ヒトニザメ 四




灰色の、コンクリート打ちっぱなしの廊下を一人の男が歩いている。

ダークグリーンのスーツに、背中の半ばまで髪を伸ばした、二十代後半ほどの男だった。

男は数枚の部屋の前を通り過ぎ、開け放たれた扉の前で足を止めた。そして軽く握ったこぶしで、数度扉の表面を叩く。



「ただいま、戻りました」



ノックと男の声に、室内にいた十数人の男女の中から、四十代ほどの男が飛び出す。



「く、九谷様!」

「どうしましたか、蓑山君。乙姫の許可ならば、無事得られましたよ」

「いえ、船舶護衛の者から犠牲者が・・・」



男、九谷は部屋の奥へと歩を進め、設置されたスチール製の机の上の報告書に目を走らせた。



「黒澤武弘、所属『銅の歯車』ですか・・・」



九谷は軽く目を閉ざし、しばしの沈黙をはさんで続けた。

「黒澤武弘君、彼はなかなか柔軟な発想をする人物でした」

「はぁ・・・」

「彼はこれまでに3体の淫魔、6体の淫魔亜種を逮捕・捕獲作戦に関わっていますが、その内の数件については困難を極めたそうです」

「・・・」

「特に2年前のグランドール事件については、彼のとっさの機転がなければ犠牲者はもっと出ていたでしょう」



ふう、と九谷は息をつき、続けた。



「惜しい人物を亡くしました・・・。さて蓑山君、黒澤君は死の直前に認識票をターゲットに打ち込んだそうですね?」

「あ、はい、ええ」



四十代の男、蓑山は九谷の言葉に答える。



「すでに彼の認識票に使用されていた結晶の片割れを、結晶探査機にセットし、探査を開始しています」



蓑山が部屋の中央に置かれた、2畳ほどの広さに拡大されたインド洋の海図と、その四隅を足で押さえる四本足の大きな機械を指し示した。



「地図の歪みと縮尺誤差を考慮すると、精度は半径10メートルほどです」



九谷は海図の側に歩み寄り、機械から垂れ下がる棒の先端に目を向けた。

水晶を思わせる結晶体が棒の先端に取り付けられており、某は機械の駆動音に合わせて海図上を少しずつ動いていた。

と、その時壁際に並べられた電話が鳴り、職員の一人が受話器を取る。



「・・・『帝国』所属ウルフデール号、コンロー号、『銅の歯車』所属ブルームデール号、各艦準備完了だそうです」

「九谷様」



蓑山が職員に続くように口を開く。



「我々は準備が完了しております。どうか、許可を」

「・・・」



九谷はしばしの沈黙をはさんで、言葉を紡いだ。



「ただいまより人似鮫、個体名イナシィルの捕獲作戦を開始いたします」

















ここ数日、どういうわけか船の姿が目に入らない。

おかげで今日も収穫はなしだ。

海面から顔を上げると、満月から少しだけ細くなった月が目に入った。



(今日は『痩せ行く月の日』ですか・・・そういえば・・・)



ふと昔のことを思い出す。



(あたしがあれを見つけたのも、『痩せ行く月の日』でしたね・・・)









昨日と今日、今日と明日の間には、何の変化もない。

海面を通して差し込む日の光を背に浴びながら、あたしはふと思い浮かべた。

毎日毎日自分の縄張りを回遊し、その途中で適当に魚などを食べて腹を満たし、ねぐらへ戻る。

毎日がその繰り返し。

それでもたまには楽しみはある。

それは乙姫様の宴に呼ばれたときと、満月から三日後、痩せ行く月の日だ。

乙姫様の宴では、人間の男が出される。

ほんのわずかな時間しか楽しめないし、食べることもできない。けれども乙姫様が選んでくるだけあって、毎回質の高い精が味わえる。

そして、痩せ行く月の日。

乙姫様から直々に許された、月に一度の人を食ってもいい日。

一昨昨日は、曇ってはいたけど満月だった。

つまり、今日は痩せ行く月の日。

縄張りの回遊を手短に終え、あたしは縄張りの中でも、一際浅いところへと向かっていた。

体長数メートルはあろうかという鮫の姿を見て、小魚の群れが身を翻して泳ぎ去っていく。

でも、追わない。

すでにあたしの視界には一隻の船の船底と、その周りで泳ぐ人間の姿があった。

あたしは小さく笑みを浮かべ、大きく尾びれで海水を掻いた。

一気に速度が増し、見る見るうちに船と人間達の姿が大きくなっていく。

あたしはその内の一人、他の者より少し離れたところにいる男に狙いを定め、大きく口を開いた。

あらかじめ構成していた擬似女体器官が腕を伸ばし、半ば衝突するようにして男の体を抱きかかえた。





大きな水音とともに、彼らの仲間の一人が海中に姿を隠した。

女性陣は、またふざけて彼が体を触りに来るのかと、笑いながらも身構えるが、一向に彼が姿を現す気配はなかった。

海で泳いでいた者、ボートにあがっていた者があたりを探し始めるが、彼の姿はどこにもなかった。

その後、彼の捜索には数隻の船やヘリコプター、多くの人員が投入された。

しかし彼の姿は見つからず、やがて捜索は打ち切られた。







「・・・う・・・」



小さなうめき声とともに、男が目を覚ます。

体内で響いた小さな声に、あたしは意識を『中』に移した。

『中』にいる、人型のあたしが目を開く。



「・・・うう・・・ここは・・・?」

「お目覚め?」



あたしの声に反応し、彼は顔を左右に向ける。しかし体内は真っ暗だ。見えるはずがない。



「だ、誰・・・!?」



怯えたように震える彼の声をたっぷり楽しみ、ようやくあたしは体内の一部を変化させた。

体内の空間の天井付近に、発光性の体液を生成し、体内を照らし出す。

弱々しい光が彼の姿と、あたしの姿をあらわにした。



「ひぃっ・・・!!」



水着に腕時計だけといういでたちの、思ったよりも若い男、いや少年が驚きに声を上げる。

無理もない。

あたりを囲むのは鮮やかな桃色の粘膜で、彼の目の前には壁から生えた女の上半身。

波打つような長い黒髪に、透き通るような白い肌。整った顔立ちに豊かな胸、そしてきゅっと引き締まった腹。

魅力的な姿にしてはいるが、彼の驚きを軽減するには至らなかったようだ。

少年は恐怖に顔をゆがめ、あたしから少しでも遠ざかろうと粘膜に体を押し付け、懸命に体を縮こまらせている。

あたしは胸を強調するように前かがみになり、笑顔を作りながら言った。



「こんにちは」

「よ、寄るな・・・化け物・・・!」



涙で頬を濡らしつつ、小さく彼が応える。

だめだ、こちらの話を聞く気すらないらしい。

あたしは、少年が身を寄せている粘膜を操り、新たに数本の腕を作った。

そして、彼の腕や足、胴に腕を巻きつける。



「え!?うわっ!」



強引に縮こまらせていた体を広げ、あたしの前に引きずり出す。

あたしは彼の顔に両手を伸ばし、そっと手を添え、唇を強引に重ねた。



「!?」



唇の間から差し込まれた舌に、彼はびくんと全身を振るわせた。

少年はあたしを振り払おうと手足を振るが、彼の全身は固定されている。

あたしは彼の抵抗に構うことなく、差し込んだ舌で彼の前歯をなぞった。

整った歯列の表面に、あたしの唾液が塗りこまれていく。

さらに舌を伸ばして歯茎を、頬の裏側をなぞっていく。



「・・・!・・・!!」



くすぐったさにあごの力が緩んだ、一瞬の隙を突いて歯の間から舌を差し入れ、彼の舌に絡み付ける。

縮こまった舌を揉み解すようにしながら、直接唾液を注ぎ込んでいく。

舌への刺激に、彼は思わず注ぎ込まれた唾液を飲み込んでいく。

閉じていた目を薄く開くと、少年の相貌が視界に入った。

唾液を嚥下するごとに彼の目に浮かんだ恐怖が薄れ、次第に焦点がぼやけていく。

十数口ほど飲ませた頃だろうか、あたしは彼の唇を解放した。



「・・・っぱはぁ」



少年は大きく、荒い息をつく。

まるで運動したかのように頬は赤く、呼吸も乱れ、目はぼんやりとしていた。

そして―



「ふふ、こっちは準備完了みたいですね?」

「え?」



彼が視線を下ろすと、彼の水着にくっきりと彼のペニスの形が浮かび上がっていた。



「ほら、こんなに苦しそうにしちゃって・・・」



そう言いながらあたしは手を伸ばし、水着に手を掛けて一気に引き裂く。

水着の拘束を離れ、パンパンに膨張したペニスがあらわになった。



「あ・・・やぁ・・・」



わずかに残った羞恥心が、彼にかすかな声を上げさせる。



「うふふ、女の子みたいな声出して・・・恥ずかしいんですね?」



あたしが言葉とともに、赤黒い少年のペニスに指で触れると、ペニスがびくんとはねた。



「あら、感じてんですか?」



粘膜の位置を操り、目の前に彼のペニスが来るように調整する。

すでにペニスの鈴口からは先走りが溢れ出し、亀頭を濡らしていた。

先走りを指で掬うと、ねっとりと糸を引いた。



「うふふ・・・こんなにどろどろ・・・」

「・・・あ・・・ああ・・・」

「ほら、分かりますか?」



そう言いながら、亀頭全体に先走りを塗り広げる。

指が動くたびに彼の全身にかすかに力がこもり、あえぎ声とともにペニスが跳ねた。

亀頭を数度撫で回し、そのまま裏筋をくすぐる。



「あ・・・ああ・・・!」



眉間に皺を寄せ、刺激に耐えながらも声を漏らす彼。

あたしは小さく笑みを浮かべ、ペニスを咥えた。

唇で竿を締め付け、舌で裏筋と亀頭を前後に擦る。



「ひっ・・・ぃい・・・」



少年は快感に耐えるように身を捩じらせ、かすかに声を漏らす。

限界が近いらしく、口の中で彼のペニスが、大きく脈打つ。

あたしはさらに深く、根元までペニスを咥え込み、のどで、巻きつけた舌で、唇で、ペニス全体を締め上げる。



「ぁあああああっ!!」



締め付けに抗するかのようにペニスが膨張し、尿道から精液が迸る。

噴出する粘液がのどの粘膜を打ち、反射的に嚥下していく。

嚥下の際に粘膜が亀頭を締め付け、その刺激に反応し、ペニスはさらに精液を噴出する。



「やめでぇ!しぬぅ!!」



少年は絶叫とともに身を捩じらせ、腕の拘束から逃れようとする。

あたしは粘膜から新たに作った身体に意識を移し、彼の背中に身を寄せた。



「ほらほら、そんなに暴れないで」



腕の隙間から覗く彼のむき出しの肌に、乳房を押し付けながら耳元で囁く。

そのまま責めを続けようかと思ったが、彼の身体が痙攣していることに気が付いた。

連続する射精に身体が耐えられなくなりつつあるらしい。

あたしは総判断して、口内にある彼のペニスに巻きつけた舌の動きを止めた。

射精の勢いが次第に落ちていき、合わせるように少年の全身から力が抜けていく。



「はぁ・・・はぁ・・・」



長く続いた射精がようやく収まり、少年は荒い呼吸を繰り返していた。



「ほんとに死ぬかと思いました?うふふ・・・」



彼の首筋に舌を這わせ、あたしは言葉をつなぐ。



「安心して下さい、まだ、殺したりはしないですよ」

「はぁ・・・はぁ・・・え・・・?んんっ!?」



彼の左腕を乳房で挟むように身を寄せ、再び唇をふさぐ。

舌を挿し入れるが、先ほどのような抵抗はなく、彼は大人しく彼女を受け入れた。



「ん・・・んぶ・・・んじゅ・・・」



舌同士を絡ませあい、彼の口内の粘膜を嬲る。

無論唾液を注ぎ込みながらだ。



「・・・ちゅぶ・・・ぶぢゅ・・・」



淫魔の体液にまみれた舌で、口内の敏感な粘膜を刺激されて少年の頬に赤みがさす。

そして彼の、ただ粘膜に包まれているだけで何の刺激も受けていないペニスに血液が注ぎ込まれ、次第に硬度を増していく。

あたしは絡ませあっていた舌を解き、唇を離した。粘土の高い唾液が糸を引く。



「ふふ、またおちんちん元気にしちゃって・・・」



言葉をかけると、彼はとろんとした目をこちらに向けた。

理性も、思考もすでに失われているいるようだが、あたしは言葉を続けた。



「さっきまで『死ぬ』とか言ってたのに、またしたいんですか?」

「・・・はい」

「んん〜?よく聞こえませんよ〜?」



顔を彼の耳に寄せ、軽く耳朶を舌で舐めてから囁く。



「どろどろに溶かされて、射精しながら食べられたい?



心臓が止まるほどの快感を与えられて、死んでも射精し続けてみたい?

それともあたしの一部分になって、ずぅっと射精し続けていたい?」



「たべ・・・ずっと・・・だして・・・」



途切れ途切れの単語からは、どれを選択したかは分からなかった。だから



「そう」



彼の左側から生えたあたしが囁く。



「どろどろに溶かされながら」



彼の右側から生えたあたしが囁く。



「心臓が止まるほどの快感を与えられて」



彼の後ろから生えたあたしが囁く。



「ずぅっと射精し続けて」



彼のペニスから口を離し、彼の前から生えていたあたしが囁く。



「そのまま、食べられたいのですね」



あたし達が、同時に囁く。



「・・・・・・」



その言葉に、彼は小さく頷いた。



「それじゃあ、始めます」



あたしは、口をそろえていった。

前のあたしが、屹立する彼のペニスに吸い付き、舌を絡ませる。



「ひゃう、ひぃっ!」



ざらりとした粘膜が、亀頭の、カリ首の表面をこそぎ取るように刺激し、その感覚に少年が声を上げた。



「ほら、まだ始まったばっかりですよ?」



言葉とともに、左右と背後のあたしが、彼の全身に舌を這わせる。

腋、脇腹、背筋、首筋、耳、尻たぶ、尻の割れ目、蟻の門渡り、膝の裏、太もも、すね、ふくらはぎ、

少しでも皮膚が薄く、少しでも敏感なところを探るように、三本の舌が彼の全身を這い回る。



「ぃひぃっ!ひぅっ!」



腋をくすぐれば顔をのけぞらせ、へそをほじれば顔を歪ませて声を上げる少年。

声を上げるたびに、口の中でペニスが、絡みつく舌や唇を振りほどこうとするかのように跳ねる。

鈴口から大量に溢れ出す、先走りのかすかな塩味が口の中に広がっていく。

射精が近いらしい。

あたしは裏筋どころか、亀頭まで脈打ち始めているペニスに吸い付き、舌の表面で裏筋を、頬の裏側で亀頭を圧迫した。



「くぁはぁっ!」



搾り出すようなあえぎ声とともに、亀頭が大きく膨れ上がり、精液が噴出する。

舌をうねらせながらのどの奥へと運び込み、嚥下していく。



「さっきあんなに出したのに、たくさんでますね」



腋を舐める作業を中断し、あたしは口を開いた。

しかしその言葉は彼の耳には届いていないらしく、悲鳴めいたあえぎ声を上げるばかりだ。

あたしは軽くかぶりをふり、へそと背筋に舌を這わせる残りのあたしとともに、頭の位置を変える。

足の間、快感により縮こまっているタマを見上げる位置に左右のあたしを置いた。

のどを上下に動かしながら、注ぎ込まれる精液を嚥下するあたしを横目にあたしはつぶやいた。



「それじゃあ、」



左右のあたしが口を開き、皮ごと縮こまっているタマを一つずつ、口に含んだ。

唇でゆるく皮を押さえ、舌でもって口内の睾丸を皮越しに転がす。



「ぅあっ!?ひゃぁうっ!!」



与えられた新たな刺激が背骨を伝わり脳へ叩き込まれ、悲鳴とともに精液を放出させた。

徐々に収まりつつあった射精の勢いが、断続的ではあるものの増す。

あたしは、のどを打つ精液の勢いに笑みを浮かべながら、上あごと舌の間に睾丸をはさみ、軽く圧迫した。



「ひぃぃぃいいいいっ!」



タマをつぶされるかもしれない、という恐怖感が倒錯した快感を生み出し、彼の興奮を高めていく。



「し、しぬぅぅうううっ!やめてぇ、もうやめてぇ!」

「いやです」



彼の背後から生えたあたしが、彼の背中に乳房を押し当てながら応える。



「さっき言ったじゃありませんか、心臓が止まるほどの快感を与えられたいって。それに」



少年の腋の間から手を伸ばし、固くなった乳首を指で摘む。



「ここも女の子みたいに固くして・・・」

「ああっ、あああっ!!」



ぶんぶんと頭を左右に振り、刺激と興奮に身悶えする彼の姿に、あたしは口の端を吊り上げる。



「うふふふ、乳首摘まれて声上げて・・・本当に女の子みたいですね。だったら・・・」



言葉とともにあたしのへそが左右に広がり、中からペニスのような形をした器官が現れる。



「『これ』を挿れたら、どんな声出しちゃうんでしょうねぇ?」



あたしはその、亀頭から幾本もの細かな触手を生やし、竿部分にひだの刻まれたペニスの先端で、彼の背筋を軽くなぞりんがら、そう言った。

実際のところ、これはへその内部に納められた搾精器官に手を加え、裏返しに露出させた物だ。

竿の部分に膣を、亀頭部分に擬似子宮内部を用いて作った。

あたしは腰を操り、彼の背中や尻に擦りつけ、たっぷりと擬似ペニスの大きさや形を身体に覚えこませる。



「ああ、あああ・・・」



擬似ペニスの表面から滲み出す粘液を塗りたくられるたびに、彼は小さく声を漏らした。



「あら、怖いんですか?」



いつの間にか射精は収まっており、ペニスの脈動も小さくなりつつある。



「ふふっ、大丈夫ですよ・・・ほら、力抜いて・・・」



鈴口から流れ出す粘液を、たっぷりと肛門に塗りつけながら囁き、あたしは一気にペニスを押し当てた。

亀頭から生えた細かな触手が一本、また一本と肛門にもぐりこんでいく。



「ぅあ・・・ああ・・・」



肛門が少しずつ広げられていく感覚に、少年はかすかな振るえとともに声を漏らした。



「じゃあ、挿れますね」



彼の腋の間に回した両腕と腰に力を込め、広げられた肛門にペニスを押し込んでいく。



「ぁああ・・・あ・・・」



触手が伸びきった括約筋に触れる度に、彼の口から震える声が漏れ出す。

ペニスの半ばが彼の体内に入り込んだところで、直腸の内壁に亀頭がぶつかる。

しかし問題は無い。

あたしはペニスの硬度を落とし、大腸の形状に合わせて変形させながら、ペニスを根元まで挿入した。



「ぃ・・・ぁ・・・」

「ねぇ、分かりますか?」



彼の耳元で、小さく囁きかける。



「あなたのお尻、あたしのペニスをきゅうきゅう締め付けてくるんですよ・・・それに、ほら」

「ぁひぃっ!?」



ペニスを彼の体内でうねらせ、表面の触手を軽く蠢かせると、彼が嬌声を上げ、口の中の彼のペニスが硬度を取り戻していく。

あたしはその反応を楽しみつつ、続けた。



「あなたのお尻の中で、腸液がたくさんあたしのペニスに絡み付いてきてるんですよ。

ほら、さっきみたいに少し動かすと・・・」

「ぃひぃっ!うくっ!」



あたしのペニスのうねりにあわせるように、少年のペニスが大きく脈打つ。



「ぐちょぐちょって、聞こえます?あなたの身体が立ててるんですよ、こんないやらしい音・・・」



背後から回した腕にさらに力を込め、乳房を押し付けて彼の首筋に浮かんだ汗を舐め取る。



「挿れられたペニスをきゅうきゅう締め上げて、粘液まみれにして、いやらしい音を立てて、動かすたびにあえぎ声上げて・・・」



小さな声で、しかしはっきりと告げる。



「女の子みたい」



言葉と同時に、あたし達の口の中にあったペニスを、タマを、一気に舌と唇で締め上げる。



「ひぁああああっ!」



言葉と肛門と性器への刺激に、彼は声を上げながら絶頂に到達した。

ペニスが激しく脈打ち、あたしの口内に精液をほとばしらせる。

それに加え、肛門の括約筋が収縮し、あたしのペニスを締め上げた。



「あはははは!『女の子』って言われてイっちゃって、お尻であたしのペニス締め付けて・・・!」



言葉とともにペニスを動かすと、彼は鳴き声めいた嬌声とともに、射精の勢いを強めた。



「ほら、お尻の穴ほじられて感じて・・・本当に女の子みたい・・・!」

「ひうっ・・・ひゃあうっ・・・!」



軽く腰を引くと、少年の肛門から腸液と、あたし磁針の粘液にまみれたペニスが姿を現す。

半分ほど抜いたところで、叩きつけるように挿しこみ、腸壁をえぐるように表面の触手を波打たせる。



「ひぃぃいいいいっ!」



触手が腸壁越しに前立腺を刺激したためか、射精量が一瞬だけ増す。



「あら?出したり入れたりするより、ぐちょぐちょ掻き回されるほうが好きなんですか?」

「ぃやぁ・・・ひぅっ!」



あたしの腰の動きとともに出された問いに、彼は嬌声と射精で答えた。

口を用いてのペニスとタマへの責めを中断してみるが、あたしのペニスが蠢くたびに彼は精液を噴出した。



「ひゃぅっ・・・はぁぅっ・・・!」



あたしのペニスの動きにあわせるように、彼のペニスが脈打ち、絶頂に達する。

しかし度重なる射精のせいか、少年の精液の量は減り、透明な粘液に白い物が混ざった程度の濃度の物しか出なくなってきた。

もう限界だろう。

あたしは最後の責めを始めることにした。



「あぁ、あなたのお尻、ほんとに気持ちいいですよ」



腰の動きを止め、彼の耳元で囁く。



「ぐちょぐちょの粘膜が締め付けてきて・・・もう、出ちゃいそう」

「ひぁっ・・・え!?あああああああ!!」



腸内で膨張し始めたあたしのペニスに、彼が絶叫する。

脈打つあたしのペニスの鼓動が、腸壁越しに彼の前立腺を打つ。

肛門は裂ける直前まで拡げられ、倒錯的な苦痛が彼の脳に注ぎ込まれる。

そして―



「ぁあああああ!!でてるぅ!!なんかでてるぅ!」



脈動とともに、あたしのペニスの先端から粘液が噴出される。



「あづいぃぃぃいいいいっ!」



噴出された粘液に含まれる消化酵素が、彼の腸粘膜を侵し、ただの有機溶液に分解する。

腸粘膜の拘束から逃れたあたしのペニスが、彼の体内で躍る。



「ぃいいいいいいいっ!!」



叫び声とともに少年の全身が硬直し、膨れ上がったペニスからわずかばかりの粘液が漏れ出る。

あたしはペニスをうねらせながら、ペニスから生えた触手のうち数本に意思を向けた。

触手を伸ばし、彼の睾丸と前立腺に届かせる。

連続した大量の射精により、いくらか縮んだかに思われる睾丸を、もはや尽きてしまった精液をなおも噴出しようと脈打つ前立腺を、触手が締め上げた。



「ぎぃぃいいいいいっ!!」



全身を震わせながら、彼が叫ぶ。

あたしは痙攣する彼の身体を押さえるため、軽く腕で押さえ込んだ。

すると、消化酵素で半ば融解した膀胱に彼の内臓の有機粘液が流れ込み、尿道を駆け上り鈴口から噴出する。

突然復活した、尿道をくすぐる粘液の感触に、彼は身を捩じらせながら叫ぶ。



「あははははは!」



あたしは、文字通り彼を搾りながら大声で言う。



「ペニス突っ込まれて、射精されて、それでまた射精し始めるなんて、とんだ変態さんですねえ!」



ペニスを脈打たせながらさらに粘液を注ぎ込み、触手でもってよくかき混ぜる。

消化酵素が彼の両脚の筋組織を蝕み、有機粘液に変えていく。



「ほら、気持ちいいんでしょ?」



言葉をつむぎながら、彼の両脚に粘膜を巻きつけ、締め上げる。

すると行き場を失った有機粘液が、圧力によって尿道を駆け上り、噴出する。



「あははは、また出ましたね!」



あたしは口内に注ぎ込まれた粘液を嚥下しながら、そう口にする。

しかし、彼の反応はほとんどなかった。

それもそのはずだ。もう彼の内蔵のほとんどは溶けてしまっている。

粘液を注ぎ込み、締め付ける。

そのたびに内臓が一つ、また一つと融解し、彼の身体から搾り出されていく。



「それじゃあ、最後は全部出してもらいましょうか」



長く咥えていた彼のペニスを開放し、亀頭を親指と人差し指で締め付ける。

そしてそのままあたしは、彼の体内に粘液を注ぎ込んだ。

肛門とあたしのペニスの間から漏れ出る分もあるが、確実に彼の体内を粘液が満たしていく。

失われた内臓の代わりに粘液が、

融解した筋組織の代わりに粘液が、

彼の身体を満たしていく。



「ごほっ・・・ごぼ・・・」



彼の口から、ピンク色をした粘度の高い液体が溢れ出す。

もう限界らしい。

あたしは彼の全身に、粘膜で作った触手をまきつけ、圧力を加えた。



「さあ・・・」



あたしは、もはや意識のない彼の耳元で囁いた。



「一杯、出しなさい」



亀頭を締め付けていた指を離すと、鈴口から大量の粘液が噴き出した。

彼の四肢を構成していた筋組織が、骨格が、ペニスから噴出する。

彼の体内に収まっていた内蔵が、血管が、鈴口から撒き散らされていく。

そして、彼の意識を宿していた脳が、ただの粘液となりあたしの体内にばら撒かれていく。

連続した、ほぼ放尿と代わらない粘液の排出が、彼の身体を縮めながら続いていた。













数分の後、彼のペニスからの粘液の流出が止んだ。

幾重にも絡んだ触手を解くと、萎縮した彼の皮膚があたしのペニスに被さっているだけだった。



「・・・・・・」



かすかな空しさを感じながらペニスも、擬似女体も何もかもを解除し、ただの胃袋に体内を戻す。

ねぐらを目指しながら、残った皮膚を消化液に浸し、粘膜の蠕動で消化する。



「・・・?」



体内に異物感が生じ、あたしはそれを口元まで移動させた。

舌で擬似女体を作り、それを手にとって見てみる。

それは腕時計だった。

口を開き光を導きいれると、腕時計はきらきらと光を反射した。



「・・・・・・」



綺麗ではあるが、必要ではない。

あたしはしばしの逡巡の後、開いた口から腕時計を投げ捨てた。

重力に引かれながら、腕時計が海の奥深くへと落下していく。

そして、海水の作り出す闇の中へ小さくなっていき、消えた。



「・・・・・・」



これでいい。

これでいいんだ。

あたしは自分に言い聞かせるようにしながら、尾ひれで海水を打った。



(ほんとにいいの?)



小さな声が聞こえた気がする。



(確かにあれはいらない物だけど、でも・・・)



やっぱりほしい。

あの、きらきら光を反射する腕時計が、欲しい。

あたしは身を翻し、腕時計が落ちていった闇の中へと潜っていった。







もうどれほど潜っているだろう?

あたしは鰭を操りながら考えた。

水圧はあたしの周囲に張った結界で抑えているし、視覚も魔力で増幅しているから問題はない。

しかし、自分の縄張りにこれほどまで深い場所があるとは思わなかった。

結界のすぐ側を、異様な形をした魚が通り過ぎていく。

最初のうちはすれ違うたびにその異形に驚いていたが、今ではもう慣れてしまった。

それほど長い間潜り続けているというのに、底にたどり着く気配はまだない。



「・・・?」



ふと、遠くに何か見えた気がした。

尾鰭で水をかきながら進むと、白い物が見えてくる。

底だ。

姿勢を整え、周囲に目を凝らすと、一面の白い海底が目に入った。

そして視界に、あたりの白とは異なる色が入る。腕時計だ。

あたしはさほど離れていない位置に落ちていた腕時計に泳ぎより、擬似女体を構成して手を伸ばした。

腕時計を掴み、拾い上げる。

と、その手が地面から脈動を感じ取った。



「!?」



驚きに腕時計を取り落とし、目を見開く。

目に入るのは、何の変哲もない白い砂礫でできた海底。

恐る恐る手を伸ばし、手のひらを海底に当てる。

―どくん―どくん

かすかに、しかし一定の間隔を置きながら、地面が脈を打っている。



「これは・・・生き物の背中?」



あたしは腕時計を拾い上げ、一気に泳ぎ始めた。

自分の縄張りに、こんな巨大な生物がいたというのに気が付かなかったなんて・・・!

自分の間抜け振りを呪いつつ、全速力で進んでいく。

この生物が何なのか、知る必要がある。

そして場合によっては乙姫様に報告して、駆除してもらわなければ。

突然眼下の海底が消滅し、暗い海水が顔を覗かせる。

あたしはそのまま前進を続け、身を翻して目を凝らした。



「え・・・?」



目に入った、その生物の全体像に、あたしは間の抜けた声を上げていた。

海底火山の噴出孔、熱水を噴き上げる穴の真上にそいつはいた。

丸い、直径数百メートルほどの球状の身体に、細長い十数本の足。

足の先についている指は、周囲の本物の海底の岩を掴んでおり、身体を支えているというより、浮かび上がらないようにしているという印象を与える。

球状の身体の上半分は白いが、下半分は黒い。

上には砂礫が積もっていたので、どうやら黒がこの生物の色らしい。

そんな生物が海底にしがみつき、海底火山の噴き上げる熱水を浴びている。

一体これは・・・何なのだろうか?



「!!」



突然全身を、鋭く、冷たい感覚が貫く。

まるで、何かに睨みつけられたような・・・

周囲を見回してみるが、意識もろくになさそうな深海生物ばかりしか見当たらない。そう、あたしとこいつのほかには。



(まさか・・・こいつが・・・?)



眼前に聳え立つ、生物というには巨大すぎる物体を前にばかげた考えが浮かぶ。



(そんなはずはない。そもそもこいつには目のようなものは見当たらない。だから・・・)



気のせいだ、という思いは再び襲ってきた感覚を前に、消滅してしまった。



「・・・っ!!」



全力で水をかき、海面を目指す。

少しでもこいつから離れるために。

少しでもこいつから逃げるために。









水しぶきを上げながら、海面に躍り出る。

いつの間にか外は夜になっており、欠けつつある月があたりを照らしていた。



「な、何なのよあれは・・・」



視線を下のほうに向けながら、つぶやく。



「あんなでかい生物、暴れだしたらあたしたちただじゃ・・・」

「そうだな、ただじゃすまないな」



背後から届いた声に、あたしは身を向けた。

そこには、大きく袖と胸元の膨れた白い上着と、大きく膨れた赤いズボンを身にまとった何者かが立っていた。

海面の、上にである。

青黒く、まっすぐに腰まで伸びた髪の毛を揺らしながら、そいつの丸く穴を穿ったような黒い目と、三日月状に裂けた口がこちらに向けられる。

瞳も唇も鼻もなく、つるんとした表面が月明かりを反射している。

仮面を思わせる顔だが、あごから首筋にかけてのラインが、そいつの顔が仮面ではないことを証明している。



「しかし、安心するがいい」



そいつは一歩、また一歩とあたしに歩み寄りながら続けた。



「あやつには今のところ、動く気力も動機もない」



歩みを止め、身を屈めながらあたしに顔を近づけ、三日月状の口を動かすことなく言う。



「あれは・・・」



あたしの口が、あたしの意思を離れたかのように動き出した。



「あれは・・・何?」

「あれか、あれは月だ。あれを食らえば、絶大な力が手に入る」



そいつの顔が、光の加減か笑みを深めたように見えた。



「そう、誰にも負けることのない力がな。

誰にでも勝てる力だ。かの竜宮神楽と、あやつの率いる軍団にさえもだ」



言葉の一つ一つが脳に染み入り、意識に浸透していく。



「あやつに勝てば、お前がこの人界の海の支配者となれる。

そして、竜宮神楽と人間どもの、生温い仲良しごっこも終わらせることができる」



そうだ、生温い仲良しごっこを終わらせなければ。

定められた日にのみ『食事』が許され、たまに呼び出しては自分のおこぼれを恵んでやるという、あの女の支配を終わらせなければ。



「しかし、今のお前ではまだ足りぬ」



何が、ですか?



「今のお前があやつを、月を食らったとしても、お前が月に飲み込まれるだけだろう」



では、どうすればよいのですか?



「なに、簡単なことだ。強くなれ。

精を食らって魔力を蓄えよ。

肉を食らって身体を鍛えよ。

人を食らって魂を高めよ。

そうすれば、月はお前の物だ」



ありがとうございます。



「分かればそれでよい。それではわしは行くぞ」



お待ち下さい、どうかお名前を・・・



「名か。わしの名は、メエズ=ギャレリオン」







こうしてあたしは、『月』の存在を知った。








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