幼魔






家に帰ると、美少女が笑顔で出迎えてくれる―――

そんなギャルゲーっぽい出来事、現実からは程遠いものだと思っているし、

ありえないことだからこそ、それは夢の中で美しく輝く……



「お帰りなさい、お兄さん」



そんな風に思っていた時期が、僕にもありました。









「……………はっ!?」



バイトを終えて帰宅、玄関のドアを開けたところで凍り付いていた意識が解凍される。

ぶんぶんと頭を振り、疲れた眼球を揉みほぐす。

今見たものは、世の男子が一度は夢見る理想郷のカケラ。

しかしそれは真夏の夜の夢(昼だけど)、人の夢と書いて儚い。

当方一般人歴19年、謎の生命体との邂逅や青き春の遠い夢はとうの昔に捨てたはず。

よってアレは現実でなく、まごう事無き白昼夢なのだ!

もう一度目を開けてみた。



「お兄さん、何か惚けてますけど、どうかしましたか?」

「夢じゃなかったー!」



僕は吼えた。

近所迷惑だとは考えられなかった。









いざ落ち着いてその珍客を認識してみたら、なんのことは無い、最近近くに引っ越してきた中学生だった。

日本人形のような長く美しい黒髪が特徴的な美少女である。……見た目は。中身は……その、まあ、アレだ。

外を歩いていると、何かとよく遭遇し雑談したりするので、それなりに親しい人物の部類に入るだろう。



「……どうかしたの、優美ちゃん」

「お母さんと喧嘩しまして。家を飛び出してきたところです」

「成程。……で、何で僕の家の中に侵入出来てるのかな? 戸締りはきっちり確認したはずなんだけど」

「いえ、大したことは無く。ヘアピンでちょちょいと」



ピッキング犯だった。



「家出?」

「ですね。なので、少しの間匿ってくださいね?」

「そこですぐ『なので』が来るのもアレだけど。もし駄目だと言ったら?」

「部屋に連れ込まれて淫行を強要されたと言って最寄の交番に駆け込みます」



さらりと脅迫宣言をかます黒髪美少女。

最近の中学生っていう奴は……何と恐ろしい生命体だろうか。

僕の社会的地位を失わない為にも、僕は少女を迎え入れたのだった。













紆余曲折はあったものの、特に問題なく夜を迎えた。

優美ちゃんは意外と料理が上手かったし(初めての女の子の手料理だ)、

来客用の布団を丁度二日前にクリーニングから受け取ってきたところだったりと、

泊まりに来るには図ったようなタイミングだった。

……いや、大学生の一人暮らしのところに中学生が一人で泊まりにくると言う状況にこそ、一番問題があるのだろうけど。

さて。

そんなこんなで11時、就寝の時間だった。

中学生が寝付くには早い気もするが、本人が眠いのなら、まあそれで良いだろう。早寝早起きはいいことだ。

僕もそんな夜更かしをして過ごすタイプでもないし。



「では、おやすみなさい、お兄さん」

「ああ、おやすみ」



優美ちゃんを二階の客間に置いて、僕は一階の和室で眠りについた。















ぎしぎしと音を立てる廊下の音で、僕は目を覚ました。

時計を見ると、12時半。まだ真夜中だ。



「お兄さん、まだ起きてます?」



襖越しに、優美ちゃんの声。こんな時間に男の部屋を訪れるのはどうかと思うが、

別に僕はロリコンではないし、手を出したりするつもりは無いので、まあ、問題は無い。



「……何かな?」

「相談事があるのですけど。構いません?」

「まあ……あまり力になれるような気はしないけど。言いたいならちゃんと聞くよ」



襖を開けて、いそいそと部屋に入ってくる優美ちゃん。合わせて起き上がる僕。

パジャマ姿で正座になって、至って淡々と、平生通りの様子で切り出す。



「えっとですね、お兄さん。私―――」



「好きな人が、出来ました」







沈黙。

ああ、何だ―――思春期の女の子らしい、可愛らしい悩み事じゃあないか。

どんな奇天烈発言が飛び出して来るかと身構えちゃったよ。

普段の言動から『不思議ちゃん』に分類しちゃってたけど、案外普通っぽいところもあるんだなあ。



「出来てしまったんです。初恋です。初恋なんです。

 どうしましょう、私は一体どうすればいいんでしょう?」

「えと……どんな人? クラスの男子?」

「いえ。うだつの上がらない若造で、人妻とょぅι”ょという相反する存在を同時に愛し、

女遊びも夜遊びもしない代わりに学校と自宅周辺以外に生活圏を広めようとしない甲斐性無しです」

「甲斐性なしだね」

「まったくです」

「そっか、アドバイス、かあ……」



ううむ、言葉が見つからない。

何せ恋愛相談というものを受けるのは初めてだ。

僕自身、高校の時に一人付き合っていた彼女はいたけど、半年ほどで関係は自然消滅してしまったものだ。

正直言って、優美ちゃんは相談するべき相手を間違っていると思う。

とはいえ、相談されてしまった以上、放っては置けないのが人情。



「……その人にさ、正面からぶつかればいいと思うよ。

 当たって砕けろだなんて、よく言われるような話だけど、やっぱりそれが一番良いんだと思う」



「そうですか、そうですよね。思いの丈をぶつければいいんですよね……。

 ……なんだか、勇気が湧いてきた気がします?」



「疑問符は必要なの?」



「ええ、ええ、わかりました。わかりましたとも。

 ありがとうございます、お兄さん。こんな相談に付き合ってもらってしまって―――」



深々と頭を下げる優美ちゃん。

いや、そこまでお礼されるようなことは言ってないと思うけど。一般論だし。

ちょっとした気恥ずかしさから、頬を掻いてしまう。

優美ちゃん、言動は所々怪しいけれど、基本的に美少女なのだ。

その中身を知っていても、笑顔を向けられればついつい顔がにやけてしまうのも、まあ無理はあるまい。

頭を上げた優美ちゃんは、微笑みを浮かべて、



「それでは、お兄さん―――」



「―――私の『愛』、しっかり受け止めてくださいね?」



そう言って、僕の唇に自分の唇を重ね合わせてきた。





「―――、………ッ!?」



柔らかく瑞々しい感触。

身を乗り出して、ただその唇を押し付けるだけのキス。

フレンチキス、というのか。

だがしかし。それだけのキスで、僕は完全に硬直してしまっていた。



「え、う……ゆ、優美ちゃん?」

「ふふ。うふふ。

 キスしました。お兄さんにキスしてしまいました。うふふふふ」



ほどなくして、押し付けられていた唇が引き離される。

僕の唇には、ぴりぴりとした刺激が残る。女の子の唇の柔らかさと瑞々しさの感触と共に。

未だショックからいまいち立ち直れていない僕と対照的に、頬を赤らめて笑う優美ちゃん。

……いや怪しい、怪しいよその笑い方。ほんとに変態みたいだよ。

そんな僕の思いもどこ吹く風、興奮した様子で続ける少女。



「お兄さん、言いましたよね? 真摯に想いを伝えれば、きっと悪いようにはならないって。だから―――」

「い、言ったけど、でもそれは―――」



あくまで他人事として言ったのだ。

それが自分に降りかかってくるなんて想像もしないで。



「まさか。ま・さ・か。

 とっても真剣な美少女の可憐な恋の悩み事を、テキトーに誤魔化して答えたわけじゃありませんよねぇ?」



自分で美少女とか可憐とか言うなよ。

普段ならそんな風にツッコんだろうけれど。

あいにく今は、それどころじゃない。

下手すると、犯罪者BADエンド僕小さな子に興味があったんですルートへ一直線か!?

そんな危機感が僕を動かした。



「いいいいやいやいやいやいや優美ちゃん! まだ君は中学生だし僕は大学生で収入なんてないし

 それにほら社会的にも倫理的にもなんていうか色々とやばいから!

 これが2次元のシチュエーションなら何でも美味しく頂けるけどほらほっぺたつねると地味に痛いし

 そもそもこういうことはきちんとオトナになった人同士で行うべきことであって

 ここはやはりメールのやり取りから始めようかいやそんな問題じゃないってんむっ!?」

「五月蠅いです」



パニック状態の僕の口を塞ぐように、再び唇が押し付けられる。

しかし前のそれとは明らかに異質。

一瞬で鮮やかに僕の声を奪った優美ちゃんが、舌を差し入れてきたのだ。

僕の頭に両腕を回して固定して、上唇、下唇と舐め回す。

震えるような快感が奔り、思わず口の力が緩む。

そこへ―――その間隙を衝いて、一気に軟らかいモノが滑り込んできた。





ちゅっ……ちゅうっ……ぢゅううううううっ…………





舐め溶かすような、甘ったるいキス。

歯茎を滑らかに滑って行く優美ちゃんの舌。

フェラのように吸い上げられながら、根元から先端まで蹂躙されていく僕の舌。

口腔粘膜に自分の唾液を塗りこむように、僕の粘膜をこそげ落とすように。

執拗に執拗に唾液を送り込みながら、僕を畳に押し倒して、縦横無尽に優美ちゃんは暴れまわる。



「んっ……んん……―――ふう。

 ふふっ。どうかしました? お兄さん。女の子みたいに放心しちゃってますよ? かーわいい」



からかうように、下になる僕を見下ろし優美ちゃんは笑う。

年上の男を自分の性技―――それもキスだけで屈服させた優越。

一切の抵抗を許さない嵐の快楽。

熟練の娼婦のようなテクニック。

それから解放された今でも、その残滓が口中に鮮明に残っている。



「ふふ。全く抵抗できませんでしたね、お兄さん。

 あ、もしかしてあえて抵抗しなかったなんてこともありますか? やーらしいですねー。

 そんなロリペドマゾな人間失格お兄さんには、もっと強く強引にしてあげたほうが喜んでもらえますか?」



「ゆみちゃ……どこで、こんなテクを……?」



「あ、やっぱり知りたいですか? まあ、おかしいですよね。

 中学生くらいにしか見えないのに、こんなに上手いなんてことは普通無いですよね。

 ……じゃ、正解を言いますけど。あまり、驚かないでくださいね?」



微笑を浮かべる優美ちゃん。けれどそれは、どこか嫣然とした淫靡な笑み。

パジャマのボタンが外されていく。露わになっていく幼さの残る肢体。

小ぶりな胸と白磁の肌に目が奪われる。

続けてズボンに手をかけずり下ろす。

純白の下着の股に走る一本のライン。

下着一枚のみを身につけて、横たわる僕に覆いかぶさる。

そして。

優美ちゃんの雰囲気―――いや、気配が変質した。

よくわからないが、どことなく胸をかき乱すような―――。

優美ちゃんが僕の顔に顔を近づける。

視界が優美ちゃんで埋まる。ふと漂う甘い香り。優美ちゃんの匂い。

酩酊する僕に囁くように、こう言った。



「実は、私。サキュバス―――淫魔と呼ばれる悪魔なんですよ」



揺れる世界の中。少女の背後に揺れる蝙蝠の羽根としなやかな尻尾を見た。







「淫、魔」

「はい。今じゃ色々と取り上げられて有名になってますから、特に説明要りませんよね?」



ああ、知っているとも、知っているともさ。



男を食らう魔性。

精を啜る悪魔。

最近の『業界』の一角を担う、扱いやすいお手軽エロキャラの代表格。

マイPCにもサキュバス物のエロゲーはきっちりインストールされてるさ。

本棚にだってサキュバスを取り扱ったエロ小説だってあるさ。

どんな変態プレイだって魔法だって魔改造だって、『だってサキュバスだもの』の一言で片付けられてしまう―――。

……不条理だなあ。



「……お兄さん。何か思考が脱線してますね?」



ぎゅむぅっ!



「はぉう!」



既に八割方勃起してしまっている肉棒を思い切り握り締められる。

言いようの無い衝撃と共に、今自分の運命が、文字通り少女の手に(色んな意味で)委ねられていることを悟る。



「あ。何か小さくなりましたね。美少女サキュバスに迫られてしっかり立てられないなんて、

 男としていかがかと思いますよ。―――まさか、『いい男』にしか反応しないわけではないでしょうに」



やかましい。こっちだって色々と―――色々と、事情があるんだよ! 男特有の! 抜き差しならない事情が!



「まあ。それはともかくとして―――お兄さん」



こほん、と小さく咳払い。





「一億と二千光年前から大好きです」

「一目惚れにも程がある!」

「口淫、夜の如しと言いますし」

「字が違えよ!」

「失礼。淫行ですね」

「悪化したー!」

「まあ、どっちも早いということで」

「最低な振りだよ! あと別に早くはないっての!」



普通、だと、思う……どうだろ?



「しかも、お兄さん。貴方は私の大切なものを盗んでいきました」

「………」

「―――私の靴下です」

「盗ってない! そしてそんな屈折した嗜好でも無い! そこは心だろ!?」

「まあ、それもありますが」

「投げやりだー!」



何で惚れた男を自分の着衣を攫っていく変態に仕向けているんだ、この腹黒淫魔!



「腹黒とは失礼ですね。これも単なる恋の駆け引きじゃないですか」

「心を読まれた!? ていうか、行間紙背を読み過ぎだ!」

「強姦支配を夜見過ぎだ? いえ、別に私はムリヤリするのは好みではありませんけど」

「言ってねえ! サトリじゃないんだから、人の心を読まない!」

「わかりました。悟りを分解すると『小五』と『ロリ』と言うことで、

 設定上中2の私なんて恋愛対象外だと言うのですね?」

「僕は一体どんだけハイレベルな悪球打ちとして評価されてるんだ?」



いや、設定って何さ。想像するに、外見年齢てことだろうか。



「まあ、サキュバスというのは、特に最近、有職故実なところがありまして」

「随分と雅な話だね」

「デビルズスフィア的存在と言っても過言ではありません。煽り過ぎです」

「ジャイロボール!? 何その無理な『魔球』の英語訳!」

「でも、今まで黙っていてごめんなさい……本当に申し分ありません」

「僕は今までテストされていたというのか!?」

「抱腹絶倒して謝罪します」

「平身低頭だよ! もしや、謝る気はさらさら無いな?」

「誤る気はあります」

「確信犯じゃん!」

「確信犯とは信念に基づき罪を犯す者であって、悪いと分かっていて罪を犯す者ではないのですよ?

 まったく、大学生なのに恥ずかしい人ですね、お兄さんは」

「駄目出しされたよ! こんな面白喋りの中学生に!」





変な二人だった。ていうか、痛い。痛過ぎる。

さっきから襲い来るボケの嵐の前に叫びっぱなしだ。

確認するが、僕は押し倒されてからずっと優美ちゃんに馬乗りされているのだ。

この状況でのこの会話、凄く何かが間違っている気がする。

それでも、そんないつも通りな愉快痛快荒唐無稽なテンションが、この状況で長続きするはずも無く。

一転、優美ちゃんは真摯な表情で向き直り、紅く変質した眼で僕を見下ろし、言った。





「ふふ。やっぱりお兄さんは楽しい方ですね。

 私、実際はお兄さんよりも長く生きてますけど、こんなに楽しく話せる人、初めてです」

「……褒め言葉だろうけど、何か素直に喜べない」

「喜んで下さいよ。貴方がそれだけ口が上手くなかったら、私を楽しませてくれなかったら。

 とっくの昔に、それこそ出会ったその日にでも―――私、貴方を食べちゃってたと思いますよ?」





元々、そのつもりで近づいたんですから。



そう言って、くすくすと笑う。

その瞬間。

ぞわり、と背筋を何かが這い上がるような恐怖。

優美ちゃんの笑顔はいつもと変わらない、僕をからかうときの小生意気な表情。

普段通りである筈なのに、たまらなくそれが恐ろしいものに感じられる。



優美ちゃんと僕。

淫魔と人間。

―――喰う者と、喰われる者。



そう、優美ちゃんに押し倒されてしまっている現状は、

まさしく肉食の猛獣が獲物を押さえ込み血肉を喰らわんとする、まさにその体勢ではないのか。



途端に緊張が走る、そんな僕の様子を察してか、

優美ちゃんは聖母のような優しい声音で、僕に問いかけた。



「お兄さん。……私のことが怖いですか? 嫌いになりましたか?

 でも。今この状況から―――悪魔に襲われているこの状況から逃げ出したいと。

 貴方は―――本気で、そう思っていますか?」



「………、」



答えない。答え、られない。

実際、期待してしまっているのだ。

先程のキスで与えられた快感。アレがただの前戯だというのなら、

―――その先に、どれだけの快楽が待っているのか。

優美ちゃんは、僕を直接には拘束していない。ただ乗っかっているだけだ。

触れ合う肌からゾクゾクするような気色よさが絶え間なく送られてくるが、

本気で抵抗しようとして、それが出来ないような状態ではないのに。



ああ、本当に。

いっそ全く逃れられないように、僕の全てを奪いにくるのなら楽なのに。

『逃げ道』が用意されているだけ、性質が悪い。

最後の判断を僕の手に委ねて―――その上で、僕を篭絡しようとしているのか。

だから。そんな考えに至ってしまった僕には、優美ちゃんの問いに対し沈黙でもって答えるしかない。



「………何も、答えてはくれないんですね」



無言で見つめ返す僕に、どこか寂しげな笑みを浮かべる。

その奥にある感情は、一体何なのか。





「ああ、もう。我慢なりません。忍耐や駆け引きなんて、元々私の柄じゃあないんです。

 答えてくれないのなら仕方がありません。実力行使……全力で行くまでです。

 だからお兄さん―――早く、私に『堕ち』なさい」







サキュバスの身体が、僕の身体を這い上がった。







「うああっ! あ、あああぁぁぁぁッ!」



圧し掛かっていただけの状態から身体をずらして、すべすべの肌を僕の全身に擦り付ける。

右手で僕の腋をくすぐり、左手でわき腹をなで上げる。

柔らかく薄い胸、その頂点に位置する二つの果実で、僕の乳首を転がす。

僕を虜にしたあの舌が、鎖骨のくぼみから首筋までを這い上がる……!

早くも完全に隆起してしまった僕のペニスは優美ちゃんのおなかに押しつぶされ、

苦しげにびくびくと震え、早くも透明な汁を吐き出している。





さわさわさわ……すりすり、くにくにっ、れろぉっ………





「ん……、お兄さんのカラダ、美味しいですね……」





喉元にかぷっと吸い付く、喉元から下顎にかけ蠢く軟体が、快楽の牙となって穿たれる。

さらさらと流れる長く美しい黒髪が、撫で上げるように肌を擦っていく、

二人分の汗とサキュバスの唾液によって湿り気を帯びた肌に張り付き、こそばゆい快感が持続的に送り込まれてくる。

まだ本格的な行為に入っているわけでもないのに、今にも精を優美ちゃんに吐き出してしまいそうだ……!



「ほんとに美味しい……。ふふ、やっぱり私が心奪われちゃっただけのことはありますよ……。

 感度も中々良好ですし、もっともっと気持ちよくなっちゃっていいですよ?

 お兄さんの精子、ちゃんと受け止めてあげますから」



「あ、くぁ……! ああああああぁぁ!!」



気持ちいい。

理性とか恐怖だとかの諸々一切が、快楽によって犯されてしまっている。

もっと気持ちよくして欲しい。

本能に衝き動かされるままに、僕は空いていた両腕で優美ちゃんを抱きしめてしまっていた。

触れているだけで男を狂わせる幼魔の肉体を、受け入れて押し付けてしまったのだ。





「ゆみちゃん……ゆみちゃぁんっ!」



「あうっ……、嬉しい、抱きしめてくれるんですね、そんなにぎゅうって……。

 もう、そんなに求めてくれるなら、こっちだって期待に応えないわけにもいきませんよ。

 ……こんなのは、どうです?」



 



優美ちゃんが、僕の首筋から顔を離し、もぞもぞと身をよじって拘束を逃れて胸のほうに移動した。

乳首をしゃぶってもらえるのか―――。

そんな僕の期待を感じ取ったのか、僕に視線を合わせて、悪戯気に笑う。



「―――えいっ」



「うあっ!」



狙いは乳首ではなかった。

優美ちゃんは下腹部に走る縦線……おへそのラインに沿って、僕の肉棒を往復させてきたのだ。



「どうです? こういうのも、結構良いものですよ」



狭い溝で、裏筋だけを執拗に擦り上げられる。

小さな身体をひねって、あたかも膣に挿入するように、溝で亀頭をぐりぐりと刺激される。

膣でなく。胸でも手でも口でも足でもない、通常性交に用いられない部位での責め。

女性経験が無いわけではないが、こんなマニアックな部分での愛撫、経験があるはずもない……!



「ゆ、み、ちゃぁんっ! 駄目、だめだ、もう―――で、出ちゃうっ!」



どく、どくどくどく……!

容赦の無い責めに、早くも僕は、白い屈服の証を吐き出していた。

優美ちゃんの白いおなかに大量に精液をぶちまけて、はぁはぁと荒い息をつく。



「んう……いっぱい、でましたね……んむ」



お腹に付いた精液を指で掬い口に運び、舐めとる。

ちゅぷちゅぷと音を立ててしゃぶり、掬ってはまた運ぶ。

細い指が口中で踊る舌に淫らに絡むのが薄く開いた唇の隙間から見える、

その淫靡な蠢きを、射精後の放心状態のままうつろに見ていた。



「んふ……。こっちも、キレイにしてあげますね」



今度はその矛先を、自身の精液で汚れた僕の上半身に向けてきた。

胸と腹の境にまで飛び散った精液に汚れた身体を、ナメクジのような舌が這う。



「あ、う……うぁぁぅ……」



へそに吸い付いて、窪みに溜まった残滓を吸い上げる。

舌先を尖らせ、肋骨の隙間をなぞるように舐め上げる。

唾液を滴らせ、先刻無視した乳首をれろっとしゃくり上げる。

どれをとっても、新しい性感を次々開発されてしまいそうな淫技。

一度射精したペニスが、再びむくむくと屹立していく。



「お兄さん、ちょっと起き上がってください」



快感に痺れて動けない僕を引き起こし、優美ちゃんは僕の背後に回った。

背中に抱きつく、その柔らかい肌の感触と硬くなった乳首の感触が、快感神経を走り抜ける。

思わず息を衝く僕のペニスを、優美ちゃんの手が握った。

やわやわと亀頭のあちこちをさする左手と、ぐにぐにと竿を揉みこむ右手。

先程の射精でまだ尿道に残っていた精液がポンプのように押し出される。



ぐぐぐっ……ぐにっ、ぐにゅぅっ……



手だけではない。

唾液の滴る舌が耳を舐り、長い髪を口に含んで唾液と絡め、耳の中へと這入れられる。

ぞわぞわと這い上がる全身が総毛立つ気色よさに、脳髄まで犯される錯覚を抱く。

いや、―――実際犯されていたのだろう。

再び射精感が下腹部の奥で燃え上がり、出口を求めて渦巻いている。

もう一押しで、イク―――そのタイミングで、優美ちゃんの手がペニスから離れた。



「見てください。これ、何だと思います?」





滲んだ涙で霞む視界に踊る黒い物体。

意思を持つように跳ねる光沢あるそれは、優美ちゃんのお尻の方から伸びていた―――尻尾。



「これ、単なる飾りじゃないんですよ。ほぉら」



男性器のような形状の尻尾の先端、そこに走る一本の縦裂。

それがぐぐぐっ……と口を開き、粘膜と襞に覆われた内部の様子が現れる。

見せ付けるように尻尾を振る優美ちゃん。まさか、今から、あの穴で―――。



「ふふっ。そんなに震えちゃって……期待しちゃってるんですね。

 お望み通り。今からお兄さんを、尻尾で犯してあげます」



竿の根元を握る手、天を仰いで固定されたペニスに、黒い尻尾が迫る。

亀頭部を数度つつき、その刺激だけでまた身体の芯が震える。

そして。とうとう尻尾の亀裂が、亀頭部を飲み込んだ。



にちゅり。



「ひ……っう、あ、あああああ―――――ッ!」



射精していた。

いきり立った肉棒が、狭い肉のホースの中でびくびくと震え、二度目の精液を噴出していた。

飲み込まれた瞬間、脳髄がその刺激が快感であると認識するより早く、僕の肉体は従順に屈服してしまったのだ。



「んー、幾等なんでもちょっと早いんじゃないですか?

 まあ、私の尻尾をいたく気に入ってくれたものと好意的に取っておきますけど」



亀頭に管内を隙間無く埋める襞がまとわりつく。

傘の部分や尿道口まで余すところ無く這い回り、一心に射精を促すように蠢いてくる。

気付けば飲み込まれている範囲が、徐々に根元の方へと進んできていた。

魂が捕われ削り溶かされるような快楽が連続して襲う。

とうとう根元までぎっちりとくわえ込まれる瞬間まで、ずっとその絶頂感に苛まれていた。

自分が何度射精しているのか―――。

最初の絶頂が永遠と続いているようにも、二度三度の連続する絶頂が、

その間を感覚できないレベルでやってきているようにも感じられる……!



「や、やめて、死ぬ、死ぬ、死んじゃうぅぅッ!」



「だらしのない早漏さん。もっともっと吐き出しちゃってください。

 まだまだいくらでも、気持ち良くしてあげますから……」



耳元での囁きが、快楽に蕩けた脳を更に揺さぶる。

同時、ヒダと柔突起の蠕動が加速度的に勢いを増した。

浮き出た血管や輸精管を執拗に這い、射精感をいや増す。

内外からの責めに、僕の肉体はガクガクと震えながら精液を吐き出していく。

絶え間の無い絶頂の中で、目の前が白く染まって―――そして、とうとう意識を手放した。



「変態さんのお兄さん。もっと私に溺れなさい?

 そうすれば―――忘れられない夢を見せてあげますから」



びゅびゅびゅーーーっ!!

ごぽ、ごぽ、ごぽ……





全身をくすぐられるようなこそばゆい感覚で、僕の意識は眠りの底から引きずり上げられた。

重いまぶたをやっと上げると、白く透き通る身体をした優美ちゃんが、僕を見下ろしているのが見える。

その両の手は僕の乳首をくりくりと弄って、全身が震えるような快感を送り込んでくる。

僕のペニスは優美ちゃんの秘部に押し潰されていて、丁度スマタの体勢で置かれていた。

意識がより覚醒してくると、またしても、僕の身体に射精欲が鎌首をもたげてきた。



「う、ううぅぅ……ゆ、優美ちゃん……」



「おはようございます。

 ふふ、気持ちよかったでしょう。失神するほど感じちゃいましたものね?」



腰をグラインドさせて、布地に包まれた柔らかいアソコを押し付けてくる。

優美ちゃん自身も興奮しているのか、愛液と僕の先走りで湿り気を帯びた下着の感触がたまらなく気持ちいい。

押し潰されて苦しげに震える僕のペニス。裏筋を擦り上げられる快感で、一層に液を吐き出してしまっている。



「あは、まだまだ元気ですねえ。もっともっと搾ってあげますよ。―――私の中で」



立ち上がり、下着に手をかける優美ちゃん。

そのまま下着を下ろすと、無毛の秘部が露わになる。

そしてまた僕の身体を跨ぎ、僕のペニスの真上に位置するように持ってきた。

しかし、そこから腰は降りてこない。

刺激をもう一押し加えられれば、すぐにでも何度目になるかわからない精液を噴出してしまいそうなのに。

その最後の一手が、中々やってこない。

思わず自分で扱こうとしたが、その手は優美ちゃんに掴まれ、畳に押し付けられてしまう。

明らかに僕より力は弱そうなのに、僕は魔法にかかっているかのように、その手を振りほどくことが出来ない。

もう少し腰を落としてくれれば、すぐにでも射精できる筈なのに―――。



「お兄さん。まだ私のこと、嫌いですか?」



吐息がかかるほどに顔を近づけて、優美ちゃんはまた、尋ねた。

甘い誘惑の匂いがまた強くなって、一層クラクラする。

しかし。

それでもまだ、人間としての理性と死への恐怖が、完全には失われていないのも確かだった。

―――少なくとも、この時までは。



「そんなに怖がらないでくださいよ。そりゃあ私達サキュバスは、

 人間の男性を糧にしてますし、吸い尽くして相手を死なせてしまう輩だって大勢います。

 私だって、そうでしたしね……。

 でも、―――私はもう、絶対そんなことしません。お兄さんの意思を奪うことだってしません。

 今ここで、私の身体を味わった上で、それでもはっきりと拒絶の意思を示すのなら、

 一切身を引くと宣言します。だって―――」





真紅の瞳が僕を射抜く。魅入られたまま動けない僕に、





「―――私は。貴方を愛していますから」





にっこりと微笑んで、そう言った。







それが引き金となった。

心の奥底で抱いていた疑心や恐怖が、その笑みで霧散してしまった。

ペニスの真上、幼いサキュバスの無毛の秘部に、限界だった肉棒を突き入れてしまったのだ。



「ひ、ぁ」



「ああ……とうとう自分から入れてくれたんですね、嬉しい……。

 ねえ、お兄さん、もう私からは逃げられませんよ?

 大丈夫、逃げることなんて考えられないくらい、永遠に愛してあげますから……」



覆い被さってくる優美ちゃんの甘えた声も、もはや聞こえなかった。

ペニスを突き入れた瞬間、あまりの快感に、全身の力が失われてしまう。

熱く柔らかく、ペニスを文字通り蹂躙する蜜壺。

奥へ奥へと吸い込んで、きっちりと根元まで咥えこまれて吸い、揉み、扱きたてる。

淫魔の膣、それはまさに肉の凶器。



にゅぷ、ぐちゅぅぅ、ぢゅうううううっ………





気付けば、既に射精していた。

突き入れただけで、僕の我慢はたやすく打ち砕かれたのだ。

途端、全身の力が抜ける。吸われているのだ。サキュバスに、精を―――。



「ふふ、お兄さんの精が流れ込んできてます。……これで貴方は本当に私のもの。

 さ、そろそろ動いてあげますよ。 思う存分、天国を味わって下さいね?」



じゅぷっ! じゅぶぅっ! ぐちゅぐちゅぐちゅ……



「ああ、あ、あ、はああああああああ!」





射精が加速する。心臓が激しく脈打ち、脳を沸騰させられる。

もはや僕は正気では無いのかもしれない。

理性も道徳も、全て優美ちゃんに吸い上げられてしまったのかもしれない。

それでも、更に激しく優美ちゃんを求めてしまう。

力の入らない両腕を持ち上げて、弱々しく幼魔の肢体を抱きしめてしまう。

それに応えるように、優美ちゃんは再び僕の唇を激しく貪る。

僕も必死で舌を絡めて応えようとするが、僕の舌は優美ちゃんを捕らえられない。

逆にぎっちりと咥えこまれて、優美ちゃんの口腔内で激しく舐めしゃぶられてしまっている。

甘い甘い唾液。舌までもが性器であるような舌技。

お互いの汗で濡れた身体が滑らかに往復する。

魂まで優美ちゃんと一体化しているような恍惚感。



「き、気持ち、いいぃぃッ! もっと、もっとぉ……」



「お兄さん、好き、大好き、ずっと一緒に……」



止まらない射精。

終わらない搾精。

永遠に続く絶頂の中で、またしても僕は意識を失った。











目が覚めたら布団の中だった。



「………おおう」



びっくりした。

死亡オチかと思った……って、僕は何を言っているんだ。寝ぼけているのか。



軽く頭を振って起き上がろうとして……布団の腰の辺りの妙な盛り上がりに気がついた。

股間に感じる生暖かい感触―――それを意識した瞬間、背筋を快感の電流が走りぬけた。

堪らず布団を一気にめくり上げると―――優美ちゃんが、僕のモノをほおばっていた。

何故か、裸に男物Yシャツだけを身に付けて。



「……な、何をしているのかな? 優美ちゃん」



「んう……何って、目覚ましフェラと裸Yシャツのコンボは男のロマンではないのですか?」



「やめてー! 『男のロマン』にそんな方向性を加えないでー!」



しかもよく見ると、純白のニーソックスを履いていた。

何そのマニアックなスタイル。いや、これはこれで素敵かも……?



そんな僕の葛藤を華麗に無視して、優美ちゃんはちろちろと陰茎に舌を這わす。

根元から先端までをつつぅーーーっと舐め上げ、右手で亀頭を、左手で睾丸を、それぞれ愛撫する。

他にも、甘噛みを繰り返したり、喉奥まで咥え込んだり……

多彩な愛撫によって、僕は一気に高められていった。



「くあっ! で、出るっ!」



「いいれふよ、ほのまま出ひひぇくりゃはい……んんっ!」



朝一番の精液を、熱い口の中にぶちまける。

昨夜あれだけ吸い取られたと言うのに、思いがけず大量の精液が放たれた。

その精液を、優美ちゃんは嬉々として吸い上げ、飲み込んでいく。

ペニスの脈動に合わせて吸引し、放出が止んでからも、尿道に残った精液までも啜り上げていく。

その貪欲な様は、まさしく淫魔と呼ぶに相応しい。

長い放出を終えて、ぐったりと弛緩する僕に、優美ちゃんは進み出、口を閉じたまま、笑った。

察するに、その口中には、何かが収まっているらしい。―――そして、その何かとは決まっている。



「あ、ああ―――」



赤い唇が薄く開く。その中にあるのは、溜まりに溜まった僕の精液。

淫靡に蠢く桃色の舌が、溜まった精液を攪拌する。

ぐちゅぐちゅと音を立てて混ぜ合わされる精液と優美ちゃんの唾液。

たっぷりと時間をかけてその様を僕に見せつけ、

ブレンドされたその液体を、優美ちゃんは一息に飲み干した。

細い喉が妖しく動き、僕の精液が食道を通ったのがはっきりとわかった。



「ふふ。朝の一番、ご馳走様でした。さ、起きてください。講義に遅れてしまいますよ?」



そうして、何事も無かったかのように立ち上がる。

妙な所で家庭的な少女のこと、既に朝食が準備されていた。

真っ白い炊き立てのご飯と、豆腐とわかめの味噌汁。そして沢庵。

湯気を立てて食欲をそそる香りを放つ献立に思わず唾を飲む。

だが。

僕の目にはさっき見せ付けられたあの光景が焼きついて離れず、ペニスもまた、最大限に勃起していた。

その欲望の赴くままに、食卓へ向かう優美ちゃんを、背後から抱きしめてしまっていた。

優美ちゃんは驚いた様子も無く、呆れたように笑った。



「おやおや、まだ満足してないんですか? 仕方のない人ですね……。

 私を抱きたいのでしたら、一向に構いませんよ? 私は貴方のもので、貴方は私のものなのですから……。

 では、愛し合いましょう。何時までも、何時までも―――」



足を広げて僕を誘う優美ちゃんを、僕は立ったまま貫いていた。

僕はもう、この少女からは離れられないのだろう。

それでも構わない。

僕は完全に、彼女の虜となってしまったのだから………。





FIN




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