魔を喰らいし者4
このままジェラの好きなようにさせるのは危険だ。そう考えた俺はジェラの魔の手から逃れるべく、背中から翼を出してジェラを振り払った。
「なっ……にっ、逃がしません!」
逃げようとする俺に手を伸ばすジェラ。俺はその手をかいくぐり、風呂場の入り口を目指す。メイド達やクリスのいる所まで行けば、流石にジェラも滅多なことは出来ないはず。そう踏んだのだ。
だが、その考えは甘かった。
「……うおっ!?」
突然脚を取られ、俺は床に倒れこんだ。足下を見ると、俺の足が赤いゲル状の物体に覆われているではないか。そしてその物体は、ジェラのスカートの中から這い出ているようだった。
「こっ、これは一体……!?」
「ふふ、逃げようとするなんて……いけない方ですわね、村正様は」
「くっ、くそっ!」
とっさに謎の物体から足を引き抜いて逃げようとするが、俺の足はまるでその物体に取り込まれてしまったかのようで、まったく引き剥がせそうにない。いや、それどころかもう片方の足も飲み込まれようとしている。
「はっ、放せ!」
「そう焦らなくても、ちゃんと後で離してあげますわ。でも……危害を加えないと言ったのに逃げるなんて、私ちょっとショックです」
「いきなり体の動きを制限されるような真似されたら、普通誰だって逃げようとするっての!」
逃げようともがくが、物体が足を離す気配はない。上空へ逃げて引き剥がそうにも、生憎ここは屋内だ。魔力で何とかしようにも、できるのは小さな炎を出すだけ。しかもここは風呂場なので、その威力も大幅に減少したものとなるだろう。そんなもので足元の物体を何とかできるとは思えない。つまるところ、八方塞りというやつだった。
「くそっ……一体俺をどうするつもりだ?」
「どうするつもりだなんて人聞きの悪い……そんな言い方じゃ、私が村正様に何かしようとしているみたいじゃないですか」
「いや、現にしてるだろ! つーか、これは一体何なんだ!?」
両足を飲み込んでいる物体をびしりと指差し、俺は尋ねる。
「ああ、それは私の……いえ、何でもありません」
「何でもないってことはないだろ! とにかく、俺を離してくれ!」
「全く……ちゃんと洗い終わったら離してさしあげるつもりでしたのに。そうまで反抗されると、私怒っちゃいますよ?」
「怒りたいのはこっちの方だ! いいからとっとと放せ!」
声を荒げる俺。そんな俺に対し、ジェラは笑顔のまま無言で近づいてくる。
「お、おい……何とか言えよ……」
「何とか。これでよろしいでしょうか?」
アルカイックスマイルを浮かべながら、ジェラはそう答える。ふざけているのかと怒鳴ろうとしたが、俺はジェラに何か薄ら寒いものを感じ、思わず言葉を失っていた。
「あ、あの……ジェラ、さん?」
「はい、何でしょうか?」
「いや、その……ひょっとして、怒って、る?」
「どうしてそんな事をおっしゃるんですか、村正様?」
何気ない感じを装って、ジェラはそう答えた。だが、俺にはわかる。この圧迫感……ジェラは間違いなく怒っている。
「あ、いや、そのだな……ちょっと言い過ぎたかもしれないけど、俺はここに来たばかりでだな……何というか、右も左もわからないような状態なわけで……」
「それが、どうかしたんですか?」
「だからその……ほら、そういう状態でいきなり動きを封じられたりしたら、誰だって驚くし逃れようとするだろう? だからその……一旦離してくれるとありがたいん、だが」
「ええ、そうかもしれませんね。でも、ちゃんと体を洗って差し上げるまで離してあげることはできませんわ」
にこにこと笑いながら、ジェラはボディーソープの蓋を開けた。そしてその中身を全て、俺の体に振りかける。
「い、いや、だからだな……その、自分の体ぐらい自分で洗えるっていうか、洗ってもらうのは背中だけで結構っていうか……」
「ふふ……遠慮なさらずとも結構ですのに」
「だからその、遠慮とかじゃなくて……とにかく一度、離して……」
「駄目です、離しません」
俺の言葉を遮り、きっぱりと言い切るジェラ。そしてジェラは俺の体に手を伸ばし、ボディーソープを満遍なく塗り広げ始めた。脇や股間といった辺りまで泡を塗り込められ、思わず俺の口から堪え切れなかった声が漏れ出す。
「くっ、あっ……ちょっ、ちょっと待っ……」
「待ちません。村正様がいけないんですよ? 大人しくしてもらえれば、普通に終わらせるつもりでしたのに……私、少し意地悪をしたくなっちゃいました」
その言葉に不穏なものを感じ、俺はジェラの腕を掴んで止めようとした。だがジェラの腕に俺の手が触れた瞬間、俺の手はジェラの腕の中に飲み込まれ、抜けなくなってしまう。
「なっ……はっ、離せ!」
「もう、仕方ないですね……ちゃんと後で離してあげますから、今は大人しくしててくださいね」
そう言うと、ジェラは俺の体を愛撫するように手を這わせた。ボディーソープでぬめる皮膚の上を、ジェラの指先が撫でるようなタッチで滑っていく。
「うっ……くっ、あっ……」
「ふふ、村正様はこの辺りが弱いのですね」
ジェラの指先が敏感な辺りをなぞるたび、思わず俺は体をびくりと震わせる。そんな俺の様子を楽しげに眺めながら、ジェラは俺の体を撫で回すように愛撫を続けた。
「……あら? まだほとんど触れていないのに、村正様のモノ、随分大きくなっていらっしゃいますね」
「ぐっ……こんなシチュエーションだったら、普通そうなるだろ!」
「もう、反抗的ですね……だったら、こうしてあげます」
瞬間、ジェラの体が粘体生物のように変形し、俺の体を覆い始めた。逃れようにも腕と脚を囚われているために、それは叶わない。瞬く間に、俺の体は首から上と股間でいきり立つ愚息を除いてジェラの体に飲み込まれていた。
「なっ……い、いったい何をするつもりだ!?」
「何って、決まってるじゃないですか。村正様の体を洗って差し上げるんですよ……私の、体の中で」
「体の、中で? それは……」
一体どういう意味だ、と尋ねるよりも早く、俺の体を包んでいたジェラの体が蠢き始めた。ジェラの体は内側にある俺の体を愛撫するように、ぐにぐにと動いて皮膚から刺激を送り込んでくる。
「くっ……そ、そういうことか……」
「ふふ、私の体で洗われる気分はいかがですか?」
「こ、こんな程度で……うあっ、ああっ!?」
突然、皮膚から感じる刺激が強いものへと変化した。先ほどまでは何とか我慢できそうなレベルだった快感が、先ほどとは段違いに強力なものになる。思わず俺の口からは抑え切れない喘ぎ声が漏れていた。
「どうやら、さっきのボディーソープが効いてきたみたいですね」
「くっ、ああっ!? く、薬か……くぅっ!?」
「ふふ、正解です。それじゃ、続けますね」
どうやら先ほど塗りつけられたボディーソープの効能で、体が敏感になっているらしい。だがわかったところで、今の俺にはどうすることもできなかった。
「やっ、やめ……うああっ!?」
「あらあら、どうしたんですか? 私はただ、村正様の体を洗っているだけですよ?」
白々しい事を口にしながら、ジェラは自らの体で俺を嬲り続ける。その頬はうっすらと赤みが差しており、わずかだが吐く息も荒い。ひょっとして、ジェラも気持ちいいのだろうか?
(あのボディーソープはジェラにも効果があるのか? だったら、このまま耐え続ければ……)
ジェラの手から逃れる事ができるかもしれない。そう思い、俺は与えられる快感を必死に堪えようとした。だが、その見通しは甘かったとすぐに思い知らされる。
「ふふ……村正様のここ、透明な汁が垂れてますよ。私に体を洗われて気持ちいいんですね、村正様」
「あっ、くぅっ……ふあっ!?」
ジェラは全身での愛撫を続けながら、手を伸ばして俺の肉棒の先端に触れた。そして先端から滲んでいる我慢汁を塗りつけるように、亀頭の部分だけを撫で回す。
「あっ、うっ、うああっ!? くっ、あっ……あああっ!?」
「ほ〜らほら。ここもたっぷり薬を塗ってあげましたから、気持ちいいでしょう? もっと撫でてあげますね」
「やっ、やめっ……くぅぅぅぅっ!?」
ジェラが一撫でするたびに、俺は脳がスパークしそうな快感に腰を震わせていた。だが、いくら気持ちよくてもそれだけでは射精に至ることはできない。真綿で首を絞めるような生殺しに、次第に俺は追い詰められていった。そして、ついに……。
「くっ……じぇ、ジェラ!」
「どうかしましたか、村正様?」
「た、頼む……もう、イかせてくれ……」
生殺しの快楽地獄に耐えかね、俺はジェラに懇願していた。それを聞き、ジェラはにっこりと笑う。
「ふふ、出せなくて辛いんですね……でも、まだ駄目です」
「なっ、何で……ふぁぁっ!?」
「だって村正様、さっき大人しくしていれば危害は加えないと言ったのに、全く信用してくれなかったじゃないですか。だから、もうしばらくはおあずけです」
どうやら、先ほど俺が抵抗した事がお気に召さなかったらしい。
「そんな……だってそれは、ジェラがいきなり身動き出来ないようにしようとしたからだろ!?」
「そうですか。村正様はこのままずっと出せないままの方がいい、とおっしゃるのですね?」
「……すまん、俺が悪かった。ちゃんと大人しくしてるから、最後までしてくれ」
このまま延々と生殺しを続けられたら、気がどうにかなってしまいそうだ。今のジェラなら、それくらいやりかねない。仕方なく、俺は素直に謝ることにした。本来非があるとすればジェラの方なのだから、俺が謝る必要はなかったはずなのだが……まあこの際止むを得まい。長い物には巻かれろ、というやつだ。
「ふふ、だいぶ素直になられましたね……わかりました。ちゃんと最後には出させて差し上げます。ですが、それまでは……」
ジェラは怪しく微笑みながら、俺のモノの先端に人差し指を這わせた。そして次の瞬間……ジェラの指が先端から入り込んでしまったではないか。
「なっ……ぐっ、ああああ――っ!?」
不思議なことに、痛みは全く無かった。尿道に入り込んだジェラの指は不規則に震え、俺に背筋を雷が貫いたかのような快感を与えていた。
「じぇ、ジェラ……一体、何を……」
「ふふ……村正様のおちんちんの中を、洗って差し上げるんですよ」
「なっ……!?」
ジェラの言葉の意味を理解し、俺はぞっとした。ジェラはあのボディーソープを、尿道の中にまで塗り付ける気なのだ。両手が自由ならジェラの指を引き抜いていた所だが、生憎両手はジェラに捕らわれている。今の俺の立場は、まさしくまな板の上に載せられた鯛のようなものだった。
「や、やめっ……」
「ふふふ……たっぷり洗って差し上げますね」
そう言うと、ジェラは尿道の中に潜り込ませた人差し指をぐにぐにと動かし始めた。それと同時に、粘膜を直接撫で回され、薬を塗り広げられる感触が俺を襲う。薬の効果とジェラの責めの前に、俺はただ喘ぎ叫ぶことしか出来なかった。
「うあっ、あああああっ!? やっ、やめっ……はああああっ!?」
「ほらほら、気持ちいいんですか? こんな風に尿道の中まで弄繰り回されて、気持ちいいんですか?」
「あっ、ああああああ――――っ!? ひっ、ひぐぅぅっ!?」
ジェラの指が、さらに奥へと侵入してくる。その度に情けない声を上げる俺を見下ろしながら、ジェラは笑っていた。
「ほら、わかります? 私の指、村正様の前立腺に当たってるんですよ。このままもっと奥……精巣の辺りまで伸ばしてあげましょうか?」
「いっ、いぐぅぅぅっ!? ぐっ、がああああ――っ!?」
もはや、まともな答えを返すことなどできはしない。徐々に思考は快感に侵され、真っ黒に塗りつぶされていく。
こんなことになるのなら、抵抗なんてしなければよかった……ジェラに精巣の中を掻き回されながら、俺の脳裏にはそんな考えが浮かんでいた……。
そして、数日後。
「はぁっ、ふあああっ!?」
「ほらほら、ここもちゃんと洗って差し上げますね」
「そ、そんな所まで……くぅぅっ!?」
俺は風呂場で、いつものようにジェラに犯され……もとい、身体を洗われていた。もちろん、あのボディーソープを使ってだ。
あれから毎日のように、俺はジェラの相手をしている。もっとも、こうやって一方的に嬲られ続けるのが相手になると言えるのかは少々疑問だが。
だが、俺にはジェラから逃れる術などない。いや……今ではもう、逃れようなどという気すら起こらない。何故なら……。
「さて、それじゃ……いつものように、おちんちんの中を洗って差し上げますね」
「あ、ああ……」
俺の心はもう、ジェラの魔手に捕らわれてしまったのだから……。 (BAD END?)
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