槍型淫魔兵器 銀ノ一




夜の街―

誰もいない路地裏を、異様な姿の女が歩いていた。

長く伸ばされた髪は血と泥で汚れ、その身を覆うドレスも破れ、穴が開き、いくつもの血染みができていた。

こめかみから流れ出る血が、彼女の頬に赤い線を描いている。

両脚には無数の擦過傷があり、いまだ血が流れ出ているものさえある。

左手は骨折と脱臼で複雑に変形し、力なくぶら下がっているだけ。

右手には2メートルはあろうかという、長大な白銀色の槍が納まっていた。

そして少し身体を動かすたびに、どこかから血液が地面へと垂れ落ちていった。

「しひ・・・きしししし・・・・」

女は顔をゆがめ、歯列の間から軋りにも似た笑い声を漏らしつつ、足を引きずりながら路地の奥へと消えていった。

数分後、あわただしく数人の男と一人の女が路地裏に現れた。

男達はいずれも手に手に剣や杖といった得物を持ち、女は無手の代わりにこめかみから角を、背中からこうもりのような羽を生やしていた。

男の一人が懐中電灯を地面に向け、血液の雫がどこへ向かっているのかを調べる。

「こっちです。乾き具合から見ると、まだ遠くへは行っていないはず」

そう言って彼が指し示したのは、建物と建物が非常に接近した、人一人がようやく通れるほどの通路だ。

「駄目ね。これは罠」

角とこうもり羽の女が、軽く首を振りつつ口を開く。

「きっとあいつは、こちらが一列で入ってきたところを正面から迎撃するはず」

「だろうな。だとしたら・・・」

男が手にした得物を構え、その先端を路地の奥へと向けた。

「この位置から狙撃だ」

「了解、直線方向の索敵を・・・」

不意に、彼らの全身を寒気が貫く。

「!上だっ!」

とっさの女の声に、全員が顔を上へ向ける。

すると星一つない夜空を背に、槍を携えた満身創痍の女が落下してくる姿が目に入った。

ただ、左右に聳え立つ建物の壁を交互に蹴り、落下速度を調整しながら降下している。

全員が得物を掲げようとした瞬間、一人の顔面に槍の穂先が突き刺さる。

槍の女は絶命した男の両肩を足場にし、槍を引き抜きながら落下の勢いを利用して別な男に飛び掛っていく。

振り下ろされる穂先を、男は手にした金属製の杖で受け止めるが、まるで飴細工のように両断されてしまう。

「くっ・・・!」

穂先が男の胸を掠めていき、彼の肝を冷やした。

しかし数瞬後、振り下ろされた女の左手を顔面に受け、彼の肝は永遠に冷えたままとなった。

女は己の左手と男を犠牲にして、落下の衝撃をほぼ打ち消し、残る勢いで立ち上がった。

そして、ゆっくりと残る男達のほうへ向き直る。

犠牲にした左手は、砕けた骨が皮膚を突き破って顔を出し、修復不可能なまでに壊れている。

比較的無事な右手に、ただ槍が握っているだけで何の構えも取っていない。

しかし、数秒の間に仲間の二人を失った男達は、全く動けなかった。

一撃を加えることは可能だろうが、直後に己の命が失われる様子がありありと予想できる。

「ししし・・・」

顔を歪め、軋りにも似た笑声を漏らす女一人から放たれる重圧に、完全に飲み込まれていた。

「・・・勧告します・・・」

こうもり羽の女が、どうにかして口を開く。

「ギン、あなたは現在『大図書館』により指名手配を受けています。抵抗を中止し、投降・・・」

「違うな」

槍を携えた女が、口を開く。

「我の名は『ギン』ではない。その一字をもって『しろがね』と読むのだ、小娘」

「・・・私は小娘などではありません」

槍の女、銀の言葉に、こうもり羽の女が応える。

「それに私にも、エレジア・テルミドールという名前が・・・」

「小娘で十分だ、知恵の回らぬ、若輩者の呼び名としてはな」

銀はそう言うと顔を歪め、ししし、と笑う。

「・・・」

エレジアは仲間達に合図を出し、ようやく呪縛の解けた男達を散開させて、銀を円形に囲む。

「もう、あなたは完全に包囲されています」

エレジアの言葉に、銀は笑みを顔に張り付かせたまま、周囲を見回した。

確かに、男達はすでに得物を構えており、一人か二人殺した程度では残り全員の攻撃を受けることは間違いない。

そんなことをされれば、身体が持たないだろう。

「どうかおとなしく、投降して下さい」

「・・・やはり小娘だな・・・」

ししし、という軋りと共に、言葉が漏れる。

「取り囲めばそれでいい?痛めつければ言うことを聞くだろう?甘い甘い甘い、大甘だ。ししし。その程度の知恵でよく隊を任せられたな、いやその程度の知恵だから現場での指揮にしか回されなかったのか。まあどちらでもししし、いいや。ひしし」

「・・・槍を、置きなさい」

急に言葉をつむぎ始めた銀に向け、勧告をする。

「槍を置け?槍を置け!ししし、面白い、面白いぞ。ひししししし、この我に向けて槍を置けだと?しししししそのような下らぬ命令しか下せぬとは、下らぬ?下せぬ?しししししししし、おもしろい、面白い?ぞ、ひしししし」

エレジアの言葉に聞く耳を持たず、とうとうと語り続ける。

「たかだか数人で取り囲んで、包囲しました?冗談?冗談だきしししししし。よくできました、ほめてやろしししししし」

「十数えてから、攻撃します。投降して下さい」

エレジアは手のひらを向け、意識を集中させる。

「十数えるから投降しろ。投降、投稿?しししししし」

「十・・・九・・・」

エレジアのカウントに合わせ、男達も得物を構え、それぞれで集中を始める。

「ありがちな台詞だが、さてどうやって逃げようか。逃げようか?ひししししし、不可能だ。不可能?」

「八・・・七・・・」

「不可能といえばみかんだ。皮をむかずに中身をたべる。ししししし、中身?みかんの?不可能だ不可能だひしししし」

「六・・・五・・・」

「しかし皮ごと、中身の房ごとに千切り分けてしまえば、皮をむかずにしししし食べることがしししできる」

「四・・・三・・・」

「つまり、思考の逆転で可能もまた不可能になるのだ。可能不可能?逆だ、しししししし」

「二・・・」

「言っておく、小娘。我は逃げるだけだ、殺すのは・・・」

「一・・・」

「貴様らだ」

瞬間、銀は右手を引き、左足を持ち上げて逆手に槍を構える。

真正面に立つエレジアに視線を定め、全力で槍を投げた。

「撃てっ!!」

エレジアの声に、四方八方から火球が放たれ、槍を投げる女に激突する。

しかし、その着弾直前に槍は彼女の手を離れ、エレジアの頭上数十センチを、夜空に向けてまっすぐに飛んでいった。

「・・・しまった・・・!」

エレジアは全身をあぶられ、崩れ落ちるていく女に駆け寄りつつ、叫んだ。

「捜索お願い!この地点より南の、半径30キロ範囲で!」

「了解しました!」

男の声を背に、ぶすぶすと煙を上げる女の肩を軽く叩く。

「聞こえる?」

「・・・え・・・?あ・・・あたし・・・」

女の返答を聞くなり、エレジアは応急手当の術を施すべく、意識を集中させた。

「大丈夫、必ず助かるから」

「あたし・・・・・・やりが・・・・・・」

「しゃべらないで」

「あつくて・・・いたくて・・・くやしくて・・・・・・」

女を制するが、彼女の口はなおもうわ言を漏らし続けた。

「それで・・・ずっと・・・ねてて・・・」

「・・・エンヘ・ウフルール・・・」

ようやく練りあがった緊急治癒魔法を女に放った。

これで少しは持つはず。

そう思った矢先だった。

「・・・!!」

女の身体が痙攣を始めた。

エレジアは、更に緊急治癒魔法をかけるべく、意識を集中させながら声を上げた。

「聞こえる!?あなたの名前は!?」

「・・・・・・それで・・・それで・・・」

「家族は何人!?今日は何日!?」

「みんな・・・みんなが・・・」

「しっかりして!!」

「・・・ああ・・・死にたい・・・」

そうつぶやくと、女は深く、ため息のように息を吐き、それっきり止まった。

「・・・・・・」

エレジアは構築されつつあった魔術を霧散させ、体温の失われていく肉体から手を離した。

「・・・ごめんなさい・・・」

もはや聞くこともできなくなった女に小さく謝ると、彼女は背後を振り返った。

「・・・・・・」

視線の先にあるのは、建物の谷間から覗く夜空。

そして、眩いばかりの街灯と月明かりに照らし出された、街の姿だった。









「・・・・・・?」

ふと、全身を貫いた奇妙な感覚に、僕は目を覚ました。

目を擦りつつ、枕もとの目覚まし時計を手に取る。

現在1時22分。

真夜中だ。

「・・・ふぁ」

小さくあくびをしつつ、身を起こし、トイレに向かう。

そして、用を足して戻ってくるころには、完全に頭が覚めていた。

さて、さっきの感覚は何だったのだろう?

「・・・地震かな?」

震度1,2程度の地震が発生したのだろうか?

テレビをつけ、音量を絞ってチャンネルを回してみるが、どの局でも地震速報のようなものはなかった。

だとしたら、近所で事故でもあったのかもしれない。

僕はテレビを消すと、カーテンのかかった窓へ向かった。

ベランダに出れば、近所の様子が分かるはずだ。

カーテンに手を掛け、開く。

「・・・何これ」

目に飛び込んできた光景に、僕は思わずそうつぶやいていた。

目の前にあるのは、見慣れたベランダと、見慣れた近所の景色と、明るく輝くまん丸な月。

そして、視界を上から下へ縦断する一本の銀色の棒。

光沢のある表面が月明かりを照り返し、妙に眩い。

視線を下ろすと、驚くべきことにその棒の先には刃物がついており、その先端がコンクリート製のベランダの床に突き刺さっていた。

長い棒に、先端に刃物。疑いようもなく、これは槍だ。

「・・・」

なぜ槍が打ちのベランダに突き刺さっているのか?という疑問を放置し、とりあえず窓を開いて、手を伸ばして触れてみる。

冷たい。当たり前のことだが。

『触れたな・・・?』

「!」

突然耳元で女性の声が響き、僕はとっさに槍から手を離した。

『何をしている』

しかし声は、なおも耳元で響く。

「だ、誰!?」

『誰?的確な質問だ的確?ししし』

声は笑っているかのような音と共に、僕の言葉に反応した。

『我は銀、貴様の目の前目の前?にある槍だ』

「しろがね・・・?」

『そうだ、それが我の名だ』

耳元の声、銀はしししと笑いながら続けた。

『故あって、お前の家に邪魔邪魔?させていただいた。もしよければ手を貸してくれぬか?我はこの通り、突き刺さって手も足も出ぬ状況だからなひしししししし』

「えー・・・つまり、引き抜け、と?」

『そうだ、できるだろう』

まあ、このまま放置してご近所に見つかるよりはましだ。

そう判断して、僕は槍の柄に手をかけた。

夜気に冷えた金属の感触が、手のひらに伝わる。

「よっ・・・と」

軽く力を込めるが、抜けない。

両足を踏ん張り、背筋にも力を込めるが、コンクリートに食い込んだ穂先はびくともしなかった。

『もっと力を入れぬか、この軟弱軟弱?者』

「いや、そう言われても・・・」

『もういい、ちょっと力を抜け』

銀の言葉と同時に、僕の意識に何かが入り込む。

「え・・・?」

僕が違和感を感じる間に、身体が勝手に動き、槍の柄を掴みなおし、両足が適度に広がった。

そして、全身の筋肉に力がこもる。

両腕が小刻みに震えて槍を揺らし、足、腰、背中の筋肉が連動して槍を引き抜こうと僕の体を反らせ始める。

びくともしない、と思われたやりが少しずつ動き始め、抜けた。

「ふん、意外と遺骸と?てこずったなしししし」

僕の口から、僕の声が勝手に漏れ出す。

「ああそうだ、礼を言っておこう小僧。ありがとよ。それと、返すぞ」

がくん、という衝撃と共に、全身に満ちていた違和感が消失する。

「え・・・?今の・・・」

若干の混乱を抱いたまま、視線を手の中の槍に落とす。

僕の身長ほどの棒に、顔が映りそうなほど磨きこまれた鋭い三角形の穂先がついている。

特に意匠のようなものはないが、白銀色の槍からは一種の芸術品を思わせる雰囲気が漂っていた。

『ああ、お前の身体を少し貸りて借りて?いたしししし』

耳元で、銀がこともなげに言う。

『お前がよいのならば、毎晩化して?貸してもらいたいものだがしし』

「いや・・・それはちょっと・・・」

つい先ほどまで身体を支配していた違和感と、銀の言動の端から漂うかすかな狂気に顔をしかめつつ、僕は返答を濁す。

『きししししなに、礼は霊は?十分にするぞ』

「いや、礼って言われても・・・」

『礼の例を挙げろとな?ぎしししししし』

銀は自分の駄洒落にひとしきり笑った後、続けた。

『まあ、まずは我の穂先を見てみろ』

言われるがままに槍を持ち上げ、その表面を見てみる。

磨きこまれた鏡を思わせる、白銀色の金属の表面に、僕の顔や部屋の壁が映りこんだ。

「ん?」

穂先に移りこんだ部屋の中に、僕は見慣れぬものを見つけた。

ちょうど僕の右斜め後ろ、すぐ側に立つ何者かの姿。

「!」

とっさに振り向くが、部屋の中には何もいない。

視線を穂先へと戻すと、立っていた何者かは屈んでいた。

そこに映っていたのは、ショートカットの黒髪に、起伏の少ないスレンダーな体型の、20前ほどの女だった。

白い、長袖のワンピースにも似た長衣を身に着けている。

穂先に映る女は、金属の鏡面越しに僕と目を合わせ、口の端を吊り上げて笑った。

『どうだ?それが、我だ』

耳元の銀の声にあわせるように、穂先の中の女の口が動く。

『では例をさせてもらうぞ・・・』

銀はそう言いながら、穂先の中の僕の股間へ手を伸ばした。

細くしなやかな印象を与える指が、寝間着代わりのジャージに触れる。

「うわ・・・!」

鏡面に映った僕の股間に彼女の指が触れると同時に、僕の股間に何かが触れる。

『ししし・・・』

銀は笑みを浮かべながら、二度三度と指を動かす。

その動きにあわせて、数枚の布越しに指の感触がペニスに伝えられる。

「え・・・?え・・・?」

意識は完全に混乱していたが、肉体は素直なもので、謎の感触にペニスは大きくなりつつあった。

銀は僕の反応を楽しむように、複雑に指を操り、ペニスを撫で、擦った。

彼女の指に合わせるように、ペニスが刺激に震え、跳ねる。

「な・・・何これ・・・あうっ」

彼女の手がペニスを離れ、ジャージのズボンの腰から中へ差し込まれる。

しかし現実にはジャージのズボンにも、腰周りのゴムの締め付けにも変化はない。

そして実際には存在しない手が、直接僕の下着の中に侵入してきた。

『ひしし・・・』

銀が僕の肩に身体を密着させ、耳元に息を吹きかけつつ、ペニスを扱き上げる。

温かい空気の流れが耳元をくすぐり、柔らかな手のひらの感触がペニスの表面を上下に動く。

「うぁ・・・」

現実には存在しないはずの、手のひらや吐息の感覚に、僕は思わず声を上げていた。

鏡面の中では、銀は空いた手でジャージのズボンと下着を下ろし、僕のペニスを露出させていた。

そして滲み出した先走りを、親指の腹で亀頭全体に塗り広げている。

亀頭を撫で回す、粘液にまみれた指の感覚に僕は身悶えした。

「ぁあ・・・!」

『少し、おとなしくしていろ・・・』

鏡面越しに銀が僕を見、ペニスから手を離すと、僕の手をとる。

不意に手首に力が加わり、見えない何かによって床の上に仰向けに押し倒された。

槍の穂先が視界から離れ、彼女の姿が見えなくなる。

しかし、胸の上に加えられた圧迫感が、彼女が今何をしているかを物語っていた。

「・・・ひぁっ!?」

不意に、生温かく柔らかな感触がペニスを刺激した。

かすかなざらつきを含んだそれは、亀頭やカリ首、裏筋を這い回り、敏感な箇所を刺激する。

「ぁあ・・・あぅ・・・」

始まったときと同じように、唐突に点の官職がペニスから離れる。

『お前は、いい声で鳴くな?ししししし・・・』

銀の声が耳元で囁いた直後、亀頭が柔らかな何かに包まれる。

それは生温かく、湿っており、まるで人の口内を思わせた。

ただ包まれているだけだというのに、その感触は心地よかった。

「ぅあ、ぁぁぁ・・・」

『これしきのことで声を上げおって。咥えた加えた?だけだぞししし』

彼女の声の後、亀頭を包む何かがペニスの根元へと下がっていく。

柔らかな何かがペニス全体を包んでいき、亀頭部に先ほど触れていたざらついた感触が接触する。

包み込む柔らかさが、ペニス全体をやさしく揉み上げ、亀頭に触れるざらつきが、敏感な粘膜を刺激する。

「うぁぁああ・・・」

身悶えしようにも、胸を圧迫する重量感が身体を押さえつけ、顔以外の自由を奪っている。

そのため僕は、与えられる快感に顔をゆがめながら、頭を左右に振ることしかできなかった。

ふと、視界に部屋の片隅に置かれた旧型のブラウン管式テレビが入る。

電源は入っておらず、画面には部屋の様子が映っているだけだった。

そこには仰向けになった僕の胸の上に腰を下ろし、股間に顔を近づけてペニスを頬張っている銀の姿が映っていた。

『・・・』

テレビの画面越しに、銀が僕の視線に気が付く。

すると彼女は、身に纏った長衣の裾に手を伸ばしたくし上げた。

引き締まった白い太ももから、何も身につけていない足の付け根までがあらわになる。

彼女はペニスから顔を上げることなく腰を持ち上げ、僕の顔のほうへと下半身を移動させる。

そして、腰を僕の顔の上へ下ろした、

「くはぁ・・・!」

顔を圧迫感と、かすかな潮の香りを含んだ甘い匂いに覆われる。

画面に映る僕の顔には、銀が腰掛けていたが、不思議と息苦しさはなかった。

ただ、虚空から生じるむせ返るような甘い匂いが、僕の意識から思考を奪っていく。

「ぃ、いい・・・」

ペニスの根元を囲む、柔らかな何かの縁がペニスを強く締め付ける。

画面の中では、銀が唇をすぼめてペニスを吸っていた。

彼女が顔を持ち上げるのにあわせて、柔らかな感覚が根元から亀頭のほうへと戻っていく。

そして彼女が頭を下ろせば、感触が根元へと下がり、ペニスが温かな物に包まれていく。

彼女が頭を上下させるのに合わせて、ペニスを包む感触もまた上下していた。

甘い香りと、ペニスに注がれる刺激が意識を蝕んでいき、限界が訪れた。

「あ、ああぁぁぁぁ・・・」

情けない、ため息めいた声を漏らしながら、僕は射精していた。

銀はじっと、ペニスを咥えたまま射精が終わるのを待ち、数度ペニスを吸ってから口を放した。

ペニスを覆っていた柔らかな感触が消え去り、代わりに生温かい粘液の感触がペニスに絡みつく。

『かなり出したな?ん?しかしまだ根を上げてもらっては困るぞししししし』

耳元で銀の声が囁きながら、画面の中の銀は腰を僕の顔から上げて、膝立ちのまま身体を反転させつつ後退する。

そして僕の腰の上、つまりペニスの真上でとまった。

『さあ・・・』

画面の中、銀は口の端を吊り上げつつ、言葉を紡いだ。

『我を貫け』

銀が腰を下ろし、濡れぼそった彼女の女陰が亀頭に触れ、滑らかに挿入されていく。

画面の中のペニスが、彼女の女陰に飲み込まれていくのにあわせて、ペニスを包む感触が上書きされていく。

ペニスに纏わりつく生温かい精液の不快な感触から、柔らかな襞がみっちりと詰まった肉壷の感触へ。

「あぅ・・・!」

『どうした?槍で貫いたほうが声を上げるとは逆だ逆だししししし・・・!』

耳元の声が笑い、画面の中の女が笑い、ペニスを覆う感覚がひくひくと痙攣する。

そのペニスをくすぐる襞の感触に、僕は身悶えしながら全身を反らせた。

『お?暴れ馬だな?乗馬だな?ししししし!』

画面の中で、銀がロデオの騎手かなにかのように、右手を僕の胸につき左手を振り回しながら、僕の身悶えにあわせて体をゆすった。

『ほうれ、出すがいい!』

「うぁああああっ!!」

うねり波打つ襞の感触が、上下運動によりペニスの表面を隅から隅まで蹂躙する。

ペニスを通じて注ぎ込まれる快感が、全身の感覚を飲み込み、ペニスだけが僕の体であるかのように錯覚させる。

そして意識の奥で、稲光のような火花が走った。

「ああ、ああああああっ!!」

叫び声と共に全身が弓なりに反り、身体の奥から、渦巻いていた感覚が噴き出す。

「あああああああっ!」

ペニスは自らの身を絞っているかのように震えながら、精液を放ち続けた。

「ああ、ああああ・・・」

やがて射精の勢いは収まっていき、

「あ・・・ああ・・・」

漏れ出るかのような一滴を最後に、止まった。









『なかなかいい声で鳴いたな?』

洗面所の鏡の中で、色濃い疲労を漂わせる僕にしなだれかかるようにしながら、銀が言った。

『我と共に行動するのであれば、毎晩味わせてやるぞ?ししし・・・』

「・・・どうしようかな・・・」

パンツの内側にこびりついた精液を洗い落とし、軽くすすいで洗濯機に放り込む。

毎晩この作業をしなければならないというのは面倒だが、それでも魅力的な提案ではあった。

『我自体はこの部屋に置いておいてよい。おいて置いて?ししし。ただ、お前を通じて様々なものを見聞きし、夜に身体を借りるだけだ』

よい条件であろう?と続けると、彼女はししし、と笑った。

確かによい条件だ。ただこちらは、いつもどおり生活して、夜の間だけ身体を貸すだけでよい。

それだけであの快感が味わえるのだ。

僕の中で、答えはすでに決まっていた。

「分かった、受けるよ」

『よしよし、いい返事だししししし』

ふと鏡の中で彼女が笑いを止めた。

『ところで小僧、お前の名は?』

「僕?僕は・・・」

鏡から目を離し、壁に立てかけられた銀を手に取りつつ、答える。

「古賀修二」











薄暗い部屋の中央で、エレジアは直立の姿勢をとっていた。

「隊員から二人、寄生されていた本人の一人。合計死者三名ですか・・・」

彼女の目の前の机に着く、長い髪に黒スーツを纏った二十代後半ほどの男が、紙束をめくりながらつぶやく。

「そして肝心の銀は取り逃がした、と」

「・・・はい、九谷様・・・」

異常な緊張に震える声で、どうにか男の問いに答える。

全身は硬直し、背筋を気持ちの悪い汗が流れ落ちていく。

男は彼女の上司に当たるとはいえ、ただの魔術師、つまりは人間のはずだ。

人間である九谷と、淫魔の自分。どちらが上かは明らかなはず。

だというのに、なぜ、こんなに自分は九谷を恐れているのだろう?

「・・・平山栄一君、篠塚健君、メアリ・シェーファー君」

九谷は椅子の背もたれに背を預けながら、死んだ三人の名を口にした。

「平山君は魔術回路応用論で優れた成績を修めましたし、篠塚君も材料工学に優れていましたね・・・」

「・・・」

九谷は軽く目を閉ざし、言葉を続ける。

「シェーファー君は『大図書館』の運営事務員で、同僚から慕われていました」

エレジアは、死んでいった二人の部下と、『大図書館』の施設内で時折見かけた彼女の姿を思い出していた。

「テルミドール君」

「はい」

「今回の件に関しては管理が不十分であった『バビロン』の収容施設に責任があります。よって君への責任は不問とします」

九谷の言葉に、エレジアの目が点になる。

「そこで君には、引き続き銀の捜索と捕獲の指揮をお願いしたいのですが、引き受けてくれますか?」

「え・・・ええ、はいもちろん」

「それでは『帝国』から、腕利きを補充として2名貸し出すよう要請しておきますので」

「あ、ありがとうございます・・・」

「では以上です。後で資料を送っておきますので、目を通しておいて下さい」

エレジアは一つ頭を下げると、九谷の部屋から退いた。

ドアを閉め、深く息をつく。

「・・・」

いつの間にか汗は引いており、手の震えも収まっていた。

「・・・よし」

今度こそ、捕えてやろう。

エレジアは決意を胸に、足を踏み出した。





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