虚構使いの物語 その1




【虚構】(きょこう)

@つくりごと。

A作者の好み・ねらいによっていかにも事実であるかのように、小説・戯曲などとして組み立てること。また、そのもの。フィクション。







「……ん? 何だこれ……」

 目の前のモニターに映し出された『モンスター娘百覧』という名のホームページ、その上部にある見慣れない広告を見つけ、俺はそう呟いていた。

「現実では出来ない体験、してみたくありませんか? 貴方の願望、叶えます……胡散臭い広告だな……」

 実に胡散臭い。現実では出来ない体験……イメクラの宣伝か?

「一体、どこの店だよ……ちょっと見てみるか」

 どうせ大した事が書いてあるとも思えないが、見るだけならタダだ。そう思った俺は、広告をクリックしてみた。すぐにページが切り替わり、新たな画面が映し出される。

「えーと、なになに……『貴方は現在、何か望んでいる事がありますか? それは、現実では絶対に叶えられないようなものですか? もしそうであるならば、YESを選択してこの先へ進んでください。そうではないという方、あるいはこの話に興味が持てないという方は、NOを選択して速やかに退出してください』……変な広告」

 まあ、そう言われるとNOとは答えにくい。どんな内容なのか、少しは興味もあるしな。

「YES……と」

 マウスをクリックする。次に現れたページには、こんなことが書いてあった。

『YESを選んだ者よ、このページへようこそ!

私の名は虚構使い。中々胡散臭い名前だろう?

だが実際胡散臭いのだからそれは仕方ない。不運だと思って諦めてくれ。

さて、一応確認しておこう。

君は現実では叶えられないような願望を叶えてみたいと思った。間違いないね?』

 そして、再びYES、NOの選択肢。虚構使いって何だとか胡散臭いって自分でわかってるのかよとか胡散臭いのは否定しろよとか突っ込み所はいくつかあったが、気にしないことにしてYESを選択する。

『そうか、よくわかった。

だが念のためにもう一度だけ考えてみて欲しい。

……本当に、いいんだね?』

「やけにしつこいな……YES、と」

 深く考えることなく、YESを選ぶ。

『OK、君の熱意は確かに受け取った!

では、君に私への連絡先を教えよう。

ここに連絡するときは、タイトルに必ず『虚構使い』と入れてくれ。

……一応言っておくけど、悪用はしないでくれよ? 最近迷惑メールが多くて困ってるんだ。

では、君からの連絡を待ってるよ』

「メールアドレス……ここに連絡しろってか?」

 うーむ、どうしたものか……メールを送ったら、勝手に出会い系サイトに登録されてたりとかするかもしれないしな……。

「まあ、フリーメールを使えば大丈夫だろう」

 そう判断し、俺はフリーメールのアドレスの一つを使ってそこにメールを送った。







 ――そして、数日後。

「えっと……待ち合わせ場所は、ここで合ってるよな?」

 手元にあるメモを見て、そこで間違いがない事を確認する。

 あの後、俺はここで虚構使いを名乗る人物と会う約束をすることになった。彼――かどうかはわからないが――曰く、実際に会わなければ願望を叶える事は出来ないらしい。美人局の類に巻き込まれる可能性も考えはしたが、日頃からそれなりに鍛えているので大丈夫だろうと判断し、ここに来たのだ。

「……後五分か。しかし、一体どんなやつなんだろう?」

 ふと、虚構使いと名乗っていた相手の事に思いを馳せてみる。考えてみれば、俺は相手が男か女なのかもまだ知らない。

(実はすごく美人とか、可愛い子だったらいいな……まあ、実際はどこにでもいるような冴えない男とかなんだろうけど)

 世の中、自分にとって都合のいい事などそうそう起こるものではない。だがそれでも期待してしまうのは、人類として生まれ持った性なのだろうか。

「……っと、もう時間か。えっと……待ち合わせの時間に、鈴を五回だったな……」

 ポケットから小さな鈴を取り出し、ちりんちりんと鳴らす。何でもこれが、虚構使いとやらが俺を識別する為の目印らしい。

「これで、いいんだよな……?」

 鳴らし終えた後、鈴を再び仕舞い込む。その後で周りを見回してみるが、誰かがこちらに近づいてくる様子はない。

「……ひょっとして、からかわれたのか?」

 鈴を鳴らしてから五分が経過した後、俺の脳裏にそんな考えが浮かぶ。諦めて立ち去るとしよう……そう思いかけたその時。

「……お待たせしました。貴方がエムさんですね?」

 エム、というのは俺が虚構使いとの会話で使ったハンドルネームだ。すぐに後ろを振り向く。そこにいたのは、黒いスーツに身を包んだ長身の男だった。背が高いだけではない。男の手足はあたかもモデルであるかのように長く、その容貌も優れた美術品を思わせるほどに整っている。人並み程度の外見しか持っていない俺は、正直この男の外見に嫉妬していた。

「えっと……あなたが虚構使いさん、なんですよね?」

「ええ、そうですよ。今日はよろしくお願いしますね」

 にこりと、嫌味の感じられない笑顔をこちらに向ける男。

「あ、ああ。よろしく」

 少し気後れしながらも、それをなるべく表面には出すまいと取り繕う俺。

「……さて。立ち話もなんですし、場所を移しましょうか」

 そう言うと、男は歩き始めた。俺もその後を追うことにする。

「ところで、どこに行くんですか?」

「私の事務所ですよ」

「事務所ね……行ってみたら強面のお兄さん達がいっぱいいる、なんて事はありませんよね?」

「ご安心を。事務所と言っても、私一人しか使ってませんから」

 そう言いながら、男はやや裏通りの方へと向かっていく。一体どのくらい歩くのか……そう思い尋ねようとした時、男は足を止めた。

「……着きました。ここです」

「ここ……なんですか」

 そこは、築三十年は過ぎていようかという古ぼけたビルだった。コンクリートの壁には小さなヒビがいくつか見られる。中はもちろん、辺りに人気は全くない。

「ここの三階が私の事務所なんですよ」

「……入った瞬間、崩れたりしませんよね?」

「多分、大丈夫ですよ。今まで何度も出入りしましたが、一度も崩れた事はありませんし」

 いや、あったら困る。

「さあ、中に入りましょうか」

 そう言うと、男はビルの中へと入っていった。仕方なく、俺も後に続く。

「……お待たせしました。ここが、私の事務所です」

 階段を上って少し歩いた後、男はある部屋の前で足を止めた。そして扉に掛かった『現在留守にしております』と書かれたプレートを裏返し、鍵を開けて中に入る。

「ここか……随分殺風景な部屋ですね……」

 その部屋には大きめの机が一つと椅子が二つ、あとはパソコン一台だけしか置いていなかった。時計や本棚といったものすら置いてない。一体ここで何をやっているのか疑問に思ったが、それよりも先に聞いておきたい事がある。椅子の一つに腰掛けてから、俺はおもむろに口を開いた。

「あのー、ちょっと聞いておきたいんですが……」

「はい、何でしょうか?」

「いや……願望を叶えるって言ってたけど、ここでやるんですよね? 具体的にはどんな風にやるんですか?」

「おや、まだ話してませんでしたか?」

「はい。料金は聞きましたが、詳しい事はまだ何も聞いてません」

 メールのやり取りの中で料金を尋ねた所、一時間で一万円だと言われたが……肝心の何をするのかという事は全く聞けてなかった。普通、内容の方を先に言うものだと思うのだが。

「そうでしたか……では、お話しましょう。実はですね……私にはちょっとした能力がありまして、相手が望んでいることを体験させる事ができるんです」

「……それって、催眠術みたいなものですか?」

「まあ、似たようなものかと。基本的に、どんな体験でも叶える事ができます。それがたとえ、現実にはありえないような事でも……ね」

 一瞬、男が顔に冷たい笑みを浮かべる。それを見た俺は、何故か心臓が凍り付いてしまいそうな恐怖を感じていた。

「そ、その体験ってのはどんな感じなんですか? はっきりと自覚できる夢みたいなものなんですか?」

「夢よりもリアルなものですよ。体験している間は五感もはっきりとしていますし、終わってもそれをきちんと思い出せるでしょうから……あ、もちろんR18のエロエロな体験だってできますから、ご心配なく」

 ……何故か、胸中に不安がよぎった。

「あ、R18のエロエロな体験って……」

「色々な事ができますよ。何人もの女の人と乱交してみたいだとか、漫画やゲームなんかにしか登場しない人外の女性とエッチな事をしたいだとか。あるいは……女の人に、犯されてみたいだとか」

 ドクン、と心臓が跳ねた気がした。こいつは何故、そんな事を。

 実を言うと、俺にはこの男が言うような――というより、そのものずばりな願望があった。『モンスター娘百覧』というホームページを見たことがある人ならおおよそ想像が付くかもしれない。

 たった一度でいいから、人外の女性――それも一人ではなく、大勢に心行くまで責められてみたい。それが、いつしか俺の心の奥底に芽生えていた願望だった。

「で、でもそれは、あくまで現実ではないんですよね?」

 動揺する内面を表に出すまいと、平静を装いながら質問を口にする。

「ええ、あくまでも体験するだけ……所謂虚構に過ぎません。ですが虚構と言っても、現実と見分けが付かない程よく出来たものです。まあ、気に入られないというのなら仕方ありませんが……」

「い、いや、別に気に入らないとは……ただ、本当に一万円も出す価値があるのかと」

「ふむ……」

 顎に手を当て、考え込むような素振りを見せる男。やがて結論が出たらしく、男は口を開いた。

「では、こういうのはどうでしょう? 料金は後払いで、貴方がそれだけ払う価値があると判断した時のみ払って下さればOK、というのは」

「えっ……そ、そりゃあ構いませんけど。もし俺が嘘を吐いて払わなかったらどうするんですか?」

「ご心配なく。貴方はきっと、満足するでしょうから」

 再び、あの冷たい笑みが見えた気がした。

 コノ男ノ話ヲコレ以上聞クナ。引キ返セ、今ナラマダ間ニ合ウ。そんな声が、どこかから聞こえてくる気がする。

「それで、どうされますか? それでよければ、今すぐ貴方の望みを叶えて差し上げますよ」

 理性は断れと命じていた。本能は受け入れろと叫んでいた。

 そして、俺は……。

「……じゃあ、それでお願いします」

 本能に従い、そう口にしていた。

「……わかりました。では……目を閉じてください」

 言われるがままに瞳を閉じる。直後、額に何かが触れた。思わず飛び退こうとしたが、体は金縛りにあったかのように動かない。

「では、これより貴方の望みを叶えましょう。時間はきっかり一時間、たっぷりお楽しみください……World of fiction 」

 ぱちん、という音が聞こえた。はっとして目を開けると、周囲の風景は一変していたではないか。先ほどまではコンクリートでできた無機質な部屋にいたはずだったというのに、今目の前に広がっている景色は魔界と呼ぶのがふさわしいほどおどろおどろしいものになっている。

「なっ……何だこれ……」

 突然の変化に、俺は驚きを抑えきれずにいた。と、そこへ。

「あら……こんな所に人間なんて、珍しいわね」

「本当だねぇ。人間一人で魔界をうろついているなんて、無用心にも程があるよぉ」

「でも安心してね。私たちが責任持ってアナタを可愛がっ……もとい、保護してあげるから♪」

 いるはずのない存在が、俺の目の前に現れた。

 一人目は、女性の上半身と無数の触手に覆われた下半身を持つ、スキュラと呼ばれる存在。

 二人目は、半透明の体を持つ、スライム娘と呼ばれる存在。

 そして三人目は、肉感的な肢体にコウモリのような羽と黒い尻尾を生やした、所謂サキュバスと呼ばれる存在。

 どれもこれも、俺が思い描いていたものよりもはるかに美人で……おまけにとんでもなく淫靡な雰囲気を漂わせていた。

「あ……ああ……」

 気がつけば、俺は自ら彼女達の方へと足を進めていた。

 元々これは俺が望んでいた事。ならば、この状況をどうして拒否できるだろうか?

「あらあら……貴方、ひょっとして私達に搾られたいの?」

「どうもそうみたいだねぇ……ふふ。人間じゃない相手に虐められて、精液びゅーびゅー漏らしたいんだぁ……やーらしい」

「アナタ、変態さんなんだね……いいよ。私達がいーっぱい、可愛がってあげる♪」

 そんな俺を前に、三人はくすくすと笑う。そしてスキュラのお姉さんが、下半身の触手を俺に向けて伸ばした。触手は俺の動きを封じるように、四肢に怪しく絡みつく。

「いきなり全員で責めちゃうと壊れちゃうだろうから、まずは私から貴方を責めてあげるわね。ふふ……覚悟はいい?」

「は、はい……」

 ごくり、と唾を飲み込む俺。

「あっ、スキュラずるーい!」

「私達にも責めさせてよ〜!」

「はいはい、二人とも慌てないの。後でちゃんと順番は回してあげるから」

 抗議する二人を、穏やかになだめるスキュラさん。どうやらこの三人の中では、彼女が一番上の立場らしい。

「さて、と……とりあえず、邪魔な物は脱いじゃおうか」

「えっ……うっ、うわっ!?」

 触手がしゅるしゅると音を立てて動き、器用に俺の服を脱がせていく。あっという間に、俺は生まれたままの姿にされてしまった。

「うふふ……まずは、ここかな」

「……ふあっ!?」

 胸元を舌で舐められた様な感触に、思わず声が漏れる。スキュラさんの触手の先端が、俺の乳首を撫でたのだ。

「あらあら、軽く撫でただけでそんな声を上げるなんて……ずいぶん敏感なのね」

「あっ……すっ、すみません」

「ふふ、謝らなくてもいいわ。敏感な人、嫌いじゃないし」

 淫靡な笑みを浮かべながら、スキュラさんはさらに触手を伸ばした。両腕に絡みついた触手は腕を拘束しつつ左右の乳首を舐めるように責め立て、下半身に伸ばされた触手はちろちろと先端でくすぐるような刺激を陰茎や玉袋に与えてくる。

「あっ、くぅっ……!」

「ふふ……ここはどうかしら?」

「そ、そこは……はうっ!?」

 触手の一本が新たに伸ばされ、お尻の穴の入り口をくすぐる。そこから送り込まれる怪しい刺激に、俺はなされるがままになっていた。

「ほら、だんだん奥に入ってくるのがわかるでしょ。どんな感じ?」

「あっ、ふあっ!? な、何か変な感じが……あっ、あふぅぅぅっ!?」

 じわじわと、触手が内部をくすぐりながら奥に入り込んでいく。触手は粘液で濡れていたため、痛みは全くなかった。いや、それどころかこれは……。

「どう、気持ちいい?」

「きっ、気持ちいい、ですっ! うあっ、ああっ!?」

「そう、気持ちいいのね。じゃあ、もっとしてあげる」

 スキュラさんがそう言うと、触手は更に奥へと入り込みはじめた。じわじわと触手が入ってくるのに合わせるように、俺は情けない声を上げてしまう。

「ふふふ……今から貴方の前立腺を刺激してあげるわね」

「えっ……はぁうっ!?」

 体内に入り込んだ触手がある一点を刺激した瞬間、俺は背筋を雷が貫いたかのような快感を感じ、思わず体をのけぞらせていた。

「いい反応……もっと感じさせてあげるね」

「ふぁっ、あっ、あああっ!? す、スキュラさ……んくぅぅっ!?」

 そんな俺の反応に気を良くしたのか、スキュラさんはにこにこと微笑んでいた。だが責められている俺には、それに見惚れる余裕などない。

「ほらほら、おちんちんも一緒に責めてあげる。どう、気持ちいいでしょ?」

「ひぅぅっ!? ぁくっ、うあっ、ふあああっ!?」

「ふふ、答える余裕もないみたいね。目がとろーんとしてるわ」

 それは、壮絶な快感だった。ぬめった触手で前立腺と亀頭、そして玉袋までも同時に嬲られるという本来ありえるはずのない体験。だがそれだけの快感をもってしても、俺は未だ射精することができずにいた。何故なら、肝心の竿の方には一切の刺激が加えられていなかったからだ。

「す、スキュラさ……ふぁぁん!?」

「ふふ、どうしたのかしら?」

「い、イかせ、て……もう、限界……」

 放出を許されぬまま延々と責め続けられ、俺はどうにかなってしまいそうだった。このまま責められていたら、ものの数分で正気を保てなくなってしまう。そんな確信めいた予感が、どこかにあった。

「イきたいのね……いいわ、気持ちよくイかせてあげる」

 スキュラさんはそう言うと、新たな触手を肉棒目掛けて伸ばした。触手は陰茎を覆い尽くすように巻きつき、そのまま前後に激しく扱き立てる。

「さあ……イっちゃいなさい」

「ふああっ……あああああ――――っ!?」

 既に限界が近かった身では堪える事など叶うはずもなく、瞬く間に俺は大量の白濁を先端より放出させていた。だが、触手の動きは止まらない。

「あひっ、あっ、くぁううっ!?」

「うふふ……尿道に残った分も、ちゃんと搾り出してあげるわね」

 射精直後で敏感になっているモノを、スキュラさんの触手はしばらくの間弄繰り回し続けた。そして宣言通り残っていた精液を全て出し尽くさせた後、ようやく肉棒を解放する。

「……はい、おしまい。気持ちよかった?」

「は、はい……すごく良かったです……」

 息も絶え絶えに、俺は何とか答えを返す。あまりにも凄い快感を味わったためか、体に力が全く入らない。解放されたはずの一物や弄られていた場所には、未だ触手に嬲られた感触が残っている。

(これが……虚構……)

 なるほど、確かにこれなら一万円の価値は十分に……いや、むしろ安すぎるくらいだ。これほどリアルな体験ができるのなら、百万円払ってもお釣りがくる。

「さて、と……次はどっちがするのかしら?」

「えっ……あ、そうか」

(そう言えば、まだスライム娘さんとサキュバスさんがいたんだっけ……まてよ、それじゃあさっきの情けない姿も全部っ……!)

 触手に責められて二人の前で痴態を晒した事に気づき、思わず赤面する。

「んー? 何だか随分顔が赤くなっちゃったねぇ。ひょっとしてさっきの事、思い出しちゃったぁ?」

「さっきのアナタ、とーっても可愛らしかったよ。女の子みたいにアンアン喘ぎっぱなしで……ふふふ、ますます赤くなっちゃったね♪」

「うぐ……っ!」

 俺の心情に気づいたのか、スライム娘さんとサキュバスさんがそんなことを口にする。正直、ものすごく恥ずかしい。だが心のどこかで、この状況を望んでいる自分がいた。

「こらこら、あんまり虐めちゃだめでしょ?」

「そうだねぇ、じゃあお詫びに……今からあなたの事、いっぱい気持ちよくしてあげるからねぁ」

 そう言ってにっこりと微笑むと、スライム娘さんはゆっくりとこちらへ近づき、後ろに回って俺の体を抱きしめた。ぬるりとした感触に、俺は思わず身を震わせる。

「うぁっ……き、気持ちいい……っ!」

「ふふ、まだ抱きしめてあげただけだよぉ? 気持ちよくなるのはぁ、こ・れ・か・ら」

 ふぅっ、と耳元に暖かい息を吹きかけられる。それに答えるように、俺のモノはむくむくと大きくなっていた。

「あららぁ……さっき出したばっかりなのに、もう回復するんだぁ……ふふ、これは責めがいがありそうねぇ」

「お、お手柔らかにお願いします……」

「んー、どうしよっかなぁ?」

 にこにこと微笑みながら、スライム娘さんは半透明の手で俺の体を撫で回す。そしてその指先が胸元に伸び、乳首を捕らえた。

「あっ……ううっ!?」

「そういえば、さっきここをスキュラの触手に責められてたよねぇ。どう、どっちが気持ちいい?」

「ど、どっちって……はっ、くぅっ!?」

「だーかーらー、スキュラに責められた時と私に責められるのと、どっちが気持ちいいかって事。ねぇ、どっち?」

「そ、そんなの比べられ……ふあっ!?」

 答えを遮るように、乳首に与えられる刺激が強くなった。喘ぐ俺を、スライム娘さんは怪しく微笑みながら見下ろしている。

「もう……ダメだよぉ。こういうときはぁ、私の方が気持ちいいって言うの。いい、わかったぁ?」

「は、はい……あっ、ああっ!?」

 乳首を弄りながら、スライム娘さんは自分の体を俺の背中に押し付けた。背中から伝わる怪しい感触に、思わず体の芯が震える。

「ふふ……そろそろこっちも触ってあげるねぇ」

「あっ……ふあっ!?」

 スライム娘さんが乳首を弄る手を止め、俺の下半身へ手を伸ばす。既に十分すぎるほど張り詰めていたそこに触れられただけで、俺は思わず大きな声を出して喘いでいた。それを聞き、スライム娘さんはにんまりと微笑む。

「ふうん、触られただけでそんな声あげちゃうんだぁ……こうすればもっと、エッチな声を聞かせてくれるかなぁ?」

「え……はっ、くふぅぅぅっ!?」

 スライム娘さんは俺の一物を握り締めたまま、ゆっくりと上下にしごき始めた。ぬるぬるとした手の感触に、口から喘ぎ声が勝手に漏れる。

「ふふ……このまましごいてあげるねぇ」

「あっ……ううっ……」

 手で扱かれているだけだというのに、俺は既に腰が砕けそうな程の快感を味わっていた。そんな俺の反応を楽しんでいるのか、スライム娘さんはにやにやと笑っている。

「ほらほらぁ、段々早くしていくよぉ。いつまで我慢できるかなぁ?」

「あっ、ああっ、うあっ、あああっ!?」

 ぬるぬるする手で扱かれる感触は想像していたよりも数段上の快感を俺にもたらしていた。そんな快感を俺が我慢できようはずもなく、たちまちのうちに体の奥から射精感がこみ上げてくる。

「うぁぁ……もっ、もうっ……!」

「ふふ、もうイっちゃうんだぁ……いいよ、いっぱい出してねぇ」

 ずちゅずちゅという音を立てながら、発射寸前のモノを激しく扱かれる。

「だっ、駄目っ……あっ、ああああああ――っ!?」

「ふふ、イっちゃったねぇ……でも、まだ止めてあげなーい」

「あっ……ああああっ!?」

 先端から精液を吹き出す俺の肉棒を、スライム娘さんはそのまま扱き続けた。射精中のモノに与えられる刺激は強烈で、俺は頭が真っ白になったかのような感覚を覚えていた。

「ほらほら、このままもう一回イかせてあげるねぇ」

「むっ、無理っ……あっ、くぅぅぅっ!?」

「えー? でも君のオチンチン、まだまだ硬いよぉ? これってまだまだ出せるって事だよねぇ?」

 意地悪な笑みを顔に浮かべながら、なおもスライム娘さんは俺の一物に刺激を加え続けた。そうこうするうちに、再び体の奥から射精感が込み上げてきたではないか。

「あっ、あああっ!? ひぅっ、くっ、かはぁぁぁっ!?」

「うわぁ、すっごくエッチな顔……ふふ、またイっちゃうのぉ?」

「はっ、はぃぃ……あっ、あっ、あああっ!?」

「じゃあ……イっちゃえ〜!」

 ラストスパートとばかりに、スライム娘さんの手の動きが更に激しくなる。すでに限界が近づいていた俺には、その快感に耐えることはできなかった。

「うあっ、ああっ……あっ、ああああああああ――っ!?」

「ふふ、いっぱい出たねぇ」

 一回目の射精よりも多い白濁を吐き出し、俺は絶頂に達していた。連続射精の快感で思わず腰砕けになり、そのまま地面に崩れ落ちる。

「……ふふ、どうだったぁ?」

「す、すごかった……です……」

 途切れ途切れに、俺はそう答える。スキュラさんにされた時も凄まじく気持ちよかったが、スライム娘さんの責めもそれに勝るとも劣らぬ快感だった。通常なら出してしまえば急速に気分も萎えてしまうものだが、この快感は出した後でもまた味わいたくなるほど魅力的で、すでに三度出したばかりだというのに、俺のモノは再び大きくなりつつあった。

「あらあら、また大きくなってしまいましたね」

「ふふ、君のオチンチンは正直だねぇ。それじゃもう一度……」

「ちょっと、次は私の番でしょ!」

 そうだ、まだサキュバスさんが残ってたんだっけ。

「……えと、よろしくお願いします」

「うん! アナタのこと、いーっぱい気持ちよくしてあげるね♪」

 そう言って魅力的な微笑みを顔に浮かべると、サキュバスさんは俺の前に屈み込んで俺の陰茎に顔を近づけた。

「ふふ、美味しそうなオチンチン……ちゅっ♪」

「ふぁっ!?」

 肉棒の先端に軽くキスされ、俺の口から思わず声が漏れる。

「アナタのオチンチン、舐めちゃうね。んっ……ちゅっ……」

「あっ、うくっ、はぁぁ……」

 サキュバスさんの舌が、俺のモノの表面を這い回る。その度に腰を震わせ、俺は情けない声を漏らしていた。

 唾液を塗り広げるように舌を這わせたり、絡みつくように舐め回したりと、彼女のフェラのテク自体は風俗嬢のそれとさほど差はない。だが彼女のフェラにより、俺は今までされた事のあるそれとは段違いの快感を味わっていた。

「ふふ……触手や粘体に責められるのもいいけど、こういう風に普通に責められるのもいいでしょ? もう人間の女の子のフェラじゃ、満足できなくなっちゃうかもね」

 サキュバスさんは一旦顔を離すと、唾液に塗れた俺の肉棒に手で触れた。そしてその指先で、亀頭の部分を撫で回し始める。空いたもう片方の手は、俺の胸元に伸びていた。

「あぅっ……はっ、はぁうっ……!?」

「んー? どうしたのかなー?」

「きっ、気持ちいい……あぁっ、あうぅっ!?」

 まるでサキュバスさんが触れた場所から、薬品か何かが体に染み込んでくるかのような気持ちよさだった。唾液に媚薬成分でも含まれているのかと思ったが、彼女が手を触れている胸元の方からも通常より遥かに高いレベルの快感が送り込まれてくるのに気づく。ひょっとしたら、彼女そのものが強力な媚薬なのではないか……いや、そうとしか思えない。

「ふふ、触れただけでこんなに喘いじゃって……これからもっと気持ちいいコトするのに、そんなので大丈夫なの?」

「うっ、あああっ!? ひぅっ、ふああっ!?」

「……まっ、そんな心配はないよね。だってアナタ、私達に虐めて欲しがる変態さんだもんね。ほらほら、これくらい平気でしょ?」

 嗜虐心を露にした笑みを顔に浮かべながら、サキュバスさんは亀頭を弄っていた手で俺のモノを扱き始めた。そして胸元を弄っていた手を、首筋や脇腹といった辺りに這わせる。

「あっ、あふっ!? ふっ、ふああんっ!?」

「ふふ、女の子みたいな声出しちゃって……恥ずかしくないの? 体を撫で回されて、オチンチンを扱かれて……そんなので気持ちよくなって、アンアン喘いじゃって……恥ずかしくないのかなぁ? ねぇ、変・態・さ・ん♪」

「ひっ、あっ、はぁっ!? はっ、恥ずかしいですっ! ああっ、はあああっ!?」

 耳元で囁かれた問いかけに、俺は思わずそう答えていた。あまりの快楽に真っ白になりかけていた脳では、その答えがどれだけ恥ずかしいものなのか理解できていなかったのかもしれない。

「ああっ、あっ、あああっ!? もっ、もう……」

「ふふ、もうイっちゃいそうなんだ……でも、まだだぁめ♪」

「えっ……ど、どうして?」

 不意に、サキュバスさんは手を止めた。その理由がわからず、当惑する俺。

「せっかくだから、手だけじゃなくて他の場所も体験させてあげようかと思って。例えば……この尻尾の中、とか」

「し、尻尾って……」

「ふふ、今中を見せてあげるね。んっ……」

 そう言うと、サキュバスさんは俺の目の前に尻尾の先端を持ってきた。そして俺が見ている前で、尻尾の先端部が開き始める。

「……どう? この中でアナタのオチンチン、いーっぱい虐めちゃうんだよ。気持ちよさそうでしょ?」

「こ、この中で……」

 サキュバスさんの尻尾の中は、女性器のようなサーモンピンク色だった。内部には粘液に覆われた無数のヒダがあり、うねうねと蠢いている。一体あの中はどんな感触なのだろうか……想像するだけで、俺の息子は硬度を増していた。

「ふふ、それじゃ一気に入れちゃうね……ほらぁ!」

「ふぁっ……あっ、ああっ、あああああああ――――っ!?」

 サキュバスさんの尻尾の中に俺の肉棒が飲み込まれた瞬間、脳天を貫くような快感と共に俺は射精していた。直前まで高められていたこともあったが、それ以上に尻尾から与えられる快感が凄まじかったのだ。うにうにと蠢きながら陰茎を嬲り、同時にきつ過ぎないギリギリの圧力で締め付けてくる内壁の前には、例え射精直前の状態でなかったとしても我慢はできなかっただろう。つまりはそのくらい気持ちよかったということだ。

「あらら……入れただけで出しちゃったね。でも、まだ止めてあげない♪」

「はっ、あっ、くぅぅぅっ!? あっ、あふぅぅぅっ!?」

 楽しそうにサキュバスさんがそう言うのとほぼ同時に、尻尾の中が激しく蠢きだした。射精中の肉棒に与えられるどぎつい快感に、全身を震わせて悶絶する俺。

「ほらほら、何度でも出していいよ〜♪」

「あっ、あああああああ――――っ!? やっ、ふぁっ、ひぃぃんっ!?」

 瞬く間に二度目の射精。だが、それでも彼女の責めは止まらない。いや、止まるどころかむしろ、より激しくなっていた。サキュバスさんは尻尾そのものを激しく上下させ、更なる快感を俺に与えようとしている。その様子は傍から見ると、透明なオナホールで一物を扱かれているようだったかもしれない。

「あっ、ああああっ!? まっ、またイっちゃ……うっ、うあああああああ――――っ!?」

「ふふ、美味しい精液……もっと頂戴♪」

 三度目の射精。だがそれでも彼女の責めは続く。時折捻りや回転などを加え、飽きる事のない凄絶な快感を送り込まれる。

「ちょっと、出させすぎじゃない? この後の分もちゃんと残しておきなさいよ」

「んー……それじゃ、次で終わりにするね♪」

「ああっ、ふああっ!?」

 ラストスパートとばかりに、尻尾の内部が更に激しく動き始める。内部で肉棒を揉みくちゃにされ、俺には喘ぐことしかできない。

「ひうううっ!? くぁっ、あああああっ!?」

「ふふ……イっちゃえ♪」

「ひっ、くぅっ、あっ、あああっ……ふあっ、ふあああああああ――――っ!?」

 耳元で甘く囁かれ、俺は限界を迎えた。陰茎の先から白濁液が出て行く間、俺はさぞかし情けない顔をしていたに違いない。実際、そうならない方がおかしい程の快感だったのだから。

「いーっぱい、出たね……私の尻尾、そんなに気持ちよかった?」

「は、はいぃ……最高、でしたぁ……」

 あまりにも激しすぎる射精の余韻で放心状態になりながら、それでも答えを返す俺。

「そうなんだ。よかった♪でも……私のナカは、もっと気持ちいいんだよ♪」

「きっ、気持ちいいって……さっきの、よりも?」

「うん、楽しみにしててね♪」

 さっきの快感の、更に上があるというのか? 一体それは、どれほどの快感なのか……想像するだけで、俺のモノは再び充血し始めていた。

「あら? もうおちんちん、復活してるねぇ」

「本当、もうこんなになってる……ふふ、それじゃ次は三人同時に責めてあげるね♪」

「ふふ、まずは私のナカの感触……たっぷり味あわせてあげるわね。二人とも、サポートよろしく」

 そう言うと、スキュラさんは俺の肉棒の上に跨った。そしてその秘裂の入り口に俺の亀頭が触れた瞬間、背筋を稲妻のような快感が駆け抜ける。

「ああっ……!?」

「ふふ、まだ出しちゃ駄目よ。出すなら中で……ね?」

 妖艶な微笑を顔に浮かべながら、スキュラさんはゆっくりと腰を下ろし始めた。そして俺の肉棒が埋没しきったのと同時に、まるで無数の触手に責められでもしたかのような快感が襲い掛かってくる。

「あっ……あっ、ああああああああああ――――――っ!?」

 それだけで、俺は即座に達していた。現実ではありえないレベルの快感に、思わず頭が真っ白になる。まるで、延々と射精が続くかのような快感……いや、実際に俺のモノは脈動を続け、スキュラさんの中に白濁を注ぎ込んでいる。しかも、まるで止まる気配がない!

「ふふ……それじゃ、動くわね」

「あっ、ああああああっ!? まっ、待っ……!」

「ふふふ……駄目よ」

 スキュラさんは俺の言葉をやんわりと拒絶すると、そのまま腰を上下に動かし始めた。ただでさえ凄まじ過ぎる快感が、上下運動が加わった事により更に凄まじいものとなる。

「どう、気持ちよすぎて何も考えられないでしょ?」

「あああああっ、ひっ、ひぃぃぃぃっ!?」

 上下運動を続けながら、扇情的に腰をくねらせてみせるスキュラさん。だが俺には、それに見惚れる余裕など微塵も残っていなかった。終わりのない射精感に、ただただ体を震わせて喘ぎ声を上げ続ける。

「さてと……そろそろ手伝ってあげるね♪まずは乳首かな? アナタの乳首、いーっぱいナメナメしてあげる♪」

「じゃあ、私は下半身の方を責めますねぇ」

 サキュバスさんは俺の胸に顔を寄せると、その先端を舌でぺろぺろと舐め始めた。スライム娘さんは、ぬめる手で俺の下半身を撫で回す。

「ふふ、乳首もビンビンになってる……可愛い♪」

「お尻の穴の奥も、責めてあげますねぇ……わぁ、指が二本まとめて入っちゃいましたよぉ」

「ほらほら、もっと感じた顔を見せてね」

「あっ、あがああああああっ!?」

 乳首を舐め回され、もはや絶叫としか思えないような声を上げ、俺はのた打ち回っていた。俺の想像していた快感など、今俺が味わっている物の足元にも及ばないレベルに過ぎなかったと、今更ながらに思い知らされる。

「あひぃぃぃぃぃぃっ!? ぐっ、がああああああっ!?」

 このまま続けられたら、壊れてしまう。そんな考えが頭に浮かぶ。だが同時に、この快楽を手放したくないと考える自分もいた。

「……そろそろ交替しましょうか。私がこれ以上続けると、この子廃人になっちゃいそうだし」

「それじゃ、次は私がしますねぇ」

「あふぁぁ……あっ、あああああっ!?」

 ようやく、俺のモノがスキュラさんの中から引き抜かれる。安堵したのも束の間、すぐに俺の肉棒の上にスライム娘さんが跨り、自らの中に俺の陰茎を挿入した。入れた途端にゅるにゅると絡み付いてくる感触に、再び声が漏れる。

「ふふ……私の中、気持ちいいですかぁ?」

「はっ、はぃぃ……はぁぁ……」

 確かに気持ちいい。気持ちいいのだが……先ほどスキュラさんの中に入れた時のような、悶絶するほどの快感ではない。これなら何とか、耐えるかも……そう思いかけた矢先の事だった。

「……今、あなたが考えてる事、当ててあげる。あなた、スキュラの中の方が気持ちよかったって思ってるでしょ?」

「えっ!? あっ、いや、それは……」

「ふふ、ごまかさなくてもいいよ。本当に気持ちよくなるのは、これからなんだしねぇ……」

「そ、それってどういう……くっ、あああああああっ!?」

 どういう事なのかを尋ねようとするよりも早く、俺のモノの先端から何かが入ってくる感触があった。未知の感覚にびくびくと体を震わせる俺を見て、スライム娘さんは怪しい笑みを浮かべる。

「さっきからおちんちんの外側は責められてたけど……内側はまだだったでしょ? 今からおちんちんの内側と外側、同時に責めてあげるねぇ……」

「どっ、同時って……わっ、わあああああああっ!?」

 スライム娘さんが腰を動かし始めると、俺は恐ろしい程の快感に襲われていた。彼女の腰が上下する度に、肉棒の内部に入り込んだ何かが尿道を往復している。恐らく内部に入り込んでいるのは、彼女の体の一部――そんなことを考えていられたのは、一瞬にも満たない間のことだった。

「ほらぁ、おちんちんの内側も同時に責められるの、すっごく気持ちいいでしょ?」

「あひっ、あああっ!? いぐっ、ぐあああああっ!?」

 全身を切り刻まれているのではないかと錯覚するほどの快楽を前に、俺の口は勝手に大きな声を上げていた。口の端からは涎が垂れており、傍から見ればさぞかし情けない格好だっただろう。

「あっ、ああああああああ――――っ!? ひっ、ぐうううううっ!?」

 もちろん、本来ならそんな快楽に俺が耐えられるはずもない。だが、俺は未だに一滴の精も漏らしていなかった。何故なら、尿道に入り込んだ物のせいで放出がせき止められていたからだ。

「ふふ……出したくても出せないまま、快感を味わい続ける気分はどうですかぁ? 気持ちよすぎて、おかしくなっちゃうかなぁ?」

「いぎぃぃぃぃぃっ!? かはっ、がああああああああっ!?」

 狂おしい程、射精の欲求は高まっている。にもかかわらず放出は遮られ、更なる快楽ばかりが送り込まれてくる。恐らく陰嚢では、放出を待ち望む精液がぐるぐると渦を巻いていることだろう。

「んー、それじゃそろそろ私も責めてあげるね。アナタの乳首、今度は私の指で虐めちゃう」

「それじゃ、私は貴方のお尻の穴を虐めちゃおうかしら。たっぷりよがってちょうだいね」

 肉棒をスライム娘さんの膣で揉みくちゃにさらながら、白く細長いサキュバスさんの指で乳首をこねくり回される。それと同時に肛門からスキュラさんの触手が中に入り込み、前立腺を的確に刺激する。耐えうる限界など、とっくの昔に過ぎ去っていた。

「だっ、だひぃぃぃぃっ!? はぐうううううっ、いっ、いひいいいいいいっ!?」

 出させてと言おうとしたが、とても声にならない。だがそれでも言いたい事は伝わったのか、スライム娘さんはにっこりと微笑んだ。

「そんなに出したいんだぁ……うふふ、いいですよぉ。溜まった精液、いーっぱい出しちゃってくださいねぇ」

 そして、尿道を塞いでいたものが一気に引き抜かれる。それにより今まで蓄積されていた精液が、決壊していた堤防を乗り越えてあふれ出した。

「ああっ、あああああああああああ――――――――っ!?」

 永遠に続くかと思えるほど、大量の精をスライム娘さんの中に吐き出す俺。焦点の定まらない目に映ったスライム娘さんの笑顔は、まさしく魔性の者と呼ぶにふさわしいものだった。

「……さて、最後は私の番だね♪」

「あ……で、でも、もう……」

 俺がどうにか回復した頃を見計らい、サキュバスさんがスライム娘さんと入れ替わる。だが、いくらなんでもあれだけ射精した後では今日はもう無理だろう。そう思い、俺はサキュバスさんを止めようとした。だがサキュバスさんはにっこりと微笑むと、そのまま俺に顔を近づけ……唇と唇を重ね合わせた。そして歯の間から舌を差し込み、俺の舌にねちっこく絡める。

「んむっ……む〜〜〜〜っ!?」

 その瞬間、俺の脳は漂白でもされたかのように真っ白になっていた。わけもわからぬまま、俺はされるがままに彼女の口付けを受け入れる。その感覚が強過ぎる快感によるものだったと気づいたのは、彼女の唇が離れてから数秒が経過してからだった。

「ほら、大丈夫でしょ?」

「えっ……ほ、本当だ……!」

 そう言われて下腹部に目をやると、そこには最初の時よりも逞しく屹立したモノがあった。あれほど出した後だというのに、キス一つでここまで勃たせられるとは……流石はサキュバス、といった所か。

「それじゃ、入れちゃうね……んっ……♪」

「うっ、あっ、ああっ、あああっ……」

 自身の入り口に俺の肉棒の先端をあてがい、サキュバスさんがゆっくりと腰を下ろす。陰茎が彼女の中にじわじわと収められていく間、俺の口からは歓喜とも恐怖ともつかない声が漏れ出していた。まだ亀頭部分すら入りきっていないというのに、腰が震える程の快感を感じる。

「ふふ……えいっ♪」

「ふぁっ……ああっ、あっ、あああああああああ――――っ!?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら一気に腰を落とし、俺の一物を完全に飲み込んでしまうサキュバスさん。その瞬間、俺の脳内で何かが弾け――気がつけば、彼女の中に大量の精を放っていた。

「あはっ、出てる出てる♪ それじゃ、動くね〜♪」

「あっ、あひいいいいいいっ!?」

 スキュラさんの膣には無数の触手があり、それが肉棒に絡み付いて責め立ててきた。スライム娘さんの場合、ぬるぬるとした内壁そのものが俺のモノに絡みつく感触があった。

 だが、サキュバスさんの中の感触は、その上を行くものだった。陰茎を揉み込んでくる内壁の感触は確かに極上の快楽を生み出していたが、それ以上に恐ろしいものがある。それは、吸引力。彼女の膣は最新型の掃除機でも足元にすら及ばないような吸引力によって、精嚢にある精液を無理矢理引きずり出そうとしている。その結果として、俺は壮絶極まりない快感を延々と味あわされる事になっていた。

「ほらほら、もっと出しちゃえ♪溜まった精液全部出して、タマタマの中空っぽにしちゃえ♪」

「いぐうううううううっ!? ぐっ、があああああああっ!?」

 そんな俺をさらに追い詰めるように、サキュバスさんは激しく腰を動かす。淫蕩なものと嗜虐心とを同時に感じさせる彼女の笑顔は、まさしく淫魔と呼ぶに相応しいものであった。

「あらあら、随分な乱れ様ね……私も参加させてもらおうかしら」

「あっ、あぎいいいいいいいいいいいっ!?」

 先ほどから俺の中に入っていたスキュラさんの触手が、再び蠢き始める。前立腺を抉るような責めを受け、口から漏れる声がさらに一オクターブ高いものとなった。

「うわぁ、すっごくえっちな顔ですねぇ……ふふ、キスしてもいいですか? んっ……」

「んむっ……むっ、むぐううううううっ!?」

 スライム娘さんがにんまりと微笑みながら、俺の顔を両手で固定し、唇を合わせる。その瞬間、スライム娘さんの舌が俺の口内を縦横無尽に駆け巡った。まるで口の中を犯されるかのような感触に、俺の目から涙が溢れ出す。

「あら、泣いちゃいましたね……」

「でも、すっごく気持ちよさそう……ねえ、このまま壊してあげよっか?」

「んむううううううっ!?、むぐっ、むぐうううううっ!?」

 口を塞がれ、答えようにも答えられない俺。そんな俺に構わず、サキュバスさんは更に激しく腰を動かし始めた。俺の中に入った触手の動きも、より一層激しいものへと変化する。

(こっ、このままじゃ本当に……壊されるぅぅぅぅっ!)

 本能的に恐怖を覚え、あまりにも強すぎる快楽から逃れようとする。だがそれは無駄な試みだった。両手両足はいつの間にかスキュラさんの触手で押さえ込まれていて、力を込めても全く動く気配がないし、頭はスライム娘さんの手で完全に固定されている。上に跨って腰を振っているサキュバスさんをどかそうにも、体内に入り込んだスキュラさんの触手がそれを妨げる。もはや俺は、彼女たちの為すがままだった。

「残念だけど、もう逃げられないわ。そもそも、これは貴方が望んだ事なのよ? 自分の願望から、逃げられるとでも思ってたの?」

「あっ、あぎいいいいいいいいいっ!?」

「戻るチャンスはいくらでもあったはずなんだけどね……でも、もう戻れないよ。ほら、このまま壊してあげる♪」

「ひぎいいいいいいいいっ!? いっ、いぎああああああああっ!?」

(あ……目の前、が、真っ白、に……)

 人外の三人組の手による快楽責めを受けながら、俺はいつしか意識を失っていた……。







「……はい、終了〜!」

「…………はっ!?」

 どこからか聞こえてきた男の声で目を覚ます。辺りを見ると、周りの風景は元の無機質な部屋に戻っていた。

「どうでしたか? 一万円の価値は十分過ぎる程にあったとは思いますが」

「あ、ああ……その、凄かった……」

「それはどうも。では、お代を頂戴しますね」

「わ、わかった」

 ポケットから財布を取り出し、一万円札を取り出して男に渡す。男はそれを両手で受け取ると、自分の財布の中に仕舞いこんだ。

(それにしても凄い体験だったな……今でもあの時の感触は、はっきりと……っ!?)

 虚構とやらで体験した出来事を思い返した途端、俺は異常なほどの快感を味わっていた。まるで本当に、あの三人組に責められているかのように。

(馬鹿な!? あれは、あくまで虚構のはず……っ!?)

 スキュラさんの触手の弾力や、スライム娘さんの手のぬるぬるした感触、サキュバスさんの体の柔らかい感触……そういったものを思い返すたびに、あまりにも甘美な快感が再び襲ってくる。考えまいとしても無駄だった。むしろ考えまいとすればするほど、あの時のイメージはより鮮明なものとなっていく。

(だっ、出したいっ!)

 気がつけば、俺はズボンをずり下ろして自らの肉棒を取り出していた。そしてかつてないほどいきり立っていたそれを、激しくしごき始める。

「あっ、はぁっ、はぁっ……」

 だが、どれだけ扱いてもまるで射精する気配はなかった。虚構とはいえあれほどの快感を味わった後では、こんな程度の事では満足できないのか。

「おやおや、急に何をなさるんですか? 困りますよ、ここはそういう場所ではないんですから」

 気づけば、あの男が目の前にいた。いや、恐らく視界に入っていなかっただけで、ずっとそこにいたのだろう。俺を見る男の目は、俺を嘲笑うようでも、蔑むようでもあった。

「なっ、何なんだよこれぇっ! 何でイけないんだよぉっ!?」

「何なんだと言われましても……ねぇ。まあ、一時的に肉体が快感に対して鈍感になっているんでしょう。虚構とはいえあれだけ強烈な快感を味わったんですから、当然の事だと思いますが」

「でっ、でもあれだけ出したんだぞっ!? なのに、何でこんな……」

「貴方が出したのは、あくまで虚構の中ででしょう? 現実の貴方は、一滴の精も出してはいませんよ」

「あっ、あんなに気持ちよかったのにか!?」

「ええ。虚構は所詮虚構。霞をいくら食べた所で腹は膨れない。それと同じ事ですよ。おわかりいただけましたか?」

「うあ、あ……」

 出したい。だけど出せない。こんな状態じゃ、何も手に付きそうにない。

「まあ、あくまで一時的なものですから。多分、半日もすれば元に戻ると思いますが」

「はっ、半日っ!? そっ、そんなっ!」

 とてもじゃないが、そんなには持ちそうにない。あと十分もしたら、多分俺は狂ってしまう。

「なっ、なんとかならないのかっ!?」

「なんとかと言われましても……そんなに辛いなら、再び虚構を体験するという手もありますが」

「そっ、それでお願いします!」

 まるで麻薬患者のように、俺は迷わず頷いていた。先の事など知ったことか、この疼きから解放されるのなら、悪魔に魂を売ってもいい。本心から、俺はそう思っていた。

「では、料金を……」

「こっ、これでいいんだろ! はっ、早くしてくれ!」

 慌しく財布を取り出し、一万円札を男の手に押し付ける。

「……残念ですが、これでは足りませんね」

「えっ、ええ!? だって、さっきは一時間一万円って……っ!」

「ああ。あれはあくまで初回料金なんです。二回目からは、本来の料金になるんですよ」

「本来の料金って、いっ、いくらなんだよぉっ!?」

「ずばり、百万円です。あ、キャッシュでお願いしますね」

「ひゃっ、百万円っ!?」

「決して高い値段ではないでしょう? 少なくとも貴方はこう思っていたはずですよ。『これだけリアルな体験ができるなら、百万円払ってもお釣りがくる』と」

「な、何でそんな……」

 確かに俺はそう思っていた。思ってはいた、が……だからといってそんな大金、すぐに用意できるはずがない!

「金がないんですか? じゃあ、仕方ありませんね。お引取りください」

「た、頼む! 後で何でもするから!」

「今すぐどこかでお金を借りてくればいいじゃないですか。ここから十分も歩けば、確かサラ金があったと思いますよ。利息は少々高いかもしれませんが」

「十分だって? 耐えられるはずないじゃないかぁっ!」

 こうなったらこいつを殺してでも……いや、駄目だ! こいつを殺したら、もう二度と虚構を体験することはできなくなる! そうなったら、もうどうしようもない!

「お願いだ! 有り金全部払うから、もう一度あれを味あわせてくれ!」

「言ったでしょう。料金は百万円。いくら頭を下げられても、まけてあげるわけにはいきませんから」

「そ、そんなぁ……」

 もう駄目だ、俺はここで狂ってしまうに違いない。この疼きを持て余したまま、人としての俺は壊れてしまうのだろう。そう考えると、思わず涙が出てきた。

「……やれやれ、仕方ありませんねぇ。そういう事なら、救済策を用意しないでもないですが」

「たっ、助けてくれるのか!?」

 このまま狂うしかないと思っていた所に、僅かな希望が投げ掛けられる。それが罠であるかもしれないなどとは露ほども思わずに、俺はそれにしがみついた。

「ええ。貴方がある事を許可するならば、その財布の中身で特別に手を打ちましょう。何でしたら、このままずっと虚構を味わえるようにだってして差し上げますよ」

「ほっ、本当かっ!?」

「もちろん。この虚構使い、決して約束は違えませんとも……まあ時々嘘は吐きますが」

「たっ、頼む! それで、俺は何をすればいいんだ!?」

「それはですね……」

 にっこりと笑い、男は後に続く言葉を口にする。俺は一も二もなくそれに頷き、虚構への片道切符を手に入れた。







「……ふぅ。これでようやく終わりですね」

 手元にあるキーボードを叩き、最後の文章を打ち込む。そしてファイルを保存してから私は息を吐いた。

「……うむ、我ながら中々に素晴らしき文章かな」

 画面に映った文章――今しがた書き終えたそれに誤字がないかどうかチェックしながら、そう漏らす。これほど自画自賛という言葉を端的に表す例はそうそうないだろう。

(今日はいい物語が書けましたねぇ……それというのも、『彼』のおかげですよ。ええ、本当にね……)

 ちらり、と壁の方へ視線をやる。そこには椅子に腰掛けたまま、微動だにしない男の姿があった。

 私が彼に求めた条件は、彼が体験した虚構を物語にする事の許可であった。そしてそれを今、こうして書き終えたというわけだ。

(まるで、死んでるみたいですねぇ……まあ、今の状態を生きているといえるのかは定かじゃありませんが。くっくっく……)

 永遠に覚める事のない夢を見る男。外見からでは、彼が淫夢を見ている事など誰もわからないだろう。

(しかしこの男、快感への執着心だけは大したものでしたね……せっかくだから、私のコレクションに加えておきますか)

 そうと決まれば話は早い。私は男に近づくと、その頭に手を乗せた。そして、彼の情報を読み取る。

(本名、津田栄介。生年月日は昭和××年○月△日、◎時□分☆秒。家族構成は両親と父方の祖母、そして姉二人と、弟及び妹が一人ずつ……)

 これまでの遍歴、趣味嗜好、トラウマになった出来事など……それら全てを正確に読み取り、それを元にして自身の中に彼の人格を再現する。思考パターンや行動形態などといったさまざまな事象を知識と経験によって組み上げてゆき、足りない部分は想像で補う。

 そして……。

(全工程終了。『津田栄介』のデータの登録……完了)

 全てをつつがなく終えた後、私は男の頭から手を退けた。

「これでよし、と。さて……こうなればもう彼に用はありませんね」

 彼が座った椅子を押して、隣にある部屋まで運ぶ。キャスターが付いた椅子の為、人が座っていても運ぶのは容易だった。

「うわぁ、大分臭いがきついなぁ……そろそろここも引き払う必要があるかもしれませんね」

 部屋の中には、彼の先客たちが無残な姿で転がっていた。その殆どが腐敗が進んだ状態にあり、中には完全に肉が腐り落ちて骨だけになっているものもある。

 ここは、彼のように覚めない夢を見る者達の安置所。いくら覚めない夢を見ているといっても、何の栄養も摂取していない状態であれば当然、いつかは死ぬ。そして放っておけば腐るのも当然のことと言える。だが、流石にこれだけ臭いがきついのは困り者だ。そろそろ新しい事務所を探す必要があるかもしれない。

 まあ、それは後にするとしよう。そう考え、私は椅子から彼の体を床に降ろした。そして椅子を持って、部屋の出口に向かう。

「さようなら、津田栄介。君の存在は三日くらいは忘れないで置くよ。無理かもしれないけど」

 そう言い残し、私は部屋を後にした。        (虚構使いの物語 その2に続く)








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