魔を喰らいし者
こうなったら内側から蓋をこじ開けよう! 幸い腕力には自信がある。何とかなるかもしれない。
「くっ……うらあああっ!」
全身に力を込めて脚を曲げ、足の裏で蓋を思いっきり蹴りつける。足が痛むが、気にせず何度も何度も蹴り続ける。アイアン・メイデンそのものが衝撃でギシギシと揺れ、蓋の隙間から僅かな光が差した。
(よし、もう少しで蝶番が壊せそうだ!)
駄目押しとばかりに、トドメの一撃を叩き込もうとする俺。だが、それは叶わなかった。
「こっ、これで……うっ、うわっ! このっ……ああっ!?」
それまで俺の陰部辺りを責めていた搾夢肉床が、突如脚の方にも絡み付いてきたのだ。それによって脚の自由を奪われてしまう。
「くっ、離れ……ふああっ!? や、やめ……」
無理矢理手で引き剥がそうとしたが、搾夢肉床は俺の体にぴったりと貼り付いて離れようとしない。それどころか、腕の方にも絡みついてきた。四肢を封じられ、俺は完全に身動きが取れなくなる。
「ひっ、ああうっ!? うああっ、止めろ……止め……」
搾夢肉床の執拗なまでの責めに、俺はいつしか抵抗できなくなっていた。思考が徐々にぼやけ、快感に侵されていく。
「ふああああっ!? だ、誰か……助けっ、はううっ!? だ、誰かぁ!」
呼べども呼べども、助けは来ない。
どれだけそうしていただろうか。何度射精したのかわからぬほど、意識は希薄になっている。だが与え続けられる快感が、俺に気絶させようとはしないのだ。
(助けて……誰か……)
『大丈夫、あたしたちが遊んであげるから……』
『たっぷり出していいよ……』
『ほら、気持ちいいでしょ?』
「うあああ……気持ちいいよぉ……」
どこからともなく聞こえてきた声にそう返事する。それが幻聴だったのか、そうでないのかは定かでない。
浴びせられ続ける快楽の前に気を失うことも叶わず、俺は何度も何度も精を放ち続けた……
――そして、三日後……。
「お久しぶり。元気にしてたかしら?」
「うああ……いい、いいよぉ……」
「ふふっ、もう快楽のことしか考えられないようね」
小窓から中にいた男の様子を覗き込み、マルガレーテは満足そうに笑った。
「それにしても、随分頑張るわね。普通ならもうとっくに衰弱死してもおかしくないのに」
通常、アイアン・メイデンに入れられた者は一晩あれば精神が壊れ、丸一日で大体衰弱死することになる。三日間責め続けられても、未だ精神が壊れるだけで済んでいるというのは驚嘆に値することであった。
「そうね……一週間経っても生きていられたなら、そこから出してあげるとしましょうか。最も……その後でまた別の拷問に付き合ってもらいますけど」
残酷な宣告。だが快楽に酔っている男には、その言葉は届かない。
「ああ……もっと、もっとぉ……」
彼はいつまでも快楽を味わい続ける。その命が尽きる時まで、永遠に……。 (BAD END)
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