妖精の森 ノーム編




 「どこだ、ここ?」

 青年はベットの上でそう呟いていた。

 確か、森の中でさまよっていたはずなのに……



 「あら〜、目が醒めたんですね」

 ふと、後ろから女性の声がする。

 振り向いてみると、そこには若い女の人が立っていた。

 「あなたが倒れているの見つけた時はびっくりしましたよ!

 でも、よくあんな高い場所から落ちてその程度の怪我ですみましたね〜」

 女性の言葉で、青年はだいたいの事情を理解した。

 どうやら、気絶していたところを彼女に助けてもらったようだ。

 「助けていただいてありがとうございました。ところで此処は何処なんですか? 道に迷ってしまって……」

 「まあ、そうでしたの。ん〜、ちょっと待っていてくださいね」

 そう言い残し、青年の問いに答えないまま彼女は部屋から出ていってしまった。

 彼女の不思議な態度に戸惑いながらも、しばらく部屋の中でぼーっとする青年――

 ふと彼は、部屋の隅でなにか光るものに目を留める。

 「これは……?」

 近寄って拾ってみると、それは小さな宝石。

 宝石など、別に興味はない――そう思いながらも、青年の視線はその魅惑的な輝きを放つ宝石に吸い寄せられていた。

 彼はほんの一瞬で、その魔性の石の持つ怪しい魅力の虜になってしまったのだ。

 「……」

 この宝石を、自分の物にしてしまいたい――

 しかしこの宝石は、どう考えても彼女の所有物。恩を仇で返すのか――?

 青年は、心の中で激しく葛藤していた。

 助けてもらった相手の物を盗むなんて、人間として最低の行為だ。

 しかし、さっきの女性に戻ってくる気配はまるでない。

 どうせ床に無造作に転がっていたものだ、なくなったところでバレやしないだろう。

 青年は宝石の魅力に屈し、とうとうポケットの中にそっと宝石を忍ばせてしまう――

 「え……!?」

 その瞬間、青年の視界がぐらりと揺れた。

 これはめまい……いや、強烈な睡魔。

 「あぁ……」

 がくりと床に膝をつく青年。

 これはおかしい――彼の本能がそう告げている。

 しかし瞼は下りてしまい、開けることができない。

 意識もみるみる薄れてゆく――

 「お待たしました。あら〜また眠っちゃーフフ、悪い子にはお仕置きですね♪」

 そんな彼女の声が、聞こえた気がした……







 「……き……くだ……い。起きて……ださい。もう、起きなさい」

 青年を呼ぶ女性の声――

 「う……?」

 その声に意識が揺さぶられ、ようやく青年は覚醒する。

 「やっと起きましたね。気分はどうですか?」

 「まあ、そこそこですね……」

 やけに上機嫌な彼女に罪悪感を感じつつ体を――起こせない!?

 何がどうなっているのかさっぱり分からないが、手足が鉛のように重く、動かすことができないのだ。

 「こ、これは……? 一体、何をしたんですか!?」

 「強いて言えば、拘束なんですかね?」

 必死の形相の青年と裏腹に、彼女は可笑しそうな表情すら浮かべていた。

 「ですかねって、そんな……! 拘束なんて、犯罪じゃ――」

 「あら? 犯罪者はあなたですよ?」

 彼女の一言に、青年は愕然としてしまった。

 血の気が引き、顔が青ざめていくのが分かる――彼女は、青年の行った恥ずべき行為を知っていたのだ。

 「フフ、図星ですよね、悪い子にはお姉さんがお仕置きしちゃいます♪」

 女性がそう言うや、青年の手足を拘束していた重圧が徐々に全身へと広がり始める。

 手足の上にのしかかっていた物体が、体を覆い始めたのだ。

 「ひぃぃ! 何これぇぇ!?」

 その常識を越えた事態に、青年は困惑と恐怖の入り交じった声を上げる。

 「何って……土以外に何かありますか?」 

 「土ぃぃ!?」

 どうなっているんだ、これは……?

 その土とやらは、まるで彼女の意志に従うように青年の体を覆い込んでいるのだ。

 土を自在に操るなんて、普通の人間にできるはずがない。

 つまりこの女性は、人間じゃないんだ……!!

 「悪い子に服なんていりませんよね。フフ、溶かしてあげますね〜」

 「やめろぉ!! は……離せ、化け物ぉ!!」

 「フフ……本当に悪い子、お仕置きしがいがありますね〜」

 女性は、愉しそうな笑みを漏らす。

 「そうそう、私はノーム――化け物なんかじゃなくて妖精なの」

 ノーム!? そんなの、ありえるはずがない。

 妖精の存在なんて、いまどき子供でも信じていない。

 しかし目の前で起きている現象は、彼女が超常の存在である以外に説明が――

 「急に黙り込んで……もしかして逃げる方法でも考えていたんですか? フフ、無駄ですよ」

 「ふぇ? ……んあぁぁ!」

 次の瞬間、青年は奇妙な声を上げていた。

 彼の体を包み込んでいた土が、いきなり蠢きだしたのだ。

 適度にぬめった土が全身に絡みつき、絶妙な刺激が青年を包み込む――

 「うあぁぁ、やめてぇぇ……!」

 「あはは、説得力ないですよ〜。そんなにおちんちんぴくぴくさせて、私は何もしてないのに……」

 「あぁぁ、言わないでぇぇ!」

 「お仕置きされてるのに喜んで、ほんと恥知らずですね〜。普通ならおちんちんそんなふうにならないですよ。普通ならね」

 土で全身を弄ばれる快感と、容赦なく投げ掛けられる嘲笑。

 ノームの責めと煽りの二重攻撃に、青年はたちまち屈してしまった。

 「あぁぁあぁ……もう駄目ぇぇ!」

 快楽にも屈辱にも耐えることができず、青年は土に包まれて射精していた。

 ペニスから放たれた精液は、みるみる土に染み込んで吸収されていく。

 「あらあら、もういっちゃったんですか。犯罪者で早漏なんて最低ですね♪」

 「くっうぅっうぅぅ……」 

 人外に煽られる屈辱、それに快楽を感じ屈してしまった自分の情けなさ。

 その感情が入り交じり、青年の目から涙がこぼれ出す。

 「泣いちゃったんですか、本当に情けない人ですね。これからが本番なのに……」

 「そんな、もう許してぇぇ……!」

 「口ではなんとでも言えますよ。本当は、もっと犯してもらいたいんじゃないですか?」

 確かにノームの言う通り、青年の心は墜ちかけていた。

 もっと人外の快楽を味わいたい――が、それよりも人外に対する恐怖の方が上だったのだ。

 怖い……これ以上の快楽には、とても耐えられそうにない。

 「フフ、これからは私が直接お仕置きしてあげる。これでね」 

 そう言うと、彼女はその豊満な胸を見せつけた。

 そのあまりの美しさに、状況も立場も忘れて見入ってしまう青年――

 「……そんなに見つめられたら恥ずかしいですよ!」

 顔を赤らめたノームの意外な反応に、青年の心が別の方向にグラついてしまう。

 目の前の女性に、ある種の感情が芽生え初める――そんな彼の心は、ノームの無慈悲な宣言により現実に戻された。

 「フフ、今度は手加減無しですよ。後悔しても駄目です」

 青年の股間を覆っていた土が退き、たちまちペニスだけがみっともなく露出してしまう。

 そして彼女は勢いよく反り返ったペニスを掴み、乳首の先端とペニスの先っぽを密着させてきた。

 「んふふ、乳首とおちんちんくっついちゃった。どう、気持ち良い?」

 ……確かに、そのくりくりした感覚は非常に気持ち良い。

 しかし、さっきまでの土の感触よりは……

 「じゃあ、飲み込んじゃいますね〜♪」

 「え……!?」

 ノームの楽しそうな声とともに、ずぼっ、とペニスがなんと乳首の中へと埋没してしまった。

 人間の女性では不可能な責め――青年は、すっかり忘れていたのだ。

 彼女は人間では無いこと、そしてこれは彼女の言うお仕置きだということを――

 「ほ〜ら、先っぽ半分入っちゃいましたよ」

 ペニスに柔肉がむちゃくちゃに絡み付き、容赦なく締め上げてくる。

 その刺激に、青年はほんの一瞬すら我慢することができなかった。

 「あぁぁ……出るぅぅ……!」

 たちまち青年は、ノームの乳首の中に精液を注ぎ込んでしまう。

 あっけなく搾り取られる精液――さらに乳首は、彼のペニスを奥深くまで迎え入れていく。

 根本までを狭い乳首の中に包まれ、青年は悶絶した。

 「ほら全部入っちゃいましたよ。フフ、もっと気持ち良くしてあげますね」

 じゅぷっ、と内部がぬめり、粘り始める。

 ペニスを包む乳首の内部に、母乳が満たされ始めたのだ。

 「あぐぅぅぅっ!!」

 母乳はねっとりと絡み、にゅるにゅるのローションと化して快感を倍増させる。

 青年は一瞬たりとも休む暇なく、ノームの乳首に精液を吸い上げられ続けた。

 「あがあぁぁぁーッ!」

 もう何度強制的に射精したのかわからない。

 あまりの快感に意識すら遠ざかっていた頃――不意に、ペニスを包む感触が緩やかになった。

 ノームが、意図的に搾精を止めたようなのだ。

 「そろそろ終わりにしてあげますね」

 彼女がそう言うや、みるみる土が青年を包み込み始める。

 「悪い子は宝石にしちゃいます。あなたが盗った宝石みたいに――」 

 そんなノームの言葉に、青年の思考は停止した。

 このまま土に包まれ、宝石にされる――その意味を、はっきりと自覚したのだ。

 それも仕方がないのかもしれない。

 自分はこの女性に対し、ひどい事をしたのだから――

 「怖がらなくていいですよ。今までの何倍も気持ちよくしてあげますから」

 そう告げるノームの言葉は、脅しでも何でもない。

 自分はこのまま、逃げることもできず宝石に変えられてしまう――ならば、せめて言っておきたいことがあった。

 「ノームさん……最後に、聞いてほしいことがあるんですけど……」

 「あら、なんですか?」

 命乞いでもないような青年の言葉に、ノームは目を丸くする。

 「最後に、謝っておきたいことが3つあるんです……1つめは、宝石を盗ってしまったこと」

 その体を土に包まれながら、まるで懺悔をするかのように青年は告げた。

 「2つ目は、受けた恩を仇で返したこと……あなたに命を助けてもらったのに、あんな最低な行為を……」

 「……」

 罪を悔いる青年を、ノームは感情の読めない瞳で静かに見据えている。

 「3つめは、ノームさんのことを化け物と言ってしまったこと。命の恩人に向かって、僕はなんてひどい言葉を……」

 彼は涙さえ浮かべそうな顔で、ノームに自分の罪を訴えかけていた。

 「こんなこと、いまさら謝ったって遅いけど……ごめんなさい。ノームさん、本当にごめんなさい……」

 真摯な態度で、心から謝罪する青年――そんな彼に対し、ノームは告げる。

 「わかりました、では……」

 「……」

 これで、言うべきことも言い終えた。

 もう思い残すことも、恐怖さえない――青年は、静かに目を閉じていた。

 しかし次の瞬間、彼の全身を覆う土の重圧はみるみる減っていく。

 体を包んでいた土が、たちまち消え失せてしまったのだ。

 「ちゃんと反省したんですね〜」

 「えっ……?」

 ノームの声に、青年はぱっと目を開ける。

 見ればすっかり土は消え、彼の手足の拘束も解除されているのだ。

 「な、なんで……?」

 「宝石にするのは反省しない人だけ、反省した人は別ですよ」

 にこやかに告げるノーム。

 しかし青年は、どこか釈然としない気持ちになっていた。

 反省したからと言うだけで、簡単に罪が消えてしまうのだろうか。

 いや、そんなはずはない。自分は、命の恩人から宝石を盗んだ泥棒なのである。

 「そんな……! じゃあ、僕はどうやって償えばいいんです?」

 「なら――」

 微かに、ノームは頬を染めた……そんな風に、青年には見えた。

 「――私と、ここで一緒に暮らしてほしいんです」

 「そ、そんなことでいいんですか!?」

 青年は思わず仰天する。ノームの言葉は、まるでプロポーズそのものだった。

 責任を取れ……と、そういうことか?

 これじゃ、何の責任を取らされているのか分かったもんじゃない。

 「女の子に、何度もこんなことを言わせるつもりですか? 私がいいと言ったら、いいんですよ」

 不服そうなノームの表情が、みるみる悪戯気なものに変わっていく。

 そして――青年の全身に、再びノームの土がのしかかってきた。

 「そういうわけで、さっきの続きを……」

 「ちょっ……いきなりやめ、あぁそこ駄目ぇぇ……!」

 「フフ……ずっと一緒ですよ。永遠に……」

 青年の喘ぎ声と、ノームの囁き。

 自身の犯した罪の報い、青年はその身で延々と責任を取らされ続けるのである。

 ノームにとって、そして恐らく青年にとっても幸福な形で――

 それは人外の娘にとって、婚姻を意味していたのかもしれない。






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