魔術師、かく語りき
ふう、やっと乗れた・・・じゃ、県民ホールまで頼むよ・・・
・・・・・・ん?今日は何か県民ホールであるのかだって?
へえ、運転手さん今日県民ホールにいくの三度目?
そりゃ気になるわな。
ホントは言っちゃいけないんだけどね、運転手さんだけに特別に教えてあげよう。
あそこでは今日ね、学会があるんだよ、魔術師の。
・・・手品師学会?違うよ、魔術師学会だよ。
呪文唱えたり、悪魔やら何やら呼び出したりするほうの。
ふふ、信じてないね、運転手さん?いや、いいよいいよ、作り話だと思ってくれれば。
えーそれでね、今日は県民ホールで年に一度の魔術師学会が開かれるわけよ。
そもそも魔術師ってのは、年がら年中呪文唱えたり、悪魔呼んだりしているわけじゃないんだよ。
大体いつも、古文書の解読とか実験とか、まあ研究やってるわけね。
それも一人一人ばらばらにやってるわけじゃなくて、何人かとか、何十人とかで魔術団体作ってやってんの。
でもね、いくら魔術師といっても、ほら、人だからお金がいるでしょ?
研究施設とか、古文書とか、記録用の筆記用具とか、住居費とか・・・
そりゃあ、バイトとか就職しながら研究している人もたまにはいるよ。
でもね、仕事しながらだと研究が進まないわけ。
研究するにはお金がいる。
稼いでいては研究できぬ。
そこで昔の人は考えたわけ、
『悪魔退治とかで金を稼いで、それを優れた魔術団体に渡すようにすればよくね?』って。
それで作られたのが、『人界大図書館』。
名目は、『各魔術団体の作り上げた理論等を保管し、後の魔術師が自由に参照できる機関』。
で、実際のところは、たくさんの魔術団体の上に存在し、各魔術団体を管理する組織。
毎年一回学会を開いて、優れた研究結果を出した団体に予算を、そうでもない団体には仕事と報酬を与えるわけ。
んで、今日県民ホールであるのが『人界大図書館』の学会って言うわけ。
え?じゃあ『人界大図書館』はどこからお金をもらっているか、だって?
はははシブいねぇ、運転手さんシブいねえ。
ま、説明するとホント簡単なんだけどさ、いわゆる『妖怪退治』が基本だね。
妖怪がいるのか?魔術師がいるんだから、妖怪もいるよ。
人里離れた山奥とかにいる、下半身が食虫植物と化した美女の妖怪とか、
街中の公園とかで、網を張って獲物を待つクモ女とか、
夜の間だけ動いて回る吸血鬼とか。
んで、こいつらは獲物となる若い男を捕まえて、食べちゃうんだよ。
二つの意味で。
ほら、新聞でたまに行方不明になった人の話が出るでしょ?
あれはほとんど、妖怪のせいなんだよ。
まあ、本来なら危険な生物だから駆除しろって話になるんだけどね、希少動物だから保護しなきゃいけないわけ。
そういった妖怪の捕獲・保護も『大図書館』の仕事なんだけどね、たまに捕まえ切れなかった妖怪が人里に出て暴れるんよ。
そういう妖怪がらみの事件の解決を、政府とかが『大図書館』を通じて魔術団体に依頼するわけ。
これで『大図書館』にはお金が入り、仕事をした団体にその一部が渡される、ということ。
ま、退魔師の真似事でお金を稼いでるわけね。
・・・『そういう事件は、あんまり無いだろう』?
ははは、運転手さんは鋭いねぇ。分かりました、白状します。
ほかにも収入源はあります。
ほら、さっき妖怪たちの保護も『大図書館』のしごとだ、って言ったでしょ?
その妖怪たち、体の一部はともかくホント美人ぞろいなのよ。
それでね人、っていうか男には多かれ少なかれ変態的な性欲があるわけ。
女の人に虐めてもらいたいとか、誰かに食べられてみたいとか、動物を犯してみたいとか、動物から犯されてみたいとか。
まあ普通の人は、そういう欲を押さえ込んで生活しているけど、堪えきれなくなっちゃう人もいるわけ。
それで、そういう人向けに妖怪がご奉仕してくれる施設を作ったのよ。
完全会員制の、秘密の施設。
会費は高いけど、高級官僚とか政治家が喜んで利用してくれるから、がんがんお金が入るわけ。
でもお客さんからしてみれば、安いものだって。
ほんの百数十万かで、糸で全身を縛ってくれるなんて、全身を揉んでくれるなんて、って大喜び。
それにもう何十万か払えば、特別会員になって淫魔からも奉仕してもらえるし・・・
え?淫魔って何、だって?
ああ、淫魔ってのはサキュバス。
男の精液が好きな、女の形をした悪魔のこと。
淫魔界っていうところがあって、淫魔はそこから人間界へ『食事』のためにやってくるわけ。
それで淫魔にとっては性行為が食事だから、男が腹上死するくらいのテクニックの持ち主なのよ。
その一方で、淫魔ってのは半分魔力の塊だから、捕まえて実験に使おうっていう魔術師もいるわけ。
淫魔は人間から精を搾り、魔術師は淫魔から魔力を搾るってね。
んで、百何十年か前に『大図書館』が淫魔界と人間界を自由に行き来できるトンネルを開いて、偉い淫魔と条約を結んだわけよ。
『トンネルをくぐった淫魔は、人界大図書館の保護と管理の下に置かれる』って内容。
簡単に言うと、淫魔はそうそう自由に男を襲ったりできなくなるけど、魔術師から襲われることも無い、ってこったね。
まあ、トンネルをくぐらずに入ってくる淫魔も、相変わらずたくさんいるけど。
条約では、トンネルを使わずに人間界に入ってくることは禁止してないからね。
それに、あんまりひどいことをしない限り『大図書館』も動かないし。
?男を何人も搾り殺したりとか?
ふふ、運転手さんは甘いね。この国で年に何人死んでると思う?それに比べれば、微々たるもんだよ。
ひどいことっていうのはね、町や建物を周囲から完全に隔離して、内部の女性を淫魔に変化させて、男たちを襲わせるようなことをいうんだよ。
ずっと昔から何百回も行われてきたし、ここ最近も何度かあったよ。
向こうからやってきた淫魔によるものとか、魔術師が呼び出した淫魔が暴走して、っていうのとかね。
まあ『大図書館』も、すべての魔術師が何をやっているか、なんて把握しきれないし、『大図書館』に所属していない魔術師なんていくらでもいるからね。
政府も解決のために特殊部隊を組織したって話を聞いたけど、全く物騒な時代になったもんだ。
まあ、依頼があれば『大図書館』の収入は増えるし、依頼が無くても実験に使える淫魔は手に入るしで、こっちとしてはありがたいんだけどね。
『サキュバスに襲われたことは無いのか』?
そりゃあ、あるよ。魔術師だもの。
まあ、直前にウチの団体と契約している淫魔に、『射精封じ』の呪いを掛けてもらっていたから助かったけどね。
しかし、あれは苦しかったなぁ、ホント。
学生ぐらいの女の子が出てきたと思ったら、いきなり股間にむしゃぶりついてきたり、
落とし穴に落とされたと思ったら、底に生えていた触手にポコチン締め上げられたり、
突然動けなくなったと思ったら、姿を透明にした淫魔に後ろから抱えられて手コキされたり、
捕まった後、ベッドの上に縛り上げられて、興奮作用をもたらす魔術かけられて、淫魔数人がかりでガッチガチのポコチン吸ったり、扱いたり、挟まれたり、挿入させられたりして。
わかる?年齢も体格もいろいろな、美人の女数人にもてあそばれる感覚。
それなのに、味方の淫魔の『呪い』で射精できなくて…
いやホント、『死んでもいいから出させてくれ』って感じだったよ。
ま、味方の淫魔が助けに来て、射精させてくれたから助かったけどね。
彼女が来るのが、あと五分遅れてたら絶対発狂してたね、うん。
ん?もうすぐ県民ホール?
ああ、あそこね。じゃあ、ここで下ろして。
いくら?はいはい、じゃあこれで・・・お釣りはいいよ。
ところで運転手さん、さっきの話ホントだと思う?
・・・うん、そうだね、作り話ということにしておこうね。
あんまり他の人には言わないように。
・・・病院に入れられたら困るからね。
それじゃ、ありがと運転手さん。
気をつけて。
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