いきなり家族計画ッ!〜お持ち帰りから子育てまで〜






……………。

ジリジリ

「おい。そこの若いの!ぼさっとつっ立っとらんで動け!」

…………………。

ジリジリジリジリ

「全く、最近の若いもんは………おぉっ!皆の衆!昼の時間だっ!………そこの若いのは働け!お前に休憩時間はねぇ!」

…………………………………!

ガヤガヤガヤガヤ………





ガバッ!

バサッ!ガサガサッ!





「……………………やってられっかぁぁぁっ!」



『巨大蜂現る!?求ム!蜂駆除のバイト!

装備はこちらで用意します!時給1500円』

時給1500円で一日と言う、今考えれば怪しさ満点の相場に飛び付いた俺は、現実の不条理さを胸に対蜂用の重装備を全て脱ぎ捨てた。無論、先輩達の目の届かぬところで。

叫び声は当人達の話し声で聞こえていないだろうし、何よりセミが異常なまでにやかましい。全てかき消されているだろう。

季節は七月初旬。日差しが徐々にキツくなっていきそうな時期だ。

いや……寧ろ日差しは今日の時点で異常だ。

「何で今日に限って最高気温が40度近ぇんだよ………」

午前六時、起床時に確認した温度計は、熱帯夜の基準を今一度確認した方がいいのではないかと思える31度。ニュースではフェーン現象だとかエルニーニョだとか原因を様々に言ってはいるが、言葉ではこの異常なまでの熱さ(絶対暑さじゃないLvだ!)をどうにかできるわけじゃない。早いとこ解決法を出してくれ。じゃないと俺ら………死ぬぞ?

んなわけで、ただでさえ熱い中を、熱がわりと篭りやすい厚着をして作業することになったのだが………作業自体も、まずは巣を探すことから。ずさんにも程があるわ!おまけに先輩のジジイ共は人使い滅茶苦茶荒いし………。

日雇いとはいえ、もう我慢の限界を遥か彼方に越えていた。絶対、あのジジイ共は俺ら若者を殺す気だ。間違い無い。

「…………ふぅ」

脱ぎ捨てた装備を分かりにくい位置に置き、俺は最終探索場所の森の中へと、影を求めて入っていった………。





「ここはわりと涼しいな」

森の中は多少湿度が高くなっているとはいえ、葉があの激しい太陽光を遮り、土が地面の照り返しを防いでいる辺りで、天と地ほどの環境の違いがあった。何であのジジイ共は住宅を中心に探そうとしてんだよ、ったく。

俺は近くの木に腰掛け、かっぱらってきた昼飯を食べることとした。昼飯と言っても、かっぱらったのはスタミナ弁当(ソーセージ、焼き肉、キムチなどが入った、完全にスタミナをつけるための弁当)ではなく、ウィダー〇ン〇リーとア〇ノサ〇リ、あとはお〜〇、〇茶である。いまはただ、水分が必要だった。温くても仕方ない。命には代えられない。

お〜〇、〇茶を一本、封を開けずに残して、他を全て飲み終えると、俺は森を見回してみた。

「………閑だよなぁ………」

都会じゃまず見られない花達は、虫達に頼んでの受粉の真っ最中。木々の間を縫うように飛ぶ、番の蝶も、求愛追い掛けっこ。

まぁ何ともお盛んなこって。熱でバテても知らねぇぞ?

――などと冷やかしに近いことを考えていた――ら。



プスッ。



「んっ!」

腕の辺りに鋭い痛みを感じた。少し慌てて刺されたらしき場所を見てみると、幽かに赤くなった場所が。

何に刺されたのか分からないが、とにかく毒があったら危険だ。お〜〇、〇茶を軽く口に含み、傷口から毒を吸い出そうとする俺。お茶のタンニンには消毒作用があると聞いた事があったからとる行動だ。

そのまま三分ほど、吸っては吐いて、吸っては吐いてを続けた後、傷口にお〜〇、〇茶をかけて応急処置は終了。さて、腕を刺した張本人は――。



俺の足元にいた。

腹の膨らみが、親指の第一関節より上の部分並に大きい、恐らくはこれが俺達が探していた――巨大蜂が、どこかへばったかのように、地面の上に横たわっている。

――死んだか?

ならいい。わざわざここで殺して、体液がかかって他の蜂がやって来たら厄介だ。つーかそもそも蜂は森の中にいたんじゃねぇかよあの腐れジジイ共。なら早くこっちに来いや。

さて、この蜂に気付かれないように、俺は移動します―――か?



あ、

ら、

から、





g





「ふぇぇ〜、気温が暑すぎだよぉぉ………?

あれれ〜?こんなところで誰か寝て………ふぇぇっ!

ど、どうしよう〜!ふらふらしてて刺しちゃったよぉ〜っ!あわわわわ……このままだと、こ、この人を、こ、殺しちゃ……ふぇぇぇぇぇっ!」

「…………」

「あぁっ!侍女さぁん!お願い〜っ!この人を、家まで運んでぇぇぇっ!」

「…………(コクコク)」

「ありがとぉっ!(だきっ!)」

「!(フルフルフル)」

「(あれれ〜?侍女さん、どうして体が震えてるのぉ〜っ?しかも、ふぇぇぇ〜っ!侍女さんの顔が赤いよぉ〜っ!)」





「………んっ」

少し頭がクラクラする………。

体が………まだうまく動かねぇ………。

どうやら………毒を抜き損なったようだな…………って!



「なぁぁぁぁぁぁっ!」



俺は服を全て脱がされた状態で、どこか見たことも無い場所で寝かされていた。床や壁、天井は黄土色で、所により貝殻の内側のような光沢を放っていた。さらに、所々何かシロップを垂らしたように盛り上がっている。

ご丁寧な事に、俺は両手両足を縛られた状態で寝かされていた。――体が動かないってこれでかよ!

一先ず何で縛られているのか、俺は体を芋虫のように動かし、足の方を確認した。御丁寧にも、手は後ろ手で縛られているからな。



「………ん?」

俺の足首を繋いでいたのは、見るからに不思議な物体だった。表現するならば、『貝の内側のように七色に光る土』なのだが、所々金色の何かが付着していて――。



「………目覚めたか?」

突然、俺の後ろから声がした。凛とした、やや感情の入らない大人びた女性の声。

と同時に、腕と足を縛っていたものがとれた。カラン、と音がして地面に落ちる。

俺は自由になった手足で体を支えながら、首を向けると―――。



「わぉ…………」



目の覚めるような金髪、金の瞳。

キメ細やかな肌。

スラリとした上半身。

くびれ線がハッキリと見える腰。

細く、しかし引き締まった脚。

………胸がないのはご愛敬だが、完全にモデル体型の女性が一人、片手に槍を持って俺の前に立っていた。

「あ、あぁ………」

思わず見とれてしまった俺の目線が、次の瞬間には固まることになる。

目の前にいる槍女、その腰の後ろ辺りに、何やら黄色と黒の縞々模様で、柿の身状に膨らんだ何かが見えたのだ。それは女の動きに連動するかのように上下左右に微動している。

「?どうした?」

女が俺の顔を覗き込む。その髪の間からは、二本の触覚のようなものが、ぴょこんと突きだしていた。

「え………あ………」

俺は言葉を出そうとしたが、どうにもうまく言えない。絶対言えない。



(それはコスプレですか?)

(Is it a Cosu-Pure?)

(Est-ce une Cosu-Pure?)



なんちゃって英語やなんちゃって仏語に変換したところで言えないものは言えそうにない。

目の前の女は、そんな俺の様子を察したのか、あるいは察してないのか、頭の上に突き出たものをいきなり俺の額に当ててきた。

バチインッ!

「ワギャッ!」

突然、俺の体を電撃が突き抜けた。それも、女が触れたところからほぼ一直線に。

「………」

どズームの位置から俺を眺める女―――って近い近い!

「ちょ!ちょ待って!」

何とか彼女の肩を押さえ、距離をとった俺は、心的抵抗を外した電撃の勢いに乗って、やや回らない口を何とか回して尋ねた。

「い………いま、何、した?何か……ビリッと――」

女は不審そうな目を向けかけ――ふと何かを思い出した様な表情をしたかと思うと――。



「――まさか、私を人間だと思っているのか?」

――へ?

「――まぁ仕方ないか。無知は罪だが、それは教えたものが罰せられるもの」

――あ?

「………どういうこん゛っ!」

俺の疑問は、女の不意打ち接吻によって遮られた。女は両腕を俺の背中に回し、さらに舌を俺の中に入れようとして来たが、俺もとっさに歯で防――。

こちょこちょこちょ………

「んむんむん〜!」

――ごうとしたが、脇腹にこそばゆい感覚が走り、思わず力を緩めてしまった。あっさりと侵入した舌は、ざらざらした感触をもって俺の口の中を撫で回していく。唾液が下に幽かに触れる度、俺の味覚は甘味を示していた。それだけで、俺の体は抵抗を失っていく。さらに女は、舌で俺の舌に絡み付き、ぐにぐにと揉み上げながら吸いつき、



はむっ。ぢゅうううう〜っ!



「んんんんんんんんんんっ!」

先端を軽く噛みつかれたかと思うと、同時に強く吸いあげられた!俺の体が一瞬軽くなったかと思うと、次の瞬間には体力が根刮ぎ奪われていくような感覚に陥った。口の中を満たす彼女の唾液が、鉄錆の味と混じる度に、俺の体は自分の重さを保てなくなっていた。

女による強烈な吸引が終わった瞬間、俺の体は力を失ってへなへなと崩れ落ちた。口はだらしなく開いて、当分戻せそうにない。

女は口を離すと、今にも倒れてしまいそうな俺の体を支えた。ふぁ……と、甘い香りが俺の鼻孔を満たす。

明らかに、俺の肌には四つの感触があった。うち二つは、脇から背中にかけての両腕。では、腰から背中にかけての二つは何だ?

まだうまく体に力が入らない俺は、ただぼんやりと前を見つめるだけだった―――が。





「―――!」



女の瞳、それはよく見ないと分からないほど小さな六角形がいくつも繋がっている複眼となっていたのだ。

複眼の女は、今だ動けない俺を床に寝かせると、四本の腕で腕組をして、まるで品定をする目つきで一点を見つめた。――間違いない。俺の股間を見つめてやがる。

「―――気付いたか?」

女は冷ややかな目で――幽かに頬が赤いのは気のせいか?――俺を見つめながら、改めて問掛けてきた。

………俺の返答は、言うまでもない。

「はは………。

………気付くに決まってるだろ!」

黒と黄色で柿の実の様な尻、髪から突き出た二本の触覚、四本の腕に複眼ときたら、………大体は予想がつく!

ハチ娘。

某吸血鬼格闘で食欲と繁殖欲が精神の大半を占めていると言われるアレ。

某落ちものパズルで時代劇口調のアレ。

高速で羽を震わせて疾風の如く飛び回り、尻の毒針で刺したり体内で生成される蜜で相手を固めたり、手に持つ槍で一突きしたりする想像上の生き物、の筈なんだが―――。

「――一部失礼な思考があったみたいだが、まぁよしとしよう。人間にとっての想像上と言うところを含め、大よそ当たってはいるしな」

「なっ!」

何で人の心が読めるんだこいつは!

「さっき触覚を当てたときにな、お前の心を聞き取れるよう、特殊な電撃を流しておいた」

「んなっ!」

「言っておくが、これが使えるのは女王様と、その親衛隊兼侍女長のこの私、シュガルだけだ」

「んな事知るかぁっ!」

考えが全て読まれている以上、沈黙の意味がない事は明然だった。

「元気が良いな、男。毒がようやく完全に抜けたようだ。よかったな」

「よくねぇよ!誰かさんの所為でさっきから力が入らねぇよ!どうしてくれんだ!」

「心外だな。さっき女王の毒を抜いてやったばかりだと言うのに」

「なっ………!?」

そう言えば、シュガルに舌をおもいっきり吸われた時、体の重みも吸いとられた様な感覚がしたが………。

「まさかそのために、俺の舌をいたぶったとか言うんじゃねぇだろうな?」

「それだけではないがな。もっとも、力を抜いてもらった方が毒を抜きやすいのは事実だが」

「………それは動けなくなるほど抜くものなのか?」

シュガルは刺す様な目つきを幽かに和らげて――呆れ、とは少し違う感情が見えた――、口の端に幽かな笑みを浮かべながら、

「言っただろう。それだけではないと」

その言葉の意味を俺が理解するのに、そう時間はかからなかった。

「!!!!!!!!!!」

シュガルはいきなり、俺の顔を跨ぐとそのまま両足を屈めてきた!俺の視界に映るのは、彼女の白い綿状の物で覆われた股間と、巨大な蜂の腹と、先端の毒針。

「毒などないぞ。刺さっても少し痺れるだけだ」

「それを毒っていむぅっ!」

シュガルの発言への突っ込みは、突然の口内への落下物によって遮られた。

――俺の目の前には今、一輪の花が咲いている。白い綿毛でほわほわと縁取られたその花は、黄金色の蜜を滴らせながら、俺の顔目がけて徐々に近付いて来た。

そしてそのまま――。

「ふむうっ!」

淡い桃色の花は、俺の唇と淫らな口付けを交したのだ。器用に、鼻を塞ぐことなく。

だが、花から溢れ出す蜜がかもし出す、身をとろけさせるような香りは、俺の鼻孔どころか気管すら満たし、思考力を減衰させていく………。

黄金色の蜜は、内側からとめどなく溢れだし、俺の口へと入らなかった分は頬を伝って地面へと流れていく。その味は、カルピスの原液を煮詰めても到底到達できそうにない程に甘い。それでいて、舌先に当たるだけで体全体を巡って行きそうな―――。

「!!!んふぅむ!!!!!」

俺の下半身に衝撃が走った!くそっ!力が入らねぇ上にシュガルに組み敷かれている所為で下半身の様子は見れねぇが、俺の逸物が何かねっとりとした柔かい物で包まれているらしい――状況的に、シュガルの口だ。俺は今、完全に69の姿勢を取られている――!

「んむっ………ちゅぶ………んば……ちゅる………」

シュガルは顔を上下させ出したらしい。俺の逸物を包む皮が剥がれてはまた包み直している。剥がされた時に出現するカリは、ややザラザラする彼女の舌によって舐め回される。傷付けることなく、断続的に刺激を与え続ける彼女の舌に、俺の逸物は更に自己主張を強めた。

「んぱ………んく、んく………」

その一方で、秘部から溢れ出す蜜もいよいよ量を増してきた。全身の体液という体液が全て蜜と入れ替わってしまうのではないかと一瞬、俺が考えてしまうほどに。だが、俺の口は依然として開き続け、喉は蜜を全て飲み尽そうと働き続ける。体が、蜜を求めているようだ。

不思議と、下半身全体に広がる快感によって肉棒が自己主張を強めているわりに、いわゆる、出してしまいそうな、出そうと体が反応するような、そんな気配は一切湧かない。

シュガルはそんな俺の心など知らないかのように、舌を強く逸物に絡め、ギュッ、ギュッと絞めてきた。柔かい舌は、表面のザラザラを獲物に押し付け、表面の粘液を塗りたくりながら、蛇の巻き付きとは違う、思わず身を委ねたくなる動きをした。

「んっ、んむっ!んむっ!」

舌が締め付ける度に、俺は花の中にくぐもったあえぎ声を漏らした。そのお礼とばかりに降り注ぐ蜜を、俺が飲み干した、その時だった。

「………!」

突然、舌の動きを止め――るどころか口すら外したシュガル。同時に、蜜を垂らしていた秘部も、顔から離れるとぴっちりとくっつき、白い綿毛がその筋を隠してしまった。

俺は困惑した。突然の人外69が強制終了してしまったのだ。無理もない。

シュガルはすくっと立ち上がると、俺の方に顔を向け――信じられないと言った表情を俺に向けた。

「………何だよ?その顔はよ?」

俺が何かしたってのか?

「………いや………まさか………」

いや、勝手に混乱されてm

「むぐぅっ!」

お!おい!いきなり俺に二回目のキスk



ぬちゅうっ!!



「んんんん〜っ!」

な!何だこの感触は!俺の息子は何に覆われてんだ!?

何かややねばついた様な感触がしたと思うと、急に生暖かく、やわやわとした何かに挟み込まれ、そのまま無数の出っ張りによってねばねばが広げられて――。



ぎゅぽっ!



「んんんっ!」



突然激しく締め付けられた!皮も含めて、俺の逸物で何も触れられていない場所がなくなる!

そのまま分身は上に引っ張られ、下に押し込まれ、上に、下に。

シュガルはキスした当初から、俺の舌を自分のそれと絡ませ、俺に叫ばせないようにしていた。――俺の視界には、今シュガルの顔だけが映っている。瞳は閉じたまま、整った可愛らしい鼻先を俺のに 突き合わせ、仄かに甘い

香りを辺りに漂わせながら、必死で俺の口を蹂躪していく。

ふと、顔の後ろで、何か黄色と黒い縞が上下に――って!

「!!!!んぐんんんっ!」

挿れられてる!

俺、本格的に挿れられてやがる!

それも、人間じゃなくて、蜂の怪け物に!

一瞬走った背徳的な感情に反応したのか、俺のペニスは彼女の膣の中を圧し広げるかのように膨張する。しかしどうしてかは知らないが、肝心の精液は一滴たりとも出る気配はない。それだけでなく、精液を出そうとする気配すら、ペニスには無かった。

しかし、膨張して敏感になった俺の海綿体からは、剥き出しの快感が血液から、リンパ液から全身に回っていく――!

「んんんん―――っ!」

快感に耐えきれなくなった俺の精神は、肉体より前に達した―――。



ぬちゅっ!ぬちゅっ!

ちゅるぱっ!ちゅぶっ!



「………」

このまま何分か………いや、時間か?ともかく俺にとって長い時間シュガルに犯され続けた俺は、

「――――あ?」

いつの間にか口を離されている事に気付いた。どうやら、達した時に、意識が一時的に飛んでしまったらしい。

口の裏側を舐める。仄かに甘い。夢だった良かったが、残念ながらそうそう都合の良い事態にはなりそうもない。

心なしか体が、少しベトついている。

全く………多少気持良かったとはいえ、俺の初セックスを人外に奪われたんだぞ?俺のショックをどう表現してくれるよ?

「――私かてショックだぞ、男」

「おわっ!」

俺の思考に合わせるように話しかけられるヤツはこいつしかいないが………やっぱり夢じゃねぇのか。

「………まさか早々に見付かるとはな」

「?見付かるって、何が――ああっ!」

いつの間にか俺の全身には蜜が塗りたくられ、御丁寧なことに腕と体は固められた蜜でがっしりと固定されてしまっていた。

………ってよく見ると胸の辺りに蝶ネクタイ(made of 蜜)が固定されてるじゃねぇかっ!



「どういうことだよ!」

「私だって聞きたいわ!」

俺に対し、シュガルも負けじと叫び返す。そして――。



「男!お前が女王の婿となるべき存在である事などな!」



「………ゑ?」

何?

What?

婿?

why??

Repeat after me OK?

婿となるべき存在?

ME?

俺が?

何故?

もしやこれは新たな嫌がらせ?いやそれにしてもシュガルは心底納得のいかないような表情をしてるぞ?つー事は何らかの選定基準を俺が満たしてしまった事になるがそもそも何が基準だ?あぁもぅ考えが

「騒がしいっ!」

怒鳴られた。

「………お前の股の間についている醜い分身の形や硬度、お前の口内感触、蜜需要量……他にも色々あるが、まさかここまでぴったしとはな………ぁぁ、姫の側にずっと付き添えるのもこの日で終了か………」

「………お〜い」

解説してくれるのは嬉しいけど、何だか思考前提がどこかおかしいぞ?てか何だよずっと付き添いって。まさかその手の旨好か?

「悪いか!女王様に永劫の忠誠を誓い、いかなる病める時も側にいると銘じたのだぞ!?」



「それは結婚式の誓い文句だぞ」

「うるさい!それが昨日今日出会ったどこぞの畜生に女王様の床を許すなど!」

「そんなに嫌なら毒を抜いて俺を帰せばいいだろうが。そもそも俺をほっとく選択肢もある筈だ」

「女王様はその献身的な温情から、お前を生かしたのだぞ!?姫に感謝せよ!」

「主張がずれてるぞ?」

「はっ!?」

熱が入りすぎだ。赤面するシュガルを視界に収め(つ〜か、寝たまま動けない)ていた俺は、ふと恐ろしい考えに行き当たった。

「………今考えてみれば、寝ているうちに殺すという選択肢もとれるわけだよなぁ」

シュガルは今にも感極まって泣き出さん勢いで俺を持ち上げた。

「女王様を泣かすわけにはいかないだろう!



元々自らの毒でお前を殺しかかっていたとお思いなのだからな!」



「なぁぁっ!ちょい待てぇぇ!」

待つヤツなどいる筈もないが、俺は叫んだ。つーか叫ばずにいられるヤツはこの世にいるのかよ!?

「誤解するな!女王様は知らないが、女王様の毒は体がただ痺れ、一定時間誰彼構わず発情するだけだ!」

「下手な毒よりタチ悪いなオイ!」

「あのまま抜かずにいたら、しびれが切れた瞬間にお前は獣になっていたのだぞ!」

「てかそもそもんな毒を俺に注入するなよ!?」

まずそこだ!毒を抜いたことを感謝してほしけりゃまず経緯をちゃんと話せよ!

「この熱さだ!女王様が人事不正に陥っても仕方がないだろう!」

「開き直るなぁっ!」

女王が熱さにバテた事が原因で、俺は危うくウホッの道に――いや、下手したら獣姦の道に入りかかっていたのか………。危ねぇ。

二人の不毛なやりとりの間にも、シュガルは俺をプレゼントよろしく四本の腕で抱きかかえ(蜜の影響か、そこまで擽ったくはない)、何処かへと高速で移動していく―――ってまさか!

「女王様ぁぁぁぁぁぁぁっ!」

やっぱしかよぉっ!

………しっかし、当事者の顔を拝める機会でもあるか。と俺は考え直し、あえて為すがままにされてみた。もっとも、抵抗しようにも動かせるのは足だけで、しかも自力では立ち上がれない状態。ろくなそれは出来やしない状況だった。



「女王様ぁぁ〜」

女王の間――謁見の間か?――に着くとすぐ、シュガルは俺を床に心なし丁寧めに置き、カール・ルイスもかくもやらという速度で女王を呼びに向かっていった。………完全にアレは……アレだな。心なしか顔、赤くなっていたし。

待ちっぱなしも辛いので、俺は顔を動かせる範囲で、この部屋を眺めてみた。

――ん?

天井にぶら下がっているのは………シャンデリアの形じゃない?………あ、飾りが花の形だ。それも様々な色に塗られてやがる。

………ってちょい待ったぁっ!

女王の座るであろう椅子の高さが妙に低い!しかも何で熊やら兎やらの縫いぐるみが腕を掛ける部分にぎっしり置いてあるんだよっ!

………これはもしやの………女王→精神年齢低い?某所では校長がロリだと言う設定の元、様々な妄想が行われたと再三に渡ってメールで送ってきやがった悪友がいたが、あくまでもそれは空想での話。現実にそんなんがいるはずが――。

そんな俺の希望にも近い仮定は、

「じじょさ〜ん!」

奥から聞こえてきた声が原型を留めないほどに破壊してくれましたとさ。

――めでたくねぇ!



それから数十分、俺の気持は暗胆としていた。

先程の台詞を聞く限り、声の主は女王で間違いがなさそうだ。――そして俺の体は今、その女王に捧げられようとしている。

人外だけでも後免被りたいところに、精神年齢ロリだと!?一体俺の旨好をどこまでマイナー路線走らそうとしてるんだ!?

これはマズイぞ………バイトを抜け出した代償にしては高くつきやがる。

結納?

You know?

君と僕の将来のため愛を誓えますか?

答えなど知るか。とにかく今は落ち着け。考えるんだ。どうにかしてこの場を抜ける方法を考えなければ………。

俺は目を瞑り、両足の自由のみが効く状況でどうにか逃げる算段を立てようとした――。





むにゅ。



ふと、胸元に違和感。何やら柔らかい物が蜜の膜越しにうにうにと俺を圧迫している。このまま体が埋もれてしまうのではないかと思うほどにその物体は柔軟な感触を俺の体に伝えてきた。



「…………ふぇ?」



間の抜けたような声が、俺の鼻先から頭を廻り脳細胞全体にエコーを響かせる、一言も聴き漏らすまい、と――あ?

おかしい。

絶対におかしい。

高々「ふぇ?」だろ?

どうしてそんな言葉に全神経を傾けなければならない?

そもそも、今言葉を発したのはだれだ?

シュガルではない。それは分かる。あいつはこんなにロリ声ではないし、間抜け声も俺の前では出さないだろう。

それに気になるのは、さっきから胸を覆っている柔らかな感触だ。………正体については、多分、予想は当たってるだろうがな。



そうして開けた瞳に飛込んで来たのは、



「大丈夫ですかぁっ!?」



俺の事を心底心配そうに見つめている、一人の少女だった。

瞳の色はエメラルドグリーン。複眼なのか、反射して見える俺の姿は一つではない。

シュガルとは違った、小さいが整った顔立ち。いわゆる童顔というやつだが、頬、口許、鼻立ち、眉毛、睫………そのいずれも並の大人より美しい。

髪の毛は、シュガルとは違い栗色だ。そして髪の間からはシュガルと同じように二本の触覚がピョコンと顔を出している。

首元は、綿毛のようなものでほわほわと覆われていた。

そして、そこよりか下に視線を動かそうとすると――。



予想通り、俺の胸元には乳が当たっていた。ただ――デカ過ぎだ。人間では絶対有り得ない、FやGのレベルじゃない、下手したらグロ一歩手前の大きさを誇る乳。それがぐにゃりと形を変え、俺の胸元はおろか臍の部分まで覆っていたのだ。

そして、小柄なお尻から突き出た、蜂の腹部と、その先端から突き出たどこか可愛らしい針は、幽かに何かで濡れているようだった。



思わず、見とれてしまった。

どうしてこんなに綺麗なのか。

俺の両腕が自由なら、間違いない、抱いてたな。

相手が人外であることも忘れて。



「ふぇぇっ!大丈夫ですかっ!?」

瞳を開けたことに気付いていないのか、少女は俺の肩を揺すり始めた。手には白い手袋を填めていて、手首には首と同じような綿毛がふわふわと揺れている。

――大丈夫だと安心させてあげなさい――

「……ああ。大丈夫だ」

――何だ!?何か俺の頭の中に響いたぞ!?そしてそれに従うかのように、気付いたら言葉を発してたぞ俺!?

そんな俺の内心の混乱など知らないかのように、俺の言葉に安心した少女。

「ふぇぇっ………よかったよぅ………生きててよかったよぅ………」

ぽたり、ぽたりと俺の口許に涙を落としていく少女。その一粒一粒が俺の頬から流れ落ちていき、あるいは口に入っていく。

どこか甘く、しかししょっぱい涙。俺は安心のままに泣き出した少女を今すぐにでも抱いてやりたい衝動に――



「女王様、そろそろ拘束を解くのはいかがでしょう?」



――へ?

今響いたのはシュガルの声。それは間違いない。じゃあ、そのシュガルは今、何つった?

「あれれぇ〜?侍女さん、いつの間にここに来たのぉ〜?」

って侍女とタメ口かよ!?俺のような来訪者は兎も角、蜂はタテ社会――ってことは!

「ま、まさか………」

目の前の少女は、マジもんの――



「……あれれ〜?何でわたしを見て驚いてるの――

ふぇぇぇっ!名前言うの忘れてたよぉ〜っ!

………えへへぇ。わたしの名前はメイプ。女王なんだよ〜、よろしくね、ア・ナ・タ♪」





――女王でした。つまり彼女が俺の妻になるらしい蜂と言うわけで、しかも既に夫認定されているわけで――。

「年齢なら大丈夫だ。成体にはもう既になっている」

あぁ成程、シュガルが言うならそりゃ安心――ってオイ!

「俺の意思は無視ですか!?」

俺の悲痛な叫びに、シュガルは何ともないといった表情で呟いた。

「巣全体の多数決でも、全会一致で可決だな」

当たり前だろ!女王のYES!が出てるんだから!

「それにな――男、前を向いてみろ」

「前――って」

女王を見ろ、って事だよな。

思考よりも行動は遥か速く、俺の目はメイプの姿を捉え――え?



「えいっ♪」

避ける間もなく、巨大な双球が俺の顔を挟み込むように落下してきた!ぼふんっ、と音がしたかと思うと、俺の視界が肌色に覆われた――と言うより光が入ってこないから黒く染まった。

ふわ………と、薔薇を丹念に煮詰めたような濃い香りが、俺の顔面全体を包み込んで行く。胸の谷間、幽かに開いた空気の通り道に集う空気を薔薇色に染めながら、一息毎に俺の中へと入っていく………。

「んぶぶんっ!んぶんっ!んぶん………」

首を動かしても、柔らかく弾力を持った二つの巨大な球体はその衝撃を吸収し、逆にむっちりと俺の顔を覆っていく。抵抗する度に、俺の体力はすり減っていき、薔薇の香りは俺の体にどんどん染み込んで―――!



ドクンッ!



「アァアッ!」

何だ!おれの体が――体が熱い!特に――下半身が!下半身が焼け切れてしまいそうだ!メルトダウン寸前の発電所のように、俺の全身がいきなり大量の熱を放った!

全ての血液が、一瞬で沸騰してしまうかのような熱に、俺の意識は吹き飛び――



「アアアアアアアアアアアァァァッ!」



腕の束縛を自力で砕いていた。筋繊維が何本か千切れる音が幽かに響いたが、それを無視するかのように俺の腕は動き―――



「あはぁんっ♪」



顔を挟む双球を掴み持ち上げた!そのまま力任せに桃色の実を揉みしだく!少しだけ開いた孔からはぴゅ、とほんの少しだけ蜜が噴射される。

「あ、いぃっ、痛、い、痛い、あ、あはぁ、いい、痛イイ♪」

メイプは痛みと快感の間で揺れ動いていた。表情を見てやろうと俺は目線を上にやると――。



ドクンッ!



「あ――――」



な………ん………だ………

――お前の体は女王の虜――

……こ………の………か……ん……じ………

――お前の頭も女王の虜――

…あ……た……ま……が…………

――お前の心も女王の虜――

……う………め……………





「あれれ………?侍女さん?どれだけ蜜飲ませ―――ふぇぇっ!たたた、大変だよぉっ!」



――体の上から蜜が溶けていき、地面を汚していく様子が、肌から伝わっていく――

「どうしよ………ふ、ふぇぇ………」

目の前には、今にも泣き出しそうな、俺の妻であり、女王蜂である、メイプの顔。

――泣かせるな。優しくしてやれ――

俺は真に自由になった両腕を、メイプの背中に回し、



強く、抱き締めた。



「ふ!ふぇぇぇっ!」

突然のことに驚き、

びゅっ!

乳から蜜を噴射してしまうメイプ。だが――

「……あ、か、からだが、からだがあついよぅ………」

俺が抱いた瞬間から、メイプにも異変が起こった。突然瞳の焦点が虚ろになり、頬が上気してきたのだ。呼吸が荒くなり、はぁはぁと呼吸をする度に、俺達を包む薔薇の香りが濃くなっていく。巨大な胸越しに、メイプの脈が上昇していくのが分かる。

俺の体は相変わらず熱っていて、特に下半身は、シュガルの時とは比べ物にならない程に活発に脈動していた。一方のメイプも、またの間から黄金色の蜜を垂らしていた。よく見ると、入り口がパクパクと蠢いている様が分かる。

「はぅっ………ふぇぇっ………」

メイプは、何かに耐えるように、幽かに戸惑いながらビクビクと体を震わせていた。四本の腕は自分の巨大な胸を押さえ付けるかのように強く組まれている。だが、

「………ふぇぇっ!もうっ!ゲンカイだよぉっ!」

叫ぶのと同時に、俺の息子を一気に自分の中へ招き入れた―――。





―――ここは、どこだ?

雲の上か?

何か柔かい物が背中に当たっている――。

あぁ。これは――乳だ。

女王の乳だ。

幾つもの巨大な乳が、むぐむぐと動きながら俺の体を揉みほぐしているんだ。

あぁ………。

空には何匹もの、女王そっくりの蜂娘が仕事に精を出しながら歓喜のダンスを踊っている――。

突然、踊りを止めた蜂達。一斉に俺の方に顔を向ける。

慈愛に満ちた微笑み。ふふ………と笑い声が反響する。

そのうちの一匹が降りてきて、俺の反り立つ逸物に、軽くキスをして―――。





びゅるるばばばばばぁぁぁびばびゅぁっびゅるるびっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!







人間としては有り得ない勢い。まるでダムが決壊したかのように解き放たれた俺のスペルマは、



「あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♪」



彼女の膣の中に全て叩き込まれた。

「あぁあああぁあっ!熱いよぅっ!精液が熱いよぅっ!あぁあぁあんっ♪」

喜びにうち震えながら、メイプは腰を動かし続ける。シュガルより幾分か小さいその膣は、その分貪欲に俺の棒をくわえて放さない。狭さ故に逆によく締め付け、俺の分身はやわやわとした快感と、ぎちぎちした刺激が折り重なって意識へと掛ける布を織り上げていた。

そこに、昆虫の瞬発力だからこそ可能になる、高速の腰つき。ひたすらに精を絞り取ろうとする その動きを前に、完全に熱っていた俺が一瞬たりとも耐えられる筈がなかっ

た。

尋常な量ではない精液をただ送り続ける俺のペニス。その脈動は止まる気配を見せず、まるで俺の魂までも送り込もうとしているかのよう――あぁ、だめだ。視界が薔薇色のモヤに覆われていく――。

「んぐっ!」

だらしなく開いていた口に、突然何かが差し込まれた!反射的に俺は口を閉じようとしたが、時、既に遅し。それをしっかりと噛み締めてしまう。

「ふゃぁあああっ!」

メイプの、力が抜ける声が俺の耳に届いたのと、ほぼ同時。



ぷしゅあっ!



俺の口の中に、先ほどまで俺の体に降りかかっていた蜜が大量に噴射された。それらは意思を持った軟体のように、舌の上を這ってから燕下されていく―――!

「!!!!!!!」

驚くほど甘かった。甘いだけじゃない。幽かに舌を痺れさせるような感覚、ずっと飲み続けていたくなるような依存性をも持っていた。

そして、蜜が体内に入る度に、俺の逸物はさらに真っ直ぐに、垂直に、硬く、長く、強くなっていく―――。



「ふゃあああっ!イクッ!イクのぉっ!めひふイクのぉっ!」

メイプの方も、限界を向かえようとしていた。腰を上下左右に変幻自在に動かし、あらゆるベクトルで俺の逸物を扱き立てる!そして責めはこれだけではなかった!

「はぁぁぁぁんんんむんんむっ!」

媚香混じりの溜め息を俺に吹きかけながら、桃色の柔らかな唇を俺のそれに押し付ける!やや荒っぽい舌の動きで俺の舌を絡め、自らの口に引き寄せようとしていく――。

俺もそれに応えるように舌を伸ばし、メイプそれと絡めながら、メイプの小さな口の中へと目指して舌を動かしていく。

今、二人の口の中では互いの舌が互い違いに這い回っていた。唇の裏、上下歯茎、犬歯、臼歯、親知らず――。二人の口内粘膜はたがいの唾液が塗られて混ざり合っていた。喉から流れ落ちるそれは、乳ほどではないにしろ甘く、何より、暖かかった。心の底から染め上げられてしまいそうな、暖かさが、口から徐々に俺の中に――多分メイプの中にも――広がっていく………。

唇をつけると一緒に、四本の腕も俺の後ろへと回したメイプ。俺も負けじと抱きかえす。むに、むにん、メイプの胸が俺の胸板に押され変形していく。構わず更に強く抱き締める俺とメイプ。

いつの間にか、俺はメイプの腰に合わせて自分の腰を振っていた。一突きする毎に、口の中に、体の周りに薔薇色の香りが広がっていく―――。

そして―――





「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん―――っ!」





どびゅるるぅ〜〜〜〜〜〜〜っ!



びっしゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!



俺とメイプは、同時に達し、果てた。







…………あ。

ここは―――女王の部屋?

謁見の間とは違うようだが――相変わらず俺は裸のままか。

ん?

そう言えばメイプは?

さっきまで俺と一緒にヤッてて、一緒にイッた筈―――。



ほわ…………



ん?この薔薇のような香りは………。

頭で考える前に、体は動いていた。



ほわぁ…………

ドアのついていない部屋を出て、やけに長い廊下を香りを頼りに歩いた先――凹凸のある壁。

上を見上げれば、そこは薔薇色の空気で満ち満ちている通り道。

………俺が蜂なら飛べるんだがな。

「……………よし」

仕方なく、俺が壁に手をかけようとした、その瞬間、

背後からいきなり四本の腕で抱きかかえられ、俺の体は宙を舞った。



「………勝手に女王様の部屋を抜け出すな」

抱きかかえたのはシュガルだった。――心なしか、少し顔が緩んでいる。

「おい。何があった?」

俺の質問にも、ただ「ふふふ…………」と笑顔で返すだけだ。そしてある方向に向き直るのみ。

「………?」

奇妙に思いながらも、俺はシュガルの向いている方向へと足を進めた。



笑顔の理由を理解するのに、一秒もかからなかった。………下手したらコンマ以下二桁もかかってないんじゃないのか?



「あはは〜♪」

果たして女王はそこにいた。

世にも幸せそうな表情を浮かべて。

異常に巨大化した腹と、蜂の腹部をさすりながら。



「―――」

俺は目の前の光景が理解できなかった――いや、理解はしていた、ただ心で認めたくなかっただけだ。

恐らく、メイプは俺の精で孕んだのだろう。蜂だから、恐らく腹の中には沢山の卵。焼き付けられた快感の記憶の中で、人体の限界を遥か越えた量の精を吐き出していた俺。もしもそれが全て受精に使われていたら―――。



ほわ………。



俺のとりとめのない思考は、女王から発散される桃色をした香りによって掻き乱されていく。同時に、先ほど焼き付けられた深層意識が、俺の感情ベクトルをも変化させていった。



――あぁ。

俺達の可愛い子供が産まれたんだ。

それもいっぱい――



異形と交わって子を作ったという嫌悪感など、どこかへ消えてしまっていた。ただ今あるのは、こんなにも素晴らしい相手と、子をなせたという、純粋な喜びのみ。

「あぁ………アナタ………こっちに来てぇ………あはぁん………」

断る理由などない。そもそも、断る気もない。俺はふらふらとメイプの元に近付いた。



俺の目には、もはやメイプの姿しか映らない。他の部分は、メイプの放出する桃色の、薔薇の香りによって全てぼやかされてしまっていた。

やがて、メイプの膨らんだ腹の辺りにまで歩みを進めたとき、



びくん、びくんっ、



と、メイプの後ろで何かが震えているのが見えた。細長い管状のもので、所により一部盛り上がりを見せている――。



輸卵管だった。

そういえば、俺はかつて聞いたことがあった。ある種類の女王蜂は、針の位置には輸卵管がついている、と。

そして寄生蜂は、他生物の皮膚に卵を植え付けることを――。

俺の中に入っていた毒の正体――それは、精のない、しかも挿入するときに割れてしまった卵の内容物。これが血液中に入り全身を巡ると、ある本能の元、シュガルの言ったように、常に盛りっぱなしの獣になる。

『我が遺伝子を保持する子を遺せ!』

蜂の生殖本能が、脳を完全に支配するのだ。

シュガルはこれを防ぐため、俺の舌から毒を吸い取り、代わりに己の蜜を俺に与えた。シュガルの蜜の効力は、自ら敬愛するもの――つまり女王の命令を、フェロモンをかいでいる時には必ず聞くようになる、というもの。それも、自然な感情として。

それはすなわち――いや、これ以上考えるのはよそう。



ばふっ。



俺の頭が、メイプの人外の大きさを誇る双球の中心へと招かれ、飲み込まれていく。

むぐむぐ、と耳が奏でる中、俺は、女王のフェロモンを体全体で受け入れ――気付けば全身を預けていた。

とくん、とくん………。

女王の鼓動、胸から、お腹から、蜂の腹部から、それぞれ響くそれを感じながら―――。







暫く経った頃だろうか。

『………ふひゃぁぅ〜』

全ての卵を産み終えたメイプは、胸の谷間に埋めている俺の、頭に自身の触覚を当て、そこから言葉を伝え始めた。どうやら読心術の逆の原理らしい。

『あふぅ………ねぇ、今度は楽しいこと………しよ?』

その頃の俺は、女王フェロモンの所為で完全に茹で上がってしまい、思考が完全に定まっていなかった。ただ、メイプが何かしようとしている、それも楽しそうなことを、それだけは伝わった。

「………ん………」

胸に包まれてから起き上がっていた俺のマラが、ここで更に固さを増した。メイプの太股に、亀の口が口付けする。幽かに先走ったものが、口付けの度に糸を引いていく………。

『あれれ〜?亀ちゃん、太股が好きなのぉ〜?』

胸から俺を外すと、メイプはやや悪戯に微笑んで、俺を仰向けに押し倒した。

「じゃあ………♪」

そして自分も馬乗りになると、太股で逸物を挟みながら互いの体を横向きに倒した。

むゅり、むゅり、むゅり………

太股を前後にゆっくり動かしだしたメイプ。小さく、だがむっちりと確かな肉圧で俺のペニスを確実に圧していく………。

俺自身の皮によって、不規則な強さでペニスが揉まれていく――。

「あぁ………」

どく、どく、どく………。

俺から飛び出た精は、メイプの蜂の腹部に命中し、彼女と俺の脚に淫らなシャワーとなって降り注いだ。

「ふっふふ〜♪」

やや自慢げに、メイプは鼻唄を歌うと、今度は体勢を変え、69の姿勢に――いや、違う。



「そういえば、アナタ、おっぱいも好きだったよね〜♪」

パイズリだ。

巨乳キャラが男性を犯すのに使う常套手段。それが今から俺に使われようとしている――。



心の中の興奮を感じとり、逸物が脈動を始める。その様を喜ばしげに眺めながら、

「えへへぇ♪」

その大きな双球で俺の巨塔を――挟んだ。

柔かい感触が、俺の肉棒に全力投球で伝わってくる。人の肉体を極限まで溺れさせようとする、まさに魔性の肉体――。



「――ふぇ?」



――なのだが。

双球は、俺の分身をむっちり包み込んだものの、そこから少しも動いている気配がなかった。

「ふぇぇっ!?」

あ、メイプが焦り出した。そりゃそうだ四つの腕をあ〜だこ〜だ動かしながら自身の胸を動かそうとするが、全く動く気配が無いのだから。全て自分の胸に吸収されてしまっているらしい。

この女王――実は少しドジ体質か?巨乳が地面に触れてるから力は分散するし、そもそもパイズリはチンコの上からやるもんではないと思うんだが。

針の一件もあるし――。



「………ふ、ふぇぇぇっ………」



しまいには泣き出しそうになっていた。俺の本能は泣き止ませろと叫ぶが、俺は今、全身に力が入る状態じゃない。しかし、今分身に与えられているものは、逝くほどの刺激ではないのだ。

そうこうしているうちに、

「ふぇぇぇぇぇぇぇっ!」

ビ、ビンッ!

彼女が泣き出し、同時に背中に蜂の羽が生えた。シュガルのそれよりも大きく、紋様には幾何学模様が描かれ、見ている者を催眠状態にするそれは、俺の見ている前でいきなりたわむと―――

シュン!

「アッー!」

いきなり俺の肛門に入ってきた!菊門に突き刺さるような痛みが走る!だが当然これで終りではなかった!

ブブブブブブブブブブブブブ………

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!」

振動が!一秒間に一万回羽ばたくと言われる蜂の羽の振動がそのまま俺の尻に強烈なバイブレーションとなって叩き付ける!

強烈な勢いで上下する俺に、今度は乳の圧力が襲いかかる!形を変えながらこねくり回され、様々なベクトルから力が加えられる様は、まさにパイズリ――いや、下手したらそれ以上いっていた。一瞬で何回も上下する体に、その一回毎に焼き付けられる快感。理性などはそれらに対応することすら出来ず、ただ振り回されて疲弊していくのみ。

そして俺も―――



「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」



どくっどくっびゅるるるるるるばっるるるぅ〜〜〜〜っ!



前後二方向から体に浴びせられ強烈な快感に、俺は残りの精全てを吐きだして―――完全に果てた。

吐き出した精は、全てメイプの胸の中に叩き込まれたが、不思議な事に、外には一滴も垂れてくることは無かった――。





「…………ふ、ふぇ?どうして私のお胸が濡れている――あはぁ、アナタの香りがするよぉ…………!ふぇぇっ!アナタ!大丈夫なのぉっ!?お願いだから目を醒ましてぇぇぇぇぇっ!」





―――その後、目を醒ました俺は、口に残る甘い香りから、あの後メイプに蜜を飲まされた事を理解した。

そして、その事が、俺はもうメイプの所有物であり、夫となっている事をも、完全に理解させた。







―――そして、数ヶ月が過ぎた。





最初の性交で出来た子供は、今では蜂の集落の中で様々な仕事についている。

その数、およそ百匹だが、メイプ曰く、蜂族の必用とする数にはまだ程遠いらしい。

そんなわけで、俺は体力に余裕が出来る度に、メイプに呼ばれて、腰を振る日々が続いている。

時々、シュガルに犯されたりメイプとシュガルの3Pもしたりするが。

――普通の日常ではないにしろ、これが幸せな生活、なんだろうなと思ってしまう俺が、この頃には既に存在していた。

そんなたわいもない事を考えつつ…………。

「あぁそこ!慌てて蜜壷を持っていこうとするな!」

………母親に似て凄まじくドジな娘達に、今日も手を焼いている俺だった。



fin.



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