ジン・ジェインの要求




「こぉぉぉぉぉ」

突如として、僕の脳髄が全力で回転を始め、アイデアを導き出す。

このピンチを打開する、起死回生のアイデアを。

「これだぁっ!」

そう言いながら、とっさに砂浜を転げ、覆いかぶさってきた手のひらをよける。

「ジェイン!聞け!一つ僕とゲームをしよう!」

続けて振り下ろされようとしていた手のひらが止まる。

「ほう、どんなゲームだ?」

「実に簡単なことだ、僕と追いかけっこをするんだ」

手を退け、興味深げに屈んできたジェインに、説明を続ける。

「僕を捕まえることが出来れば、君はそのまま僕をぱくり。仮に僕が君を転ばせることが出来れば、僕の言うことを三つだけ聞いてくれ!」

「ふん、何でそんな下らん遊びに付き合わねばならぬのだ?」

「君だってランプに閉じ込められたときは、出ようとあがいてみたんだろう?だったら僕にだって、あがく権利はあるはずだ!」

思い当たる節があるのか、しばしの間無言で考えるジェイン。

「・・・よし、そのゲーム、乗ったぞ」

確実に自分が勝てるという算段をつけたのか、にやりと笑みを浮かべながら彼女は立ち上がった。

「オレが十数える間、好きなように逃げるといい。ただし、この島から出たりするなよ?」

「ああ、分かってる。それじゃあ始めるよ」

「いいぞ・・・ひとーつぅ」

ジェインが大きな声で数を数え始める。

僕はすぐさま駆け出した。

「ふたーつぅ」

砂浜から、島の中央へ、密林の中へと駆け込む。

「みぃっつぅ、よぉっつぅ」

木々の間を必死に駆け、あの場所を目指す。

「いつーつぅ、むーっつぅ、ななぁーつぅ」

心なしか、彼女のカウントが加速したかのように感じる。

必死に両足を動かし、少しでも距離を稼げるようにする。

「やぁーっつぅ、ここのぉーつぅ」

そして、時間が訪れる。

「とぉ!さあ、追いかけるぞ!」

島を揺るがすような足音が響き、次第に迫ってくる。

「言っておくが、オレを森の中に誘い込んで転ばそうという考えはやめておくといい」

おそらく海岸沿いに僕を探すつもりなのだろう。彼女の声が耳に届く。

「それに、オレからはお前がどこにいるかよく見えるぞ。おとなしく捕まれ」

木々を通して、あたりを揺るがすような足音が響く。

張り出した枝をくぐり、突き出た根を飛び越え、僕は不意に海岸のほうへ進路を変えた。

「どうした?観念したか?」

かすかな戸惑いの混じった声が耳に届く。

と、木々の間を抜け、岩場の海岸に僕は飛び出した。

顔を右手に向けると、意外と離れたところにジェインの姿があった。

「・・・降参するつもりらしいな」

僕が足を止めたことに、つまらなさそうな気配を滲ませつつ、ジェインの足の速度が落ちる。

そして一歩一歩、なるべく大きな岩に足を乗せるようにして彼女が僕の側まで歩み寄り、広い大きな岩を足場に止まった。

「ふん、意外とつまらなかったな・・・。では、おとなしく喰われろ」

そう言いながら、彼女が手を伸ばす。

手のひらの落とす影が僕を覆い、もう少しで指が触れるというその時、僕は駆け出した。

彼女のほうに向かって。

「何!?」

驚きの声を上げる彼女を尻目に、僕は彼女の手のひらから抜けると、彼女の踏みしめる岩によじ登った。

そして、彼女の右足に手を当て、全力で押す。

「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおお・・・!」

岩がただ濡れているだけならば、何も起こらなかったろう。

彼女がただ立っているだけならば、何も起こらなかったろう。

ただ、岩の上には濡れた海草が干してあった。

ただ、彼女は前かがみになり、重心がだいぶ前のほうに移っていた。

それだけのことが重なった状態で、足を押されればどうなるか。

海草の分泌するぬるぬるとした粘液が彼女の足を取り、重心を崩し、前のめりに転倒させる。

「お、お、おお・・・!」

驚きの声を上げながら、彼女の顔が、上半身が、ゆっくりと海面へと落ちていった。







「全く、本当にオレを転ばせるとは・・・」

岩場に腰掛け、濡れて額に張り付いた前髪をかきあげつつ、ジェインがぼやく。

「それじゃあ約束どおり、三つ願いをかなえてもらおうか」

「はいはい、分かりましたよ・・・。それじゃあオレが昔立ててた誓いに沿う形で、願いを聞くからな。

あ、言っておくが、願いの数を増やすことは出来ないからな」

ふと思い出したように彼女が付け加えた。

「えー、何で?」

「さあ、詳しい理屈は忘れたけど、何でも『三つと誓ったんなら三つまで、そっから先かなえてやりたければそいつの支配下に入れ』らしい」

「そうか・・・」

よく分からないが、止めておけというのならば止めておくことにしよう。

「それじゃあ最初に・・・」

不意に、彼女の顔を見上げていたことで首筋が痛くなっていることに、僕は気が付いた。

「願いの前に、ちょっと小さくなってくれないかな?」

「それが三つの願いのうちの最初の一つ・・・」

「いや、願いの前にって言ったでしょ。会話を円滑にするための基礎条件の一つだよ」

「・・・ちっ」

小さく舌打ちを一つすると、彼女の姿が縮んでいく。

見上げるほどの大きさだったのが、大体僕と同じぐらいになった。

「これでいいだろ、とっとと願いを言え」

そう言いながら面倒くさそうに、うなじに張り付いた毛をかきあげる。

「ああ、ちょっと待ってくれ・・・」

彼女の腋が一瞬あらわになり、その褐色の部分がなぜか僕の脳裏に焼きついた。

「ああ、早くしてくれよ・・・」

いつの間にか、僕の彼女を見る目が変化していた。

彼女の胸に巻きついている布は、倒れこんだ際に飛沫がかかったのか肌に張り付き、うっすらと褐色の乳房を浮かび上がらせている。

布の下に続く腹も、汗か飛沫によるものかうっすらと濡れており、薄く脂肪の乗った腹筋を艶かしく彩っていた。

「おい、どうした。もう十分待っただろ」

彼女は再び落ちてきた前髪を、そのしなやかな手で持ってかきあげながら続けた。

「オレは早いとこ願いかなえて、とっととどっか行きたいんだ」

ピンク色の唇が開き、赤い舌が蠢く。

そして僕は、半ば無意識のうちにこう言い放っていた。

「一回ヤらせて」

「は!?」

突然の申し出に、一瞬ジェインが絶句する。

「・・・あ、え、い、いや!そ、そういう意味じゃ・・・ええと・・・」

直後に僕は何を言ってしまったのかに気が付き、ひどくうろたえた。

若干の哀れみを含んだ瞳を、彼女が僕に向ける。

「あー、分かるよー。こんな無人島に男一人。日々を生きるのに精一杯で女のことなんて半分忘れていたのに・・・」

「いや、だから違うって。あれはその・・・そう気の迷い!いい間違いだ、だから・・・」

「うんうん、大丈夫。おねーさん気持ち悪がったりしないから」

「だから・・・その・・・うう・・・・・・」

ジェインが指を鳴らすと、僕たちが座っていた大きな岩がふかふかの広い天蓋つきベッドに変わる。

「ほら、来な」

ベッドの上に身を横たえ、指を二三度曲げて彼女は僕を招いた。

どうやら、これも願いの一つとしてカウントされたらしい。

うわーい久しぶりというか初めての女だひゃほーい、という期待と、ああ僕の馬鹿どうしてこんな素敵なことに一つも願い使うんだよでもジェインってよく見ると美人だよなラッキーひゃほーい、という後悔・・・

(待てよ・・・)

よく考えてみれば、後者は後悔ではなかった。

それに更に考えてみれば、どうせ後2つも願いを聞いてくれるではないか。

だったらここはおとなしく、というか彼女に身を任せてひゃほーい。

「はい!喜んで!」

満面の笑みを浮かべ、僕は彼女の側に身を横たえる。

ジェインは僕の背中に腕を回し、僕を抱き寄せた。

布越しの豊かな乳房に顔を埋められ、彼女のむき出しの腕や腹が僕の体に触れる。

しばらく彼女の柔らかさを味わっていると、不意にジェインが手を背中に回した。

器用に胸を覆う布の結び目を解くと、彼女の豊かな乳房と桃色の乳首があらわになった。

「うわ・・・」

すぐ目の前に現れた二つの肉鞠の大きさに、思わず僕は声を上げていた。

「ほら、おっぱいだよ」

そう言いながら彼女は、再び僕の顔を抱き寄せた。

すべすべとした弾力のある皮膚が僕の顔に押し付けられ、唇に桃色の先端が当てられる。

僕は拒むことなく彼女の乳首を口に含み、舌先で突付き、くすぐった。

「んっ・・・ふっ・・・」

彼女の感度がよいためか、すぐに乳首は僕の口の中で大きさを増し、こりこりとした弾力を備えた。

「ふふっ・・・お前も、硬くなってきたな・・・」

彼女はそう言いながら体を少しずらし、僕の背中に回していた手を僕の股間へ移動させ、ズボンの布地越しに充血したペニスに手を添えた。

そして軽く撫で、擦るだけで、衣服の中のペニスは喜びに大きく脈を打った。

「あは、こんなにガッチガチ・・・!」

ズボンの腰から手のひらが侵入し、じかにペニスを弄び始める。

尿道口から溢れ出し始めた先走りを指で掬い取り、亀頭全体に塗り広げる。

続けて粘液に濡れる指先は張り出したエラをなぞり、裏筋を根元のほうへと下っていく。

そしておもむろに彼女はペニスを掴むと、上下にしごき出した

「ああ・・・うわ・・・!」

そのリズミカルな動きに。思わず口に含んでいた乳首と共に、声が外へこぼれ出る。

握力に緩急をつけながら、絶妙なペースで彼女は手を上下させる。

あふれ出した先走りと、彼女が手のひらに掻き始めた汗が、更にその動きを滑らかにしていく。

そして、限界が訪れた。

「あうっ・・・!」

全身を硬直させ、精液がペニスから噴き出ていく。

「あはは・・・いっぱい出たな・・・」

そう言いながら彼女はペニスから手を離し、顔のほうへ寄せる。

「うわ、見えるか・・・濃すぎて意図みたいに一繋がりだ・・・」

そう続けながら彼女は、指先についていた精液を吸い、そのまま手のひらに絡みついた者まで啜りとった。、

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「ほら、休んでいる暇はねえよ・・・」

手を綺麗にすると、彼女はそう言いながら身を起こし、僕の体をまたいだ。

そしてズボンの腰に巻きつけられた布を解くと、ズボンは何の抵抗もなく滑り落ち、そのほどよく肉のついた太ももと慎ましげな繁みがあらわになった。

そのまま射精の後も屹立し続けるペニスの上に屈みこむと、手を自身の股間へと伸ばした。

「ほぅら・・・見えるか・・・?」

二本の指が、繁みの奥の亀裂に沈み込み、左右に広がる。

亀裂が開き、その奥の紅の肉がさらされた。

「気持ち、よさそうだろ・・・?」

うん、とうなずくようにペニスが震える。

「入れて、見たいだろう・・・?」

更にもう一つ、ペニスが震える。

「じゃあ、待ってろ・・・」

ジェインは反対の手でペニスを掴むと、角度を調整するかのように向きを変えた。

そして、ゆっくりと腰を下ろしてくる。

僕の見ている前で、亀頭と彼女の赤い肉が接近し・・・

不意に彼女の手に力がこもり、ペニスを腹に押し付けると、その上に座り込んだ。

「ああ・・・うぅ・・・」

裏筋に接吻するように押し付けられた、彼女の膣口の柔らかさにうめき声を上げる。

「ふふふ・・・どうした・・・?」

彼女は笑みを浮かべながら、腰を前後にゆすりだした。

「ちょっとがっかりしたみてぇだな・・・?」

先ほどの先走りと汗の名残と、彼女の膣から流れ出した粘液が混ざり合う。

「入れて欲しかったのに、入れられなかった・・・」

彼女の腰の動きにあわせ、わずかに泡立ち、わずかに水音を立てる。

「あーあ、がっかり・・・てか・・・?」

裏筋を上下に移動しつつ吸い付く膣口の感触が、快感をもたらし、ペニスが大きく脈動を始める。

「だったら、オレに命じな・・・」

不意に彼女の腰の動きが止まり、離れた。

「『入れさせて下さい』・・・てな」

「『い、入れさせて』・・・」

快感の続きを求めるように、僕の口は願いを発していた。

「よし、分かった」

彼女はにぃ、と笑みを浮かべると、先ほどと同じようにペニスを掴み、腰を下ろしてきた。

ただし、今度はペニスを立てたままでだ。

亀頭に柔らかなものが触れた、と思った直後、ペニス全体が生温かさに包みこまれた。

「あああああぁぁぁぁっ!?」

突然の感覚の変化に、興奮が爆発し、声と共に射精が始まった。

ペニスが大きく膨れ上がり、溜まりこんでいた精液が脈動と共に迸っていく。

「うぉ、おお・・・」

膣奥に突然叩きつけられた精液の感触に驚いたのか、ジェインもまた声を漏らしていた。

「くそ・・・もう漏らしやがって・・・」

ぶつぶつつぶやきながら、軽く屈みなおす。すると、結合部から流れ出した愛液と精液の混合物が流れ出した。

「・・・おい、何萎えてるんだよ・・・」

膣内のペニスの感触の変化に気が付き、声を上げた。

「とっととオレは三つ願いを終わらせたいんだ。休んでる暇なんてねえぞ」

「え・・・でも、出たばかりだから・・・」

「ああ、だから、こうする」

彼女の手が彼女の後ろに消えた直後、肛門に異物感が生じる。

「お!?おおおっ・・・!」

「お・・・硬くなってきた・・・か、な」

肛門に差し込んだ人差し指を、曲げ伸ばししながら、彼女が言った。

肛門に指を挿入され、あまつさえ動かされるという新感覚に、ペニスに血液が集まっていく。

そして無理やりながら、ペニスは硬さを取り戻してしまった。

「・・・こんなもんだな」

人差し指を引き抜き、ベッドのシーツに擦り付けつつつぶやく彼女。

続けて重心を前に移動させつつ、僕の頭の左右に手を突いた。

「よ・・・ほ・・・」

小さく声を出しつつ、彼女が体を揺らす。

「あうぅっ・・・!?」

彼女の動きに合わせ、膣内の粘膜が蠢き、ペニスに絡みついてきた。

「ああっ!ぅあっ!」

「かなり、いい、らしい、な」

途切れ途切れに言葉をつなぎつつ、彼女は腰を動かし続ける。

「出したく、なったら、とっとと、出せよ」

膣肉がペニスを淫猥にしゃぶり、精液をすすろうと蠢く。

二度の射精の後にもかかわらず、僕の中で興奮が高まっていく。

やがてすぐに限界が―

「ああっ・・・あ・・・?」

訪れなかった。

ジェインは動きを止め、にやにやと笑みを浮かべながら、僕を見下ろしていた。

ペニスの鼓動が収まり、興奮が醒めていく。

すると彼女は再び、腰を揺らし始めた。

襞が絡みつき、愛液をペニスの表面に塗りこまれる。

絶頂が近づき、彼女が動きを止める。

「どうだ?」

興奮が醒めたところで、また彼女が動き出す。

「出したいか?」

揺れる乳房、くねる腹筋が、ささやく。

「だったら頼みな」

射精直前の脈動を感じ取り、動きが止まる。

「『出させてください』ってな」

また、膣が蠢動をはじめる。

「そうすりゃ、いくらでも出させてやる」

ペニスの表面をうねる膣の感覚が、

視界に入る彼女の乳房が、

太ももに感じる彼女の体温が、

耳から入るすべての音が、

ささやいた。

「さあ、言ってみな」

「『ださ・・・出させて下さい』!!」

「わかった」

ジェインは笑みを浮かべつつ、軽く腰を振った。

先ほどまでの振りと同じに見えたそれは、まったく違った感触をペニスに与えた。

膣粘膜がペニスに吸い付き、巻きつき、引き込もうと波打つ。

亀頭から根元へと、快楽の電流が発生し、脳へとスパークが連鎖する。

「あああああああっ!!」

ペニス内部に血液の代わりに詰められていたと言われても納得してしまいそうな量と勢い、そして感覚を伴いながら精液が放たれる。

煮えたぎったかのような温度のそれは、尿道を灼き、膣内を煮えたぎらせんと注ぎ込まれていく。

精液の熱さと、射精の勢いのためか、彼女もまた身をのけぞらせ、体を震わせていた。

やがて、精液の噴出の勢いが収まり、数度のペニスの痙攣を経て、射精は、とまった。















「さーて、願いも三つかなえたことだし・・・」

ベッドだった岩の上に裸身を横たえ、はらはらと涙をこぼしながら僕は彼女の言葉を聞いていた。

「そろそろオレも自由にさせてもらいますか」

何てことだろう。たった一つ、日本に返してください、という願いさえかなえられないとは。情けない。

「それじゃあ、達者でねー」

背を向けているため見えないが、おそらくジェインは僕に向けて手を振っているのだろう。

「バァイ」

そう言うと、不意に彼女の気配が消え・・・

「あれ?」

消えなかった。

僕が顔だけ彼女のほうへ向けてみると、そこには岩場の上で、様々なポーズを取りながら、気合を込めているジェインの姿があった。

ふと僕は、彼女の額にあるものを見つけた。

「あっれおかしーな・・・どこにも移動できない・・・」

「なあ、ジェイン・・・」

「あん?ちょっと待ってろ・・・こーして・・・あーして・・・ほあっ!!」

再び奇怪なポーズと共に気合を込めるが、やはり何も起こらない。

「あっれ違ったっけ・・・?だったら」

「あのー、ジェインさん?」

「何だよ!オレは今忙しいの!」

手足を複雑に絡ませ、人間に擬態する謎の生物のような姿勢のまま、僕のほうに彼女は顔を向けた。

僕は身を起こし、彼女のほうを向いて座り、言った。

「おでこのそれ、何?」

「え?」

ジェインは手足を解くと空中から鏡を取り出し、顔を映し出した。

そこでようやく、彼女にも自分の額にいつの間にか描かれた、ミミズののたくったような模様に気が付いた。

「・・・あーーーーーっ!?」

一瞬の間の後、彼女は大声を上げた。

「何でー!?何で従属の印が出てんのー!?何で何でー!?」

えらくうろたえた様子で目を擦り、額を擦り、声を上げる。

「ちょっとお前、オレに何した!?」

鏡を放り出し、僕に詰め寄りながら言い放つ。

「いや、僕は何にも心当たりは・・・」

「嘘付け!だったら何で従属の印が出てんだよ!!」

額を指差しながらがなりたてる。

「えーと・・・どんなときにその印は出るの・・・?」

このままでは殺されかねないと判断し、僕はとりあえず彼女の感情の矛先を変えるべく、質問した。

「・・・魔神が人の下で働くって契約をしたとき・・・だけだ」

「したっけ?僕たち」

「いや・・・憶えは、ないな」

双方の頭上に疑問符が浮かぶ。

「あっ」

何か思い出したらしく、ジェインが両手を打ち合わせた。

「三つの願いの誓いの、『三つ以上願いをかなえたければそいつの支配下に入れ』って部分が発動したのかも・・・」

「え?でも僕、三つしかかなえてもらってないよ?」

そう、三つだけだ。

『一発ヤらせて』

『入れさせて』

『出させて』

の三つ。

「じゃあ、何が四つ目に・・・」

しばしの間沈黙が支配し、僕とジェインの会話を思い出す。



『いや、願いの前にって言ったでしょ。会話を円滑にするための基礎条件の一つだよ』

『・・・ちっ』

『これでいいだろ、とっとと願いを言え」

『ああ、ちょっと待ってくれ・・・』『ああ、早くしてくれよ・・・』

『ああ、ちょっと待ってくれ・・・』『ああ、早くしてくれよ・・・』

『ああ、ちょっと待ってくれ・・・』『ああ、早くしてくれよ・・・』





『あ』

ほぼ同時に思い出したらしく、僕とジェインの口が同時に開いた。

「・・・あれも願いの内に入るんだね・・・」

「・・・」

「・・・ああ、ほら、事故だと思ってさ、ね?」

「・・・・・・」

「ほら、人間の寿命ってあっという間だろ?だからほら、ほんの少しランプの中にいる期間が長くなった、て思えば・・・」

「・・・ああああぁぁぁぁぁあああああああっ!!!」

突然ジェインは声を上げ、仰向けにひっくり返ると両手両脚を振り回し始めた。

「これで二度目だ!前の主人が死ぬ前に『ランプの中に入って、誰かが擦るまでおとなしくしてろ』って命じられたとき以来だよ!思い出してみれば、その主人にも半分詐欺みたいにして雇われたから三度目だよ!何で、もう少し注意深くなれないんだよ!」

岩の上に五体投地し、叫び声を上げた。

「オレの馬鹿ぁ〜〜〜〜〜〜!!」

「えーと・・・」

とりあえず、ジェインが落ち着くまで話しかけるのはやめておこう、と僕は思った。





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