蜜香る森の奥に




「………」

女が連れ去られた場所は、女王が謁見の間として用いる部屋らしかった。草の絨毯が部屋の途中から玉座と思われる方へと敷かれ、土くれを固めて作られたと思われる柱が何本か立ち並び、何とも言えない威圧感を発している。

「…………」

この部屋の中央部に置き去りにされて数分後、意識を取り戻した女は、目の前の光景に、ただ沈黙する他はなかった。

第一、逃げようにも全身に毒が回っていて、体が全く自由にならない状況なのだ。叫んだところで、この場では逆に蜂娘の仲間を呼ぶ事になりかねない。既に女は、自分の運命を半ば諦めていた。

「………ううっ………ひっく………えぐっ………」

自分がどうしてこんな目に逢わなければならない?

そもそもどうして自分はここにいる?

彼氏に誘われて――高原に辿り着いて――良い気持ちで――良い香りがして――良い香り?

女は、必死で記憶を手繰り寄せた。良い香りが、どんな物だったか………確か甘かった………どこから………花………巨大な花――。

――そうだ。私は、あの巨大な花に頭から突っ込んで、甘い香りをかいでいたんだ――。



思い出したところで何の役にも立たない過去を思い出した女は、しかし悲しむわけでもなく、花の香りがどんなものであったかを思い出す方向へと意識をスライドさせていった。

(どんな香りだったっけ………甘くて………とにかく甘くて……それで癖になりそうで………)





トクン………



(――えっ!?)

ただ考えていただけなのに、女の心臓は高らかに音を立てた。同時に、股の中心辺りが熱を発し始める。

(なっ……何で!?)

女はわけが分からなかった。何をしたわけでもない。ただ花のこと、それも花の香りについて考えただけで、体が熱り出したのだ。息ははぁはぁと幽かに荒くなり、心臓の音と一緒に脈打つ子宮から、愛液がとろりと、一滴流れた。

(そ、そんなっ!)

明らかに、女は感じていた。何に触れられたわけでもなく、ただ花の香りを思い出そうとした、その行為によって。

ずくん、ずくん。

女の膣は、彼女とは別の生き物であるかのように、物欲しそうに脈打っていた。はじめは一滴だった愛液も、次第にその量を増し、今では女の足元に淫らな水溜まりを作り、広げていく。

「!?」

女の中に、性への強烈な渇望が突然沸き上がった。まるで食虫植物のように口を開閉させ、女の秘所は番となるものを欲していた。

淫らな鞘に納めるべき剣を。

柔らかく包み込む対象を。

「……ぃぃぃっ!……ぁぁぁっ!……」

毒によって指先すら動かせない体が、びくんっ、びくんっ、と小さく跳ねた。どうやら若干逝ってしまったらしい。前のめりの格好になりながら、それでもなお、女は襲い来るもどかしさに悶絶していた。

今の彼女は、例え体が動かせたとしても、逃げること無く自慰をしていることだろう。それも――意識を手放して果てるまで。



「………ぃぁぁぁぁぁっ!ぅぅぅぅ………」

断続的に来る快感の波に飲み込まれそうな女は、しかし気付いていなかった。

自分にまとわりついていた蜜が、いつの間にか液状化して溶け出していたこと。

そして――震える女を、見つめる存在が既にこの部屋に来ていたことを。



「ふふふ………可愛らしいわね」



「んふむっ!?」

突然、自分以外の声がこの空間に響いた。誰かに見られた!誰だ!と女が考えるより早く、女の顔は上げられ、唇には何か柔らかい物が重ねられた。そのまま、重ねられたものの間から、何かの液体で濡れた軟体が唇をこじ開けて口に侵入していく――!

「んく………むふ………ちゅぶ………」

口内に侵入した軟体は、そのまま女の口の中に分泌液を塗り広げていく。唇の裏、歯茎、歯の裏、親知らずを踏破していき、口内粘膜をあらかた塗り変えた後、女の舌に辿り着いた、その瞬間。



「んむんんんんんんんっ!」



シャアアアアアァァァァァァァァァ…………



舌は、分泌液を花の香りと同じものとして認識した。脳は、快楽神経をフル稼働させる命令を下した。女は、ガスバーナーで全身を焼かれるような、強烈な快感を全身に受け――逝った。愛液と尿が、彼女の中から猛烈な勢いで排出され、目の前の存在を濡らしながら、足元の水溜まりを更に広げていく――。

舌は軟体に絡み付かれて揉み込まれ、くすぐられ、扱かれ、そのまま吸い上げられる。その度に女の体はびくん、びくんと跳ね、膣からは愛液がこぽこぽと吐き出されていた。

そして――。

「ん………くちゅ………はぁ」

唇を離された時、女は快楽の余波で視界がぼやけていた。思考も全く働く気配がない。完全に、心ここに在らず、と言った具合いだった。

ぼんやりとした視界に映る対象は――女だった。

ややぽわぽわとした金髪を持ち、首回りもどこかぽわぽわしていて、腕と足、それに股以外、何も身に付けていない感じで――。



――さっきの蜂娘よりも更に大きい、ひょっとしたら顔と同じくらいはありそうな胸と、大きく膨れ上がり、黒と金のストライプが鮮やかな蜂の腹部が、目に入った。

「!?」

意識は朦朧としながらも、それが何を表すのかは、本能的に分かってしまった。

つまり、目の前にいるのは――!



「ようこそ、私の巣へ♪貴女のような子は歓迎するわよぉ」



――女王蜂以外の何者でもなかった。



「い……嫌あぁあはあぁぁああぁあんっ!」

毒で動けないことが分かりながらも、女は必死で手を、足を動かそうとした。だが、それが逆に女を動けなくしてしまう。

彼女の体への命令伝達神経は、体内で快楽神経に殆んどが絡み付いてしまっていたのだ。そのため、手を、足を動かそうとする度に、交感神経が猛烈に刺激されることになる。それだけでなく、体がどこかに触れる、そんな幽かな刺激にさえ、体がガクガク震えるほどの快感を得る様になってしまったのだ。

「ふふふ………気持ち良いでしょ?」

目の前で仰向けになり、全身をびくびく痙攣させている女に向けて、女王はにこやかに告げた。そしてそのまま――

「――じゃ、お食事しよっかぁ♪」

――一瞬で女に飛び乗ると、蜂の腹部の先端を開き、女の口に突っ込むと同時に、自らも女の『華』を舐め始めた!



「!!!!!!!!!!!!!!!!」



びゅくん!びゅくん!びゅくん!

女王蜂の腹部は大きく脈動しながら、女の口に何かを流し込んでいく。同時に女王は、先程舌に対して行った舌使いを、興奮しきった所為ですっかり剥けた豆に対して行った。秘唇や肉襞から際限無く溢れ出す蜜を舐め取り、すすり上げる事も忘れる事無く。

「んふぉんっ!!!」

時折、女王は女の豆をこりこりと軽く甘噛みした。それだけで、女の体はびくびくと跳ね、華からは蜜が大量に溢れてくるのだ。

それだけでなく、胸からも蜜を溢れさせ、女を押さえ付けている両手で、それをまるでローションのように腹部から背中にかけて塗り広げていった。すりすり、ぐにぐにと、過剰に皮膚を摩擦しながら。

「んぉんんっ!」

一揉み毎に、ビクン、ビクンと脈打つ女の体。声を発しようにも、口は全て昆虫の腹部で防がれ、漏れるようなか細い声しか響かない。しかもその間にも、女王の体液は女に注がれているのだ。女の脈動に合わせて、どきゅ、どきゅと自身の体液を送り込む女王。そして一方で、口では女の愛蜜をひたすらに飲み干している。

口、手、そして昆虫の腹部。連動して動くそれらからの刺激を受け、毒の効果でそれを相乗されて――それでも女は正気を保っていた。ギリギリの、すぐにも切れてしまいそうなフィラメントのような、儚い精神ではあったが、それでも、女はいまだ壊れないでいた。

――まだ壊れてしまった方が、女にとっては楽だったのかもしれない。寧ろ、普通ならこの時点で壊れてしまっている。そうさせないのは、女王の仕業である。

女王が飲ませている体液、それは体の感度を上げるのと同時に、飲ませた者の精神を、理性が保つ限界まで沈静化させる効果も含まれているのだ。故に先程から何度も潮を吹き出して絶頂しつつも、女心の隅の断片では、辛うじて思考する余裕が残されているのだ。

「んっ!んんんんぉんんん――!」

(いやぁぁぁぁぁぁぁっ!誰か、誰か止めてぇ!私が、私が壊れちゃうよぉ!)



ぷしゃあああぁぁぁぁ………



本日何回目か分からない絶頂の潮は、吹き出したと同時に女王の顔にかかり、やがてすぐに全て舐め取られた――。



――じゅぽんっ。

唾液と体液まみれの蜂の腹部を抜き取り、人外のクリニングスを止めた女王は、立ち上がって女の様子を眺めた。

女王の胸から溢れ出した蜜は、女の胸元から腰周りに当たる場所までぬったりと塗られ、ねっとりと絡み付いている。横隔膜の上下が出来ているので、そこまで粘着力はないらしい。

だが、捕えられ仰向けにされている女は、そこから抜け出すだけの気力も、体力も持ち合わせていなかった。だらしなく開いた口からは、唾液と体液の混合物が端から漏れ、顔を赤く熱らせ、焦点の定まらない瞳で、ただ前を見つめているだけ。毒の効果は続いており、時折体をビクビクとさせては、秘部から潮を吹き出している。

すっかり骨抜きにされた女を前に、女王は――どこか女の恥じらいの混じった微笑みを浮かべた。

「――そろそろ、貴女を甘い世界に連れていってあげるわ……」

その言葉の意味を、女はすぐには理解できなかった。だが――



「ちょっと待ってね………んんっ!」



女の前で、突然女王は力み始めた。どこに力が入っているのか――!

蜂の腹部の先端が、呼吸をするようにくぱ、くぱと先端を開いたり閉じたりしている。同時に、腹部の中心部から徐々に盛り上がった何かが――!

――まさか!

女王蜂、針の部分、先端。これだけ揃えば、何が出てくるのかは――最早明白だった。



「あはぁあああっ!」

女王が解放されたような叫び声をあげるのとほぼ同時に、



ズリュゥゥッ!



湿った音と共に、先端から何かが飛び出してきた!



「ひっ!」

女は、その代物を見て、思わず顔を引き攣らせる。女王蜂から出た輸卵管、純白に蜜の黄金がまとわりついたそれは先端が、どこか男性器を思わせる形をしていたのだ。――太さはそれの二回りくらい大きいが。

「どうして怖がるのぉ?すぐに仲魔になれるのにぃ……ふふ……」

ある意味馬並に巨大な産卵管を見せ付けながら目の前へと近付いてくる女王を目にして、完全に女は硬直していた。

今からこの管が、私の体の中へと侵入していく――!?何も抵抗出来ずに!?

「い………イヤァァァァァァァァアアアアアアァアァン…………」

蜜で固められ、毒で動かさなくされた両腕と両足を何とか動かそうと必死で力を込める女。だが願いも虚しく、体は動く素振りすら見せなかった。代わりに走る、どうしようもないほどの快感に、女は体を何度も痙攣させてしまう。

動いただけで電流が走るなら――アレを受け入れたら――壊れる!

「駄目だよぉ?すぐに幸せになれるんだからぁ」

徐々に近付いてくる女王の、可愛いらしい顔に張り付いた、微笑。それすら女には不気味に見えてしまう。寧ろ恐怖しか湧かない。

「ひ、ひぃっ!」

さらに顔を引き攣らせた女の肩に、女王の手が乗せられた。びくん、と体が跳ねる女の前では、心なしか少しずつ膨らんでゆく女王の両胸が、女のぼやけた視界全体を満たしていく。

「うふふ………さぁ、甘い桃源に身を任せて……」

その声が女に届いた――と同時に。



むにゅん!



女の顔全体が女王の双球に埋め込まれた!壮大な渓谷を形成する二山は、耳を、後頭部すらすっぽりと包んでしまえるほど柔らかく、しかも――!



ほわぁ…………。



かぐだけで人間を快楽の海に漂わせる人外のフェロモンを、常に纏っていたのだ。

「んむむむむぅっ!」

口どころか鼻すらむっちりとした弾力によって塞がれてしまった女は、呼吸が出来ずにもがこうとする。だが毒の効果で、動きざま即座に体がビクビクと痙攣して、全身の力が抜けてしまう。だが、胸の持つ不思議な弾力か、その頭が地面に着く事は無く、谷間に空気が流入する事も無かった。

「ふふふっ………」

女王は、女の顔を胸で挟んだまま、体を羽と腕で抱き締め、そのまま――ぐるんと、横に半回転した。

「――!!!!!!!!」

女の頭が、胸の谷間に沈んでいく――頭だけではない。華奢な胴体も、細い腕も、すらりとした脚も、全て女王の柔肌に沈んで――!

「――」

だが、酸素を絶たれ、意識が朦朧としている女には、自分をどうすることも出来なかった。苦しいが、苦しさを抜け出そうにも、自身の腕や脚は、最早自分ではどうにもならなくなっている。

(もう………だめ………だ………)

諦めの感情で、意識を手放そうとした、その瞬間。



フォンッ………

勢い良く流れ込んで来る空気。女の生存本能は懸命に吸い込もうと肺をフル稼働させた。同時に、意識を覚醒させようと――だが、それがマズかった。



「――あ――」



混濁した意識の中で認知されなかった女王のフェロモンは、徐々に気管から、また接触した肌から女に吸収されていったのだ。それが一気に認識された結果――!



「――あぅ、ぅあ、あああアアアアアアアアアアアアアアッ!?」



通常ならはじわじわと行われる筈の人格転換、心理・旨好の書きかえが、ここに来て一気に行われてしまったのだ!

頭を錐で開けられ、何かがガリガリと刻まれていく感覚に、女は狂ったように叫び、女王の上でのたうち回った。だが、顔は依然として女王の胸の上にあったが。

「ふふふ………あらあら………」

そんな女の様子を、女王は愛しいやんちゃな娘を見る様子で眺めていた。もちろん、自分から落ちてしまわないように、適度に体を動かしながら。

やがて――!



「――アアア、ア、ア、あ……………」



女の瞳から、光が消えた。そのまま力を失って倒れる女。その口に、女王は自らの乳首を差し入れた。程無くして、女は無意識のうちに、それを吸い始める。

トク………トク………トク………

一口飲む毎に、女の体の痙攣は収まっていく。徐々に毒が解けていっているのか、女は少しずつ腕を伸ばして、女王の巨大な胸を抱き締め始めていた。大きく股を開き、今だ蜜を吐き出す秘部を、女王の胴体にぴったりとくっつける。

そのまま無意識の中で、女は体を前後し始めた。必要以上に振られた尻からはやがて――





とろぉ………



女の口にする蜜が、徐々に溢れ出していた。前後させる度に、とろり、とろりと、女王の体を彩っていく。

女王はその蜜を指先で掬い、口に含む。

「――ふふっ」

満足げな笑みを浮かべると、女王は蜜で濡れた手で、女の髪を結き始めた。その姿は、愛しき娘の頭を撫でる母親のようにも見てとれた………。



――――――――――――



女が目を醒ましたとき、そこは蜂の巣でも、高原の上でも無かった。

完全なる闇。自分以外誰も見当たらない、だが自分の姿ははっきりと見える、不思議な空間であった。

(ここは――?)

女が、今いる空間を見渡すと――。



「うふふっ………こんにちは♪アタシ♪」



「――――!!!???」

女の真横、誰もいなかった筈の場所に立っていたのは、一人の蜂娘だった。だが――その顔は、女に余りにも似過ぎていた。

驚きのあまり、思わず後ずさる女。それをゆっくりとした足取りで追い掛けるように近付く蜂娘。

「ち………近寄らないでっ!?」

体を、声を震わせ叫ぶ女。だが――蜂娘は、笑顔のままで近付き、こう告げたのだ。



「脅えなくてもいいんだよ?アナタは、アタシだから」



「………何を言っているの?」

自らを保とうと必死で叫ぶ女。だがその心には――混乱が渦巻いていた。

自分が人間であることは間違いない。間違いない筈なのに、何故だか心はざわついていたのだ。

彼女が自分?そんなわけ無い。ただ、顔が似ているだけだ。そうだ。そうに決まっている。なのに、そう思おうとしているのに、心の片隅では、その思いに疑問を投げ掛ける存在がいる。

「そんな………私が………貴女な理由………無いじゃない!?」

迷いを振り切るために大声を出した女。その声も、蜂娘には「そう?」という一言で返されてしまう。

女はそれでも、必死で自分を保とうとして――

「だ………だって、私は人間よ?貴女とは違うのよ?」



「へぇ………じゃあ、アナタとアタシはどう違うのか教えて――?」



――結果、蜂娘の一言に――乗ってしまった。



「まず、私は――貴女のような指はしてない――!?」

女が自分に言い聞かせるように差し出した指は、甲の表面が甲殻質の肌触りをしており、それを隠すように白い手袋が填められていた。

「――!!!!」

足を見てみると、やはり脚も同様の様相を呈していた。

「そ、そんな………」

呟きつつも女は、その呟きにすら疑問を抱き始めていた。

――さも、それが当たり前であるかのように。

「うふふ………さぁ、他に違う場所は――?」

理解できない状況の中、女は更に呟いてしまう。

「貴女のような羽や尻尾は私に――ッ!?」



びゅくんっ!びゅくんっ!



女の背筋と尻に、異様な感覚が走った。何かが、内側から張り出して来そうな、羽化のように女の殻を破って、新たな存在になってしまいそうな――そんな感覚。

「あ、あぁぁぁ………い――嫌ぁぁぁっ!」

女の本能は、自らの存在の危機に叫び声を上げさせた。だが、それでも、内側から、何かが変化していく感覚は収まることなく、寧ろ激しくなっていった。

そして、その度に――女の中で、何かが消え去ろうとしていた。

「だ…………ぁっ、や………っ……あぁあっ!」

(消えちゃう!私が、私じゃ――!)

出したら、このまま身を任せていたら、自分が消えてしまう恐怖感から来るわずかな心理的抵抗すら、この巨大な流れの前では余りにも無力であった。

そして――!



「―――ぁぁぁぁぁあああああああっ!!!!!!」



ビリィッ!シュッ、ジュポンッ!



背中の皮膚を引き裂いて羽根が生え、尻が一気に膨れ上がって、尾底骨から蜂の腹部が生えてきたのと同時に、人間としての女の意識は、一気に薄れていった………。



「うふふ………可愛い顔ね♪」

虚脱したような顔をして、その場にへたり込んでいる女。だがそれは最早女ではなく、蜂娘のなり損ないのような外見をしていた。

その内面では――。

(私は人間で蜂娘どうしてこんな事に女王様に会いたいここはどこ気持良くなろうよ逃げて近付こう)

二つの思考が入交り、しかし相互に混じり合ってはいない様相を示していた。

「さぁ………アナタはアタシ。一緒になろうね♪」

完全な蜂娘である相手は、そのまま女を押し倒して――!

「!あはぁぁぁぁぁ…………んむぅっ」

胸を揉みくだし、秘部を擦りつけ、同時に唇を奪った!

「んぅっ!んぅんっ!ぅんっ!」

女の胸が揉まれる度に、女の胸は徐々に大きくなっていく。当初はA前後、といった程度だったものが、徐々にBを越えていった………。

同時に、擦りつけられている秘部も、少しずつ、その華を広げていき、蜜をその内側に蓄えていった。

そして――。

「ん゛ん、んん゛んっ、んん゛、んん゛んっ!」

舌を絡め合う度に、猛烈な勢いで吸い取られそうになる度に、女の意識も、徐々に姿を消していった。もはや女の意識は、圧倒的マイノリティと化していた。

(いっ………あはっ…………あはぅっ………)

最早思考すら保てなくなった女の背中に腕を回し、蜂娘は思いきり抱きつく。蜂娘の形の良い胸が、女の胸板に当たってぐにゃりと形を変える。

乳首と、乳首が触れ合った瞬間――!



ぐにゅん!



「んんんんんんんんっ!!!!!!」



蜂娘の乳首が、女のそれを圧し広げ挿入された!そのまま乳腺の中を通っていく乳首。奥へ奥へと入り込む度に、女は自分が自分でなくなるような快感を感じていた。

やがて、乳房に辿り着いた時――!



とくん………とくん………



「んむんっ………んむ………」



胸の中に、蜂娘の蜜が流し込まれていく。心臓が脈打つような音を立てながら、少しずつ、少しずつ乳房に蓄えられていく………。

鼓動が響く度に、乳腺が圧し広げられる度に、女は自分が変えられていく甘い感覚を味わっていた。

蜂娘は同時に、秘部からも、口からも蜜を流し込んでいた。それらはそのまま女の体にすぐさま吸収され、血液に溶けて全身を巡っていく――。

女が持つ蜂の腹部の先端は、いつの間にか華開き、女の蜜が少しずつ溢れ流れていった。時折びくん、びくんと震えては、蜜を相手に吐きかけている………。

(な………何………?この………ジュンってなって、気持良い感覚は………?)

女は初めての蜜の噴射感覚に戸惑いながらも、次の瞬間には蜜の味に溺れてしまっていた。

(あ………甘い………)

女の意識は既に昏迷状態に陥り、今ならどんな暗示にもかかってしまうであろう段階にまで堕とされていた。

(あ………頭に………何かが………)

頃合いを見計らっていた蜂娘は、女の額に触覚をつけて微弱な電波を流し始めた。それは、女の意識を蜂娘のそれへと書き換えるというもの。

(………気持い………女王様ぁ………)

抵抗など出来るわけもなく、女の意識は、蜂娘のそれへと徐々に移行していった。

(あ………あはぁ………気持良い………甘い………)

女の意識は、蜜の牢獄に完全に囚われてしまった。そして――

(………甘………)

これが、女の最後の思考となった。



女の意識が消えた後も、蜂娘は蜜を送り続けていたが――何やら様子がおかしかった。



徐々に、蜂娘の体が萎んでいく………肉体が、女の肉体に沈み込んでいくのだ。

(―――)

焦点の定まらない、魂の無い瞳で女はそれを眺めていた――顔を向けていた。

そこに何の感傷もない。

そこに何の嫌悪もない。

やがて、全ての体が女に沈みこんだ瞬間――今度は女の体に変化が起き始めた。

茶色に染められた髪は、そのまま蜜の色へと変化し、

その髪の間から、先端がくし状になった二本の触覚が生えた。

蜜を注ぎ込まれた胸は、今やGかHかと思われる程に盛り上がり、体も全体的に肉感溢れるものへと変貌していた。

股間の回りや首回りは、白い綿毛のようなもので覆われた。

蜂の腹部も、二回り大きくなっていた。

そして――女が目を開くと、そこにあるのは赤茶色の瞳。

女は、完全に蜂娘に変貌していた………。



―――――――――



「うふふ………」

女が再び目を醒ますと、そこには蜂の女王が、慈愛に満ちた表情で自分を眺めていた。



「女王様ぁ………」

女は、今すぐにでも羽を震わせて飛びこみたかった。だが、いくら動くように念じたところで、背中に無いものが動く筈もない。

賢明に背中に力を入れている女の様子に、女王は微笑みながら身を起こして、女を抱き寄せた。

ふぁ………

女王から発せられるフェロモンが、女の脳を桃色に染めていく。女王はそのまま、女を胸に埋めた。

この場所にいるだけで、女は安心できる気がした。偉大なる女王様が、優しく抱いてくれている。もし女に蜂の腹部があったのなら、ピコピコと動くのが見てとれたであろう。

「女王様ぁ………」

女は、先程まであれほど意識の中で逃げ回っていた女王の胸に、今や全身の力を預けていた。女王のフェロモンは今や女の全身に行き渡り、女の心に女王への絶対的服従精神が刻み込まれていった。

ぐったりともたれかかった女の体を、女王は抱きかかえ――胸の中でその体の向きを反転させた。そして――。



「ほら、見て――」



胸を開いて、女の視界を広げながら、女王はある一点に視界を向けさせた――女王の、産卵管に。

普通の常識的反応が出来るならば、このおぞましい物質に嫌悪と恐怖の表情を浮かべただろう。つい数刻前のように。

だが――、



「――わぁ………」

女は見とれ、そして感動していた。女王の産卵管。それを見られるのは蜂娘の中でも一握りのものだけ。その凛々しいモノを、この目で見られるなんて――!

感動のあまり、女は嬉し泣きをしていた。女王はそんな女の頭を静かに撫でながら、耳元でそっと、こう呟いた。



「さぁ、貴女を私の『娘』にしてあげる。私の卵、受け取ってくれるわよね?」



「――――!!!!」



娘。

女王様の娘。

女王様の娘とは、直属の親衛隊、あるいは侍女の事だ。

その対象に、私が選ばれたのだ。

それも、女王様自身の手によって――!



女は、感激のあまり、何も考えられなかった。何も言えなかった。何も出来なかった。



ただ一つ――女王への絶対的忠誠が、この瞬間、女の持つ魂を完全に変質させた事は、疑いようがなかった。



「ふふふ…………」

女王は額から生える触覚を女の額に当て、そのまま女の体を自分と向き合うように持ち上げた。徐々に迫る産卵管に、女の秘部は愛液の洪水を降らせる。その愛液は、どこか女王の蜜と同じ、黄金色をしていた。

女の接近につれ、産卵管は更に雄雄しく反り立ち、女の濡れた穴に標準を定めた。

そして女の体が管の真上に来た時――!



「受け取ってね♪」



じゅぶぉぉぉぉぉぁっ!



女の体を、産卵管に向けて一気に突き下ろした!本来ならば、処女膜の有無、猛烈な勢いで内襞が摩擦され激痛を生む行為。にも関わらず、女の秘部はそれを一気に受け入れた!しかもそれだけではなかった!

「あはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ♪♪♪」

痛覚の一切が快楽神経と置き換わった女は、子宮をえぐるような逸物からの衝撃の全てを、身が焼けるようで、それでいてじんわりとした快感に置き換えて体に伝えたのだ!思わず女の口はだらしなく開き、その端からは唾液――ではなく蜜が一筋の流れを作り出していた。

「あっ♪あはぁっ♪はぁっ♪はぁっ♪」

既に秘部から腹にかけて産卵管の痕跡が見てとれた女だが、あろう事か蜂の腹部を押して自身の体を上下させ始めたのだ。限界まで拡張されている筈の秘部は、溢れ出す蜜が潤滑剤となって産卵管の上をナメクジのように這っていく……。

貪欲に快感を味わう獣と化した女を見つめながら、女王はふと、悪戯を思い付いたような笑みを浮かべた。そして――!

「うふふっ………?ほら♪」



ぐにゅっ



「!あはぁぁぁぁぁぁんっ♪」

女の腹中で、産卵管を器用に曲げたのだ!その拍子に、女のクリトリスが思いきり擦れる!

ぷぴゅ、と陰唇から蜜が漏れ、蜂の腹部に淫らなグラデーションを加えていく………。



「ほらっ♪ほらっ♪ほらぁっ♪」

ぐにゅ、ぐにゅっ、ぐにゅゅっ

「あぁあっ!あぁあっ!あぁあぁあっっ♪♪」

右に、左に、産卵管が動かされる度に、女は絶頂寸前まで高まり、そしてまた下がって――上下の連続であった。

「じ、女王様ぁ………♪」

快感のあまり溢れた涙で視界が歪むなか、女の瞳はただ女王へと向けられていた。

この世の楽園への招待を、今か今かと待ち望むかのような、心からの笑顔を浮かべて。



それを確認した女王は、胸から蜜を出すと自身の唇に塗り付け、そのまま女に口付けをした。



「お待たせ♪」



女王の唇が、言葉を紡いだ。



ぐにゅぉぉおんっ!



突然、女王の持つ蜂の腹部が大きく収縮した――かに思えた次の瞬間!



「!!!!ああぁあっ!」

陰唇を押し広げて、何かゴム状の物質のような楕円形の物体が、女の中へと入り込んで行く!とくん、とくんという産卵管の脈動に合わせて、ずぬる、ずぬると少しずつ、その身を潜らせていくのだ!

女は――感覚的にそれが切符なのだと理解した。自らが待ち望む、楽園への切符なのだと。



そしてそれは――無事に女の元へと運ばれる。



ごぽぉ………んっ!



「あはぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!」

子宮に卵を受け入れた女は、快感のあまり叫んだまま、前のめりに倒れ込んでしまう。その丁度顔の位置にあったのは――女王の秘部。

蜂娘の搾精器官であると同時に、蜜の泉でもあるそこは、女が倒れ込むと同時に大きく華開き、黄金色をした蜜で満たされた。



ぬちょん



「!!!!!!!!」

自ら顔面に蜜化粧を、施す事となった女の舌に、蜜が触れた瞬間――!



――飲みたい――



――飲み干したい――



「あ………あは………ははあ………」

胸の奥で幽かに灯のともった衝動は、女の精神全てを完全に抑え込み、感情を支配下に置いた。

結果として――!



「――ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」



女は、勢い良く蜜を飲み始めた!

「いひいっ!いひいのぉぉっ!もっとぉ!みつぅ!みつぅぅぃぅぅぅっ!じょおぅさまぁぁぁっ!」



まるで十日も飯を抜いた獣のように、女はひたすらに女王の秘部にしゃぶりついていた。一回舐める毎に、女の体は喜びの声を上げ、秘部からはねっとりとした蜜が地面に滴り落ちている。

「いひぃっ!ほけるっ!わらひ、ほけひゃふぅぅぅっ!」

とろけそうな感覚を味わっている女。いや――外見からは分からないが、女の内面は確実に溶け出していた。女王の分泌する蜜、それが体内の肉を、骨を溶かし、蜜の中に養分として取り込んでいったのだ。そして、蜜は卵を脳の方まで、体内を移動させていった。今や首元まで、女の体内は蜜に変化してしまったのだ。

だが、女に痛みは感じない。あるのは――意図的に繋がれた快楽神経が運ぶ、壊れそうな程の快楽のみ。

「―――!――!―――!」

やがて、声帯すら蜜へと変化した女は、次の瞬間、



「―――――――!」



声にならない叫びをあげ――崩れ落ちた。

その途端、女の全身、毛穴と言う毛穴から蜜が溢れ出した。黄金色の蜜は、空気に触れた瞬間に白く硬化し、女を外側から包み込んでいった。

一分も経たないうちに、女の全身は白き蜜蝋によって覆われてしまっていた。さながら――人の形をした卵のように。

「ふふふ………」

その様を眺めながら、女王は静かに、何処か妖艶な笑みを浮かべ、更に蜜を垂らしていくのだった。

「溺れちゃいなさい………甘い甘い、甘ぁ〜い世界に」

卵が一回り大きくなったところで、女王は蜜を垂らすのを止め、今度は、静かに、ただ静かに羽を擦り合わせるのだった………。



ヴン……………。



―――――――――



…………あ。



女王様の――羽音。



愛しの………女王様………呼んでる……。



行かなくちゃ………。



行かなくちゃ………。



…………あれ?



オトコ………?



誰だったっけ………?



………あ。



………そうだった。



………私が好きなニンゲン。



私が一緒になりたいニンゲン。



いいの?



一緒になっていいの?



………ありがとうございます、女王様………。



―――――――



「………うふふ?そろそろね……」

卵の中から微弱な存在パルスが発射されている事に気付いた女王は、羽を鳴らすことを止めた。そして――。



『目覚めなさい、私の娘よ』



人間の声帯では発音できない、蜂娘独自の言語を、卵に向かって囁いた。

――それから数秒も経たないうちの出来事だった。



バカッ……



卵の、女の体でいう背中部分。そこにいきなり穴が現れたのだ。その穴は、時が経つにつれて徐々に大きくなっていく………。

やがて、人一人が通れる大きさにまで広がると――その中から、勢い良く何かが飛び出してきた!



「…………」



それは、女が意識の中で見た蜂娘と一緒の姿であり、女が意識の中で変身した蜂娘とも、全く同様の姿であった。顔の基本パーツは女のものだが、蜂の腹部、羽、触覚は間違いなく蜂娘のものである。

女だった蜂娘は、自分の体を慣らすために軽く飛ぶと、すぐさま女王の元へと降り立った。



「おめでとう。よく、産まれてこれたわね♪」

目の前にいる蜂娘に頬摺りをし、キスを交しながら、触覚同士を触れ合わせ、意思疎通を図る女王。しばらくすると、「あらあら………♪」と、どこか困ったような声をあげながら、蜂娘に向かって、にこやかに告げた。



「良いわよ。あの男を自分のモノにしちゃいなさい♪」



蜂娘は、その声ににっこりと笑顔で返し、そのまますぐに飛び立っていった。

男のいる場所へ。



女の彼氏だったものは、今や干からびる寸前にまで絞り取られて、注意して見なければその人だとは気付かない有り様だった。だが――。



「うふふ………」

「あ、あ………」



男が微笑んだのは、女が来て微笑んだからなのか、はたまた長い間行われた蜂娘達の責めに心が壊れてしまったからなのかは分からない。いずれにせよ、男は女だった蜂娘を前に、笑顔を見せていた。

女だった蜂娘は、死に体で微笑む男の額に口付けすると、軽く力んだ。そして――。



ずりゅぬっ!



蜂の腹部の先端から、女王とは形が違う産卵管が現れた。完全に、先端まで管状のもので、内側が無数の肉襞と愛蜜がびっしりと生えているものである。

その淫らな光景に、力を失っていた男の逸物が再度、鎌首をもたげ始めた。蜂娘は、それを確認すると――。



ずぼぉぉぉっ!



男に飛びかかり、逸物を一気に挿入させた!

「―――――!!!!」

内襞は一枚一枚が意思あるもののように男の逸物を撫で、舐め、ほじり、満ち満ちた愛蜜は潤滑油となり摩擦回数を増やす。さらに――!



ぎゅぽんっ!ぎゅぽんっ!



産卵管そのものも脈打ちながら逸物を揉み上げ、与える刺激にバリュエーションを加えていく――!

男は、声帯消失前ならあげられた絶叫を無音であげながら、体を軽く痙攣させていた。そして――。



びゅ………びゅる………とく………



ほとんど出ているかどうか分からないペースで、男は精を蜂娘に捧げだした。すぐにも止まりそうなそれは、不思議なことに止まる気配はなく、逆に徐々に出る量は増えていった。――変化はそれだけではなかった。



少しずつ、男の体が縮んでいっているのだ。

一回出す毎に、男の体が一回りずつ、萎んでいっている――唯一、逸物だけをそのままの大きさに。

「―――」

だが、男の瞳にはそれに対する感傷は無い。あるのは――ただ与えられた快楽に対する反応のみ。



びゅる……びゅくっ!びゅうううぅぅぅっ!



やがて、男の体全体の、体積の半分近くを逸物が占めるようになった時――。



「ふふふ………さぁ、一緒になろう?」



ぐにゅん、ごむっ、ごむっ………



産卵管の先端がすぼまり、男の体は管の中を通って蜂娘の体内へと送られていった………。





「ふふ………」

そのまま暫くの間は、幽かに膨らんだ蜂の腹部を撫でていた蜂娘は、やがてある事が確認できると、そのまま羽を広げて、いずこへと飛び去っていった………。

これから自分にはやる事があった。

あの森の中で、花を育てるのだ。自らの蜜を水代わりにして。

そうして育った花は――。



「ふふふ………」

蜜の香る森の中、蜂娘は月の光を浴びながら飛び回る。

自身の蜜を、あちこちに垂らしながら――。





fin.





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