妖魔貴族に花束を 第三話




注!

ご都合主義デス

主人公最強属性デス

gdgdデス

それでもよければスクロール↓

















整一は城の中をズンズン進んでいた。

エミリアを撃破した結果、当面の敵対勢力の危険度は大きく減退した。

さらには、今マルガレーテのいる部屋までの最短距離を知っている。

つまり、勝利一歩前!!

「いかんいかん!こういう時こそ平常心!」

百里の道を行く者は九十九里で半分と思え……と内心で唱え、頬をパシパシと軽く叩く。

一番の難関がマルガレーテなのだ。

油断=即死に繋がる……というくらいに用心しても足りないだろう。

奴の戦闘力は分からないが、エミリアやメリアヴィスタと同等かそれ以上と見積もって間違い無いだろう。

「……洒落になんねえYO」

満身創痍を絵に描いたような現在の状態では、相手の一撃が致命傷に直結すると思われる。

「ハーブとか救急スプレーとかで回復できたらな……。じゃなかったらポーショ……駄目だ、アレは不味い」

あの舌まで青くなる栄養ドリンクの味を思い出し、軽く憂鬱になる。

FF好きの方々はあれをどう受け止めたのだろうか……と完全にそれた思考をしながら進んでいく。

ポー○ョンは兎も角として、ここまで来たのだから何が何だろうとマルガレーテをぎゃふんと言わせたろう、と整一は考えていた。

勿論戦わないで済むならそれが一番だが、マルガレーテを納得させるには言葉だけでは足りないと思われる。

相手が虫けら程度では、言葉が通じようが対等の関係を築くのは至難の業だ。

こちらが虫けらでは無いと分からせるには一度痛い目を見なければならない……と考えるくらいには整一は冷静だった。

実際整一は拉致されたことに怒っているし、あんな屈辱的拷問を受けたことにも怒っている。

人間を玩具にするのも勿論そうだ。

一発殴ってやらにゃ気がすまないというのが本音ではある。

整一は決して聖人で無ければ、救世主でも無い。

そういうことだ。

こうして整一は、気持ちの整理をつけ、背筋を真直ぐに伸ばし、堂々と当主の間の戸を押し開けた……!



「たのもー!」

「!」

バタンッ!と大きな音を立てて戸が開き、男が入って来たことにマルガレーテは十分驚いた。

まさか本当にここまで来られる人間が居たとは……。

さらに、その人間が自ら手を下した男とあらば尚更だ。

「貴方……生きていたの……」

「当然だ!あんな情けない死に方出来るか!」

整一にしては珍しく、感情を露にする。

「そう……。ここまで来たからには私に用があるのでしょう?また私とキスしておちんちんから精液漏らしたいのでしょうか?」

そんな整一を見て、クスクス笑いながら挑発するマルガレーテ。

しかし、一瞬でクールダウンしてしまう整一。

「……お前な、人間だって生きてんだからそういうことヤメロ。何か切実な理由があってやってるんじゃないだろ?だから人間を玩具にしたり殺したりすんの辞めてくれ」

「……」

整一の言葉に押し黙るマルガレーテ。

「そんなん辞めて他に趣味見つけろって。な?」

「……のよ…な…」

マルガレーテは俯き、小さく唇を動かす。

「…え?」

聞き取れず、間抜けな声で聞き返してしまう。

「そのようなクダラナイ理由でここまで来たというのですか?冗談も大概にして欲しいですわ!」

「!」

突然激情を露にしたマルガレーテに怯んでしまう整一。

「人間のような下等な存在は私たち淫魔の玩具で十分ですの。あなたもその中の一つだったと言う訳ね」

「おい」

「なにか?」

「いい加減にしろよテメエ」

整一の低い声が部屋に響く。

「テメエがどんなに偉いか知らないが、あんまりにも独善的じゃないか。人間は虫けらじゃねえんだよ」

「いいえ、人間は虫けらと同じですわ。醜くて脆弱で薄汚い……。あなたもそうでしょう?私を殺して自分の安全を手に入れる為にここに来たのでしょう」

マルガレーテの言い草に目を見開く整一。

「人間舐めんな!!!!」

「!」

ギュッと拳を握り、マルガレーテを睨みつける整一。

「言っとくがな、俺はお前を殺す気なんざさらさら無いんだよ!お前に人間殺すの辞めさせて家に帰るだけだ!」

「虫けらがそのようなこと……」

「出来ないってか?」

マルガレーテの言葉を遮り、先を言う整一。

「もう一回言ってやるよ。人間舐めるな!修正の為に殴るくらいは俺だってするぞ。今まで人間殺してきたんだからそんくらいは当然だ」

「……それこそ……虫けら風情に出来るかしら?」

「やれるさ。と言うかやる」

一瞬の静寂の後、二つの影が動いた……。

マルガレーテの鋭い拳が整一に迫る。

「っ!」

しかし、整一は紙一重で避ける。

そこに、物理法則を無視した勢いでマルガレーテの回し蹴りが来る。

それでも左腕での防御を何とか間に合わせる整一。

ボグウッ!

鈍い音を立て、攻撃をなんとか防御する。

確実に腕がやばいが……。

「流石……大口叩くだけのことはありますわね。けれど、何時まで耐えられるかしら?」

「言ってろ」

しかし、実際あと二、三発貰えば確実に腕が壊れるだろう。

……腕だけで済めばいいが……。

さらに攻撃をしかけ、整一を嫐るマルガレーテ。

整一は回避か防御で手一杯だ。

体力が万全ならばもう少しまともな戦いが出来ただろうが、ここまで来るのに激しく消耗している。

相手を殺さないとかそういう次元の問題では無く、真面目にまずい状態だ。

ゆっくりと……しかし確実に追い込まれていく。

「ほら、どうしたのかしら?私を殴るのではなかったの?」

「っ!」

テラスまで追い込まれ、寒空の下で一方的に攻撃を受ける。

バギャァ!

マルガレーテの蹴りが手すりを破壊する。

「う!」

洒落にならない威力だ。

「避けてばかりでは仕方が無いわよ?虫けらさん」

「うおわ!」

常識外れの速度で繰り出される踵落としを必死に避ける。

その隙に攻撃したいが、すでに満身創痍の整一では次の攻撃を避けるのに神経を向けねばならず、さらにマルガレーテの立ち直る速度も凄まじいため、距離をとるしかなかった。

あっという間に追い詰められてしまう。

「はァ…はァ…」

荒い息をつき、マルガレーテを睨みつける。

「まだそんな目が出来るのね。でも残念。もう終わりよ」

マルガレーテは勝利を確信し、拳を整一に向けた……その時。

―整一の手が拳に添えられ、フワリと軌道を変えられる―

「!?」

あまりに見事で華麗と言ってもいい受け流しに呆気にとられてしまうマルガレーテ。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「あ……!」

完全に隙だらけになったマルガレーテの顔面に向かって、整一の拳が迫る。

体重、速度、共に最高であり、命中箇所も眼球付近。

マルガレーテであっても致命傷を負うのは確実だ。

死の恐怖が確実に迫り、マルガレーテは声も出せず目を閉じるしか出来なかった。

しかし……。

「……………?」

しばらく経っても激痛はやって来ない。

恐る恐る目を開けると……。



「ばーか」



ペシッ。

整一の悪戯っぽい声とともに、間抜けな音を立ててデコピンが炸裂した。

「あうっ?」

間抜けな声を上げ、ペタンと尻餅をついてしまうマルガレーテ。

「!?!!!?」

当然混乱に陥る。

「あ……貴方、本気で私を殺す気が無かったと言うのっ!?」

「……最初にそう言ったじゃん」

お前は何を言ってるんだ?という表情でマルガレーテを見下ろす整一。

「殺される怖さ、分かっただろ?」

そう言いながら、部屋に戻ろうとする整一。

「…………」

悔しげに俯くマルガレーテ。

「……だとしても、まだ私は納得していないかも知れないわよ」

立ち止まり、マルガレーテに振り返る。

「そん時は今度こそ殴るさ」

不敵な笑顔を浮かべる整一。

「……本当に参ったわ」

肩を竦めるマルガレーテ。

二人して苦笑してしまう。

「さて、一件落着したし、縛った皆さんにも分かってもらいますか」

「縛ったって……もしかしてここに来るまでに音信不通になった娘達は……」

「気絶させてふんじばった」

「本当に呆れた」

一瞬呆気に取られたが、さも愉快そうにマルガレーテは笑った。

そうして、立ち上がろうとした時……。

バコォッ!

「「!?」」

度重なる打撃で弱っていたテラスがとうとう崩壊し、マルガレーテを巻き込んで下へと落下した。

「マルガレーテっ!」

整一が手を伸ばすが、間に会わない。

ボロフスキーの縛めが発動しているから翼も出せないし、魔術も使えない。

(こんな情け無い最後だなんて……)

マルガレーテは絶句した。

(御免なさい、エミリア。私、こんな死に方……)

(ウェステンラ…貴女にも謝るべきね。ちゃんと顔を合わせて謝れなくて申し訳ないけど……)

(あ…、これが天罰というものかしら)

そこまで考え、悪魔が天罰をくらうなんて……と可笑しく思ってしまう。

(そう言えば彼の名前を知らない……。聞いておけばよかった……)

何故か涙が溢れた……。

(死にたくない……)

その時!

「おらァァァ!」

雄叫びと共に、ガクンッと急に止まる衝撃。

同時にガシャァンッ!とガラスの割れる破砕音が響く。

「!貴方!」

「また会ったな?お嬢さん」

整一がマルガレーテの腕を掴み、もう片手で窓を割って淵にしがみ付いている。

当然淵を掴んでいる方の手の平はガラスが現在進行形で刺さっており、傷口を拡張しつつ血を流している。

「何しているのっ?早く離しなさい!」

「だから人間舐めんな!黙って登れ!」

「!」

整一の痛みに歪みながらも真剣な表情を浮かべる顔に気圧され、頷くマルガレーテ。

マルガレーテが整一を伝って登る度、枠に残るささくれたガラスが手の平にさらに食い込む。

「ぐっ!う……っ!はや…く……」

整一の呻きを聞き、マルガレーテは登る速度を上げる。

登りきり、廊下に転げる。

「次は貴方よ!」

整一の腕を掴もうと、手を伸ばすマルガレーテ。

「おい」

「いいから早くっ!」

「約束だぞ。遊びとか理不尽な理由で人間殺すなよ」

フッと不敵に笑う整一は……すでに空中にいた……。



(最期にこうなるとは……。俺もつくづく運が無いなぁ)

すでに朦朧としている脳裏でボンヤリ考える。

世界が逆さまで、耳元でビュウビュウ風音が響く。

散々酷使した体は風に逆らって動くことすら間々ならない。

五体が万全であろうと現状を回復させるのは不可能だっただろうが。

もう数十秒もすれば地面に叩き付けられ、痛いと感じる前に脳漿を飛び散らして即死するだろう。

(ここまで来て……!)

悔しさと情けなさを感じたのを最後に、視界が黒く染まった……。











「……ん?」

整一は自分が生きていることを意識した。

どうやらベッドに寝ているようだ。

上半身だけ起こし周囲を見回すと、自室ではなくノイエンドルフ城であることが分かる。

「あれ?確か落っこちて……」

「私が助けたの」

「!」

声の方向を見ると、マルガレーテが椅子に座ってこちらを見ていた。

「どうやって……あ」

「そう言う事」

縛めは術者が意識を失えば効果が切れる……というかそれ以前にマルガレーテが落ちた時点で懐に入れてあった魔方陣が描かれた紙を破けばマルガレーテは自分で飛べた訳だ。

そこまで考えて、自分のうっかりさに自己嫌悪に陥る。

「どうやら気付いたようね」

クスクスと微笑むマルガレーテとは対照的にグッタリと項垂れる整一。

「情けない……アホだ……」

「そこまで自分を卑下せずともよいと思いますが」

「!」

扉が開く音と共に、涼やかな声が響く。

「エミリアさん……」

ペコリと頭を下げるエミリア。

「我々と思想を違えた者達はすでに城を出ました」

「そう。ご苦労様」

二人の言葉の真意が分からず、首を傾げる整一。

「つまり……」

その様子を見て、マルガレーテは説明を始めた。



整一の要求通り、マルガレーテとその配下はもう二度と人間を理不尽には殺さないことになった。

しかし、そうすぐに変われないのは人間も淫魔も同じだ。

だから、マルガレーテは配下に選択肢を与えたのだ。

人間と対等の関係を築くべく努力するか、それとも……。

さすがに忍びないため、この場で処刑……等と言う強硬手段はとらなかったが……。

結果、ノイエンドルフ城の人口は以前の三分の一となった……。



「それはすま……いや、ありがとう」

謝罪ではなく、感謝を口にする整一。

「いいのよ」

穏やかな笑みを浮かべるマルガレーテ。

「その代わりに……」

「え……!?」

歩み寄り、ベッドに腰掛けるマルガレーテ。

「貴方で遊ぶから」

「何ゐゐゐゐゐ!?」

マルガレーテの言葉に軽く絶叫する整一。

「一寸待て!そりゃ無いだろ!」

「マルガレーテ様」

横合いから救助の声。

「エミリアさん!」

「マルガレーテ様はもう何度もしたのですから今回はまず私です」

「それもそうね」

「をゐゐゐゐゐ!」

メイドは酷薄だった……。

まともに動けぬ整一に冷たい美貌が迫る。

「失礼いたします」

チュ……

「……え?」

唇が触れるだけの優しいキス。

「えぇと……?」

「次は私の番ね」

「おおう!?」

困惑している整一を気にすることもなく、唇を寄せるマルガレーテ。

柔らかな感触が脳髄を駆け抜ける。

「ご馳走様」

「あ…あれ……?」

「また狂わされると思ったのかしら?」

「いや……その……」

正直ちょっと恐かったです。

「そう言えばまだ名前を聞いてなかったわね」

「あ…城島………整…一……」

安堵すると共に、疲れきった意識は再び暗闇に沈みつつある。

「整一……。また、会いましょう」

マルガレーテの、どこか嬉しそうな声をBGMに、整一は再び意識を失った……。



「ふをををを!…………………………夢…か?」

奇声を上げ飛び起きた整一の視界に、自室の壁が入った。

「やけにリアルな夢だったな……」

ふう…と溜め息をつき、ベッドから出る。

制服に着替え、朝食を作ろうと階下へと降りる。

階段に足をかけた時、昨日いつ家に帰ってきたか覚えていないのに気付く。

「………まさか…ね」

首を振って自身の考えを否定する。

「あら、せーちゃん。おはよう」

「……」

間延びした声の、ポニーテールの妙齢の女性がキッチンにて料理をしている。

「母さん?いつ日本に帰って来たんだ?」

父親と共に海外に行っていた筈の母親である城島 奈々子だ。

「ん?ちょっと……ね」

「じゃあ父さんも?」

父親である城島 浩介の姿を探す。

「お父さんは物置にいるよぅ」

「ふぅん」

この二人、一体何の仕事をしているのか整一は知らない。

整一が物心ついた頃から家にいる時間は少なかった。

「お、起きてきたな」

がっしりした体系の背の高い男性……浩介だ。

「ん。学校だからね」

その日の朝は、数ヶ月ぶりの家族全員が揃った朝食となった。

「整一、私達しばらく日本にいることになったよ」

浩介が朝食時にそんなことを言った。

「そか」

整一は特に感情を表さずに返答した。

「せーちゃん、お母さん達がいるの嫌なの?」

「なんで泣きそうなんだよ!てか父さんも泣き顔すんな!大の男がやったって気持ち悪いわ!一言もそんなこと言ってねぇだろがァァ!」

数十分後

登校しようと玄関に立った整一の後ろに、浩介が現れた。

「整一」

振り返り、浩介の顔を見る。

その表情は真剣だった。

「ん?何?父さん」

「……気ィ付けろよ」

「?……あぁ」

心配性だな、と苦笑しながら家を出た。

…。

……。

………。

「何でこんな所に豪邸が……?」

郊外にある城島家の隣はかなり広い空き地……の筈なのだが……。

しかもメイドが玄関門前で箒を掃いている。

「えーと…エミリアさん……?」

「おはようございます、整一様」

エミリアは慇懃に頭を下げた。

「オハヨウ…ゴザイマス」

電子音のような声で返す整一。

「ええと……なんで?」

「それは……」

エミリアが説明のために口を開こうとした時……。

「私から説明させてもらおうかしら」

「マルガレーテ!?」

「おはよう整一」

とっておきの悪戯が成功したかのような無邪気な笑顔を浮かべたマルガレーテがそこに立っていた。

「お…はよう」

なんとか挨拶を返す。

「簡単に言うと、人間を理解するために人間界で生活することにしたの。今日からお隣様よ。よろしく♪」

「……………」

整一は絶句するしかなかった……。

















オマケ

「ねぇ整一、なぜ私は呼び捨てでエミリアはさん付けなのかしら?」

「メイドさんは敬うべき存在だろう、常考」

「…………」









―あとがきと言う名の言い訳―

初めまして、撃沈しても赤Pの出ない超大和型です。

「妖魔貴族に花束を」第三話、楽しんで頂けたでしょうか。

「マルガレーテ様の性格が違ぇYO(`ヘ´)」とか、「こんな簡単に和解出来るかよ(怒)」とか、「エロシーンマダー?」等苦情のある方。

本当に申し訳御座いません(泣)!!

私の石の狸のような文才ではこれが限界です!

これでも必死なんです!

と言うか、とろとろ様を始めとする他の皆様の文が秀逸過ぎる!

それに憧れて勢いで書いてしまったのがコレなんです。

題名やら話の流れやらで分かる通り人類最強の男整一君と淫魔の方々とのラブコメ……を目指したものなんですが……。

見てくれている方いるのでしょうか?

見ている人が少しでも楽しんでもらえていると信じて書き続けます。

次回は整一が何で強いのかとか、整一の人間の友人を出したりとか、書……けたらいいなァ……。

とにかく広げた風呂敷は広げきるまで頑張ります!

援護射撃お願いします!

それでは次回「妖魔貴族に花束を」第四話で再びお目にかかれますように。

最後にコレを見て少しでも楽しんでくれた方とこんな稚拙な文を載せて頂いているとろとろ様へ。

本当にありがとう御座います。








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