僕はどうにか言葉を紡ぎ出した。
「しかし・・・これでは体が洗えないな?」
「だから、一人ずつ入ればいいだけでしょう!?」
「ああそうだ、こうすればいいんだ・・・」
首をねじると、視界にボディソープのボトルを手に取ったイェーナさんの姿が入った。
彼女は、ボトルのキャップを取ると、僕達の体の間に向けて傾けた。
「何して・・・」
「こうやって洗えばいいんだよ、新」
ボトルにキャップをして、もとあった場所に戻すと、彼女は僕の腰に両腕を回してきた。
「さあ、背中を流してやろう」
腕に力が込められ、僕達の密着具合が増す。
「ひぃ・・・!」
ぬるぬるとした、柔らかな彼女の体が僕の皮膚をくすぐる感覚に、僕は声を漏らした。
「どうした?あたしは単に背中を流してやっているだけだぞ・・・?」
僕の声に、イェーナさんは低い声で言いながら、密着させた肉体を上下に動かした。
「ひ・・・ひぅっ!」
起伏にとんだ彼女の肉体が、僕の背中や太ももに擦り付けられる。
脂肪のつき方によって、柔らかさに微妙な違いが生じており、その不規則とも言える刺激の違いが、快感を呼んだ。
そして、僕の背中に押し当てられる乳房の中心に存在する、二つの硬い突起の存在が、僕に更なる興奮をもたらした。
「い、イェーナさん・・・止め・・・ひゃっ・・・!」
「やめてくれ?もっとしてくれ、の間違いだろう・・・ほら、こんなに硬くして」
彼女は僕の股間をまさぐりながら、微かに笑みを含んだ声で言った。
ここ数時間で、ラウラとローラを立て続けに相手したというのに、僕のペニスは屹立していた。
「ん?こっちはまだ洗っていないのに、なんだかぬるぬるしているな・・・」
興奮のあまりあふれ出した先走りを指先で亀頭に塗り広げながら、イェーナさんは僕の耳元で囁いた。
「ひ・・・!」
ペニスへの刺激と、背中や太ももに触れる肉体の柔らかさ、そして耳朶を打つ彼女の吐息に、僕の意識が追い詰められていく。
意識が限界まで高まり、心臓の鼓動とペニスの脈動が一致し―
「ああそうだ。前も洗わないとな」
イェーナさんはそう言うと、ぬぢゅり、と音を立てながら僕の体を半回転させ、向かい合う形にした。
彼女の豊かな乳房の間に顔が押し込められ、肉付きのよい太ももの間にペニスが挟みこまれる。
全身をなでまわした彼女の皮膚の柔らかさと、僕のペニスを挟み込む太ももが、一気に僕を押し上げた。
「んぁああああっ!!」
顔を胸の間に埋めているせいで、くぐもった声しか出なかったが、精液の迸りは彼女の内股を散々に濡らした。
ペニスの脈動によって、彼女の太もも自体がうごめくような錯覚を覚え、その錯覚が更なる興奮を呼び込む。
「あぁ、出ちゃったか・・・」
しまった、という顔をしながら、イェーナさんが言った。
「ま、いいか・・・このまま続けるぞ」
彼女の手が僕の背中を滑り降り、僕の体を抱き寄せた。
僕の顔が更に乳房に押し付けられ、息苦しさが襲ってくる。
しかし、息苦しさは彼女が伸ばした指を、肛門に添えたことで吹き飛んだ。
「・・・ひ・・・!」
そのまま肛門に指が挿入される、と覚悟したが、彼女の指は肛門の縁をなぞったあと、蟻の門渡りへと移った。
縫い目めいた皮膚の盛り上がりを一つ一つ確かめるように、彼女の指の腹が僕のペニスに向けて這い寄ってくる。
そのくすぐったさを伴った新たな刺激が、僕に興奮をもたらした。
「ん?もう硬くなっているな・・・」
彼女の指がペニスにたどり着く頃には、そこは射精直後だというのに屹立しきっていた。
もう、今日一日で何度射精したか覚えていないが、ペニスは更に射精したくてたまらない、といった様子で細かく震えている。
「返事はいい・・・アタシも、我慢できないからな・・・」
イェーナさんは言葉と共に、僕のペニスから指を離し、不用意に刺激を与えぬよう優しく掴んできた。
そして、腰を浮かせながら女陰の中へとペニスを導いていく。
すでに汗やボディソープとは異なる液体で濡れていたそこは、僕のペニスを滑らかに受け入れた。
「はぅ・・・!」
「ん・・・」
みっちりと詰まった柔肉が、僕のペニスを包み込む。
ラウラほど強くはない締め付けと、ローラほど細かではない襞が、僕のペニスを刺激していた。
確かに、一点だけで見るなら、彼女の中はあの双子より劣っているといえた。
しかし、二人より熟れた彼女の膣は、的確に僕のペニスを責めていた。
「うぅ・・・あぁ・・・」
もぞり、もぞりと蠢動する膣壁に、僕は声を漏らしていた。
動くところはほんの一部、そしてほんの僅かな時間だが、ランダムとも言えるその予測不能な動きが、快感をもたらした。
そして、ペニス全体を揉むように、締め付けが変化している。
「はふぅ・・・く・・・」
「ふふ・・・ほら、もっと甘えていいんだぞ・・・」
イェーナさんが僕の頭の位置を直し、唇に大きく膨らんだ乳首を当ててくる。
僕は無意識のうちに、微かに色づいたそれを口に含んでいた。
得体の知れない安心感が、僕の中に広がっていく。
「あぁ・・・うん、そのまま・・・ん・・・」
乳首を口に含んだせいか、彼女の膣肉が急に大きく蠢動しだす。
僕の背中に回った彼女の両腕に力がこもり、抱擁が強いものに変わっていく。
ペニスを包む柔肉と、全身に触れる彼女の肉体、口中の乳首、そして彼女自身の存在が、僕に興奮と快感をもたらす。
「ん・・・ああ・・・いい・・・いいよ・・・」
うわごとのように、途切れ途切れの言葉を繰り返しながら、イェーナさんが腰を揺さぶった。
突然加わった大きな刺激に、僕の意識が弾けとんだ。
音さえしそうな勢いで、彼女の体内に精液が注ぎ込まれていく。
「んぁ・・・あぁ・・・!」
彼女は全身をがくがくと揺すりながら、僕をきつく抱きしめた。
鼻も彼女の乳房の中に埋没し、呼吸が完全に止まる。
しかし、彼女の柔らかな肢体を全身で味わえることを、僕はただただ悦んでいた。
僕の快感に応じて射精の勢いが増し、イェーナさんが抱擁を強くする。
やがて、射精の疲労によるものか、窒息によるものか、僕の意識は霧散していった。
目を覚ますと、ベッドの中に僕はいた。
右肩に、異様に柔らかく温かなものが触れている。
目を向けると、イェーナさんが僕を抱きしめるようにして添い寝していた。
「はぁ・・・」
時計に目を向けると、風呂に入ってから12時間経過している。
いくら風呂場でいろいろしたとは言っても、これは寝すぎだろう。
「イェーナさ・・・」
彼女を起こそうとした僕の言葉は、途中で止まった。
僕のすぐ側に寄せられた彼女の寝顔は、まるで童女のように安らかで安心しきったものだったからだ。
考えてみれば、彼女はここPANDORAを、僕より遥かに長く監視し、多くの被験者の死を見てきたのだろう。
そして、監視小屋の責任者としての立場は、彼女に大きな重圧を与え続けていたに違いない。
見たくないものを見続け、誰からも頼りにされている立場。
そんな彼女にも、何もかもから解放される、急速が必要なはずだ。
「ん・・・」
眠ったままのイェーナさんが、僕を抱き寄せてきた。
(ま、まだ時間はかなりあるしね・・・)
彼女を起こすのは後にしよう、と考えながら、僕は彼女の成すがまま、まるでぬいぐるみか何かのようにイェーナさんの両腕の中に納まった。
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