ラスト・シーン






「………済まない。俺は天国へと向かうよ」

内心、申し訳ないと言う気持ちもあったが、それでも俺はこの道を選んだ。

別にスライムが嫌なわけではない。ただ――自分に似た他人が側にいる、そんな事態が嫌だった。

俺は俺として、イムのことを思っていたい。例えそれが、魂を滅ぼす道であったとしても――。

俺の返答を聞いて、イムは暫くうつ向いた。何かをこらえる顔でもあったが――やがて、顔を上げ、笑顔を見せた。

「うん。多分お兄さんならそう言うと思ったよ。だからこそボクは、お兄さんを好きになったんだと思うよ」

笑顔が――何かを決意した顔に変わる。

「だから――」

イムの体が崩れ始める。俺の体全体を包み込むように――。

「――気持ち良く、天国に送ってあげるね♪」

首から下を、全て覆い尽した瞬間だった。



ぐにゅうんっ!



「あうぁっ!」

体を覆うスライムが、一気に動き始めた!指の間をちろちろと舐められる感覚、脇腹から背中にかけてぐにぐにと揉まれる感覚、アナルをくにくにといじられる感覚。乳首をこりこりと捻られる感覚。そして何より――玉袋を揉まれながら、皮の裏まで肉棒を包み込まれ、未開発の性感帯をくりくりといじり回され、扱かれる感覚――。

生前に感じたそれの、何乗もの快感が、剥き出しの魂に刻みつけられた!



どくおっぶしゃああくどくっ!



「「ああああああああっ!」」

魂を明け渡すかのように、俺は勢い良く射精した。その瞬間、体の一部が光を帯び始める。

「………ぁあっ、ぁあっ………始まったね」

何故か息が上がっているイムは、どこか悲しみを含んだ笑顔を見せながらそう呟いた。



「始まるって――」

………聞くまでもなかった。俺は言葉で呟きつつも、本能的に理解していた。

「………それよりも、どうしてイムは……息が上がってるんだ?」

「………お兄さんが感じると、ボクはお兄さんの何倍も感じちゃうんだ………」

少し上気している所為か、幽かに赤くなった顔で俺を見つめるイム。その姿に、どこか可愛らしいと感じてしまった。

「………じゃ、続きを始めよっか」

イムの問掛けに、俺は頷いた。この場所にいられるのは、イムと交わっている間だけなのだ。

これが終るとき――。



ぐにゃぐにゅぐにゃゅゃゅ!

俺の体を包むスライムの感触は、秒一秒、いや、刻一刻と万華鏡のように変化していった。

肉棒の回りが輪状に濃くなり、カリの部分や棹を締め付けながら上下に動いた――かと思うと先端を舌でちろちろと重点的に舐められるような感触がして――その次の瞬間には逸物全体を舐め回され――。

他の場所でも同じようなことが起こっていた。

胸では、男でも幽かに開いている乳首の先端にスライムが入り込み、体の中からも外からも揉み上げるような感触を伝えてくる。

背中では、まるで心地良いマッサージを受けているかのように、性感帯を中心に突かれ、揉みほぐされていた。

時々、脇腹や脇をそっと撫でられたり、甘噛みされたりして、その度に俺の体は弓反りになった。

そして、俺の肛門にも、イムの体は入り込んでいき、人では決して触れられない秘密の性感帯を何度も刺激してきた――!

強弱、タイミングすらバラバラで、それでいて一つ一つが関連し合っている刺激。刺激一つ感じる度に、俺の体は光を増していく。

「……ぃあっ!ぅあっ!ぁあっ!」

次第に俺の腰も、徐々に上下に、前後に、イムに突き出すように動いていった。俺の意識が介在する間もなく、ただ逝くために、天へと昇るために――。

そして、俺に与えた快感の何倍ものそれを受け続けているイムは、いよいよスライムの動きを激しくした。

逸物を、全身を包み込んだイムの体が、いきなり収縮したかと思うと、体の中のスライムが膨張して、俺の体を圧迫した!

「うぁあっ!」

魂そのものに与える強烈な刺激は、この空間では全て快感に変換されるらしい。俺の体は強烈な光を放ち、一瞬イムの顔が確認できなくなった。

視界が戻ったとき、イムは笑いながら――涙を流していた。



「あっ!あはっ!お兄さんっ!お兄さんっ!逝かせてっ!逝かせてぇっ!」



気が狂わんばかりに叫び、全身を激しく揉み回すイム。特に重点的に、腰回りと股間を猛烈な勢いで刺激した!ぎゅるぎゅると回転し、棹も袋も粘体に絡み付かれながら、同時に振り回されていく!

逸物が、ぴく、ぴくと射精準備が出来たことを告げている。それは、時が来たことの報告でもあった。

俺は無意識のうちに、思いきり腰を突き上げた!

ビクゥンッ!

「!!!!!!!!!!!!」

スライムの動きが、一瞬止まった。そして、次の瞬間、



づぢゅぅぃぃぃぅうううういうっ!

「ぁぁぁあぁぁぁぁあああああああああっ!!」

イムが、体全体を使って、俺から精を採ろうと動く!まるで掃除機のように、俺の中にあるものを全て吸い込もうとしている!

そして俺は――それをあっさりと明け渡した。





「…………ぁぁぁぁああああああっ!」

どぉっぱぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!



その時。

俺の体も、意識も、全てが。

――光に包まれた。





「…………ぁぅ、ぁはぅ、はぅ、ふ、ぅ、ぅ、ふぅ、ふぇ、ふぇぇぇぇ…………」

光が消えた後、イムは一人、洞窟で泣いていた。男の肉体は、イムに吸収され、男の技術は全て、イムに継承されている。

男の魂は、天へと上っていってしまって、もうイムの中には残っていない。あるのは、一時の思い出だけ。

「………ぇぇぇぇぇぇ………」

彼女の鳴き声だけが、ただ、洞窟の中にこだましていた………。





「………さよなら、お兄さん。そして――ボクを助けてくれてありがとう。

だから今度はボクが――」





――数日後。

『ゲノシデ』達に伝わったのは、耳を疑いたくなるような知らせだった。

『ゲノシデ』が拠点てしていた街が、一夜にして壊滅した、と言う報告に、野盗達は戦慄した。

夜間討伐部隊の仕業ではない。何故なら、彼等は街そのものを破壊するからだ。ところが、建物は凄惨な風景のままに残されていて、唯一リーダー格の死体が、街の中央の十字架に、串刺しにされて放置されている以外は、死体が見付からなかったという。

それから数か月後、彼等も同様の目に合うことになる。

彼等が最期に見たものは、クリアブルーの瞳を持つ、少年のような女が大剣を振るう姿であった………。























イムがいた洞窟には、ひっそりとお墓が建てられていた。

イムは自分の分身をその墓の近くに置き、守らせていた。

ガードスライム。

『主に従い、主が死ねばその敵を討ち、主を死後も守る』事を信条とする種族である。







fin.













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