赤糸娘




田舎にある実家の近くには、うらぶれた神社がある。

年末年始に帰省するたびに参拝しているが、神主も巫女もすでにいない。

今年も正月の夕方、家族や親戚との会話も一通りした後に散歩として来たのだった。

いまにも崩れ落ちそうな社は壁にところどころ穴が空いていた。

きっと中はネズミや虫の巣になっていることだろう。

社の横には、石碑のようなものが造られていた。

誰がどんな目的でつくったのか、どういう意味が込められているのかはわからない。

石碑は閉じた円筒形をしていたが、一部が崩れて空洞になっていた。

「中に、なにかあるのかな……?」

ちょっとした好奇心が湧いて覗いてみると、石碑の中央にあたる部分に何かあるのが見えた。

手を入れて掴み取る。触れたものからは平べったい布のような感触がした。

見るとそれはお守りだった。すっかり色が褪せ、ぼろぼろになっていた。

この神社のお守りなのだろうか。

たしかお守りの中に入っているものには、その神社の由来に通じるものだと聞いたことがある。

本当かどうかわからなかったが、手がかりがあるかもしれないと思い、僕はお守りの中に指を入れた。

「これは、糸……?」

幾重にもわたって折り重なった糸だった。しかも暗い赤色をしていた。

しゅるしゅるしゅる……。

「うわ! な、なんだこれ!」

なんと勝手に糸が動き出したのである。

イトミミズのように不気味な蠢きをしたそれが、僕の小指に絡みつく。

そして指の間接のところで型結びされた。

びっくりした僕はお守りを落とし、結ばれた糸を解いて指から抜こうとした。

だが糸はまるで指と一体化したようにくっついている。

「ああ……やっと会えましたね。嬉しいです」

いつの間にか、その少女は現れていた。それも僕のすぐ目の前に、絡んだ糸の先端に。

「ひっ! ゆ、幽霊!?」

古い和服を着た少女だった。長い髪と整った顔立ちだけを見れば綺麗だといえる。

手の先に、僕の指ともつながっている赤い糸が結ばれていた。

「どうされました? なぜそのような顔をするのですか。

 私ですよ。あなたと将来を誓い合った仲ではありませんか」

「い、いやいやいや! 人ちがいだよ! 僕はきみのことなんか知らない!」

意味不明なことを言う彼女は、人違いをしているのだと思った。

「ひどい……私とあなたは運命で結ばれているのに……。

 ほら、これが証拠ではありませんか」

彼女は僕の手を握り、赤い糸でつながっている事実を僕の眼にみせつける。



こ、こんな糸、切ってしまえ!

咄嗟に糸を断ち切ろうと引っ張り、両手でねじったり引っ張ったりするが、頑丈に編まれた糸は切れなかった。

「その糸は決して切れません。私とあなたの大切なつながりですから。

 さあ、私を受け入れてください……この身体はもう、あなたのものでもあるのですよ」

彼女は着物をはだけさせ、細い肩に浮かぶ鎖骨や小さめの乳房を露わにする。

普段の生活やポルノで見れば劣情を催したかもしれないが、

いまの状況では恐ろしさの方がより際立って感じられる。

僕は後ずさり、一気に逃げようと駆け出した。

だが、踏み出した直後にぐいっ、と引っ張られてしまう。

指に結ばれた糸が僕と彼女の間にピンとつながり、離れることができなかった。

その長さは1メートルにも満たない。

「どうして、逃げようとするのですか? 私のこと、お嫌いなのですか?

 私はあなたのことを、こんなにも慕っているのに」

もう彼女の着物は足の方まで完全にはだけていた。

白い素足にお腹、そして股間の割れ目までがみえている。

「私の身体、キレイですか? この胸も、お尻も、股の秘裂まで、

 あなたに触ってほしいのです。こんな風に」

少女が自らの手を胸にもっていき、膨らみを握って上下に揺らしたり、乳首をつまんだりしている。

と、そのとき、僕の身体にも違和感があった。

僕自身の胸にもまた、妙なうずきと、くすぐったさを感じる。

「あんっ……気持ちイイです。あなたの手で愛撫してもらえたら、もっと幸せの高みにのぼれます。

 早く、早く私の身体に触ってください」

なおも彼女は乳房を揉み、ときにはわき腹や脇の下、へそに手を滑らせて自らを慰めている。

清純そうな少女が目の前で自慰をしている光景を見て、興奮が高まってくる。

だがそれよりも、彼女の手が僕の身体を直接に触ってきているような感覚が、

さらに強い快感を与えていた。



少女が細い指で乳首をつまむと、僕の乳首までが引っ張られる。

「ふぁ……あぁん、もっと感じたい……お豆も、弄りたい」

ついに少女が股間に手を入れて、秘唇とクリトリスをさわり始める。

「うぉっ! な、なんで、僕にまで」

それと同時に僕のペニスにもさわさわとした手の刺激が広がった。

か弱い少女の力で竿をさすられ、亀頭をつままれる感触。

みるみるうちに勃起し、先からはすでに我慢汁さえも分泌し始めている。

「はぁ……イイ、イイです。私、もう濡れ始めています……

 もっと、気持ちよくなってもいいですよね」

目の前ではほぼ全裸の少女がはしたなく股を広げ、僕に秘部をみせつけるように自慰をしている。

膣からはとろりとした愛液を滴らせ、包皮を剥いたクリトリスを指で弾く。

「ひゃうっ!」

「うぁっ!」

僕の彼女の喘ぎ声が重なった。

がくっ、と膝が崩れ落ちて地面に尻餅をついてしまう。勃起したペニスが窮屈でたまらなかった。

ズボンとトランクスを同時にずり下げると、ペニスは少女に向けていきり立った。

「あぁ、それが大きくなった男の人の、なんですね。

 子種を出すのですか? 私の身体にかけちゃいたいですか?

 いいですよ、私の割れ目に飛ばしてくださいっ」

抑えようとしても、その言葉に逆らえなかった。

大股を広げ、ぱっくりと開いた陰唇の奥、精子を注ぎ込むための膣にペニスを向ける。

自分で擦る必要は無かった。

目の前で少女が自らのクリトリスを擦るたびに、僕のペニスにも同様の快感が伝わってきているようだった。

玉袋が縮まって精子をどんどん先へ送り込んでくるのを感じる。

彼女の膣も激しく息をしているように開いたり閉じたりして、膣奥から愛液を分泌させていた。

「ふぁん……出してくださいね、いっぱい……ぁん、いっぱい、私の身体に向かって……やあぁぁぁん!」

ものすごい速さでクリトリスを擦り、彼女は全身をふるわせてイッていた。

そして僕も、要望通りに彼女の股間に向かって精液を放出する。

実際には僕のペニスは全く触れられていないのに、

少女の細い指のなかで激しく擦られた快感を得ていた。

「はぁ、はぁ……ぬるぬるした子種が、ついてます。

 うふふ、これで股の中をいじるとさらに気持ちいい感じです」

べっとりと付着した精液を、少女は手に馴染ませてさらに陰唇に塗りこんでいく。

滑りを増した肌はさらに強く擦っても快感を与えるようになっていた。

「え、ちょっとまだ、出したばかりで、やめてくれーー」

「ふふ……私は、もっともっと気持ちよくなりたいです。

 あなたの身体も、そう思っているはずですよ。遠慮なんてしないでくださいね。

 私とあなたは、永遠に結ばれているのですから」

最初から最後まで少女は一方的な愛情を僕に向け、ただ快楽のみを強制的に与えてきた。

そう、最後まで。僕が精子をすべて出し尽くしてからも、さらに彼女は自慰を続けて快感を送り続けた。

必死に振り払おうと身体が強張り、糸が結ばれた指の皮膚が切れて血がにじんでいる。

それでも解けない糸の先は、しっかりと少女の指に絡み付いていた。

僕の意識がなくなるときまで……。




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