洞窟
岩場の海岸を真夏の日差しを受けながら少年が歩いていた。
少年の名前はケンジ、彼はタンクトップのシャツと短パン、麦わら帽子という格好、さらに彼の肌は夏休みを謳歌している証拠である小麦色、まさに活発な印象を受けた。
ケンジは自分の水筒のお茶を飲むため岩場に座った。
ケンジはお茶を飲みつつ海岸を眺め目的の洞窟を見た。
「洞窟はあんなに近い、もう一息だ。」
ケンジの住む村の大人はあの洞窟に近づいてはいけないと皆言っている、ケンジの父も母もそれに学校の担任も、さらにはケンジの祖母はあの洞窟には化け物が住むと話した。
それを思い出すとケンジは笑った。
「そんな迷信に怖がるほど俺は子供じゃない。」
ケンジはそう言うと再び洞窟に向け歩き出した。
ケンジは洞窟に進入するとしばらく中を進んだ。
「この洞窟、案外、深いな。」
ケンジはそう言って前を見た、前には暗闇が広がっていた、一瞬、ケンジは暗闇に吸い込まれる感覚を味わい恐怖心を抱いた。
「流石にこれ以上進むのは止めよう。」
ケンジは洞窟の入り口の方を見た、この地点でどうにか入り口から差し込む光で周りを確認できる、これ以上、進むには懐中電灯や松明が必要だろうな。
ケンジは心中そう思った。
「おい、お主は誰じゃ?」
ケンジは突然の声に足を止めた。
声は背後から聞こえた、ケンジが振り向くとそこには一人の長い髪の女が立っていた、女は長い髪が似合う美人で和服を着ていた。
「何だ、人間の童子か。」
ケンジは突如現れ変な事を言う女の出現にしばらく呆然としていたがどうにか口を開いた。
「お姉さん、誰?」
「わらわはこの洞窟の主じゃ。」
彼女がそう言い終るやいなや背後から「何か」が飛び出してきた。
「うわああ!」
ケンジは反射的に逃げようとしたが「何か」がケンジの身体に絡みつくとケンジを洞窟の奥へ引きずり込んだ。
その「何か」はベトベトとした粘液を分泌していた。
だがケンジはそんな事より「何か」から逃れようと必死にもがいた。
しかし「何か」はケンジがもがけばもがく程、締め付けて来る。
ケンジがもがくのを諦め周りを見渡した。
どうやらここは洞窟の奥に広がる巨大な空間のようだ。
上にはどうやら外につながる大きな穴がありそこから漏れる光でどうにか周囲を見る事ができる、そしてケンジは次に「何か」の正体を見る事になった。
「何か」はタコの足を思わせる触手であり、その触手を目で追うと触手の塊のような気味の悪い物体を見つけた。
その塊には長さも太さも異なる多種多様な触手が伸びだしていた、触手の唯一の共通点は全てがベトベトとした粘液を分泌している事だった。
するとその物体のすぐ上に先の女が存在していた、女の下半身は触手のような形態をしておりそれはやはりあの気味の悪い物体に繋がっていた。
女は触手によって囚われの身のケンジに近づき、ケンジの顔を覗き込んだ。
「童子、わらわは暇なので少しの間、わらわと遊ばぬか?」
「うるさい化け物!放せ!馬鹿!」
「わらわの頼みを断るとは、おもしろい童子じゃ。」
次の瞬間、ケンジを拘束していた大きな触手が解け複数の小さな触手がケンジの身体に絡みついてきた、触手が分泌する粘液により既にケンジの身体、服はベトベトに濡れていた、ケンジはそのベトベト感に嫌悪感を示した。
「ぷわあ・・・何だ!この気色悪いネバネバしたの!」
女はケンジが抵抗を示すのを残念そうに見ていた。
「わらわは聞き分けの悪い童子は嫌いじゃ。」
そして触手はケンジの服を脱がし始めた。
「やめろ!おい止めろ!」
ケンジが必死に抵抗するも服を脱がされてしまった。
女は裸にされ恥ずかしがるケンジを見てクスクスと笑い始めた。
「おい!笑うなよ!」
「ふふふふ、裸を見られ恥ずかしがるなんてお主、可愛いの〜。」
ケンジは化け物と言え見ず知らずの女に裸を見られた事とそれを小馬鹿にする女の態度に激しい羞恥心を感じていた。
今度は複数の触手が裸になったケンジの身体中を這いずる。
触手のこの行為はケンジにくすぐったさを与えた。
「ひゃ!ひゃああ!」
ケンジはこの突然のくすぐり攻撃に奇声を上げて反応した、女はそんなケンジをクスクスと嘲笑しながら眺めていた。
「ふふふふ、お主、本当に可愛いの〜」
「あひゃ、ひい、やめ、やめてええ、ひゃああ」
くすぐり攻撃を受け続け身体を赤ん坊のようにイヤイヤし逃れようともがくケンジ、だが触手はくすぐりを続行した。
「ほれ、ほれ、くすぐったいか?」
「ひゃああ、いやあぁ、んんうぅ・・・」
数分後、触手のくすぐりは止まった、しばらく触手によるくすぐりを受けていたケンジはグッタリと疲れ果てていた。
疲れ果て抵抗できずに居るケンジの耳元に女は囁いた。
「もっともっとくすぐってやろうか?」
「あ・・・あ、や、やめてええ。」
「ふふふふ。」
怯えるケンジの顔を見ながら女は悪戯っぽく笑った。
そして触手が再びくすぐり攻撃を行う。
「うあああ・・・。」
再びくすぐり攻撃を受けケンジは身体をクネらす。
女は目を細めケンジの反応を楽しんでいた。
「お主の反応が面白いの〜、もうしばらく付き合ってくれ。」
「きゃふ・・たひゅけ・・・助けてええぇ・・・」
警官は神妙な顔持ちで民家の玄関に立っていた。
「お母さん、ケンジ君の行き先に心当たりは無いのですか?」
「いいえ、お巡りさん・・・もう三日も帰ってこない・・・ケンジ・・・」
彼女はハンカチを片手に泣きながら話した。
「我々も全力で捜査しますので。」
「お願いします・・・ケンジを・・・ケンジを・・・。」
「お、お願い・・・帰して・・・」
ケンジは女性に嘆願した。
「ふふふふ、まだ駄目じゃ、もっとわらわを楽しませておくれ。」
触手がケンジの身体を這いずり出した。
「あひゃん。」
ケンジの身体が弓なりに仰け反った。
「ふふふふふ」
ケンジの叫び声と女の笑いが洞窟に響き続けた。
−END−