PANDORA


『エリに飛び掛り、押さえ込め』

 

おそらく、竜彦はそう言っているのだろう。

一瞬でもいいから隙を作れば、とどめは竜彦がさす。

みると、竜彦は膝を屈めて全身のバネを縮ませ、飛び掛る用意をしていた。

 

「それでね、最初どっちに見せてあげようか迷ってたんだけどね・・・」

「うぉぉおおおおっ!!」

 

エリの言葉を断ち切り、気をひきつけるべく大声を上げる。

同時に全力で床を蹴り、エリに向かって飛び掛っていった。

数メートルの距離を詰め、彼女の胴にタックルを仕掛ける。

 

「おっ!?」

 

僕の突撃に、エリは一瞬姿勢を崩したたらを踏んだ。

そして、倒れることもなく踏み止まる。

 

「・・・あたしを落としてくれた新から、って言うつもりだったけど、そっちから来てくれたのね」

 

僕の背中に手を置き、優しく撫でながらエリは続けた。

 

「ホント、新が来てくれて助かったわ・・・ほら竜彦、新を捕まえちゃった」

 

作業着の布地越しに、エリは指を腰から首筋へと背骨に沿って這わせた。

つつつ、と背筋を撫で上げられる感触に全身が痺れ、鼻腔から入ってくる彼女の甘い香りに意識に霞がかかり、力が抜ける。

エリは崩れ落ちそうになった僕を抱えると、竜彦に向けて口を開いた。

 

「竜彦、早くしないと・・・二人だけで始めちゃうわよ?」

「ちっ・・・!」

 

竜彦が短く舌を打ち、床を蹴る。

右に左に、エリを撹乱するべく鋭いステップを踏みながら、彼は距離を詰めていく。

そして、エリを彼自身の射程距離に収めるや否や、

 

「・・・ふっ・・・!」

 

短い吐息と共に、エリに向けて鋭い貫手を放った。

揃えられた竜彦の指が、エリの僕を抱える腕に向けて一直線に進む。

だが―

 

「うふふ・・・遅いわよ竜彦」

 

言葉と共にエリは半身ずらし、抜き手は彼女の腕を浅く傷つけるに止まった。

 

「っ!?」

 

自身の技がかわされたことに、竜彦の反応が一瞬遅れる。

エリは少しだけ姿勢を屈ませると、足裏を竜彦の腹に向けて、勢いよく突き出した。

蹴りをもろに受け、竜彦の体が吹き飛び、向こうの壁に叩きつけられる。

 

ごしゃぁっ

 

鈍い、何かがつぶれる音が部屋の中に響き渡り、背を壁に預け顔をうつむかせるようにして竜彦の動きが止まる。

 

「あーあ、力入れすぎちゃった・・・」

 

小さくて足を痙攣させる竜彦に目を向けながら、エリは残念そうに口を開いた。

うつむいた竜彦の顔の辺りから何かが垂れ落ち、床や彼のズボンに赤黒い染みを作る。

そして他にも漏れ出す場所があるのだろうか、崩れ落ちた竜彦の体の周りに赤黒い液体が染み出していた。

部屋に、磯と鉄を思わせる香りが広がった。

 

「・・・」

 

意識にかかっていた霞が僅かに晴れ、竜彦の身に何が起こったのかを理解した。

竜彦は、竜彦はもう・・・

 

「せっかく三人で楽しもうと思ってたのに・・・死んじゃった」

「あ、ああ・・・」

 

エリの決定的な一言に、僕の思考にひびが入る。

一瞬のうちに、竜彦との行動が脳裏に浮かび上がり、押し流されていく。

そして、つい先ほどのアイコンタクト。あれは、『俺が押さえ込む』という意味ではなかったのだろうか。

 

「あああ・・・!!」

 

沸き起こった後悔に、僕は声を漏らしていた。

 

「はぁ、もううるさいわね・・・」

「あああああっ・・・んぶっ!?」

 

不意に、声を上げる僕の口の中へ彼女の尻尾が突き込まれた。

エナメル質の光沢ある外見とは裏腹に、尻尾は意外と柔らかく、先端には小さな穴が開いていた。

その穴が大きく広がり、僕の舌を飲み込んだ。

 

「ん!?んんっ!」

 

舌を押さえ込まれたせいで、上げた声は不明瞭なうめきにしかならない。

やがて、尻尾の穴の内側から異様に甘い液体が分泌され始めた。

蜂蜜にも似た粘度の高いそれは、舌の隅々に染み渡り、その濃厚な甘みを僕の意識に浸透させていく。

 

「ちょっと大人しくしててね・・・」

 

彼女の甘い体臭が一層強くなり、僕の意識が再び曇っていく。

エリは尻尾を僕に咥えさせたまま、僕の体を床の上に横たえた。

 

「これでよし・・・と」

 

そう呟くと、彼女は僕の上半身をまたいで床に膝をつき、僕の顔に尻を近づけながら作業着のズボンに手をかけた。

一気に下着ごとズボンが引き摺り下ろされ、ペニスが露出する。

 

「あは、もうこんなになってる」

 

彼女の香りと尻尾の穴、そして舌を犯す甘い液体のせいだろう、僕のペニスは痛いほどに屹立し、小さく脈を打っていた。

 

「うふふ、いただきまーす」

 

エリはそう言うと、僕の股間に向けて上体を倒していった。

そして次の瞬間、ペニスが生温かい肉に包まれた。

 

「ん・・・ん・・・」

 

エリのくぐもった声にあわせ、舌が蠢きペニスに絡みつく。

舌先がペニスの表面に浮かんだ血管をなぞったかと思えば、その滑らかな舌の表面が亀頭に覆いかぶさり波打つ。

それだけで僕のペニスは更に熱く、硬くなり、先端から先走りを滴らせた。

 

「んん・・・ん・・・」

 

僕の興奮の高まりを察知したのか、エリは頭を上下に動かし始めた。

きつく竿を締め付ける唇が、上下運動によりペニスを扱く。

口内では、舌が変わらずペニスに絡みつき、上下運動も加わることで更なるうねりを生じさせ、強い快感を僕に与えていた。

 

「んぐっ、んんん〜っ!」

 

絶頂が一瞬にして訪れ、腰が痙攣し、精液を彼女の口腔に放つ。

エリは頭の動きを止め、口内に注がれる精液を一滴残らず受け止めた。

 

「んんっ、んっ・・・んん・・・」

 

やがて絶頂が収まり、射精が止まる。

彼女は僅かに萎えたペニスを、強く唇で締め上げると、ゆっくりと頭を離し始めた。

尿道に残る精液が搾り出されていく。

そして最後に、キスでもするかのように鈴口を吸ってから、エリはようやくペニスから口を離した。

 

「れへへー、いへ、あはら」

 

エリが上半身をんねじり、僕に向けて口を開いて見せた。

彼女の口内には、白く濁った粘液がたっぷり入っており、今にも前歯から溢れてしまいそうであった。

一度口を閉じ、ゆっくりと味わうように口中で転がした後、エリは僕の精液を嚥下した。

 

「はあ、すっごい濃い味・・・」

 

僕の口から尻尾を引き抜きながら、エリは感想を漏らした。

ようやく舌が開放され、僕は荒く息をつく。

舌に纏わりつく彼女の体液は、舌に染み付いたように味が消えなかった。

エリは一度腰を上げると、身を半回転させて僕を見下ろすような姿勢で、僕の腹に跨り直した。

 

「じゃあ新・・・今度はこっちで・・・ね?」

 

エリが尻尾を掲げ、その先端の穴を広げて見せた。

つい先ほどまで舌を包んでいたそこは、鮮やかな赤い色をしており、呼吸するようにゆっくりと波打っていた。

粘液を滲ませ、てらてらと光を反射する彼女の尻尾の内側の感触は、未だに僕の舌に残っている。

彼女の言葉からすると、次はあの穴にペニスを挿入するらしい。

そこまで思考が及んだとき、全身を疲労が包み込んでいるにも拘らず、僕のペニスは再び勃起した。

 

「あは、また元気になったね・・・それじゃあ・・・」

 

いただきます、と続け尻尾の先端が彼女の背中に隠れる。

そしてペニスの先端から根元までが、一息に包み込まれる。

 

「うわぁっ、あぁぁぁぁぁっ!!」

 

粘液を滴らせた襞が、ペニスに密着して蠢く感触に、僕は悲鳴を上げていた。

尻尾内部の襞は、ペニスの先端から根元まで、血管の微妙な凹凸やカリ首、裏筋まで完璧に包み込み、一部の好きもなく密着していた。

粘膜一枚隔てた彼女の血管が、彼女の鼓動に合わせて脈打ち、穏やかな海面のように襞が波打つ。

尻尾による責めは、むしろ穏やかといっていいほどだった。

だが、その異様なまでの密着度と彼女の体温が、僕の興奮を高め、鼓動を加速させていく。

 

「あぁぁぁぁっ、あぁぁぁぁっ!!」

「うふふ、入れただけなのに悲鳴上げちゃって・・・うりうり」

 

言葉と共に、尻尾がぐりぐりと錐揉み状に、左右に回転する。

密着した襞がペニスの表面を擦り上げ、僕を高めていく。

 

「うぁぁぁっ、ひ、ひぃぃぃぃぃっ!!」

 

蠢く肉襞と、回転の動きによって嫐られきったペニスが、快感の悲鳴を上げる。

やがて、脈打つように数度大きく痙攣すると、ペニスは勢いよく精液を吐き出し始めた。

 

「うぁひぃぃぃいぃぃぃっ!!」

「きゃぁ!ちょっと、新!暴れないでぇ!」

 

腰が跳ね上がり、幾度もエリの体を突き上げて、数瞬の間宙に浮かせた。

エリの制止の声が耳に入る。

だが尻尾がペニスを搾り、精液を吸うように蠕動するせいで更なる快感が生まれ、絶頂に押し留められる。

 

「あぁぁぁっ!あぁっ、あぁぁぁぁっ!!」

 

延々と続く快感に、脳が灼け意識がスパークする。

このままでは、確実に狂う・・・!

と、その時、部屋が大きく揺れた。

 

「わ!うわ!きゃぁ!!」

 

快感に溶け崩れていく思考が、発狂への恐怖を感じ始めた直後、

急な振動にエリがバランスを崩し、跳ねる僕の胴の上から転げ落ちた。

その勢いで尻尾がペニスから引き抜け、カリ首が勢いよく尻尾内部の粘膜によって擦り上げられた。

 

「あがぁぁっ!?」

 

突然の強い刺激に、ペニスからより一層勢いと量を増した精液が噴出する。

尻尾の中の精液と、ペニスから噴き出る精液が辺りに撒き散らされ、生臭い臭いが部屋中に立ち込めた。

 

「もぉ・・・何・・・?」

 

頭を打ったのだろうか。

後頭部に手をやりながら、エリが起き上がった。

おそらくさっきの振動は、部屋の位置が移動したために発生したものだ。

だとすれば、エリが入ってきた扉の向こう側に、外へと繋がる桟橋の部屋が存在するはず。

 

「はぁはぁはぁ・・・」

 

一際強い射精を経て、ようやく終わった連続絶頂の余韻に身を浸したまま、僕は意識のどこかでそう思い浮かべていた。

 

「・・・まあ、いいわ・・・続きをしよ、新・・・」

 

裾を千切った作業着のズボンを脱ぎ、エリはクロッチがぐっしょりと湿った下着を晒して見せた。

続けて下着も脱ぎ捨てると、彼女は僕の胴をまたいで再び腹の上に屈み込んだ。

口を開き、涎でも滴らせるように愛液を溢れさせる彼女の秘部が、僕の視線の先にあった。

彼女の女陰の内部は、尻尾の内部と同じような鮮やかな赤い色で、光を照り返す愛液がとても扇情的だ。

 

「ほら、新・・・見て・・・」

 

言葉と共にエリは自身の性器に指を埋め、左右に広げてみせる。

愛液の糸を引きながら、密着していた粘膜が離れ、肉洞が空気に曝される。

エリの内部には、ゆでた素麺ほどの細かな触手が、無数に生えていた。

触手たちは愛液にたっぷりとまみれ、一糸乱れぬ動きで規則正しく波打っていた。

女性器の入り口から奥へ奥へと、何かを誘うように。

 

「今からここに、新の入れるんだよ・・・」

 

自身の性器を広げ、奥まで他人に見せるという行為に興奮しているのだろうか。

妙に熱ををびた様子で、エリがそう言った。

しかし連続射精のせいか、その表面はひりひりと痛み、睾丸や下腹にも鈍痛がある。

もう限界だ。

 

「も・・・もう、だめ・・・」

「何言ってるの・・・そんなにガチガチにしてるのに・・・」

 

エリの言うとおり、うねる触手を生やした彼女の生殖器と、放たれる甘い芳香に、いつの間にかペニスが勃起していた。

 

「ほら・・・入れるよ・・・」

 

指を性器から引き抜くと、エリは僕のペニスを掴んで角度を調整しながら、ゆっくりと腰を落とし始めた。

連続した摩擦と興奮によって、赤黒く腫れ上がった亀頭に、ゆるく開いたエリの入り口が触れる。

すると彼女は、一気に腰を落とした。

ペニスが一気に飲み込まれ、柔らかな触手が亀頭に絡みついてくる。

 

「あっがぁぁぁぁっ!?」

 

柔軟に蠢く触手と濃厚な彼女の愛液、そして適度な締め付けが織り成す甘い快感と、酷使されたペニスが上げる苦痛の悲鳴が、一度に僕の意識に叩き込まれた。

ねっとりとした粘液を塗りこめるように、触手一本一本がペニスに己の身を擦り付け、快感をもたらす。

幾度も擦れて、擦り剥け寸前の弱った皮膚と粘膜が、その刺激に痛みを生み出す。

 

「ぃぃぃいいいいっ、ぎぃぃぃぃぃいいいいっ!!」

 

痛みと快楽、相反する全く二つの感覚が、ごちゃ混ぜになりながら、ペニスを通じて僕の意識に注ぎ込まれる。

気持ちいいのに痛い。

痛い上に気持ちいい。

気持ちいいから痛い。

痛いのが気持ちいい。

彼女の肉洞の奥に生えている触手の幾本かが、先走りを垂れ流す鈴口から尿道の奥深くまで入り込んでくる。

液体しか通じたことのない穴を、細いとはいえ何本もの物体が入り込む感覚に、腰が痺れていく。

ねっとりとした濃密なエリの愛液が、不意にさらさらとしたものに変わる。

同時に、ペニスの一部分に焼けるような熱を感じ、ペニスが大きく脈打つ。

痛いからだろうか?心地よいからだろうか?

もはや、快感と苦痛の境目は溶解し、ペニスに与えられる刺激全てが、僕に悦びをもたらしていた。

そして、喜びは興奮に繋がり、僕を持ち上げ、追い詰め、絶頂に達させた。

 

「あぁぁぁっ!あがぁぁぁぁっ!」

 

エリの腰をがっしりと掴み、獣のうなり声めいた声を上げながら、精液が尿道を駆け上る。

尿道の中にいた触手さえも押し流しながら、白濁した体液がエリの体内に迸った。

 

「ああああっ、熱い・・・新ぁ・・・!」

 

注ぎ込まれる精液にエリの体内が震え、飲み干すように蠕動を始めた。

細かな触手一本一本さえもが、ペニスをくすぐり刺激し、一秒でも長く絶頂を維持し、一滴でも多くの精液を搾り取ろうとするかのように蠢いていた。

 

「がぁぁぁぁ!がぁぁぁっ!」

 

咆哮を上げながら、僕は頭をかきむしり、精液を放ち続けた。

亀頭に吸盤状の何かが取り付き、射精を催促するかのように吸い付く。

いや、僕の放つ精液を啜っているだけだろうか?

 

「うわぁ、すごい・・・飲みきれない・・・!」

 

エリの膣とペニスの隙間から、愛液と精液混じりの粘液が勢いよく噴出し始めた。

全く、欲しいから注いでやっているのに、勿体ない。

いや、僕が注がせてください、と頼んだんだっけ?

連続射精と、快感と苦痛の混濁、そしてエリの姿と香りと言葉と味と肌。

そういった様々な要因により、もはや僕の意識はずるずるに腐敗し崩落し砕け散り、射精し続けることしか頭になかった。

 

が ちゃん

 

部屋全体が、二度目の衝撃に揺れる。

続けて、僕の背中にどこからか流れてきた、妙に鉄臭い液体が触れた。

何かを忘れてしまったような気がするが、もうなんでもいい。

 

「うがぁぁぁっ!がぁぁぁぁっ!」

「ひゃ・・・すご・・・ああ、奥にぃ!」

 

獣のように咆哮しながら射精する僕と、僕に馬乗りになり精液を搾り取るエリ。

このままここで、僕の命が尽きるまでエリに搾られ、エリに注ぎ込み続けることができれば、もはや何もいらなかった。

遠くから、まるで電車が走っていくような音がしていた。

 

 

 

 

 

<ERI END>

 



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