魔法少女淫魔ミーティ第一話その三




部室から逃げ出した俺は、廊下を猛烈な勢いで走った!角でごちん、っつーありがちフラグシチュを相手を突き飛ばしつつ回避。後で正気に戻ってから謝ろう。それがいい。

「――!――!?」

後ろの方で何やら騒いでいるが、正直気にしたらそこでゲームセットだ。悪いが無視させてもらう……ぜ?



「某!?某じゃねぇか!?」



流石の俺でも、前方数メートルのところで俯せにぶっ倒れている奴を見逃すことは出来なかった。某権米。異常にインパクトのある人物だ。――本当に異常に。

身長155cm、体重45kg、そして童顔で線の細い外見に似合わず、結構話し方が堅苦しいっつか、妙な男だ。

そして極めつけが――。

「うう……流石にコルセットは男には地獄だな……」

何を思って学舎にてそんな格好をしているのか知らんがこの男、女装癖があるらしく、こんな感じで大学にも時たま女物の服を着て来る。それで話し方や声のトーンまで変えるなら良いんだが、俺の前では絶対変えやがらねぇ。当人に聞いたが、「別にバレているなら特に声を変えずとも問題はないだろう」だそうで。ったく。

「………で、今日は何故にウェディングドレス?」

機動性とかその辺りを小一時間ほど問い詰めてやりたいんだが。

「美意識の前では機動性など無意味だ。足の速さなど只の飾りなのだよ解堂。偉い人にはそれが分からんのだよ」

「取り敢ーえず俺に突っ込みをさせる余裕のある返答をしてくれ。突っ込みどころ多すぎるぞ」

まずお前読心術使えたのか。ついでその台詞はガンダムだよな?さらに言うなら美意識を日常の学校の場で求めるなよ。

「まぁ冗談だとして」

「お前の冗談は笑えねぇ」

ついでに冗談でもねぇだろ。今着ているその服は何だ。

そんな俺の疑問を軽くスルーライフしながら、奴は立ち上がり、服についた埃をパンパンと払った。

「何だ立てたのかよ」

「ウェディングドレスの裾が靴に引っ掛かって転んだだけだからな」

んな動きづらいなら着るなよ。

そう突っ込みを入れたいが、紛うこと無き天丼だからな。突っ込んだら永遠に話が進みやしねぇ。

「あぁそうかぃ。で、お前は無事だったのか?」

この環境下でんな動きづらい格好をしてたら十中十は狙われるだろうしな。ましてや相手はサキュバスだ。「こ〜〇〜た〜く〜んっ!」とか叫びながら「お持ち帰り〜ぃっ!」とタキシード姿で逆お姫さま抱っこしかねねぇ。

……っつか、無事じゃなかったら遭わねぇよなんな所で……。

「多分無事じゃないよ」

「そうだよな無事じゃねぇよなあの環境下で逃げ切れるんだから……」



「!?」



ちょま、今、こいつ何つったか?

無事じゃない?しかも多分?

「お、お前……?」

微妙に顔をひきつらせた俺に、この男はしゃあしゃあと言ってのけた。

「学舎でこんな格好をする男の頭が無事だと思う?」

「………」

表情の引き攣り損かい。確かにそういう意味じゃ無事じゃねぇが……。

「……お前、意識してたのかよ……」

「まぁ……ね」

間違った意味の確信犯ほど、ある意味手に負えねぇ物はねぇよ。全く。

「……てか、多分って何だよ」

「自分が無事かどうか、なんて誰にも分からないことじゃない?」

確かに。いや、確かにそうなんだが。このタイミングでお前、焦らすような発言するか!?普通。

「全く……お前にまともな答弁を期待した俺が馬鹿だったよ……」

「はははっ……」

ため息混じりの文句を笑顔で返すなよ。しかも何でそんな爽やかな笑顔なんだよ。あぁこいつが男でなけりゃ見方が変わるんだろうが、てか普通に化粧して女に間違われるってどんなレベルの女装だ?いや……むしろこいつの低身長+童顔+細目の体っつー下地のせいか?どっちにしろこいつは生まれるべき性別を間違えたとしか思えねぇ。

「……ったく。つか、お前も早いとここの学校から出た方が良いぞ?襲われたら終わりだからな」

心底疲れはてた声でそう吐き捨てると、俺はとっとと立ち去ることにした。こいつを相手してたら、ぜってー精神的に持たねぇ。間違いない。

この手の友人は、貴重ではあるが相手から誤解されるからぁ……気を付けろ。

――まぁ今は消えた芸人の真似はいいか。取り敢えずこの場は立ち去らねぇとっ……な?



ゲッタウェイ願望全開の俺の手首を、純白の手袋がしんなりと握りしめている。そのさらさらとした肌触りが、使われている原材料の高級さを物語っている。ついでに、普段こいつがこう言ったコスプレ衣装をどこに預けているかがよく分かる。

うっすらと、手袋の裏側に、タグ。

「……近所のクリーニング屋使ってたのな」

「……////」

「赤面するならタグを外してくれ。つーか手を離してくれ」

なぜ握りしめられてんのか俺は分かんねぇぞ?

だが俺の言葉にも某は全く反応しようとせず、ただ握りしめていただけだった。その間も、この男はずっと赤面したまま俯いていて――!?



「……ごめん、解堂。それは出来ない」



が  し  っ

「……なっ!?」

何故に抱きつく!?しかもごめんって、出来ないってどういう事だ――っ!?

ふにょん

「――〜〜っ!」

や……柔らかいっ!奴の腕が、ドレス越しに感じる肌の感触が妙に柔らかいっ!しかもどこか甘くて良い香りがする……っ!

「だぁぁぁぁぁぁぁっ!」

咄嗟に後ろからの拘束を解いて、俺は奴と距離を置いた。ヤバイ……今でも腰が抜け落ちそうだぜ……。あのまま掴まれていたらヤバかった……。まるで力を根っこから吸われたみてぇだ……。

「……酷いや解堂……でもそれが君の愛なんだよね……」

「お前といつの間に愛を育んだよ!

しかもそれは完全に病んでる系の台詞だ!

ってかこの異様なふいんき(ry、すぐにでも股間のマイサンが勃っちまいそうなこのふいんき(ry、ま、まさか……。

「つーか某……、まさか、お前も……?」

最期まで言わずとも、何が言いたいのか分かったらしい。某は無言で、ドレスの中に下から手を突っ込んで、何やらモゾモゾと動かし出した。

「んっ……脱ぎづらいな……」

なら着るなよ、普段の俺なら突っ込んだだろう。そして見事に天丼完成。だが――言い返せる状況じゃねぇ。

はらり……というよりぴちゃ、という表現がぴったりな様子で、奴のパンティ(女物)が地面に落ちた。明らかに何かで濡れている。てかこいつ下着まで女物だったのかよ……。

「……解堂、君がいけないんだよ。君があんなに、男らしいことを僕に言うから……」



いや意味わかんねぇし!

じり……じりと後退していく俺。だが、振り向いてダッシュする事がどうしても出来なかった。こいつの目に……魅入られちまったかのように、こいつから目を逸らせなかった。

どこか聞き覚えのあるギターのイントロが脳内に流れる。突然に、本当に突然に始まったよ。ラブストーリーが?……俺にそんな趣味はねぇっ!相手は男だっ!

「……僕……いや私……淫魔に傷物にされちゃったんだよね……」

瞳を潤ませ、淫魔補正で可愛さが上がった顔に悲しげな笑みを浮かべて俺に近づいてくる某。その頬は既に紅潮していた。段々キーに高みを増していく声で強烈なカミングアウトをぶちかましながら、その両腕は、ウェディングドレスを脱ぐ準備に掛かっている。

「お……おい……」

「知ってる……?解堂、君以外の男子生徒は、この学校にもう居ないって話……」

「……なん……だと?」

まさかの二連続衝撃発言さらに硬直した俺の目の前で、はらり、と音を立ててがウェディングドレスが落ちる。純白の衣の下に、こいつが纏っていたのは――!



「……みんな淫魔に犯されて、サキュバスにされちゃったんだよ……」



「あ……お……お前……」

全身の肉体を強調する、革製のボンテージ・ファッション。但しその背中からは一対の蝙蝠状の羽が、そしてお尻からは、先端が鏃状になった尻尾が生えて、地面でのたうっていた。だがこの際それすら問題にならないような事態がこいつには発生していた!



「……ど、どうしたんだよ、その股間……!」



flat、平面、二次元。

布地を表現するとそんな感じであった。いや――正確に表現するならば、筋のような谷間が一つ出来ていて、そこがじわじわとシミを作っていた。

明らかに、男の逸物らしきものは異次元の彼方へと取り去られたらしい。

「あぁ……これ?」

某は俺の逸物を指差して告げる。俺は凍り付いたように頷いた。某は思わず男ならドキッとしてしまうような微笑みを浮かべながら、その柔らかな唇を動かした。

「これはね……縮んじゃったの。サキュバスにイカされて精をびゅくびゅくと出すと、少しずつ小さくなっていってね……体の中に収まっていくの。そうして……完全に埋まっちゃうと……ほらっ☆」

某が紐パンツの紐を一気にほどくと、隠されたものが露になる。明らかに、女のクレバス。筋。男のそれを剣に例えると鞘。凹。表現は様々にあるが、この際どうでもいい!問題なのは――。

――某、そいつの性別が完全に女になっちまってる事だッ!

「まーんっ☆」

大胆に股を開き開けっ広げに出来立てのお〇んこを俺に見せつける某。今時痴女でも赤面して言わねぇだろう言動をこいつは……露出狂かよ。しかも語尾に☆付きと来た。完全に淫魔と化したっぽい。

どうする……今までと同じようにゲッタウェイするにもこいつの場合難しいぞ?何せ俺の行動をわりと知ってやがるからなぁ……。

トイレからの抜け道。

窓の格子が実は外せること。

実は四階からでも無事に外に出られること。

正規の避難経路が実は一番長いこと……。

この辺りから逃げることも予想しているだろうしな。

「………」

脳内ライフカード!俺に力を!



【需要アリ】



「何のだよ!」

はっ!つい口に出して突っ込んでしまった。……まぁいい。ただ精神的に安定しねぇ奴だと思われる分にはまだ大丈夫だ。こいつの場合は、もっと斜め上に行くからな……。

「解堂きゅん……キミもボクみたいに……心と体が分かれた人なんだね……☆」

「謝れ!全国の性同一性障害で真剣に悩んでいる人達に謝れ!」

お前の場合ただ服だけだろうが!しかも同族にされんのはなんか納得がいかねぇ!ついでに元男のお前がきゅん言うな気持ち悪いわ!

「でも大丈夫だよ解堂……★僕と一緒になれば、めくるめく快楽と百合の日々に」

「だ    が    断    る    !」

こいつ――俺をサキュバス化させる気かよ!つーかその前に同性趣味だったのかよこの男!

「だって、解堂……完全にボクの趣味だから☆」

「俺を趣味言いやがった!それを言うなら嗜好じゃねぇのかよ!」

「趣旨が伝われば言葉は何を使っても良いってキミの死んだおじさんが言ってたヨ★」



「親父を勝手に殺すな!冗談にしても質悪いわ!」

ほぼ俺が一方的に音信不通だがまだ生きてる!まだ生きてるんだよ!家は電気屋じゃないけど!っつかさすがに死んだら葬式に俺を呼ぶだろうが!

「ん〜じゃあお祖父さん☆」

「変えても一緒だ!」

あのダイヤモンド並みの堅物の親父が反面教師にした、焼きなました鉄並みにちゃらんぽらんなジジイ……事ある毎にナオンをギロッポンやザギンで引っ掛けやがって……起こしに行くのは俺の役目だったが……生きた心地がしなかったぞ?シースーの請求書が数日後に我が家に届くからな。

ま、そんな糞ジジイだからこそ堂々のうのうと生きてやがるしな……じゃねぇっ!

「兎に角嫌だぁぁぁぁっ!」

俺はどうにかしてあいつから目を逸らす方法を見つけようとした。でなきゃ逃げられねぇ!バック走がそこまで速いわけじゃねぇから絶対この男……?に追い付かれる!

ダッシュしてタックルするにも、この距離じゃさして威力がねぇ!どうする……どうする……?



「どうして逃げるのぉ……★」

何気にB〜Cはある胸にはっきりとした谷間を形成させながら、体にしなを作り俺に近付いてくる某。時おり舌を出してチロチロとさせる辺りが妙に本格的だ。

しかも進みながら窓を閉めてやがる。つまり、長期戦になればあの桃色の空気をずっと吸う羽目になるわけで……。

万事休す?ジャンプだそ〜れ、スピンアタ〜ック?玉ねぎ師匠とお別れよ?

「あぁもぅ黙れ俺の脳!」

雑念多すぎだ!!!作者そろそろ自重してこい!!!!!!!!

あぁくそっ……端っこまであとどんくらいだ……?逃げられねぇのは嫌だぞ……?

ん?待てよ?端っこ?



――いっちょ賭けてみっか。



「あはっ★解堂きゅんのおちんぽ、私のおまんこをめざしてるぅ〜☆」

作者自身時たま忘れているようだが、俺は今下半身に何も身に付けていねぇ状況だ。当然マイサンがどんな状況なのか相手には丸分かりな訳で。――気にしたら敗けだ。気にしたら敗けなんだ。

「あははっ☆解堂きゅん……逃げ回らないで、ボクと一つになろうよぉ……★」

甘い声が、俺の脳をとろかす。思わず身を委ねたくなる衝動に駆られる……が、強引に気力でねじ伏せ、ひたすら下がる。端っこまであとどんだけだ……。

「このままだと、あと十歩くらいで端っこだよぉ……★追い詰めちゃったら、嫌々犯されることになっちゃうよぉ……☆」

犯されるって時点で嫌々じゃねぇのかよ!言動矛盾も甚だしいわ!と、そうこうしているうちに、こつん、と踵が壁に触れる。ようやく端っこに着いたらしい。

「チェックメイト……だね☆解堂……★」

勝利を確信した某が、俺の方にゆっくりと足を進める。桃色の吐息を吐き出しつつ、股間の標準を俺の股に合わせて……。

「さぁ、これでキミとボクの――」

奴が口づけを交わすために目を閉じる――その一瞬!



「ま゛っ!」

「薔薇と百合の背徳のヴェーセ゛ェふっ!」



足は手の三倍強い……単純な理屈だ。二足歩行する人間の体重を全て支えるのは足……俺はそれを背後の壁にハンマーのように打ち付けて、強烈なラリアットを奴の喉仏近くにかました。そのまま内藤ホライゾンの如く腕を広げ走り去る!

「……えほっ……えほっ……」

背後で蒸せかえる声……どうやら相当ツボに入ったらしい。なら――、

「復活する前に、とっとと逃げるべし!」

股間が揺れる違和感も何のその、俺は明日に向かって走る!

俺の人生はまだ始まったばかりだぜ!



☆★☆★らんらんる〜★☆★☆



「あややややや〜、失敗か〜☆」

すごく…残念だよ…☆★☆

しかもお兄ちゃん、打ちきりっぽく強引に終わらせようとしてるし……☆★☆★



……んふふっ★

でも……まだだよ……まだ終わらないよ〜☆



「さぁ……グランドフィナーレまで、あと少しだよっ☆」



☆★☆★Go to the Next Stage!!★☆★☆






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