マッド・ラミア




  最初は他愛のない度胸試しだった。

  実際にそれを見るまでは誰もそんなものが存在するとは信じていなかった。

  四、五人で連れ立って地下水路を懐中電灯片手に進み、ソレに出会う前は……

 

  地下水路に住む巨大な黒ヘビ。

  少年の友人たちは暗闇でソレが鎌首をもたげたのを見たとき、一斉に逃げ散った。

  間抜けな悲鳴が消えた後で、不幸な少年だけが逃げ損ねた。

  その正体を見極めようと無駄に恐怖を我慢したのがいけなかったのかもしれない。

  少年はヘビに入り口側に回りこまれ、水路の中を奥へ奥へ逃げることになった。

  逃げ切れるかどうかわからない。

  腐臭に満ちた地下水路はその大蛇の巣なのだから……

 

  ヘドロにまみれた黒い大蛇は3メートルを軽く越え、逃げる速さに合わせて迫ってくる。

  少年は追い詰められた哀れなエモノのように逃げ回った。

  食べられてしまう!

  その恐怖心だけが少年を動かし、暗闇の水路をひたすら走った。

  しかし、逃走はわずか十数分、水路の合流地点であっけなく終わってしまう。

  少年の目の前には鉄製の格子がはめてあり、その隙間は通れそうになかった。

  他に逃げるところはなく、蛇の横をすりぬけるぐらいしかない……

 

  絶望的な気持ちで少年は後ろを振り返る。

  格子を照らす懐中電灯の明かりの影で、黒々としたヘビが金色の目をらんらんと光らせていた。

 

  ……ゴクリと少年はのどを鳴らす。

  こちらを見ているヘビと目が合う、視線と視線が交差し嫌な沈黙が訪れる。

  少年はその間に懐中電灯を動かし光を徐々にずらして大蛇の方に向けた。

  その間、ヘビは嫌がるそぶりも見せずを少年の様子をうかがっている……

 

  動かし終えた懐中電灯に照らされた視界の先にはまぎれもない女体があった。

  漆黒の髪、ヘドロまみれの紫がかった青い肌、蛍光ピンクの唇、金色の瞳。

  一瞬、すべてを忘れてその淫らな美しさに引き込まれる。

  それでも少年は懐中電灯で大蛇の全身をなでるように照らす。

 

  心奪われる美貌の下には、二つの果実。

  豊満といっていい乳房の先には唇と同じ蛍光ピンクの乳首がついている。

  その下にはくびれた腰……

 

  ゴクリと少年は生唾を飲み込んだ。

  人間の女性器がはっきり見て取れる下に、ヘビの胴体が続いている……

 

  とにかく心を落ち着けようとする。

  焦ってパニックになってはいけないと思う。

  思うのだが、周囲を漂う水路の腐臭が思考を乱してしまう。

  耐え難い腐臭が鼻を突き、恐怖と嫌悪感で吐きそうになる。

 

  「ネェ、アタシノ目ヲ見テ……」

  その鈴の鳴るような妖しい声にギクリと少年の身がすくむ。

  目の前の人外の化け物がしゃべっていると思うと本当にパニックになりそうだった。

  「ネェ、見テ、見テ、見テ……」

  ゆるゆるととぐろを巻く蛇女、少年は反射的に大蛇の瞳を見てしまう。

  妖しく光るその瞳を見るとどうしても顔全体が目に入る。

  整った顔立ちに咲く蛍光ピンクの花弁がたまらなく淫靡だ。

  「モット、フカク、フカク、見ルノヨ、フフフ」

  大蛇がささやくたびに蠢く唇に心が奪われる。

  催眠術にかかってしまったかのように体から力が抜けた。

  「フフフ……、シャ―――!!」

  突然、蛇女が口を開け、唇と同じ蛍光ピンクの液体を噴霧してきた。

  「うっ……」

  まぶたを閉じる瞬間、蛇女が跳躍するのが見える。

  「うわっ!」

  そのまま押し倒され地下水路の汚れたヘドロの中に倒れこむ。

  ぐっしょりと濡れる服、ヘドロの異臭で鼻がマヒしそうだった。

  「うぐっ、ん、んんん〜!」

  両腕でがっしりと抱きしめられ唇を奪われる。

  こじ開けられた唇からヌメヌメとした長い舌が入り込み口内をかき回す。

  大量の液体だろうか、おそらくあの蛍光ピンクの液体が流し込まれてくる。

  「ん〜っ!んん〜、ん〜っ!」

  必死に抵抗するが彼女の腕の力はすさまじく逃れることができない。

  視界を失ったまま鼻で息をする、腐臭が鼻の奥を刺激して苦しい……

  蛇女の肉体の感触は女性の柔らかさそのものだったが嫌悪感のほうが上回っている。

 

  ぷはっ!

  蛇女が少年の顔を開放した、そしてそのままゆるゆると下がる。

  まるで、今度は少年の方からこっちへおいでと言わんばかりに……

 

  「はぁはぁはぁ……」

  視界が戻ってくるがピンク色の液体が目に入ったためか全体的に桃色に染まって

  いた。

  「サア、ココカラハオ楽シミノ時間ヨ……」

  ドクン、ドクンと動悸が止まらない。

  地下水道全体が脈打つように揺れている。

  まるで酒に酔ってしまったかのように体がふらふらする。

  ピンク色の世界がグロテスクな内臓のように見える。

  でも、それがたまらなく淫らに感じてしまう。

  自分が肉壷に挿入された性器のように思えてくる。

  「はぁはぁはぁはぁ……」

  おかしい、泥水の臭いがまるで甘美な花の匂いみたいだ。

  吸い込みたびに性感が刺激され、いつのまにか股間のモノがギンギンに勃起して

  しまっていた。

  おかしい、おかしいと思っているのに……

 

  「サア、マズハ卵ニ受精ダ、ココニイレロ」

  くぱくぱと蛇女の女性器がおし拡げられ蠢いて少年を誘う。

  少年はふらふらと吸い寄せられて蛇女の腕の中に舞い戻った。

  蛇女は満足したように色っぽく笑ったあとで軽く少年にキスをする。

  「イイ子。コレカラ、アタシノ従順ナ"オス"ニ変エテアゲルワ」

  少年の頭を撫でると両手で少年のズボンと下着をゆっくりと下ろす。

  そして、自らくねり腰を突き出して少年の分身を膣内に迎え入れる。

  蛇女の手が逃がさないように少年の尻たぶをつかみ前後に揺した。

  「はへぁ!あたる、なにかがチ○ポの先にあたるぅぅ〜」

  亀頭が蛇女の体の奥にある卵に触れた、その異物感……

  ゴム風船にペニスをあてるような感覚に少年が腰を引く。

  がっしりとつかまれた少年の尻たぶが蛇女の腕が伸びる最大距離まで逃れた瞬間、一気に引き戻される。

  「はぎっ!あっ、んっ、ああっ!」

  少年が腰を突き出すのとタイミングを合わせて蛇女の体がくねる。

  その腰と蛇身が一番深くつながる瞬間にペニスが猛烈な抵抗に突き当たった。

  まるでゴムを引き伸ばすかのような感覚、もちろんセックスの快感はあったが少年にとってその接触は苦痛だった。

  だが、パシンパシンとおのれの意思とは関係なく少年の腰が前後させられる。

  いくら媚薬のようなピンクの液体を飲まされていても快感よりも痛みのほうが大きい。

  少年の性感を無視してピストンのペースが際限なく上がっていく。

  「あっ、痛っ!あっ、あぁ!」

  苦痛を叫んでもでも蛇女の手は少年の抵抗を許さず、さらに強力にピストンさせる。

  「痛い、あっ、痛いぃ〜、ひぎっ!あ、あぁぁぁ〜!」

  ひときわ強い腰と腰とのぶつかり合い。

  奥の奥、猛烈な抵抗を抜けた先にあるヌメヌメした液体がペニスに触れる。

  ドピュッ、ドピュルル、ピュク、ピュク……

  その瞬間に少年は射精して圧倒的開放感に脱力してしまう。

  力が抜けてその場に崩れ落ちる。

  蛇女は腕をゆっくり放して、少年を自然のままにヘドロのたまった水路に倒れさせる。

  自分の腹を満足そうに撫でると彼女は排卵の作業に入った……

 

  その間、少年は白目を向いてビクビクと体を痙攣させている。

  鼻腔から流れ込むその臭いが一変している、ひと嗅ぎするだけで体が反応した。

  それだけではない、すべてのものが少年の性感を刺激するのだ。

  その原因は、この地下水道のすみずみまで塗り込められた蛇女のフェロモン。

  ヘドロの臭いだろうが、なにかが腐った臭いだろうが関係ない。

  フェロモン臭だけが優先されて脳の快楽中枢を爆発させる。

  射精したはずなのに少年のペニスはビキビキと勃起してはちきれそうだった。

  気を失っているにもかかわらず、手が自然と股間の分身を愛撫する。

  自分の感じやすい部分を触るたびに少年の体が小刻みに反応する。

 

  そして、ふと気がついた時、少年ははしたなく股を広げ蛇女の前で自慰をしていた。

  「はっ、あっ!あああっ!」

  恥ずかしさで彼が動揺する。

  でも、止めようとしても止められない、たまらない羞恥心の中で少年は肉棒をしごいてしまう。

  「あっ、嫌!はぁぁあぁぁん!」

  蛇女の視線を意識したとたんに少年は果ててしまった。

  すこし薄まった精液が地下水道にトクトクと垂れる。

  「キモチイイノカ?セックスシタイノカ?」

  蛇女の問いかけに少年は頬を染めてうなづく。

  蛇女への嫌悪感は消えていた。

  むしろ、恋にも似た切ない気持ちが胸を占める。

  「せっくす、せっくすしたいです……」

  気持ちは勃起した分身に引きずられてすぐに肉欲に変わった。

  「また、卵にドピュドピュさせてくださぁぃ〜」

  少年はまるで馬鹿になってしまったかのようにカクカクと腰を振った。

  痛みがあったことなどは忘却の彼方だった。

  ただ肉壷が分身を締め付け、最後に訪れた最高の開放感しか思い出せない。

  「ダ・メ♪」

  歌うように蛇女が非情の宣告をする。

  少年の目に涙がたまる。

  「イイ子、ヨクオ聞キ。受精ニハ最初ノ濃イ液ヲ使ウ」

  「はぁ……、はいぃ」

  蛇女の唇が蠢くだけで少年は軽く絶頂してしまうようになっていた。

 

  蛇身がくねり蛇女が少年に尻を向ける。

  乳房よりもいっそう豊満で熟れた果実が少年の目の前で揺れた。

  テラテラと光る黒い尻、その奥の呼吸するように蠢く排泄孔もまたあの蛍光ピンクをしていた。

  唇への欲情と同じ感覚が少年の体に電撃のように走る、

  「あっ、ああっ……」

  ひくひくと少年の体が震えた。

  「快楽ノタメノ行為ハコッチ、ヨイ子ハコッチデナニガシタイ?」

  少年の口からよだれが流れる。

  「せっくす!お、お尻の穴でせっくすしたいですぅ!」

  腰をへこへこと振りながら少年が叫ぶ。

  「フフフ、ヨク言エマシタ。イイ子ニハ、ゴホウビ、サア……」

  地下水道の壁面に手を突き、蛇女の尻が少年のほうに突き出される。

  尻と尾の付け根からたちのぼる濃厚なフェロモン臭でくらくらした。

  肌よりも蛇身に近い黒の色をした尻たぶが目の前でゆらゆら揺れている。

  ビキビキに勃起したペニスがピンク色の排泄孔に吸い寄せられていく。

  ヌプッ、ヌプププ……

  卵の時に似た抵抗のあとで少年の分身が蛇女の腸壁にたどり着いた。

  蛇女の腸壁がほんすこしだけきつくペニスを締め上げる。

  「あぁ、射精る!射精るぅ!」

  それだけで卵に受精したときの快感がよみがえったのか少年は果ててしまった。

  「ふ〜、ふ〜、ふ〜」

  だが、一向に勃起は収まっていなかった。

  「サア、自分デ動クノヨ……」

  のの字を描くように蛇女の腰が動き少年の分身を猛り立たせた。

  少年の手が蛇女の尻を抱えるように差し出される。

  豊満な尻肉が手のひらに吸い付く、それだけで射精しそうな快感。

  それに耐えて少年は発情した犬のように腰を突き立てはじめた。

  ピンク色の孔がペニスをぎゅうぎゅうと締め付けている。

  腸壁がうねり亀頭やカリ首、裏筋をはいまわっていく。

  少年はそこで何度も何度も射精し、壊れた人形のように腰を振り出し続けた……

 

  「あ、ああっ、ああ……」

  精根尽き果て地下水道に横たわる少年。

  蛇女は少年の分身を尻ではさみ、しごいている。

  ピンク色の尻穴に軽く触れるたびに、鈴口がひくひくと蠢くがもう精液は出ない。

  夢見心地の少年に蛇女がささやきかける。

  「アナタハ"オス"。アタシノ従順ナ"オス"……」

  とろんとした目を開いて少年が繰り返す。

  「僕はオス、貴女の従順なオス……」

  「ウフフ、イイ子。イイ子ハイッパイ気持チヨクナレル」

  少年の口元をよだれが一筋流れる。

  「はひ、僕はいい子、だからいっぱい気持ちよくしてぇ〜」

  甘えるように下から腰を弱弱しく突き上げる。

  蛇女はその少年のペニスを手で包み軽く刺激してやる。

  「はぁぁん……」

  鈴口が再びひくひくと蠢き、少年は絶頂の感覚に陶酔した。

  「イイ子、ヨクオ聞キ」

  蛇女は地下水道に流れていた空のペットボトルを手に取ると、口からピンク色の液体をその中に流し込んだ。

  「今日逃ゲタ、オトモダチノ食事ニ、コレヲ混ゼテ食ベサセナサイ」

  「はひ、今日逃げた奴らの食事に僕はそれをいれますぅ」

  やわやわとペニスをしごかれる陶酔の中で少年は応じる。

  「イイ子ハ賢ク振舞ウ、ウマク行ッタラ、タクサン、タクサン、ゴホウビヲアゲル……」

  「ごほうび、ごほうび、たくさん……」

  淫夢のピンク色の雲の上で少年は命令を反芻する。

  蛇女が離れていく。

  良い子である少年はビクビクと勃起するペニスを下着とズボンの下に押し込む。

  片手にはペットボトル、その栓をきっちりと締める。

  地下水道を帰る道では自らの勃起した分身と、自分の尻の穴と蛇女の尻の穴を重ねる甘美な妄想を我慢するのでせいっぱいだった。

  それでも、少年は我慢できた。

  フェロモンの臭いよりもあの方の命令は絶対なのだ。

  「はぁふん……」

  命令のことを想うとズボンのなかのペニスがビクンと震える。

  まずは体をきれいにして、今日の事を笑い話にする。

  そのあとでペットボトルの中身を少しずつ使おうと少年は思った。

  少年はまず家に帰ることにする、蛇女のトリコとなって友達だったモノを奈落に突き落とすために……

 

 

  ――数日後。

 

  少年にいざなわれて再び少年たちは集まった。

  理由は少年に誘われたからだけではない。

  いつからか、この地下水路で汚れたモノに欲情してしまうようになったからだった。

  自分の汚した衣服に、あるいは服に、そして取り残された少年に……

  いつの間にか欲情し自慰にふけっている自分に気付いたとき、少年たちは恐怖した。

  自分たちの何かを変えてしまったものがあの地下水道にある!

  そう確信した少年たちは自分たちに用意できるだけの武装を持って再び集まった。

  金属バットだったり、ナイフだったり、催涙ガスだったりその程度の物だ。

  いささか心もとない……

  だが、地下水道の腐臭を嗅ぎ、不覚にも勃起してしまった少年たちは奥に進むことにした。

  あの大蛇を倒し、トラウマを払拭すればこんな異常さはなくなるんだと言い聞かせて……

 

  トリコになった少年は良い子で賢明なので一番最後を歩くことにした。

  逃げるためではなく逃がさないために……

  やがて奥へ進むごとに、蛇女のフェロモン臭が濃くなるごとに、少年たちから理性が消えた。

  それぞれのペニスがギンギンに勃起し、ズボンがテントを張る。

  目はうつろに、手から力が抜け武器を取り落としていく。

  最初のうちは拾っていたが、一人二人と陶酔に負けて武器を捨ててしまう。

  不安がって最後まで武器を持っていた少年も、

  「落ち着いて、深呼吸しよう、怖いことなんてなくなるから……」 そう耳元でささやくトリコの少年の言いなりになって臭気を深く吸い込んだとたん、

  武器を放してだらしなく自分の股間をいじり始めた。

 

  そして、行き止まりの鉄格子。

  トリコの少年を残して少年たちが腰を下ろして何度も自慰にふけっている。

  「フフフ、イイ子、賢イ子。タップリアトデゴホウビヲアゲル……」

  「ああぁ〜」

  その言葉だけで、トリコの少年の分身がズボンの中を蛇のように跳ね回る。

  少年は半目になってカクカクと腰を振り軽い絶頂を迎えた。

  「アノダラシナイ坊ヤ達ヲ、快楽ノ園ヘイザナウワ。ソレマデモウ少シ……」

  賢い少年は蛇女の言葉を理解する。

  あのだらしない友人達はあの方の許しもなく自慰をして果て、受精に必要な濃い精液を損なった。

  彼らに受精する権利はなくなったのだ。

  受精の快感を再び味わうためなら我慢する、そして賢い自分は彼らがあの方のトリコになるまで逃げないよう見張るのだ。

  「サア、全身ヲ使ッテ教エテアゲル、アナタ達ハ誰ノ"オス"ナノカ……」

  妖艶な蛇女の声が地下水道に響き、淫靡な儀式が再び始まる……

 

アナザー一覧に戻る