看板娘となった理由〜Dimension slip〜
「…………他愛ないわね」
目の前でその生を終えた男を見下ろし、私は毒付いた。
威勢のいい男だから、さぞかし良い精をしているだろうと踏んだのだが、全く持って外れ。中身はヘタレでしかなかった。
私の嗅覚も衰えたもんだ、と魔力で服を装着する。胸と下半身、そして脚を覆うだけのボンテージ・ファッションだ。
前髪を掻き上げ――頭に生えた二本の角が邪魔したが無視――、額に手を当てたまま、私は男の体にある呪文を描いた。
唱える×即ち×還土。
男の体が全て『汚れた土』となるのを見終えるよりも早く、私は翼を広げ、別の場所へと飛び去った。
こんな男の土など、路傍の石ほどの価値もない。
私はサキュバス。
名前は――分からない。
どこで産まれたのかなど知る筈もない。気付いた時には自称母親の夢魔に育てられ、いっぱしのサキュバスになり、男と交わっていた。
生きるために。
男に対する感情は、人間の食事に対する感情と同じ。つまり、美味しい、美味しくない、外面イマイチ、整っている、コシが弱い………etc.
それが私を含めて魔物が一般的に持つ感情だ。
自分が狩られる事など想定していない。当然だ。自らに力がある場合は自ずとそうなるから。
私とて例外では無かった。
そう。
あの時までは―――。
魔界は、様々な世界に繋がっているらしく、時々別世界に呼び出されたり、また旅行気分で自分から門を開いたりする魔物もいる。
自称友人の乳魔(やたら私に胸を見せ付けながら話す嫌味な奴)も、五・六度ほど呼び出されている。その度に私が聞かないのに、行った世界の男の味を聞かせてくるのだが、はっきり言って、興味などまるで無い。
そう言えばそいつにも近頃、ここ数年くらい全く会ってない。個人的にはせいせいするものの、少し奇妙な感じもする。
通常、魔界の者が別世界に行く時は、三・四ヶ月程の周期を空けて魔界に戻ってこなければ、その魔力が尽き、魔物としての能力を失ってしまう。故に魔物は召喚期限を短期に限定し、期限が来たら直ぐ様魔界へと帰るものなのに。
………まぁ、あいつの事など知った事はない。次の餌を探すか、と私は翼をはためかせた。
だが。
ぐいぁっ
「なぁぁっ!」
いきなり右足を強く引かれた。
進行方向とは真逆ベクトルに働く力に、私は体が引き裂かれそうな痛みを覚え、思わず声を出す。一度として『狩り』の時には出さなかった声を、だ。
何とか魔力を使って、いきなり地に墜ちることを無くした私が、
「………何よっ」
と、後ろを振り返ると。
『何か』が私の足に絡み付いていた。
それは『何か』としか表しようのない代物だった。
白い、中空の楕円の柱と、
白い、先が鈎条になった短い直方体が、
組み合わさり、混ざり合い、重なり合って一つの蛇のような、触手のような生物となって、私の右足に絡み付いていたのだ。
「なっ、何なのよこれはっ!ええい、ミーティアフォーラ!」
私は『何か』を切り放し、破壊するために魔法を使った。魔界にある物理的なもので、これを食らって壊れないものは、今のところない。
しかし、私が放った魔法は、『何か』の体を透り抜け、地面に激突。巨大なクレーターが一つできてしまった。
「嘘ぉっ!」
掴む行為は、物理的媒体を通して実現されるものだ。そして、ミーティアフォーラは、物理的媒体に対してのみ絶大な破壊をもたらす魔法。
しかし透り抜けた。つまり、足を掴む『何か』は、物理的媒体ではない――にも関わらず私の物理的媒体である足を掴んでいる。――元来有り得ないことだった。
「ならばっ!ミンディラン!」
精神的媒体を崩壊させる魔法を私は放った。物理的でなければ精神的、それは魔界では常識の二元論だった――少なくとも今までは。
だが、私の爪から放った光線は、またも『何か』を透過した。
「な、何でよぉっ!!」
パニックになる寸前であった私の頭は、突如ある例外を思い出した。
ゴースト系魔物は、自らの身体を物理的媒体にも、精神的媒体にも状態変化が出来る。もしもこの『何か』がその手の魔物であるのなら―――。
「ディトス!」
私は、現存する魔力で――逃げるために使用する魔力を差し引いた分で――最大の威力を誇り、しかも肉体、精神共に打撃を与える魔法を唱えた。
ドゴォン!
効果的面。私の右足に食い付いた部分の、少し下の辺りが完全に消滅。私の足に絡み付いた部分も会わせて消滅した。
私はアクセル(加速魔法)を唱え、翼をフル回転させて逃げ出した。
「………はっ……はっ……」
普段使わない魔法の連続使用で、私の魔力は底を尽きそうだった。今、あの魔物が出現したら、私は抵抗も出来ないだろう。
逃げ切ったことを確認した私は、近くの岩陰に身を預けた。辺りを確認したところ、ここは特に魔物が現れにくい、魔界の安全地帯の一つのようだ。
というのも、人間が全く通ることがないからで。
「当座の体力補給が無理なの………?」
下手に別の魔物に出くわすよりはマシとはいえ、やはり体力回復が出来ないのは辛い。とはいえ、人間が来ない以上は仕方がないと言うもの。
「………辺りに存在気配は…………全く無いね」
気配を探った私は、自らの存在気配を消す指輪(自称母の夢魔からガメた)の魔力を発現させ、軽い眠りについた………。
起きたとき、赤色の月は多少暮れかかっていた。朝は近い。
「早く帰らなきゃまずいね」
私は翼を広げようとして――凍りついた。
地面が、例の『何か』で覆われようとしていたのだ。
「い、嫌ァァァァァァァァッ!」
私は慌てて翼をはためかせ、明け方の空へと舞い上がった。分けが分からなかった。あれは生物なのか。いや、あんな魔物がいるならば風の噂なり淫魔電報で何やら語られている筈だ。だが私は、そのような噂など一度として聞いたことがないし、淫魔電報はこの数十年間一度も届いたことはない。と言うことは、情報を知るものが全て消えている、つまり―――捕まったら最期!
「アアアアアアアアッ!」
翼をフル回転させ、必死で住みかへと戻ろうとする私。魔力は未だ回復しておらず、アクセルすら使えない状況の中、残り少ない体力を振り絞っての、本能的行動だった。
だが―――
「はぐぁっ!……………」
後頭部と首筋、そこに強い衝撃が走った。それが『何か』による一撃であること、さらに、飛び立つ時点で私の足に既に『何か』が絡み付いていたと言う事実に気が付く前に、私の意識は闇に堕ちていった………。
気絶したサキュバスの体を、『何か』は巻き付き、絡み付きながら体の中に取り込んでいく。そして、サキュバスの体が完全に包み込まれると、先端から徐々にその姿は欠けていき…………。
全てが消え去ったとき、其処にあるのは唯の空間のみ。
…………。
ここはどこだろう。
闇ではない。
目の前にあるのは、ただの白い、形のない世界。
手を伸ばそうとして――――私は腕がないことに気付く。
横を見ようとして―――私の首が動かないことに気付く。
本来ならば取り乱してもいい筈だが―――寧ろ落ち着いている私に気付く。
まるで、感情をどこかに置いてきてしまったかのように。
更に辺りの風景をじっと見つめてみると、何も無い空間に見えたところが、実は無職の楕円と鈎付き直方体が密集している事が分かった。
つまり、ここは怪物の――『何か』の――体の中。
手足がないのは、『何か』に溶かされてしまったのだろう。…………直に私の意識も溶かされていくんだろうか――ぼんやりとそう考えていると、
ぐん。
気付く間もなく、
ぐいん。
私の意識はどこかへと引っ張られ――。
私の視界に一瞬映ったのは、白い空間がある地点を境に、闇色の空間へと変化している情景だった。しかし、それについてどうこう考える時間は私に与えられなかった。
一刻も満たないうちに、私の意識はまた虚空へと逝かされてしまった――。
果てしない空腹を感じ、私は意識を取り戻した。
人間の生理現象では腹部の筋肉――だったかしら?――が収縮する事で音が鳴るものだが、淫魔の場合はそうではない。
………体から催淫性のある体臭が発散されるのだ。人が全くいない場所を除いては、大体この香りに惹かれて人間――食事――がフラフラと寄って来るのだ。魔物の進化史など全く知った事ではないが、生物と言うのはある点で非常に合理的なのだな、と改めて感じる。
グルコースの二倍の甘さを持つフルクトースを煮詰め、媚薬をブレンドしたような芳香が、私の鼻孔を――。
そこまで考えて、私は目の前に鼻があることに気付く。鼻だけではない。助けを求めるように伸ばされた両腕もある。と言うことは―――。
私は首を横にし、目線を下げた。視線の先に、鏡の前で何度も見慣れた腰、尻尾、脚の存在。
私は腕と脚に力を入れ、体を起こした。そして周りを確認する。
はたして男がいた。
男、ではない。男達、だ。
既に私の体臭の影響で瞳は焦点を失い、口の端からはよだれをたらしている。頼りない足取りでふらり、ふらりと私に近付く様子は、まるで生人に群がるゾンビ。私はさしずめ、それに囲まれる屍霊術士と言うところか。
御丁寧なことに、既に下着を全て脱ぎ捨てて、鈴口から先走り液を垂らしているのも、何人か混ざっている。もはや本能でしか動いていまい。
カラダガ、ウズク。
既に私の周りは、私の体臭に、男達の汗とほんの少しの精液の香りが混じり合った空間へと変化していた。精通がまだの子供でさえ、この空間に一分も居れば自慰を始め、二分後には射精しているだろう。
カラダガ、ウズク。
私は、既に下半身を晒け出した男の一人に狙いをつけると、勢い良くとびかかった。
大内刈りの要領で相手を押し倒すと、既にしっぽり濡れている私の膣に、相手の逸物を押し込んだ。
「ああぁぁぁぁぁっ!」
快感のあまり叫び声をあげる男。………気のせいかいつもの男より叫び声が少ない。それに、私自身もどこか………それよりも今は食事だ。
騎乗位の体勢となった私は、肉襞で相手のぺ〇スを舐め、愛液を塗り付けるように腰を上下に動かした。
「あっっ!ああぁっっ!ああっっ!ああぁっ!」
一回腰を動かす度に、獲物の声は段々と細くなっていく。聞き慣れた声の筈だが、やはりどこかおかしい。普段であればもっと、それこそ腹の底から絞り出すような声を上げるのだが―――。
そうこうしている内にも、他の男は徐々に私に群がってきている。
「へぇ………我慢できそうにないのぉ…………」
私は意地悪な笑みを浮かべながら、下の男を押さえていた腕を外し、目の高さまで手を上げた。これで手が他に何本もあれば千手観音だが、生憎と私はそのような身体属性は持ち併せていない。そもそも私は仏ではなく淫魔。人によっては天使に見えるかもしれないが、連れていく先は浄土ではない。快楽の底無し沼だ。もがけばもがくほど嵌っていくような――。
「ふふふ………さぁ。私の元にいらっしゃいな。たぁっぷり、イカせてあげるわぁ」
誘うように(実際誘っているのだが)ねっとりしたような響きを持つ声を出す私。知能が本能に勝った生物と化した彼等が、堪えられる筈もない。
ズボンを引き裂き、叫び声ともとれる奇声をあげながら、男達は私に向かってきた。
それはまるで獣のように。
人間と獣の違いは、理性を有するか否か、そう主張する学者がいたが、私達にとってはどうでも良いことだ。
彼等は獣であり、餌でしかないから。
一人の男の逸物を口にくわえ、舌を巻き付けながら亀頭、カリを舐めほぐしていき、顔を前後させる。
二人の男のニューナンプ(マグナムには程遠い)を片手で陰嚢ごと握り、揉みながら扱いていく。
一人の男の小さな怪物(英語に直して読み直し)を、むっちりとして柔らかな尻肉で受け入れる。
そして―――動く!
「「「「「ああああああああアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
どぴゅりばっぶしゃぁぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁぁっ!
男達の断末魔の叫びと共に、私の視界は白く染まった。男達の放ったザーメンの一部が、スコールよろしく降り注いできたからだ。残りの大多数は、私の体の中に激流のごとく流れ込んでいく。腟から、口から、肌から、お尻から、全身から―――。
「あはぁ…………ん♪」
体が満ちていく感覚に、思わず溜め息を漏らす私。
男は陰嚢を握れば大概力が抜けるもの。淫魔の媚香をあれだけ吸い込めば、何もしなくても蛇口は精液を吐き出そうとするが、抵抗力を失わせればその勢いは増す。
留める力を失った男達による精液の噴水、その中央に居るのは女神ではなく淫魔。しかも母性愛溢れるものではなく、女の欲望に染まった淫らな笑み。絵画のパロによく在りそうな光景だ。
既に私の腟に挿入した男は死に体、他の男も最早自らの意思では動いていない。
私は挿入を外し、陰唇で死にかけの男の胴体にお別れのキスを交すと、尻を犯す男に向かって、大きく尻を突き出した。
「亜ぁぁぁ亜ぁぁっぁっぁ嗚呼ぁっ!」
言語にならないような叫びをあげながら、男は荒々しく、私の尻にピストン運動を行った。それこそ、人間の腟にやろうものなら子宮が壊れてしまいそうな速度と粗雑さで。
ぐちゅっ!ぬちゅっ!ぐちゅっ!
「あっ!あはぁっ!あっ!あんっ!」
何故かあえぎ声を出しながら、私は尻尾を男の胴体に巻き付け、男の体を強引に前後させながら、羽を広々と伸ばし、巨大化させた。その内側は無数の肉襞へと変化し、催淫効果のある体液でてらてらと光っている。
そして、尻尾の動きをさらに激しく、お尻も逸物を揉み込むように動かし―――
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ…………………」
―――始めた瞬間に、男はどくどくと私の中にスペルマを放ち、そのまま気絶した。――淫魔の吸精で死なない辺りタフなのだが、この程度で気絶する辺りヘタレ。一体どうしたものか。
他の三人の男は、巨大化した羽根の内側をただ虚に見つめて――微笑んでいる。内側にびっしりついた襞は幽かに動き、うねり、くねる事で男達の精神に語りかける。ほら、こちらにいらっしゃい。くるまりたいでしょう?ここは天国よ。もう二度と正気に戻りたくなくなるほど気持良くなれるのよ。さぁ、こちらにいらっしゃい――。
既に二・三度は完全に精液を出し切った筈の男達の分身が、また形成され始めた。
「………あらぁ、まだ出し足りないのぉ?」
この時、私は既に快感のあまり上気していたようだ、と思い出す度に思う。そうでなければ、一対一でじっくり絞り取るなどという行為を、しようとなど思わないからだ。絶対、二人のペニスを羽根でくるんでコキながら、もう一人のそれを腟に入れて、舌を互いに絡ませている筈。
両手と口を解放した私は、三人の男を横一列に並ばせ、「ど・れ・に・し・よ・う・か・な〜」などと口にしながら尻尾で指していた。
そうして選んだ一人の男に、私は文字通り飛びかかって、羽根を体に巻き付け固定した。
「あははぁぁ………」
男の顔が快楽に歪む。ぬらぬらとした液で濡れている襞に一面覆われた私の羽根は、触れているだけでも相手にじんわりとした快感を与えるのだ。半分体に入り込んだ体液を、襞の微振動によって刺激し、結果として性感帯を徐々に激しく刺激することになり――。
「…………ぁはああああああああああああああっ!」
どびゅるぅぅぅ〜〜〜っ!
腟に誘い込む前に射精してしまい、男は果てた。空を目指していた男のニューナンプ(トカレフには程遠い)の標準は、私の顔――。
びちゃあっ♪
――に当たる前に双丘に阻まれた。適度な弾力と柔らかさを兼ね備えた上、あの乳魔に散々しつこく揉まれて、淫魔平均より2サイズ以上上のボリュームを誇るようになった両胸に。
「………あ〜ぁ、もったいない」
谷間から下腹部にかけて流れるスペルマを恨めしそうに眺めながら、私は両手で胸を持ち上げて、弾ませた。
たゆん。たゆん。
男のうち一人の目の焦点が、明らかに怪しい光を帯び始める。
たゆゆん。ゆやよん。
私はそれを確認すると、乳首の先端が円を描くように、乳を揉み上げた。
たゆよゆよん、ゆやゆよゆよん。
男はふらり、ふらりと私に近付いていき、半開きの口のまま、顔を私の右胸に押し付けた。
びゅるっ!
「あぁんっ♪」
狭い乳首から大量の母乳(ただし催淫効果有り)を噴射する快感から、私は意図せずも声を上げた。男は噴射された母乳を一心不乱に舐め、飲み込んでいく。
海綿体がはち切れそうになっているのが、太股に当たるそれの感触で分かる。
「うっふふ〜♪」
淫気酔いになった私は、うきうきとした心情に任せて、
「えいっ♪」
貝の中に一気に招き入れた。
「あああああああぁぁぁぃぃぃぃぃぃぃぃ…………」
びゅるびっしゃぁぁぁぁ………。
男は抵抗するわけでもなく一気に全ての精を吐き出し、意識を天に委ねた。
「つ〜ま〜ら〜な〜い〜♪」
あっさり気絶した男の耳に母乳を入れながら、私は体にしなをつくる―――が。
びゅるるっ!びゅぅっ!
最後の男は既に壊れており、仰向けに寝た状態で、竹のようにそそり立つ逸物から、盛大に精を噴射していた。本体に比べて遥かに生きのいいそれは、まるで宿主の栄養を吸って成長する茸のように見えた。
欲求不満だった私は、
「………茸狩り〜♪」
最早肉体反応しか示さない男に強制フェラを実行し、残りの精を全て吸い取ることにした………。
しかし………淫魔である私が、この程度の児戯で逝きそうになるなんて………そう言えば、食事中からずっと感じていた体の妙な違和感は――。
辺りに広がる気絶した男達を一瞥して、私はすっ、と陰唇を手でなぞってみた。
「あんっ!」
背筋を走るゾクゾクする快感、それに耐えきれず思わずあげてしまったあえぎ声―――やはり!
体の感度が上がっている!?どうして!?
そのまま私の指は体の制御から外れて、秘部の中へと入り始めた。そして………。
くちゅ。
「あぁあああはあぁんっ!」
まるで十万ボルトで、電流が体内を駆け巡ったような快感が私の脳に焼き付いた。私の指は、人間に――それも女に対して行う動きを私の中でトレースしていたのだ。
一本。
「あひぃっ!」
内壁の一部を爪でなぞる。愛液が、とろとろと私の中から溢れ出て、辺りの黒く固い地面に水溜まりを作っていく。
二本。
「ひゃあぅっ!」
内壁をなぞる爪の数が増える。必然的に感じる快感も二倍に増加する。ぷつっ、ぷつっ、と撹拌された愛液に出来た泡が、割れる音が響き―――。
こりっ!
「び、びゃあああああああああああああっ!」
とうとう二本の指が私のクリトリスに到達し、代わる代わる弾き始めた。こりっ、こりっと弾かれる度にびくん、びくんと私の体は跳ね上がる。
それは、本来淫魔ならば有り得ないことだった。淫魔は相手に快感を与えるようには出来ているが、自らに対する快感には、ある程度のリミッターが設けられている。そのリミッターは、人間がどれだけテクニシャンであっても――魔法などの補助効果がない限りは――越えられないものである。
ところが、今の私の叫びは、明らかにリミッターを越えた快感を得た時の叫びである。淫魔の手とはいえ、高々陰核を擦っただけで出るようなそれではない。
私の体は、貪欲に快感をむさぼろうとするかのように――いや、実際むさぼろうとしている――豆をひたすらもて遊ぶ。いつの間にか指は三本になり、四本になり、ついには五本とも秘部に挿入していた。しかもそれだけではない。
「はっ!あはぁっ!はぁっ!あぁはっ!」
拳を抜き差ししてのフィストファックを、私の手は本能的に行っていた。下手をしたら子宮すら壊れてしまうのではないかと言うくらいの勢いで出し入れされた手には、興奮のあまり溢れだしている愛液がねっとりと覆い被さり、潤滑油の役割を果たしていた。
一突きする度に、ヒューズが焼ききれるのではないかと言うほどの快感が私の中を駆け巡る。普通の人間なら、既に十回は自我崩壊しているところだ。それでも保っている自我――淫魔の体質上必然ではある――だが、その崩壊の時がついに――
コツンッッッ………
「ビャァイアアィアアアィアアィァァァァァッ!」
体をコンセントに繋がれたような、爆発してしまうかもしれないほどの快感が突然私を襲った。強烈なフィストファックによって陰核の包皮が剥かれ、そこに再度私の手が触れ、愛液に濡れた指でそれが弾かれたのだ。
叫びながらも、私の手は、体は、快感を得ようと動き続ける。何度も何度も、裸の陰核を触れ、摘み、こすり――。
終りを迎えたのは、指で折れる回数目の一撃。蛇口を捻るように、陰核を摘み、捻ったとき。
既に快感に耐えられそうにない状況下での、駄目押し。
――体すらままに出来ない自我に、意味などあるの――
「キャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ぷしゃああああぁぁぁぁぁ………
私は、自らのテクで自ら絶頂するという、淫魔としては絶対有り得ない経験をしてしまった……。
体の中から勢い良く出される体液の跳ねる音を聞きながら、私は自分の中で何かがぱきん、と壊れるのを、確かに感じたのだった………。
絶頂の後遺症から(肉体的に)立ち直った私が、大量の愛液と尿、そして母乳が混ざり合った水溜まりの中から辺りを見回すと、そこには瞳の焦点が消失した、十歳にも満たなそうな男の子が一人、私の方を見つめて立っていた。背中にはリュックのようなものを背負っている。
私はぼんやりと空を見上げた。満月が地上を見下ろしている。明らかに子供が出歩く時間ではない。
私は本能的に子どもの背後に近付いた。リュックを外し、上着の前ボタンを外していき、脱がす。そしてシャツも脱がし終えた時、
「くしゅんっ!」
人肌には寒い風が吹き、一時的に私の淫気が吹き飛んだ。それだけならまだしも、私の抱いている男の子がくしゃみをしてしまい、その衝撃で正気を取り戻してしまった。
「………あれ、ぼくは………ふぐっ!」
そうだ。子供を食べるときは、完全に心を私で満たしておかなければいけないんだった。
私は男の子の体を私の方へ向けると、その口を私の乳首に押し付け、もう片方の手で後頭部を優しくぽんぽん、と叩いた。
押し付けた乳から、ぴゅ、と母乳が噴射される。とっさの事で反応できなかった子供は、舌を母乳で濡らし、そのまま飲み込んでしまう。
優しく甘い母乳が味覚を、サキュバス特有の媚香、母乳の甘い香りが嗅覚を満たし、生肌の暖かさ、乳房の柔らかさが触覚を支配する。それに、撫でるように叩かれる後頭部。この瞬間、男の子の意識は幼児より前、胎児に逆行していた。
「………」
唇を乳から離し、物欲しげな顔で私を見つめる子供。私は優しく微笑むと、子供の唇に自分のそれをくっつけ、舌を割り入れた。
ほんのり私の乳液が残る口の中を、私の舌は蹂躙していく。子供の幼い小さな舌に、私の舌を絡め、舐めほぐす。
「ふぁぁ………」
男の子の顔が少しずつ赤く染まっていく。気付けば男の子は私に抱きついて、唇をむさぼろうとしていた。私もそれに応える。
唇を離すと、二人の唾液が、つ………と糸を引いて、二人の間を落ちていった。少年の中から、自分の意思は完全に抜け落ちた。それが確認できた私は、ズボンを脱がし、履いていたものも全部脱がして、産まれたままの姿にした。
そして―――
「はぁぁぁ…………」
背後から抱きつき、ねっとりとした液体を含んだ羽根を、産着のように巻き付けた。耳はおっぱいで柔らかく塞いでいる。羽根にある襞の柔らかさともあいまって、少年は優しく母親に抱き締められているような感覚に陥っていた。
そのまま私は尻尾を伸ばし、まだ包まれたままのソーセージ、小さなおいなりさんにゆっくりと巻き付けた。
くにゅ………くにゅ………
「あうぅぅぅ………」
陰嚢を揉まれ、ペニスを扱かれる少年の顔は、未知への恐怖と不快、そして――幽かな快感と期待が入り混じった表情をしていた。
私は、慎重に尻尾を動かしながら、男の子の包皮を、少しずつ剥がしていった。
カリと恥垢が見えたところで私は尻尾を伸ばし、少年の目にその先端を見せ付けた。
鏃型になった尻尾の先端には、幽かに穴が開いている。私はそれを、目の前で拡げて見せた。
ぬちゃあ、と粘つくような音を立てて、穴は一回り大きくなる。丁度、少年の逸物がすっぽり入りそうな大きさへと。
少年はその光景に、「うわぁ………」とただ声を出すだけだった。もしかしたら少し壊れてしまっているのかもしれない。その方が寧ろ、丁度いい。
私はその穴を少し広げ、少年の肉房をすっぽり包み込むと、
穴を一気に閉めた。
「あぁぁぁぁぁぁあっ!ぁぁああぁあぁぁぁあぁあああああ!」
少年は目を見開いて叫んだ。穴の中は一面が桃色の肉襞で覆われており、それが一斉にやわやわと動き、くいくいと締め付け、こちょこちょと擽るのだ。尻尾そのものもペニスをぐねぐねと揉み、猛烈な勢いで吸い上げるので、耐性の無いものは一気に吸いとられる。
私の腟は、大人の男性のそれには合うように出来ているが、当然それは子供のそれには合わない。だが、この尻尾は大人用にも子供用にも調整が可能なので、誰にでもサキュバスの腟に挿れられる感覚を味わえるのだ。
大人でさえ耐えきれないものを、子供が一瞬でも耐えられる筈がない。
「あがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ああ゛ああぁ゛ぁ゛っ!」
精通の済んでいない子供に対して、子供の身体と本能は強引に射精を開始させた。結果――快感を通り越して激痛が少年に走ることになった。尿道から大量の――それこそ一般的な射精量の数倍の――精が鈴口を押し開けて発射される瞬間、少年が感じたのは――急所が裂けるような痛み。
涙を体の命じるままに流しながら、少年は射精し続けた。その全てが、尻尾の中を通って、私の中に注ぎ込まれていく。
「あ゛、ああ゛、ああ、あはぁぁぁぁぁ………」
少年が痛みに身をよじらせると、私の羽根の襞が優しく彼の肌を撫でた。ぬらぬらとした液体が体に塗られ、心地よいような、気持悪いような、微妙な感覚が彼の肌に擦り込まれていった。それは徐々に、彼に快感を与えていく。
痛みと、快感の狭間で、少年の心は少しずつ、削りとられていった。私に魅了されている段階でかなり弱っているであろう心は、精を吐き出す度に、産着のように巻き付いた羽根の襞に肌が触れる度、少年の心は黒い液体となって、私の中に放出されていった………。
私は、少年の胸の辺りにある光が、徐々に下に降り始めているのを感じた――もう少しだ。
羽根を動かし、襞を全身に這わせる。尻尾の動きを激しくする。吸い上げる力を強める。顔を挟んでいる両乳を、押し付けるように揉む――。
その度に少年はあえぎ、身をよじらせ、頬を紅潮させ、瞳には涙を滲ませ――喜んでいた。
そして、その瞬間が訪れる。
「あはあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………」
びゅううぅ〜〜〜〜っ!どくっ、どくっ、どくっ…………。
光が、私に解き放たれた。
絶叫にも似た甘い吐息と一緒に、少年は己の全てを私に委ねたのだ。
そう、魂さえも――。
「………可愛い子ねぇ………」
精を出し尽し、魂も私に注ぎ込んで呆然としている少年に、私は跨った。
彼の左胸に手を置く。………音はない。けれど、まだ生きている。幽かに意識がある。魔族の体液を体内に摂取した事による効果である。それが続くうちに―――。
そのまま少年のペニスを私の腟に挿入する一方、少年の口には乳を、少年の肛門には尻尾を、それぞれ挿入した。
「んっ…………!」
尻穴に何かを突っ込まれると言う未知の感覚に少年は声を上げるが、構わず挿入する。尻尾がずぶずぶと奥に入っていくにつれ、男の子はもどかしいような、擽ったいような声を上げた。………音は全て私の乳房に吸収されていたけど。
大体大腸の手前辺りまで尻尾が入ったことを感じると、私は――
ぷしゃああああああぁぁぁぁぁ………。
びゅるぅ〜〜〜〜っ!
――胸と尻尾から大量に体液を注ぎ込んだ。同時に、私の魔力も勢い良く注入する。
少年は苦しそうな様子を見せなくなっていた。いや、寧ろ気持良さそうな表情さえしていた。既に肺も私の体液で埋まっていることだろう。もう人間としては生きてはいまい。
暫くしないうちに、少年の体の輪郭が、どこかぼやけ始めた。
「………muatesiinnatesei………」
私の体液で膨れ上がった少年のお腹に、魔法陣を描きながら私が呪文を唱え始めると、少年は幽かなあえぎ声を漏らしながら、私の中に精を漏らし始めた。
――いや、それは精とは少しちがっていた。少年がびくん、びくんと跳ね回る度に、私の腟にある少年の分身の感触が徐々に少なくなっていく。しかも、私の腟から幽かに漏れる液の色はどこか黒かった。
魔法陣を腹部に描き終ると、私は彼の両乳首を摘み上げながら、周りの皮膚を揉み寄せていった。
私の中に黒い液体が入れば入るほどに、私の指は深くまで食い込み、より多くの皮膚が寄せられていった。
揉み寄せて、形を整えて、大きさを合わせて――暫くすると、そこには形の良い乳房が二つ出来ていた。その乳首は、特に何もしていないのにピン、と立っていた。
「……rxel」
私は次の呪文を唱えた。
腹部に描かれた魔法陣が、少年の体にさらに広がっていった。しかも、広がった部位は心なしか線が細く、どこか輪郭が丸くなっていった。
筋肉が落ち、くびれが出来、尻がやや大きくなり、脚の毛が抜け――肌の色がやや抜ける。
腕もどこか丸みを帯びた華奢なものに。
そして顔も、骨格が変化し、肌もきめ細やかに、そして髪の色が桃色に変化し、腰まで一気に伸び――。
――魔法陣がひときわ輝いて消えると、そこにはピンクの髪が綺麗な、一人の小柄な美少女が、すやすやと寝息を立てていた。
私は仕上げにかかった。残りの魔法を手早く唱える。
「我に焦がれ、心を明け渡しし者よ、我の生命を受けし者よ、眷族となりて我に遣えよ、誓いの刻印を、今、汝に刻まん!」
そして、魔力の込めた右手人指し指を、彼女の胸元に差し込んだ。
「……………ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああアアアアアアアアアアアッ!」
人指し指に込められた魔力は、肌に入った瞬間に拡散、収縮し、指の回りに紫色の光が肌に焼き付けられていく。
私が指を勢い良く抜くと、そこには紫色のコウモリの印が刻まれていた。
同時に、彼女の体にも変化が起こる。
尾てい骨周辺が紫色に盛り上がり、中では何かが蠢きながら膨張していく。
サッカーボール大の大きさになったそれは、ばつんっ、とゴムが弾けるような音と共に破裂した。
内包していた粘液が地面に落ちると、そこには彼女の身長ほどの長さを持つ、先端が鏃のようになった紫色の尻尾があった。
背中にも同じようなことが起きていた。肩甲骨の間に出来た膨らみが破裂すると、そこには一対の、コウモリのような皮膜の張った羽根が生えていた。
そして髪の間から突き出る、二本の小振りな角。
彼女が目を開くと、瞳の色は黒から、魔性の紫へと染まっていった。
――つい先程まで人間の少年だった子は、今や完全に、サキュバスの少女へと変わっていた――
私は目覚めたばかりの彼女に告げる。
「一ヶ月に一度くらい、私に逢いに来てね。場所は………どこからでも分かると思うから♪」
呪印の効果なのだろう、その一言で全てを理解した少女は頷いて―――そのまま私を見つめ続けた。
おずおずと少女が口を開く。羽根が心なしか少し縮こまっていた。
「………ボクは………なに?」
どうも何を言えばいいか戸惑っているらしい。何を訊こうとしているのか、私は少し考えて――思い出した。
人間を淫魔に変化させた後、変化対象の淫魔としての存在定着のために、親淫魔は名前を与えなくてはならない。
――名前。
困った。
自分には名前がない。どのように付ければいいのかなど分かる筈もない。
しかしこのままでは、目の前にいる、誕生したばかりの淫魔は不安定な存在として、消えてしまうかもしれない。魔力の安定のためにも、存在は保たせなければ――。
そこまで考えて、私はある言葉が頭の中に残っている事に気付いた。
それは、たまたま出会った上質の精を持つ人間が、最後に吐いた言葉。
「永遠(とわ)の快楽、永遠の命、永遠の楽園――――そんなの、退屈じゃね?」
――そういえば、あの時からだっただろうか。自分の生が退屈かどうか考える様になったのは………。
そして、その頃からか………人間を『遊び相手』ではなく『餌』と呼んで、ただ無機的に襲うようになったのは。
永遠、とわ、トワ、TOWA………。
頭の中でその言葉が巡る。幾度も、何度も、しつこい程に――。
「――トーワ」
「………とーわ?ボク、とーわ?」
気付けば口に出していたらしい。耳聡く聞いた彼女が、私に尋ねてきた。淫魔の本能からなのだろう。瞳を幽かにうるませて、上目使いで。
とっさに質問をされてしまい、うまく反応できなかった私は、少ししどろもどろになりながらも、その名前を認めてしまった。
「え……えぇ……そうよ。貴女はトーワ」
「ボクは、トーワ、ボクは、トーワ………」
少女――トーワはそう何度も自分に言い聞かせた。それは、自分であろうとするための自己確認。
十回くらい言った後に、トーワは私に向き直ると、
「ボクはトーワ!よろしくね!ママ!」
と一声、翼を広げてどこかへと行ってしまった………。
私はその後ろ姿を笑顔で――何故か笑顔で見送りながら―――。
意識を失ってしまったらしい私。木の持つ独特の香りに目を醒ますと、
室内にいた。
それなりに整頓された部屋。半開きになっている横押し式ドアのむこうには、明らかに大家族用ではないテーブル。
今いる部屋の中には本棚がいくつかあった。外からはどのような類の本かを判断できないが、大きさも厚さも多種多用である。その隣にある机の上には、私達の世界ではまず見掛けない箱上の物体。
と――。
その中から、幽かに魔力の断片を感じた。何故感じるのだろう………と、その箱に触れようとした、その時。
こいつに出会った。
この部屋の持ち主で、とろとろと名乗った(明らかに本名ではないだろう)人間は、私にこの世界についての基本的なことを教えた後、PC(と言う箱)に魔力が発生していた理由も、併せて教えてくれた。
このPCというのは、内部にプログラムを打ち込むことで何らかの機能を持つ、いわゆる魔法陣のようなものだという。私が呼び出されたのも、そのプログラムの一つが偶然、私の世界とこの世界を繋ぐものになっていたらしい。
それだけではない。この人間は、魔力が集まりやすいような空間を作り上げていた。世界各地、いや各世界から集められた、私と同じように精を糧とする存在。そのレポートを募集するのみならず、自らもその知識でいくつもの報告を書き上げている。当人曰く、需要はそれなりにある………らしい。
とろとろは、私にそのマスコットガールになって欲しい、と頼んできた。――レポートにマスコットキャラは必要なのか?
まぁ、魔力が供給出来る場所が確保できるのはいいか。それに、ここにいれば、楽しそうなことも起きそうな気もするし。
前のように、ただ無気力に無機的に生きる日々から………少しは遠ざかれるかもしれないし。
「………いいわよ」
こうして、私はここの看板娘となったわけで――。
「ママ〜♪」
あ、トーワが来た。こらこら、とろとろを襲わないで。私が構ってあげるから―――。
fin?
…………で、どうして私はとろとろの家で寝ていたのかしら?
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