トラップ一家物語
「おはようございます」
「おはよう」
「あら、やっと起きたの」
「うん、ちょっと昨日、夜更かししてね」
「宿題か」
「うん」
「連休まだ大分あるんでしょ?急いで終わらせなくてもいいじゃない」
「いや、宿題が残ってるっていうのがいやなんだよ」
「ま、気持ちは分かるぞ。でも、ほどほどに、な?」
「はい」
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
『トラップ一家物語』
とある地方都市。
その中心部から電車で6つ下ったところに、地方都市のベッドタウンとして機能している町があった。
人口は多すぎず、少なすぎず。
治安は殺人が毎日発生するほど悪くはなく、人が家にいるときでも玄関には鍵をかける程度には良くなく。
つまりは、割と平和な町であった。
そしてその町に、彼女は降り立った。
そしてその町に、彼らはあった。
「・・・まぁまぁね」
夜11時。彼女は町外れにある高圧専用鉄柱の上に立って、明かりの点った町を見渡しながらつぶやいた。
革のような質感のボンテージファッションに、肩で切りそろえられた金髪。
短いスカートの舌から伸びる尾と、むき出しの背中から広げられたこうもりを思わせる翼。
立っている場所とそのいでたちが、彼女が淫魔であることを主張していた。
そして彼女は、淫魔界から人界へとやって来るのは、これが初めてだった。
彼女の姉はすでに人界を幾度となく訪れ、今では人界で就職し、人間にまぎれて生活している。
本来ならば姉が指示したとおりに、人界の魔術師達が作ったゲートをくぐり、身分保障と滞在場所を与えられているはずなのだが。
(いや、あたしも最初はそのつもりだったのよ?)
心中で、この場にいない姉への言い訳を始める。
確かに淫魔界に存在する、魔術師の組織の支部所に行き、窓口に行くところまではそのつもりだった。
しかし実際に窓口に積んであったパンフレットを見て、彼女の意思は揺らいだ。
異様に、分厚いのだ。
揺らぐ意思を叱咤激励し、内一冊を手に取る。めくる。
最初のほうは楽しげなイラストとともに、人界に出て留学・就職し、人間と仲良くなったり、技術を身につけることのすばらしさについて書いてあった。
そして、人界魔術師のゲートを使用するのに必要な手続きや審査、書類の説明に来た辺りでイラストが小さくなり、字の分量が増えていく。
(負けるな・・・負けるな、あたし・・・!)
震える手を操り、『審査には、人界で守るべきルールについての筆記試験もあります』という文章を見なかったことにしてページをめくっていく。
そして、彼女の手が止まった。
開かれたページには、『人界における淫魔の行動規約、及び権利と義務について』と書いてある。
パンフレットの厚みは半分以上どころか、8割は残っている。
(大丈夫・・・イラストいっぱい漫画がいっぱい・・・)
すぅはぁすぅはぁ、と深呼吸を繰り返し、ページをめくる。
『行動規約12:淫魔は人界大図書館が設定した区画から、許可なしに外出してはならない』
『淫魔の身分保障:淫魔は滞在先の国家において、人界大図書館の発行する身分保証書を用いて、自動車運転免許の取得、国家による医療福祉サービス、各種学校への入学が可能である』
『日常生活における義務36:淫魔は人界においては常に認識票を装着していなければならない』
『緊急時の収集:淫魔は人界大図書館、及び所属魔術団体の呼び出しに、必ず応じなければならない』
文字文字文字文字。
頭痛と吐き気、
そして夏休み最終日に思い出し、試しに読書感想文用の課題図書を開いたときに襲ってきた絶望感と全く同じものが彼女を襲う。
慌ててパンフレットを閉じ、悪寒とわきの下に生じたいやな汗を追い払おうと、呼吸を整える。
(・・・『審査には、人界で守るべきルールについての筆記試験もあります』・・・)
ふと、脳裏に不吉な語句が浮かび上がった。
震える手を持ち上げ、異様な重みを持つパンフレットのページを繰る。
脳裏に浮かび上がった文言が、彼女の幻であることを、彼女の見間違いであることを願いながら。
適正審査のページで指が止まる。
目が、ページの上から一行ずつ、文章を追っていく。
『適正審査は、次の4項目において行われます』
『1.当淫魔の健康状態、および病歴について』
『2.当淫魔の過去の褒章、および前科について』
『3.当淫魔の最終学歴、および所有資格について』
最後の一項目が、彼女の目に入った。
『4.当淫魔の「人界における淫魔の行動規約、及び権利と義務」に対する理解度について』
視界がかすむ。
床が傾く。
足が宙に浮く。
「・・・っ!!」
どうにか足を踏ん張り、起こりかけていた立ちくらみを強引に押さえ込む。
「あの・・・」
いつの間にか傍らに来ていた、淫魔の施設職員が心配そうに彼女の顔を見ていた。
「大丈夫ですか?医務室へ案内いたしましょうか?」
「・・・あ・・・大丈夫・・・です」
パンフレットをもとあった位置へ戻し、彼女は職員を振り切るようにして駆け出した。
扉をくぐると、淫魔界の空気が彼女を包んだ。
走っていた。彼女は2本の足で立ち、己の足で走っていた。
しかし彼女の心は、すでに折れてしまっていた・・・
回想により、背筋を這い登ってきた絶望感を強引に振り払う。
彼女はゲートをくぐることはできなかったが、人界へ来れなくなったわけではない。
彼女は淫魔ならば大体誰でもできる方法で、つまりは自力で淫魔界と人界をつなぐゲートを作り、そこをくぐって来たのだ。
これならば試験を受ける必要もないし、人間に行動を制限されることもない。
しかし・・・
(ちょっと疲れたわね・・・)
自力での移動は、彼女のような年若い淫魔にとっては負担が大きいのだ。
消費した魔力を補うためにも、食事をしなければならない。
幸い、この町には彼女のほかに大きな魔力を持つ者の気配は感じられない。
「で、えーと・・・」
こめかみに指を当て、魔力とは別の気配、つまりは淫気を探る。
「・・・!」
あった。
大きな淫気が、割と近い場所にある一軒家の二階から発せられていた。
(それじゃあ、いただきますか)
彼女は胸中でつぶやき、翼を羽ばたかせて夜風に乗った。
ベッドに勉強机、その他いくつかの家具が置かれた四畳半ほどの部屋に、十台半ばほどの少年がいた。
彼は寝巻き姿で机に向かい、電源の入っているパソコンのモニターを凝視していた。
画面には、彼と同じ年頃の少女が顔を赤らめながらも、股を広げ、愛液を滴らせているCG画像が映し出されていた。
「・・・・・・」
一心不乱に画面に表示された文章を読み、マウスをクリックする。
少女の表情が変化して、また新たな文章が表示されていく。
「はー、こりゃエロいわ」
「っ!!」
背後からの声に左手が跳ねるように動き、複数のキーを同時に押す。すると画面から少女の画像が消え、代わりに無味乾燥なワープロソフトの画面が表示された。
そこまでの動作を一瞬で終えてから、彼は振り返った。
彼の後ろ、部屋の中央付近に立っていたのは、金髪の整った顔立ちをした少女であった。
無論彼の家族に彼女の様な者はいない。
「だ、誰・・・?」
震える声でそう発する彼に、彼女は答えた。
「淫魔よ」
「・・・淫魔?」
聞き覚えはあるが、日常生活で口にすると、確実に他人から正気を疑われる単語を、彼は繰り返した。
「あら、知らない?人間だんせいの精を糧にして生きる、一般常識では架空の存在とされている種族」
「・・・」
それは知っている。
それに、目の前に立つ彼女が身に着けている衣服は、彼が今までに収集した、悪魔っ娘というジャンルのキャラクターイラストのイメージに合致していた。
さらによく見ると、少女の背中からはたたまれた二枚の蝙蝠の羽と、先端が鏃のようになった尻尾が覗いていた。
「それでね、今日あたしは初めて人界に来たんだけど」
必死に情報を整理する彼をよそに、少女は続ける。
「人界に来るのに意外と魔力使っちゃって、どっかで補充しないといけないわけ」
「・・・はぁ・・・」
「それで簡単に言うと」
少女が、顔を彼の顔に寄せる。甘い香りが、彼の備考をくすぐった。
「あんたの精液、ちょうだい」
「・・・はぁ・・・」
「・・・嬉しくなさそうね」
若干不満そうな表情で、彼女は続ける。
「せっかく淫気がモクモク立ち上ってるから、どれほど悶々とした男がいるかと思って来てみたのに・・・」
嬉しくない訳ではない。
ただ、あまりにもお決まり通りの展開に、彼の全身から力が抜けているだけなのだ。
「ま、こっちもやる気のないのを相手にしている暇はないから、他行かせてもら・・・」
「嬉しいです!行かないで!」
両親が下で寝ているにもかかわらず、彼は声をあげて立ち上がった。
一世一代のチャンス、逃すわけには行かない・・・!
「・・・ならいいけど・・・」
突然の少年のテンションの変化に、かすかな戸惑いを漂わせつつ、彼女は部屋の隅のベッドに腰掛け、彼に手招きをした。
「女の子と、したことはある?」
彼が彼女の隣に腰掛けるなり、彼女は口を開いた。
「・・・いえ・・・」
「ふふっ、だろうね」
距離を詰め、彼女が彼と腕を密着させた。
「じゃあ君の初めて、全部もらうね・・・!」
少年の両肩に手を回し、唇を強引に重ねる。
異様なまでに柔らかい唇の感触に、彼の思考は止まった。
「ん・・・んむ・・・んん・・・」
伸ばされた舌が、彼の唇を押し開き、口中へと侵入してくる。
彼女の舌は、突然の侵入者に硬直している彼の舌にたどり着き、優しくその表面を撫でた。
そして彼の緊張をほぐすように、舌同士を巻きつかせ、全体を刺激する。
口内を刺激されたことにより、自然と口腔に唾液が溢れ出してくる。
「ん・・・ちゅ・・・」
彼女は、溢れ出した唾液を音を立てて啜りとり、代わりに己の唾液を注ぎ込んだ。
「・・・!・・・・・・!」
彼女の腕の中で、少年は声もなく震えていた。
ただ舌同士を絡ませ、唾液を注ぎ込まれているだけだというのに、彼のペニスは、初めて成人雑誌を見たときのように固く勃起していた。
「ん・・・ん・・・」
彼女が顔を動かし、角度を調整する。すると、さらに奥まで舌が入り込んできた。
下の付け根を、咽頭を、上あごの粘膜を、舌がなぞり、くすぐったいだけの刺激を与えていく。
しかしそのくすぐったさは、彼に甘美なまでの快感となって、彼を次第に追い詰めていく。
そして限界が訪れた。
「・・・!・・・!!」
彼の全身が張り詰め、下着の中で怒張したペニスが脈動とともに精液を吐き出し始めた。
射精が治まった所で、ようやく彼女は少年の唇を開放した。
両腕を離すと、彼女という支えを失った少年の体が、ベッドの上に倒れこむ。
「うふふ、キスだけでイっちゃったね」
唇から垂れる、二人の唾液の混合物を舐め取りながら、彼女は小さく言った。
「んじゃ、きれいにするね」
彼女はそう続け、射精の余韻で動けない彼をまたぎ、ベッドにひざをついて、胸の上に腰を下ろした。
ボンテージの股部分を食い込ませた尻が、彼の胸板に押し当てられる。
「あーあー、こんなに出して・・・」
寝巻きのズボンと下着を一度に下ろし、彼女があきれたような声を発した。
「もったいないもったいない・・・」
上半身を屈め、顔を近づけて、少しだけ力を失ったペニスに舌を伸ばす。
「・・・ひぁっ!?」
唐突にペニスを襲った柔らかい感触に、彼は声をあげながら呆然としていた意識を取り戻した。
しかし彼女は構うことなく、伸ばした舌でペニスにへばりつく精液を舐め取る。
幹の根元から、カリ首の直前まで。
角度を変え、顔を移動させ、舐め残しが無いように舌をひたすら這わせる。
舌が上下するたびに、むずがゆい快感がペニスから注ぎ込まれ、彼は声を漏らしていた。
「・・・あーもう、もうちょっと静かにしてよね?」
彼女がペニスを舐める作業を中断し、顔を彼のほうに向けて言った。
しかし射精直後の敏感なペニスを刺激されて、声を上げずにいられるわけがない。
「そんな・・・無理・・・」
「じゃあ、こうする」
彼の囁くような抗弁に対し、彼女は腰を浮かせ、尻を彼の顔の上に移動させた。
そしてそのまま、腰を下ろす。
「ん・・・んぐ・・・!」
「これでよし、と」
顔を圧迫され、息苦しさにうめき声を揚げる彼の耳に、彼女の『一段落着いた』感漂う言葉が届く。
直後、ペニスを再び甘い刺激が襲う。
幹を上下になぞる、舌の感触。
数度の上下の後、今度は亀頭に狙いが定められる。
舌の先端が当てられ、螺旋を描くように頂上、つまりは鈴口向けて感触が移動していく。
「・・・ぐ・・・む・・・!」
革の生地越しに発せられる、彼女のむせ返るような甘い体臭に意識を侵されつつ、彼は声をあげる。
しかし届いているのかいないのか、彼女は責めを止めることはなかった。
鈴口まで到達した舌先は、二、三度鈴口を押し広げて、尿道の粘膜を刺激すると、今度は逆に螺旋を描きながら亀頭を下って行った。
「ん・・・!む・・・!」
カリ首に到達するなり、溝に沿って舌先が円を描くように動く。
精液と先走り、そして恥垢をこそげとって飲み込みながら、彼女は舌をゆっくりと、ゆっくりと操った。
連続的に与えられる快感に、ペニスの脈動が大きく、早くなっていく。
「・・・うぉうほろほろ、はら?(もうそろそろ、かな?)」
舌を休めることなく彼女が言うと、亀頭全体が柔らかい物に包まれる。
カリ首を締め付けるのは、おそらく唇。
そして、彼女の口中に入った亀頭が、さらに広げられた舌に包まれた。
ほんの少しだけざらりとした、柔らかく弾力ある舌が、波打つように動く。
革布越しに感じる、女性器の形。
革布越しに香る、理性が蝕まれるような甘い香り。
そして与えられた刺激が快感となり、追い詰められていた彼の意識が弾けた。
「ん!んぐぅっ・・・!」
一際大きなうめき声とともに鈴口が開いて、尿道を駆け上ってきた精液が、彼女の口中へと噴出する。
亀頭を包んでいた舌が避けられ、口腔の粘膜が精液を嚥下するために、あるいはさらに精液を噴出させるために蠢く。
亀頭を撫でられ、カリ首を擦られ、与えられる刺激に彼のペニスはますます猛り、さらに精液を放った。
「ふぅ、やっと終わった」
射精が治まり、精液をすべて飲み干した彼女が、顔を上げながらそういった。
彼が放った精液の量は、2回目とは思えぬほど多く、1回目よりも確実に多かった。
そして射精の快感も、1回目とは比べ物にならぬほど、強かった。
「もしもーし、起きてますかー?」
ふざけたような口調とともに、彼女がようやく尻を彼の顔から上げる。
しかし彼は応えることなく、荒く呼吸しながら、新鮮な空気を体内に取り込むばかりだった。
「・・・どうだった?」
力なく横たわり、ようやく呼吸が落ち着いてきた彼の側に身を寄せながら、彼女が問いかける。
「・・・よかった、です・・・」
少年は、半ば吹き飛んだ意識の中、淡々と答えた。
「あたしもよかったよ」
彼の屹立した乳首に指を伸ばし、弄びながら彼女は続ける。
「君の精液、すっごいおいしかった。もう、全部飲んじゃいたいって言うぐらい・・・」
彼女は手を止めて身を起こし、彼の顔をまたいだ。
そして指先でボンテージの股布をずらし、濃厚な甘い香りと、愛液を滴らせる女性器を、彼の目の前にさらす。
「ここに入れて、いっぱい精液出してくれるかな・・・?」
女性器の亀裂は大きく広がり、ピンク色の粘膜を外気に触れさせながら、ひくひくと痙攣していた。
糸を引きながら愛液が滴り落ち、彼の顔を濡らす。
甘い香りが、唇から入った甘味が、思考を奪う。
「・・・は・・・い・・・」
少年の答えに、彼女は笑みを浮かべながら、体をずらす。
彼の視界から彼女の性器が消え、代わりに三度屹立したペニスを掴まれる。
「それじゃあ、入れるよ」
ちゅぷ、と粘液質な音とともに、亀頭に下や唇とは比較にならない柔らかさの粘膜が触れる。
そして、彼女は一気に腰を落とした。
「!っひゃぁぁっ!!」
ペニスの根元から先端までを、膣内の柔軟な襞状の粘膜が包み込む。
半ば停止していた思考に、一気に快感が注ぎ込まれ、覚醒する。
「ああぁっ!ああっ!!」
「あはは、そんなに大声出して」
上半身を倒し、彼と体を密着させながら、彼女が続ける。
「おとーさん、おかーさんが起きてきちゃうよ?」
「あああっ!いいですっ!きもぢいいですっ!」
快感と興奮により、全くかみ合っていない返答を発する。
「へー、そんなに気持ちいいんだ。・・・じゃあ、これは?」
彼女が少しだけ腰を浮かし、丸く、円を描くように腰を振る。
みっしりと詰まった膣内の肉が、彼女の動きにあわせて押し付けられ、離れ、蠢くのみでは実現できない刺激を生む。
「ぅあああっ!あーっ!」
襞がカリ首にまとわりつき、裏筋を左右に擦りたて、亀頭をもみほぐし、幹を上下になぞる。
2度の射精により、痛みさえ感じていたペニスが、彼女の膣内で破裂しそうなほど膨張し、熱く脈打っていた。
もう、射精直後の敏感な状態とか言う問題ではない。
完全に、ペニスが膣によって、彼の意識が彼女によって犯されていた。
あっという間に興奮が彼を追い込み、ペニスが大きく脈打ち始める。
「いっぱい、出してね」
耳元で彼女がそう囁くなり、一気に膣の締め付けが強くなった。
「うぁ、うぁあああああっ!!」
叫び声とともに、下腹部で渦巻いていた興奮が、精液とともに放たれる。
尿道を大きく広げ、断続的に精液が彼女の膣へと注ぎ込まれる。
全身が痙攣し、背筋が折れんばかりに反り返り、脳内を火花が走り回る。
そして、3度目の長い長い射精が収まり、彼の意識は暗転した。
闇。
股間に何かが絡みつくような感覚。
義務。
抱きしめなければ。
誰を?
愛しい人。
目を開くと、少しだけ潤んだ二つの瞳が目に入った。
「お目、覚め?」
彼女の金髪の向こうで、彼女の尻が上下に跳ねているのが分かる。
それにあわせて、粘液と粘膜がペニスを飲み込み、吸い付く感触があった。
「君が、寝ている、間に、2回、出させ、ちゃったよ?」
彼女が自分の動きにあわせ、言葉を区切りながら言う。
(抱きしめなきゃ・・・)
彼の意識の奥深くで、何かが命じる。
彼はそれに従って、脱力し、左右に広げられていた両腕を持ち上げた。
そのまま彼女の背中に回し、ちょうど背骨に指先が触れるように置く。
「あら?抱き、しめて、くれ・・・」
彼女がすべて言い終える前に、両指に力がこもる。
指が彼女の背中の皮膚を圧迫して破り、深々と背中に突き刺さった。
「あがががががががががががが!!」
彼女が全身を突っ張らせ、痙攣とともに途切れ途切れの叫び声を上げる。
手足が陸に打ち上げられた魚のようにのた打ち回り、膣の粘膜も細かく震動していた。
粘膜が震え、ペニスに絡みつき、その表面を刺激する。
痺れるような快感がペニスから背骨を駆け上り、精液が噴出する。
膣は痙攣しながらも、注ぎ込まれた精液に反応し、さらに搾り取ろうとペニスに絡みつく。
その動きが、彼に更なる快感を与えていた。
しかし、遠い。
ペニスを蹂躙する、膣の感触も、
「あがががががががががががが!!」
耳に注ぎ込まれる、彼女の声も、
何もかもが、薄紙一枚を隔てたかのように遠い。
かちゃり
音を立てて、部屋のドアが開く。
「おー、かかってるかかってる」
そう口にしながら、ジャージ姿の男が一人彼の入ってきた。
両親ではない、全く彼の知らない男だ。
「さすが人間から作った罠だけはあるな。ウチにも一台ほしいところだ」
「いや、そんな予算あったら、もうちょっと広い部屋買いましょうよ腰眼」
開かれたドアから、さらに2人の男が入ってくる。
いずれもジャージ姿で、ジャージについた皺が、長時間身に纏っていることを物語っていた。
「っがががががががが!」
彼女がぶるぶると震える全身を操り、視線を三人に向ける。
「あー、一応言っておく。俺らは人界大図書館構成魔術組織、『帝国』の代理の者だ」
「大図書館設置ゲート未使用淫魔であるあなたに対し、『帝国』の『実験用サンプル』としての捕獲を行います」
最初に入ってきた男が口を開き、最後に入った男が後に続ける。
「ま、恨むんなら俺達じゃなくて、ゲート使わなかった自分と、トラップの家引き当てたお前の運を恨めよ」
最初の男が軽くそういう。
トラップ?何のことだろう。
「種明かしをしておいてやる」
二番目の男が、ベッド脇に屈みながら、口を開いた。
「実を言うと、この町全体が魔術組織『帝国』の管理下にある。そしてこの家は、この町に流れてきた何も知らない淫魔を捕獲するために設置されている」
「おい、腰眼!機密じゃねえのか」
男、腰眼の言葉が中断される。
「臨時手伝いの我々でも知っていることだ、このお嬢さんに聞かせてやってもいいだろう」
腰眼はそう言うと、顔を彼女のほうへ向けた。
「そしてこの家に配属されているのは、人間の体をベースに作られた人形だ」
彼の思考が停止する。
「こいつらは朝から晩まで、決められた動きで一日を過ごす。一挙一動、人形同士が交わす言葉まで、昨日も明日も同じだ。
朝起きて、連休何日目だというような言葉を交わし、昨日解いた宿題をまた解き、夜になれば淫気を垂れ流して淫魔をおびき寄せ、朝が来ると昨日のことを全て忘れる。
未来永劫、これの繰り返しだ」
そんなはずはない。確かに昨日の事は覚えている。
空しい叫びが、彼の心中に響く。
しかし、覚えていることが何の証拠になろうか?腰眼の言うとおり、あらかじめ用意された記憶を昨日のことだと思い込んでいるだけではなかろうか?
音を立てながら、彼の意識の中で、何かが崩れていく。
「そして淫魔がかかれば、近隣で待機中の魔術師を呼び出し、淫魔が油断した隙に拘束する」
「単純だけど、確実な仕組みだな」
最初に部屋に入った男が、腰眼の言葉を引き継ぐ。
「さて、種明かしも終わった。髄柱、バアルは?」
「後五分くらいで来るそうです」
携帯をいじっていた最後の男、髄柱が腰眼の問いに答える。
「それじゃあ、そろそろお別れだな。名も知らぬ淫魔のお嬢さん」
全身を痙攣させながら、絶望に塗りつぶされた瞳の彼女に向けて、腰眼は続けた。
「『帝国』に引き渡した後のことは分からないが、お元気で」
「おはようございます」
「おはよう」
「あら、やっと起きたの」
「うん、ちょっと昨日、夜更かししてね」
「宿題か」
「うん」
「連休まだ大分あるんでしょ?急いで終わらせなくてもいいじゃない」
「いや、宿題が残ってるっていうのがいやなんだよ」
「ま、気持ちは分かるぞ。でも、ほどほどに、な?」
「はい」
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
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