悪魔らしい悪魔




  「……どこだよここ」

 

  何を言っているのかわからねーと思うが……

  あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

 

  「近道に近所の林を歩いていたと思ったら、いつのまにか見知らぬ森林に迷い込んでいた―――」

 

  以下略。

 

  「しかも迷ったというオマケつき……」

 

  音がしないから帰る方向が全く分からない。

  いや、正確には音はするのだが、明らかに人が出す音じゃない。

  時間は分からないが暗くなりかけてる分、雰囲気盛りだくさんである。

 

  「どうしろと……」

 

  マジで怖い。

  知覚出来ない筈の幽霊を見つけた気分。

 

  もう、家に戻れるとは思えなかった。

 

  「何が出てきたって不思議じゃないなんて、思えるかよ……」

  それでも僅かに幸運はあった。

  散々歩いた末にようやく小屋がを見つけた。

  山小屋のようなものなのか、人は誰もいなかったがとりあえず入る事は出来た。

  「落ち着いたら腹減ったな……」

 

  なんせ朝から何も食べてないし。

  僕は学校に行く途中にここに来てしまったわけで他の何かを食べる機会がある筈もなく。

  一応私服だったから動くには困らなかったんだけど……

  私服OKの高校で良かったなあ全く。

 

  「こんな所に来る羽目にならなければ、もっと良かったんだけどな」

 

  とにかく、これからどうしようか。

  部屋の使用状態を見る限り、僅かに人が使っているみたいだけど……

  埃を見る限り、同じ人が使っているように思える。

  知識なんてまるで持ってないので唯の憶測なのが欠点。

 

  お先真っ暗な状態でガラス越しの景色をつっ立って見ている間抜けな僕。

  自己嫌悪も自嘲も出来ない本当に真っ暗な気分。

  そんな時、不意に背後の扉が開いた。

 

  「あれ?まー珍しくも人がいるではないですかー」

 

  光を感じた。

  慌てて振り返る。

  何となく間延びしたような、のんびりした言葉を発した少女を見つめる。

 

  紅く鮮やかな、腰まで届きそうな長い髪。

  幼さが残りつつも整っている綺麗で不思議な顔立ち。

  オレが今まで見てきた女の中では群を抜いて一番のスタイル。

  身長は僕と同じか、それとも少しばかり上のように見えるのは、少し男として悲しい。

 

  それでも、人生最大の窮地や、綺麗な少女の衝撃など放っておける驚きがあった。

 

  その少女には異物があった。

  人間では有りえない長い耳、黒色の羽、長い尻尾。

  ……と、手に提げた長ネギの頭を出した買い物袋らしきモノ。

 

  「…………」

  「おや無反応。驚かせちゃったですか?」

  「………………」

  「何か言ってくれないと寂しいと言いますか、所在ないのですよー?」

  「……………………」

  「でもやっぱり無反応ですか……」

 

  そりゃ驚いたともさ。

  リアルには無い、ファンタジーに遭遇した衝撃が買い物袋に負けたんだから。

  思わず晩飯は何かな、とか思っちゃったじゃないか。

  腹減ってるんだよ。

  僕の視線に気づいたらしい悪魔っぽいものは袋の中身をこちらに見えるようにして、

 

  「今夜は肉じゃがとのお達しで、ちょっと買ってきたんですよ。やっぱり館に引きこもって食餌をする悪魔より人間のほうが遥かに生産性が高いですねー。人間って優れていると思っていいんですよね?」

  「……分かりませんが、とりあえず肉じゃがは優れていると思います」

  「おお、やりました。コメントゲットです」

 

  肉じゃがっていうか、ジャガイモって美味しいよね。

  ポテチとか好きだし、祭りの時はじゃがバター絶対買うし。

  ……そんな事より、いい加減現実に立ち向かえ自分。

  目の前の人が悪魔だとは限らないじゃないか。

  いや、それよりもコスプレした電波な人というほうがよっぽど可能性としては高い。

  リアリストならリアルティのある可能性を信じないでどうするっていうんだ。

  自分が明らかに瞬間移動じみた事をしたことはこの際置いておく。

  あと、別に自分はリアリストではない。

 

  「あの、失礼だとは思いますが、どうしてそんな羽とか着けてるんですか?」

  「ふぬあ。私、悪魔に見えませんか?」

 

  ふぬあ?

 

  「見えるから聞いてるんです。わざわざ人がいない所でそういう格好、するもんじゃないでしょう」

  「君がいるじゃないですか」

  「僕に会うとは思ってなかったんだから僕の事は論外です」

  「……?……おお。でも、そしたら私にどうしろと?」

  「取れば良いじゃないですか」

  「羽を?」

  「羽とか耳とか尻尾ですね」

  「取れませんよ?」

  「そんな事ないでしょう」

  「じゃあやってみます?」

  「モチのロン」

 

  惚れ惚れするようなスムーズで真偽の程を確かめるコンタクトを取る事に成功。

  ほれ、やってみぃ。とばかりに背を向ける少女の近くに立って羽を触って見る。

  ……こうやって近くに来ると、少女服の間から覗く柔らかそうな肌が良く見える。

  それに髪から甘ったるいような、良い匂いがする。

  ……いかん。そういう事を考えるシーンじゃないだろう。

 

  「どうですよー?本物の質感でしょう?」

  「……確かに、そうですけど…強く引っ張ったりするとどうなります?」

  「付け根の肉が引きちぎられるような思いをする以外にはないですねー」

  「……やめときます」

 

  大人しく尻尾とかを弱めに握ったり撫でてみたりしながら思考する。

  こんな形で産まれてくる人間は、まずいない。

  確か、奇形児でも人間の構造上有りえないモノは付属しない筈だ。

 

  「ん……やぁ、ぁん。感じちゃいますよう」

  「……せめてくすぐったいって言ってくださいよ」

  「感じるんだからしょうがないじゃないですかぁ……んぅ」

 

  ああもう。すぐ近くで色っぽい声を出されると、集中できない!

  とにかく考えろよ自分。

  ここまで来たら悪魔だって信じるしかないじゃないか。

  たとえ買い物帰りの少女だったとしても!

 

  ……だとしたら僕はヤバイんじゃないか?

  こんな間の抜けたような少女だとしても、悪魔は悪魔だ。

  第一、悪魔ってのは大抵において人を甘言で誘惑してパックリやっちゃうようなものじゃないか。

  だからこの少女でも油断はしちゃいけない。

 

  「―――んぅ〜。にゃぁ〜」

  ……この状況で色々とどうしろと?

  逃げるか?何処へ?行くあてなんてないぞ?この買い物帰りの少女に着いて行った方がいいんじゃないか?悪魔に?英雄や勇者に退治されるまでは、絶対として人を喰らう悪魔に?

  僕は、どうしたらいい?

  生きるためには、何を?

 

  「っ……」

  「ふぬあ?……もう確認はいいんですか?」

  「え?ああ、はい。もう結構です。ありがとうございました」

  「ふふ、どういたしまして」

  「―――」

 

  その時にふと見せた優しい笑み。

  嘘や騙し合いの中で生きてきた僕には、しかしその笑みは飾り物だとは思えない。

  それに、彼女の笑顔は―――ひどいくらい魅力的だった。

 

  「ねえ、君……私のほうからも、一つ質問をいいですか?」

  「かまいませんよ」

  「―――どうやって、生きてきたんですか?」

 

  その質問の意味が、分からなかった。

  ―――どうやって―――

  ……どのような、も何もない。

  「別に、普通にですけど……何か」

  「だって、普通に生きてくれば私が悪魔かどうかなんて疑わないですよ。―――そう、人間が悪魔に仮装するなんて、ありえないんですから」

 

  僕が何を思っていたのか、さすがに分かっていたか。

  後ろめたさと、気持ち悪さ。

  耐えられない、つまり、ソレは―――

 

  「見た事も触った事もない素材のお洋服。無常識。もしかして、ここの世界の人じゃないんですか?」

  「……疑問系のわりには随分と確信的な物言いじゃないですか。証拠はあるんですか?」

  「君は疑問系のわりには威圧的な言い方ですね。もしかして、怒ってます?それとも、ご自分の立場に納得できませんか?」

  「…………」

 

  悪魔は言う。

  ごく稀にある話だと。

  僕は、別の世界に入り込んでしまったと。

  認められないに決まっている。

  不意に終わる元の暮らし。

  家族にも友達にも会えない。好きなものがない。

  そんなの―――そんなのはまるで生ける死者のようで吐き気がする……!

 

  「それで、どんな具合ですか。こんな所にいる位だから里には行けてませんよね?この小屋に一人でいたんですね。寂しかったですか?私が来て安心しましたか?」

  「―――本当に、いちいち人の心理を当ててきますね。だとしたら、どうだっていうんですか?」

  「それこそ核心ですね。だとすれば、私はどうするかっていうと―――」

  空気が凍てついていく。

  強く、ある一点を睨む彼女。

  少なくとも、僕のストーリーには存在しえなかった筈の鋭い殺気。

  それが今、向けられているのは―――

 

  「―――とりあえず、君の安全を確保しないと落ち着かないと判断します」

  「……は?」

  僕ではないのは彼女の目線が外に向いているので分かる。

  でも、僕の安全のため?

  僕の身なんて考えていないと思っていたから、てっきり僕は助けになる人間が来たのかと思っていた。

  「ねえ君。水飛沫をあげるみたいな血って、見た事あります?」

  「あるわけないでしょう。…僕の事を一体なんだと思っているんですか」

  「変な子、ですかねえ。まあ、とりあえずはここでジッとしていてください。目を閉じてると尚良しです」

  「…………」

  何を言いたいかくらい、わかる。でも。

  僕を助けるらしい彼女を見る。

 

  途端、本気で寒気がした。

  爛々と輝くアカイアカイヒトゴロシの眼。

  瞬きした瞬間、現れていた絶対の氷の片手槍。

  強烈な紅と蒼の対比。

  ヒトゴロシ。

  人を甘言と虚言と契約で殺す―――悪魔。

  「まあ、だからあんまり気にしないほうが身のためですって事ですよー」

  刹那、目に留まらぬ速さで彼女が窓を突き破り駆けだした。

  僕は窓の欠片を浴び、思わず腕で顔を隠す。

 

  「やめろ、貴様!何故だ、我々は―――!」

  「―――ヒュッ」

  空から、赤い雨が降ってきた。

  直後、彼女と同じような形をした、男性が落ちてくる。

  右肩にかけて斜め一線、殴り破れたような体をした男性が。

  「う……」

  破れているところから肉も骨も、臓物すら見える。

  マンガやゲームとは違う。リアルな人型の死体。

  汚い、不細工だ、気持ち悪い―――

  その、明らかに死んでいる死体に向かって、空から槍が投げ下ろされる。

  ソレは顔を貫き、そして光り―――

  「ふぅ」

  弔いの言葉を送られることもなく、氷の槍の消滅と共に、消え去った。

  残ったのは、首のない人型をした肉のカタマリ。

 

 

  「な……な……」

  「見ないほうが良いっていったのに…まあ好奇心旺盛なころですからねー」

  「そ…それだけ、なのか?」

  「ふぬあ?…ああ、君は気づいてなかったみたいですけど、何かさっきから狙われてたんですよー」

  「そうじゃ、なくって!アレは!お前と同じ悪魔なんじゃないのか!?」

  同じ悪魔を。同族を。

  「ですけど、それがなにか?」

  「だって、アレは!フツーお前が襲ってくるはずはない、みたいな事をいっていただろう!」

  「思い込みじゃないですかね?私は差別しませんし…まあ主は別ですが」

  あんなにアッサリと。何も思うところもなく。

  「お…おかしいだろ!やらなくてもいい事までやって!」

  「トドメをさしたことですか?いや、何かの手違いで生き返っちゃったら怖いじゃないですか。あはは」

  「―――っ、そんなの……!」

  「やっぱり。君ってば、優しくて甘いんですね。んー、良い子ですねー」

  殺すだけでは飽き足らず、その人物の認証になる顔まで木っ端微塵に消し去った。

  だっていうのに、心の底から何も変わらず、変わらない態度でまた、僕に接するコイツは!

  嫌だ、悪魔なんて、イヤだ―――!

  「マジかよ…異常だよ、お前……!」

  「…あらあら、本気で引かれちゃいましたか。残念。今の私、素の私は気に入りませんか?」

  「当たり前だ!お前みたいな悪魔、願い下げだ!」

  「…もう。君のためにやったのに。いいです。それなら君の望むとおりの悪魔の性質になるだけですから―――」

 

 

  次の瞬間、僕は壁に思いっきり激突していた。

  知らない間に彼女に胸倉を掴まれ、グイと持っていかれたのだ。

  「グクっ…ぐぅ!」

  その衝撃で鈍い痛みが走る。

  本気で、背骨が腹から出てくるかと思った。

  ありえねえ、その女らしい華奢な腕でどうやって―――!

 

  「クス…人の好意を受け取れなかったせいで、大ピンチよ」

  悪魔の妖艶な口調。口から覗く牙。

  さっき、彼女の様子が変貌したときにも見えていたソレ。

  ソレが首筋に押し当てられる。

 

  ―――冗談じゃない。いくら可愛いくても、人間と悪魔は絶対に相容れない!

 

  「うっ、ああああああああアアアアアアアアアアア!」

  突き飛ばそうとしても力比べで負ける。

  逃げられない。

  嫌だ。

  変な世界に来てしまった事も、悪魔に襲われている事も、誰も知らない内に死んでしまう不条理も、

  嫌だ嫌だイヤだイヤだいやだいやだ!

 

  「怯えすぎよ?これは君が望んだ事でしょう。私は素の態度のほうが好きなんだけど、ね」

  そうして突然口を塞がれた。

  ファーストキス。

  眼前が少女の顔で埋まる。

  突然過ぎる事態に頭がついていかない。

  突然といえば、全て突然なのだが、これは群を抜いていた。

  「んむっ…!?」

  彼女の舌が僕の唇を割って口内に侵入してくる。

  暖かいような不思議な感触。

  ソレは唾液を含みながら、僕の舌に絡み付いて犯してくる。

 

  少女を見る。

  彼女の目は開いていた。

  こちらの動揺を笑うように、愉しそう顔で視線を合わす。

  耐えられない。

  悪魔の勝手さに。コレをキモチイイと感じている自分に。

  「んくっ、む…っ」

  息が出来ず苦しくなる。

  その様子すら、悪魔は楽しそうに見つめてくる。

  それでも、ようやくキスは終わってくれた。

 

  「うふふ…ねえ、ファーストキスの味はどうだった?」

  「…………」

  「あっと。うっかりしてたわ。もしかして初めては終わってる?」

  「………………」

  「ないみたいね。良かった。お姉さん安心しちゃったわ」

  「……………………」

  「ねえ、何か言う事はないの?」

  「っ……何もありません!どうぞ、好き勝手にやって終わってくださいよ」

  「落ち着いてきたみたいなのに、怒ってるの?寂しいわね、もう…」

  「…………」

  「本当は謝ったほうがいいって思ってないの?」

  同族を躊躇いなく槍で切り裂いた女に、何を。

  人を殺すのに戸惑いのない彼女に、何を謝ればいい。

  ―――僕を助けてくれたみたいなのに。

  心が、ズキりと痛んだ。

  僕に負い目があると思っている、証拠だった。

  「…………」

  「まあ仕方ないわね…素直になるまで、シテあげる」

 

  言うがいなや再びキスをされる。

  今度は僕の体に彼女の腕が絡みつき、彼女の体を強く押し当てられる。

  少女の体つきがハッキリと分かる。

  服越しには分かりづらい胸の大きさや、弾力。

  初めて感じる、女の体。

  2度目のキスに、慣れはない。

  性的興奮。

  感じている。

  彼女の体に自分の性器が当たっているの分かってしまう。

  顔が熱くなる。赤く染まっているのが理解できてしまう。

  悪魔にそれがバレるのがたまらなくイヤだった。

  ―――つまり、嫌悪感のほうが勝っていた。

 

  「んむぅ……ちょっと、少しくらい舌を使ってくれても良いじゃない」

  「不満げに言われても、拒否します」

  「……感じてるくせに」

  「……自分で、悪魔とするのが嫌なんです。他はありません」

 

  気まずくなって目を逸らす。

  彼女として、気持ちよくなる度に、あの死体がフラッシュバックする。

  ここの常識では、彼女は本当は悪くないかもしれないのに。

  出あって間もなくとも、彼女を傷つけたとわかっているのに。

  僕の中には今、劣情しかない。

  「だから、止めて欲しいんです。助けて…ください」

  「助けて…ねえ。でも、それならやっぱり報酬はもらわないと」

 

  「ほら、だから嫌悪感むき出しな君を堕とすとか…ね?」

 

  「キスの練習から始めましょうか」

  そういって彼女は再び唇を合わせてくる。

  舌を絡み合わせて、僕にも積極性を持たせるように、誘うように。

  ……悔しいけど、上手いと言うしかない。

  されるがままになっているだけで、僕にもキスの仕方が分かってくるんだから。

 

  「ねえ、君もして、って言ってるじゃない。しないと、イかせてあげないわよ?」

  「なっ!?」

  おもむろにズボンを下げられ、性器を露出させられる。

  「クス…女の人に扱かれるのは初めてでしょう。気持ちいい?」

  手で性器を掴まれ、そのまま柔らかい手つきで上下に扱かれる。

  少しだけ冷たい手が、僕がするより淫らな動作で責め立てる。

  そのままその手は、僕の敏感な所を見つけ出して弄って遊ぶ。

  「うあ…っ」

  「声出しちゃうなんて、可愛い。でも…君からキスしてくれるまでは、絶対にイかせないわよ…?」

  「そん、なの…うぁっ」

 

  そのまま残酷なまでに優しい刺激を送られ続ける。

  それでも屈せなかった。

  素直に従ったほうが良いのは分かってる。

  でも出来なかった。くだらない自尊が阻害する。

  悪魔とはしたくない。

  ワケノワカラナイものとなんて、したくない。

 

  「こうやって長い間焦らしてるのも面白くないんだけど…そうねえ」

  彼女は僕の上着も捲り上げ、空いている片方の手で僕の乳首をつまんで刺激しはじめた。

  「こうやってクニクニ弄られるの、気持ち良いでしょう。甘ったるくて、興奮しちゃうわよね」

  甘ったるいといえば全て甘ったるい。

  口と、胸と性器を同時に優しく責められて、僕の理性は崩れていく。

  「君の目、トロンとしてきたわよ。おっぱいで感じちゃったなら、そうね…」

 

  「一度だけ、おっぱいを激しく苛めちゃいましょうか」

 

  そう囁いて、彼女は自分の顔を僕の胸と同じ高さにあわせる。

  何をされるかくらい、分かっている。

  止めて欲しい。

  それ以上されたら、僕は……

 

  「おっぱいに激しいキス、してあげる。頭蕩けちゃってかまわないわよ」

  唾液で濡らされた後、乳首に吸い付かれる。

  右手で、空いている乳首を同じようにつまみあげ、左手は性器を撫で付けてくる。

  「うぁぁ!?」

  口にはされていない、激しい吸い上げ。

  胸が液体のピチャピチャ。ジュゥ。と音を鳴らす。

  辛い。

  脳髄が蕩かされる。

  「う…くぅ!や…ダメ、やめて……っ!!」

  「男の子なのに、おっぱいで感じすぎよ?いけない子ね、もう片方にもやってあげないと」

  「やだ…っ、おかしくなるせめてイかせてっ…」

  イきたい。イかせて欲しい。もっと感じさせて欲しい。

  「おねだりしても、ダメです。ちゃーんと君がキスしてくれないと、ね」

  何分もそのまま胸を責め続けられる。

  「あは…君のおちんちんから我慢汁、いっぱい出てきたわよ。おちんちんヌルヌルしてるの、分かるわね?」

  イかせてくれないクセに、どちらかの手が必ず性器を弄り続ける。

  ニチャニチャと、いやらしい音を立てながら。

  優しく、穏やかに、貶めるように。

 

  「うぁ、あくっ…も、むり……」

  立っていられなく座り込む。

  その僕の様子を見て、悪魔は胸を弄るのをやめ、僕と顔をつきあわせる。

  「ふふ…もういいじゃない。君は良く耐えたよ、頑張りました。だから……」

  優しい誘うような笑み。

  彼女のどの笑みが偽者で、どれが本物なのか、判断がつかない。

  自分は何をしているのだろう。

  頭が回らない。なにもかんがえられない。

  「ほら、君からキスして、ね?それだけで、楽しく、楽になれるのよ…?」

  耳元で囁かれる。

  …抵抗出来ない。その声に脳髄を掴まれた。

 

  初めて、自分から悪魔を求めた。

  「んむっ…ちゅ…ん…」

  教えられた技術を総動員して悪魔の口を犯す。犯させられる。

  僕がキスしてる時の彼女の顔は、満足そうで、愉しそうだった。

  分からない。

  所詮、僕のは付け焼刃で彼女の満足するような出来じゃあないだろう。

  愉しそうなのは分かる。

  でも、満足になる理由が分からない。

  そんな事を考える自分が分からない。

  思考がめちゃくちゃになっている。

 

  ―――酷く、僕が興奮してる事だけは分かっている。

 

  もっと興奮したい。

  もっと気持ちよくなりたい。

  もっと彼女の体を暴きたい。

  アクマだろうと化け物だろうと構うものか……!

 

  ちゅぅ、と淫らな水音を立てながら口を離される。

  「ふふ、及第点ですね。…どうしたの、顔、残念そうよ?」

  「…………」

  否定できない。

  間違いなく僕は、もっと彼女としていたかった。

  「困ったさんね、君は。本当はイかせて欲しいんでしょう?」

  「ぅ……はい」

  視線を合わせる。

  彼女の紅い目に吸い込まれそうになる。

  「クス…じゃあ、とりあえずの最後は―――」

  再び彼女の顔が下がる。

  今度は胸の場所では止まらず、そのまま股間の所まで下げられる。

 

  「お口で全部しましょうね?おちんちん、食べてあげる」

 

  そうして性器が彼女の小さな、牙の生えていない口に食べられる。

  彼女の口が吸い付いてくる。

  「ちゅ…ん、はぁ……んむ、はぁ…」

  焦らすのを目的としていない、イかせるための性的な動作。

  僕の舌にしたみたいに、いやらしく舌が絡み付いてくる。

  「ふふ……君のおちんちん、我慢汁がいっぱい出てて、美味しいよ…はむ…」

  散々焦らされたせいで我慢できない。

  刺激を求めるために、堪らず彼女の事を考えず腰を突き出してしまう。

  「ふむっ!?ん…っ。ぢゅ、ぢゅる、んふっ!ふぁ、ぢゅぅ!」

  「うぁ、あっ、ああっ!!」

  それに応えるように、彼女もスパートをかけ始める。

  口を上下にストロークさせ、その上思いっきり吸い上げてくる。

  嫌悪している悪魔にされて悦んでいる背徳感。

  初めてのフェラチオ。

  ここにきて我慢なんてできるわけないっ……!

  「あアっ、で、もう、むり、ですっ!」

  「んむっ!?んぅ……ん、……」

  そのまま精液を少女の口に出してしまった。

  長い射精感。今までにないキモチヨサ。

  その証を、彼女に長い時間をかけて飲み干される。

  「ん…んむ…ごくん……くふっ、ネバネバしてて、すっごい匂い。イイ味よ。君の精液」

  淫靡な笑みで、少女は穏やかに笑う。

 

 

 

  「……でー、どうなんですかー。まだ私のこと嫌いなんですかぁー?」

  「う……」

  で、その後。

  2回目に突入するなんて僕には体力的に?無理なわけで。

  いやになるくらい冷静になった僕たちは座談会に入り込んだ。

  「それは…ですね…」

  さっきは誘惑に負けて流されてしまったが、今回はいやになるくらいの冷静なのである。

  プライドが邪魔して、謝れない。ぶっちゃけ。

  つまるところ、僕はこの悪魔の少女とは仲良くするべきだと思っているのだ。

  過程はともかく、結果的に助けてくれたんだろうし。

  手をだすタイミングなら幾らでもあるのに、まだ僕は生きている。

  冷静になれば、謝るべきなんだ。

  ……体を千切られ、首のない死体。

  割り切れるもんじゃねえよ…

 

  「むー。じゃあこんなのはどうでしょう」

  「はい?」

  と、続いていた沈黙を、少女の提案で打ち切られた。

  「私が、これから仕えてるっつーか住んでいる館まで案内します」

  「……」

  「当たり前ですが、そこで泊まれるように手配しますよ?」

  「いや、それくらいは…」

  「どうでしょうね、けっこう君、簡単に人を信じてくれないみたいですし」

  「うぐ…」

  さっきのを根に持ってるのか?

  「まあとにかく、それで料金は、君と私が信頼できる友達になるってことです」

  「それは……つまり」

  「ああ、君一人でここから出歩けるなんて思わないほうがいいですよ」

  「……と、いうと?脅迫ですか?」

  例えば、断ると死刑とか。

  まさかね。

  ………………

  「んなわけなくて。単純に他の妖怪にばっくりですよ。今日の君は運が良かったんですねー

  「はぁ…」

  「世界の果てから落ちても生きるくらいの確率でしょうかね?」

  「つまりたいした事ないってことですか?」

  アレ、どっから落ちても無傷だもんなぁ。

  「まあとにかくどうなんですか答えて下さい三二一」

  「はやっ!」

  「まあとにかくはやっ!ですか」

  「…………」

  ついていけんわ。

 

  まあ、とにかく……

  落ち着いて考えれば、着いていくべきだろう。

  冷静な状況で、理性を以って悪魔に従う。

  ……どんな理由があろうとも、それは屈した事になるんじゃないか?

  ……屈して困る理由こそ、ないか?

  アレは……僕には、関係、ない。

  「わかりました。貴方の条件を、呑みます」

  しっかりと彼女の紅い眼を見て、できるだけ真摯に答えてみせる。

  「あは……それじゃあ行きましょうか」

  「展開早いですね!?」

  「だって、たかがお使い帰りで遅れすぎですもん。怒られるかなぁ……」

  「ああ……そういえば肉じゃがでしたっけ」

  折角決めたんだけどなぁ……なんかやるせない。

  先行して彼女が扉まで歩いていって、ふと思い出したように振り返る。

  「ふぬあ、大切な事が、一つありました」

  「……?なんですか?買い物袋なら持ちませんよ?」

  「違いますっ!……も〜」

  んな私プンプンしてます、みたいなオーラだされても。

  「名前ですよ、名前。お互いの名前を明かしましょう」

  「……ああ」

  そういえば、今まで名前を一回も使ってないんだよな。

  多分ごめんなさい。

  「でも名前…ですか、僕はともかく、貴方は?」

  確か、悪魔は真名ってやつを知られちゃ困るんじゃなかったっけ?

  弱くなるとか、なんだとか。

  このタイミングで偽名を使うってのもどうよ。

  「真名のことですか?そんなもんは訳ありでないんです」

  「ああ、そう…」

 

  「それじゃあ、改めて。僕の名前は、真月、終です。これから、よろしくお願いします」

  「まづき、しゅう。ですか。シュウくんでいいです?」

  その若干区切りの悪い言い方はなんだ。

  「まあ、結構ですよ。拘りもないですし」

  「そうですか、それでは……」

 

  扉は開いている。

  森の中。幻想的な雰囲気などありはしない。

  その薄暗さのなかでは、月明かりすらも世界の中で同色だった。

  「私の名前は、シェルリァフィアです。シェリアって呼んでくださいねっ!」

  だけど、その中で彼女…シェリアだけは異色だった。

  まるで、異世界の住人のように。

  異世界に来て、そこでまた、その世界にとって異世界の存在を見る。

  そんなのはばかげている。でも、それでかまわないのだろう。

  「これから、よろしくお願いしますね!シュウくん!」

  アレがフラッシュバック。

  …………

  そう、世の中ってのは不条理に出来ているんだから。

 

  現実を知らせる、冷たい風だけが吹き込んでいた。

 

 

  「………………」

  「どうしたんですか、シュウくん?顔、真っ青ですよ?これからどうします?」

  「もう、寝たい……」

  やつれるわ。

  特別長い距離ではないが、それでも距離にしておよそ5キロは歩くには長い。

  それじゃあやっていられない、と。シェリアは空を飛ぶことにしたのだった。

  飛べない僕はどうしたかって?

  片腕で担がれたよ。上空を、たったそれだけで飛んでたさ。

  思わずシェリアに抱きついたさ!怖くて!

 

  それと、彼女の予想通り僕という餌を狙って悪魔とは全く別モノの妖怪に襲われた。

  詳細に関しては略したい。

  なんでかって、例外なく末路が最初のアレと一緒だったから。

  やり方はライトにしてくれてたけど…結果でいえば一緒なんだよなぁ…

  容赦ないっていうか。

  「とにかく、最高にアトラクションだった、と」

  「ふぬあ?まあとりあえず入りますよ?」

  入る先は彼女が仕えている主が住む館。

  悪魔城ドラキュラみたいなのではない。

  なんというか、ホワイトハウスがブラック多分ハウスになったといえば分かりやすい。

  でけー。

  なんて感想に溺れていると、シェリアは少しだけ険のある顔で、

  「いいですか?館内では私から離れないでくださいね?人間一人でうろついたらピンチですからね?」

  「人間一人って……やっぱり、ここって」

  「分かりましたね。それじゃあ、行きましょうか」

 

  中を案内される。

  当然のようにフロアには赤い絨毯。

  明かりはランプときたか。

  のんびりと歩く。

  その途中、メイドと思われる人(妖怪)に怪訝だったり、捕食って顔をされた。

  「……マジで離れられないな」

  「ふぬあ?……はい、着きましたよー。シュウくんの運命を決する主様のお部屋でーす」

  「まあ緊張感のない宣告だね…と、その割には案外入り口が小さいですね?」

  「うーん、それがですねえ。狭い部屋じゃないと本が取りづらいとか、なんとか。引きこもりなんですねえ」

  なんか、もう内部が想像できたな……

 

  「どうもーただいま戻りましたー」

  それでその内部。

  図書室を収縮したような、壁が本棚に覆われていて、床にまで本が積み重ねられている。

  それでもバラバラになっているわけではない。

  けっこう几帳面らしい。

  てゆーか、机とベッドと本しかねー部屋が主の部屋かよ。

  「遅いわよ…で、そこの人は誰?」

  肝心な主人は小柄で、白を基調としたワンピースっぽいものを着ている。

  っぽい、っていうのは何となくワンピースっぽくないからである。ご想像に任せます。

  その割にイメージとしては、無愛想もしくはクールな人である。

  少なくとも純真はない。

  「この人はですねー、シュウくんなんですよー」

  「……間違ってはいないけど…もう少し詳しく説明なさいよ」

  「えーっとですねー。いつものとおり休憩に寄った小屋に別世界から来た少年が独り居たので拾ってきちゃいました」

  僕は捨て猫かい。

  しかもそれで終わりか。

  「それで、ここにおいておきたいと?」

  その表現だと、本当に愛玩動物だと思われてそうで嫌なんでが。

  言わないけどね。

  「そうなんですよー」

  「……別にいいけど」

  いいのかよ。

  妖怪しか居ないところに人間をそう簡単にホイと泊めれるのか?

  食料だったら分かりますけどね。

  言わないけど。

  「でも、その子に一部屋貸すことなんて出来ないわよ?それくらいわかるわよね?」

  「わかってますよー」

  へー、僕は部屋無しかー。

  へー……

  「―――って、それじゃあ僕はどうするんですか!?」

  とうとう言った。

  「ふぬあ?」

  「キョトンとしないでください!部屋がないなら僕はどうするんですか!?座してその辺の人に食われるの待ってるんですか!?」

  「いえいえそんな。もっと視野を広げましょうよ」

  「広げるって…むしろ喰われろとでも言うんですか」

  「違いますー。ヒントー。飼い主の責任ー」

  マジで僕はペットか。

  それはともかく。

  「主っていうのは、この場合シェリアさんのことですよね…まさか」

  「多分きっと正解でーす!シュウ君は私と一緒の部屋ですよーいえー」

  「いえー……」

 

  「はいはい、盛り上がってるところ悪いけど」

  と、そう見えるらしい主に諌められるシェリア。

  「…とにかく、私はその子…シュウ君に話があるから、貴方はでていきなさい」

  「ふぬあ?絶対ですか?…そうですか。うえー……」

  主人の命令は絶対らしく、何故か力なくフラフラと歩いていくシェリア。

  出て行き、扉が閉まった所で主たる彼女が口を開く。

  「さて、少しだけお話しましょう。君も座りなさいな」

  言われて、僕も近くにあった椅子に腰掛ける。

  「どうも。それで……あの……えっと……主さん?」

  「何よそれ」

  「よくよく考えれば、失礼だとは思うんですが貴方の名前を知らないんです、僕」

  うっかりしてた。

  というか、今回に関して僕、相手の名前を保留しすぎではないだろうか。

  「あの子…最初に教えておきなさいよ…」

  なんて、彼女はため息をついてから。

  「私の名前はタミールよ」

  と、作法も何もなく素っ気無くそう言った。

  「勿論、本名はもっと長いけど、そんなの貴方に名乗っても仕方ないでしょう」

  バカにされている…わけじゃあないのかな。

  その子…とか年下扱いは受けているけど、少なくとも人扱いでの話だし。

  …と、なんだ、僕。えらく基準が底辺になってるじゃないか。

  「私の名前でコレの元ネタが分かった方はなかなかに玄人だわ」

  「ちょ…!いきなりリアルに危険な発言はやめてくださいよ!」

  いきなり超時空に飛ばないでくれ。

  シリアスになりたいお年頃なんだよ。

  ―――仕方ない…

  ―――私の名前でコレの元ネタが分かった方はなかなかに玄人だわ。

  ―――あとシュウ君の原型が分かる人はイトウ並みにエスパーよ。

  「僕の思考をハッキングするのも禁止です!」

  「……ケチ」

  伏し目がちに横を見て、ポツリと呟く。

  うわ、やっべ。可愛い。

 

  「それで、貴方に言っておくべきことだけど」

  あーやべーですよこれ。なんて考えてる僕を置いて、一人冷静に戻ったタミールさん。

  「命令かなんかですか?」

  「そうね。まず一つ目。彼女…シェリアがいない限りは部屋から出ないようにしなさい」

  「…はぁ。理由は、さっき聞きましたけど…」

  最初に言うことが、僕の身の安全か。

  主人としたら、他に言うべきことがあると思うんだけどな。

  威厳とか、建前。

  「さすがに三日もたてばみんな覚えるでしょうけどね。まあ慣れる意味でも我慢なさい」

  「…分かりました。ありがとうございます」

  「よろしい。それと二つ目、あの子のこと、どう思ってる?」

  「…異世界とかに関しては、聞かないんですね」

  「今聞きたいことはないわ。それは追々…で、どうなの」

  サバサバしてるなあ。

  話やすいから、いいけど。

  「シュウ君、君、あの子の事怖がってるでしょう」

  「……なんで、それが」

  「目と態度を見れば分かるわよ。自分で気づかないくらいには避けてるのが見えるわ」

  「…まあ、はい」

  仲直りはしようとしたが、彼女への嫌悪感はまだ消えていない。

  あの光景が、頭から離れない。

  その事を、包み隠さず全てタミールさんに説明した。

  この人に隠し事をしようとは思わない。

  理由?

  短い期間で生まれた無責任な信頼と、打算だよ。

  「……バカね、あの子。故意にやったとしか思えないミスだわ」

  「…故意に、やったとしか?」

  「勘ぐらないで、ただの私の感想よ」

 

  「同族殺しが、嫌い?」

  「…嫌いですね、他の生物は共食い以上の事はしないですよ」

  「貴方も馬鹿ね。相手を食べなくても、十分共食いよ」

  「…………」

  「気にしないようになさい。殺人だってなんだって、貴方が見たとおりの意味しかないのよ」

  見たとおりの意味。

  アレを見たとおりの意味?

  人が死んでいた。人が殺された。ソレは終わっていた。

  それだけしか、分からない。

  分からないから、最後に一つだけ聞いた。

  「…なんで、助けてくれるんですか?」

  「私も含めての質問?…それなりに好意を持てそうな君がいて、丁度君は困っていた。理由があるとすればこれだけね」

  それは、至極あたりまえの話で。

  考えるまでもない当然の前提だ。

 

  そうして、部屋を出た。

  出た後は妙にノリノリなシェリアに連れられて、彼女の部屋に来た。

  異性の部屋に来るのは初めてじゃないが、そこで寝泊りするのは流石に始めてである。

  若干の緊張とともに、その部屋の扉をあけた。

  「いやー飾りっ気がなくてすいませんねー」

  「……おお」

  なんだか、家具の質とかはともかく僕の部屋に似ている。

  物がない。

  タミールさんの部屋から本が8割減り、そこに箪笥とかがくっついた程度である。

  「…落ち着きますね。よく寝れそうです」

  どう頑張っても女性の特有の私物に気を取られないしな…

  「ほんとですか!?それじゃあ早速!」

  「―――は?って、うわぁぁ!?」

  いきなりベッドに押し倒された。

  ふと思い返す。

  ―――これからどうします?

  ―――もう、寝たい。

  ―――よく寝れそうです。

  ……そういう意味じゃねえええええ!

 

  「ま…待て!そういう意味じゃなくて―――」

  「だめですよー♪私はもうずっと期待してたんですよー」

  ノ…ノリノリ!

  「うふふ…童貞君なんですよねー、どうしましょっかー」

  「羞恥プレイでもするんですか……」

  あまり露骨に言われると傷つく。

  僕はまだナーバスなお年頃でもあるんだよ。

  「ふぬあ…やっぱりぃ、君にとっては普通の状況じゃないんだから、普通じゃないほうが盛り上がりますねえ」

  「ふ…不吉なこと言わないでください!普通、普通でいいです!せめて!」

  「せめて、なんていう失礼な子のいう事なんて聞きませんですー」

  言うがいなや、体を反転させられる。

  体はうつ伏せになり、シェリアが足の上に乗り、体を固定される。

  まてまてまて…

  いくらなんでも、おかしいだろ。

  なんで僕のほうが、いわゆるバックの体制にならなきゃいけないんだ。

  「ちょっと…!これ、なんですか!」

  「分かりません?童貞より先にぃー、処女、奪っちゃおうかなぁ……って」

  「処女って……!」

  それが意味するところ。

  …………

  マジで、か……?

  「ちょ…百歩譲ったとしても、どうやって!」

  「淫魔としての力とータミールさん特製の薬を合わせればーほら」

  「うげ…」

  一瞬シェリアが光ったと同時に、彼女のスカートの部分…股間の部分が膨らんでいる。

  ショックが止まりません。

  コトが済んでしまえば僕は立ち直れんよ!

  何作ってるんだタミールさん!

  人間にバイオテクノロジーはまだ早い!

  「ほ…本気、ですか?冗談でしょう?」

  「本気ですよー。ただですねー…」

  若干暗そうな、悩みがあるような顔をするシェリアさん。

  やった、突破口ありか…!?

  詭弁でもなんでも使って―――

  「ここの人達に何でもアリだと思われている私ですけど、お尻関連は挿れるの以外は駄目なんですよー…」

  「は…?」

  「だからー君のお尻をほぐすのはこのローションだけで勘弁してくださいね…?」

  そんな、申し訳なさそうに言われても。

  だったら止めてくれよ。

  っていうかアンタのサイズじゃあデカすぎだろ。

  掘るっていうよりは削りながら抉るだよ。

  明らかなオーバーフローだよ。

  「まあ、あんまりほぐしてないほうが私が気持ちいいってのもありますが」

  「最低だな!?」

  「えへー。さ、じゃあ脱がしますよー」

  「ああ、ご堪忍をー」

  抵抗するまもなくズボンを降ろされる。

  ていうか、えへー、の部分ですでに脱がしにかかるのは反則だろう。

  その後、容器を傾け中にローションを入れられる。

  「うわ…なんだこれ、生あったかくてヌルヌルしてる」

  「そういうものですよ?」

  「そんな事じゃなくて」

  「ふぬあ?まあいいです。私も脱ぎますねー」

  スカートと下着が脱がれる。

  本来蟲惑的なはずの光景は股間のペニスのせいで最悪である。

  「えへー。おっきいですよー」

  「笑顔で言われると素で気持ち悪いんですが…」

  「ふぬあ…まあ、否定はしませんけど…さ、挿れますよー」

  「ぃえ!?お、女性にペニスで犯されるなんて普通じゃないでしょう!馬鹿ですか貴方は!」

  「さぁ?でも倒錯的だと思いません?」

  「知るかそんなの!ほ、本当にやるつもりなんですか!?狂ってんじゃないのか!」

  「モチのロン」

 

  無情な宣告と共に、シェリアが僕の腰を持ち上げ、ペニスを挿れる。

  「うあ゛…っ!?」

  「まだ先っぽしか入ってませんよ?もっと頑張らないと辛いですよ」

  そのまま、ゆっくりとした勢いで、でも止まることなく、どんどんと僕の お尻の窄まりに入れてくる。

  内側から強烈に押される圧迫感。

  「うがあ゛…がっぅ!やめ、太、すぎ!」

  「うわぁ…イイ声…すごいキツくってキモチイイですよ、シュウくんのお尻」

  「ひトの話を…ッ―――!!!!」

  「ふぁぁ…これで、全部入りますよー」

  その声とともに、最後にグイっとペニスを入れられる。

  比喩じゃなくて、僕は、女に、体を、貫かれてるんだ。

  シェリアのペニスは、僕のアナルからその先までもノックする。

  「ひグァ、ッは、だ、や、ぬい、抜い、はっ、てぇ!」

  「ありゃ、確かに入りすぎですね…少し小さくしましょうか」

  そう言われるとともに、圧迫感が多少楽になる。

  彼女のペニスが入っているのも、アナルだけになる。

  それでも、苦しいことにかわりない。

  「ガ…は、ちょ、っと。大きさ変えら、れるなら、もっと…!」

  「やーです。今私は、君のこと犯してるんですよ?」

  「テ…テメ…」

  「だってぇ、まだ怖がられてますしぃ。だったらいっそ、そーいうの諦めさせたほうが早いじゃないですか」

  「人は、足し算引き算じゃ、ないっての…!」

  やけくそになって逃げようと暴れる。

  だけど、足を押さえられている僕は、逃げられる筈もなく、呆気なく両腕を掴まれ更に拘束されてしまった。

  「反抗するなら、こうしちゃいます。…さて、フルスピードでいきますよー」

  「なっ…ア、あああ゛あ゛あ゛!?」

  いきなりおもいっきりペニスを出し入れされる。

  彼女のペニスが、こすれ、突いて、犯してくる。

  「うわ、キモチイイです。君も、その内ほぐれてくると思いますよ…?」

  シェリアの声が上ずった、興奮した声に変わっていく。

  反して僕はその逆をいく。

  こんなのは痛いだけだ。

  ただ、体を何度も貫かれて、揺すられる。

  おまけに…

  「や、ヤメロってばぁ!こっちは、気持ち悪い、吐き…そうなんだよぉ!!」

  圧迫感が吐き気に繋がっている。

  シェリアがどうだか知らないが、こっちは朝から何も食べていない。

  ようするに体力がないのだ、耐えられるか、こんなの…!

  「アグ、ガッ、う、あぅぅぅぅぅ!」

  「アハッ、シーツを舌で噛んで…必死で可愛いですよシュウ君…!」

  「フッ、は、ァァ。くア……!」

  「―――でも、私は我慢しないで声をあげて欲しいんです」

  そう言って、彼女はいっそう強く腰を突き上げて―――

  「アッ…アアアアアアア!?」

  「女の子みたいに、アッアッ、って、エッチな喘ぎ声だしてください」

  「ふぁ…ふぁれが…!」

  「どうしても嫌だっていうのなら、いいんですよ?このままずっと続けるだけですし」

  「……!」

  「でも、気づいてます?君のおちんちんだって、勃起しちゃってるんですよ」

  「そ…それは、ち、がぁ…っ!」

  「でしょうね。これは仕方ない反応で、君はただ痛いだけです」

  「な、なりゃぁ!」

  「……気持ちよく、なりたいですよね」

  あの時みたいに、唐突に優しく囁きかけられる。

  あの時は屈して、今は―――

  「ここには私たちしかいません。ただ、喘ぐだけでいいんですよ…?」

  「う……」

  「ほらぁ。一緒にエッチな気分になりましょうよぉ…」

  艶のある声。

  自分の意思の弱さに、それこそ吐き気がする。

  キライな悪魔に。

  今回、も、逆らえないなんて―――

  「あは…良い子ですね、それじゃあ…いきますよぉ…」

  「が…っ!ま、さっ、きと、かわって、な、い!」

  「うふふ…一回はこのまま気持ちよくさせてもらいますよ…」

  「う、そつき…!」

  再び激しく動かされる。

  まず…嘔吐感が抑えられない。

  マジで、何かで気を紛らわさないと…!

  「ア、アッアッ…ア゛アッアアアア!」

  「あはっ、すごいシュウ君のお尻締め付けてきて、ドロドロしてて、やぁ、食べられちゃいますよぉ♪」

  「ハッア、あ、アッ、アッアア…!」

  「は、あん♪やだ、もうだしちゃいます、シュウ君の中に、私のエッチなのをだしますよお!」

  だから、こっちには苦痛しかない、って言ってる、のに。

  も…だ、め……

  「あ、はっ…!イき、ますよぉ…っ!!」

  中に出される。

  熱いものがアナルの中に纏わりつく。

  「はっ、ああ…!」

  恍惚の表情で、シェリアが最後にガン、と突き上げる。

  ―――それが、トドメだった。

  「ウ……う、えぇ!ガ…ゲホっ!グ…ガァハぁ!」

  吐いた。

  酸っぱい匂いがする。

  胃の中には何も残っちゃいなかったから、胃液をぶちまけた。

 

  「は、はぁ、は、はぁー」

  「あらあら、シュウ君ったらもう、我慢できなかったんですかぁ?」

  「で…できるか!吐くに、決まってるだろ!」

  「そうじゃないですよぉ…気づいてないんですか?君も、射精しちゃってるんですよ?」

  「なっ……」

  見れば、確かに僕のペニスからも精液が出ていた。

  でも……

  「でも、これは…!」

  「ですよね、ただの反応ですよね。だからぁ…今度は、しっかりと気持ちよくなって精液出しましょうね…?」

  「ま、まだやるの…!?」

  「当然です。ここでやめたら私はうそつきですよ」

  そういうとともに、シェリアは僕の体を持ち上げ、自分のペニスの上に座らせる。

  背中に豊満な胸があてて、僕の肩に顔をチョコンと乗せてくる。

  は、恥ずかしい。

  というか……それにしても―――

  コイツ、もしかして、とは思っていたけど、僕が吐いてしまうこと、分かってたんじゃないだろうな…

  「今度は君が感じれるくらいの大きさにしますから、大丈夫ですよー」

  「な、にが大丈夫なんだよ」

  もう、さっきのせいで僕のアナルは広がっている。

  戻るんだろうな、これ…?

  「あと、本当はお尻だけでイかせたいんですけど、それだけじゃ時間かかるじゃないですか」

  「だ、だったらどうなるんだよ」

  「人のおちんちんの上で強がられても……」

  「そういう事はいい!」

  「ふぬあ。ですからね、処女も奪っちゃいましたし、そろそろ童貞のほうにも入ろうかと」

  「馬鹿じゃないのか!?この体制でどうやって!」

  「忘れました?人間と私は違うんですよ」

  そういうと、シェリアは自分の長い尻尾の先端を僕の前に見せ付ける。

  以前と、違っているところがあるとすれば。

  先端が口のように、開いているということ。

  「な…なんだよ、これ…」

  「主に男の方の搾精器官ですよ。ほら、中がグネグネしてるの、分かりますよね?」

  「う、あ…」

  「グロテスクですか?うふふ…これで君の童貞奪っちゃうんです」

  シェリアは、心底愉しそうに笑って、

  「童貞の前にお尻犯されて、肝心の童貞はお尻を犯されながら尻尾に奪われちゃうんです…アハハ、変態ですねぇ」

  「そりゃ、お前のことだろが……っ!」

  「ドーントマイーンド」

 

  合図がアホみたいな発言になるのを恒例にしないでほしい。

  その言葉と共に、再びシェリアのペニスを挿入される。

  「ぐ…ぅっ」

  気色悪いことだが、さっきよりも小さくなっているため激しい痛みはない。

  ない…はずなんだが。

  「ちょっと…待て。まだ、擦れるのと痛いぞ!?」

  「……?気づいてないんですか?」

  「な、何に?」

  そんな、キョトンとして(顔が見えないけどきっと)言わなくても。

  「さっきのが太すぎまして、中の皮剥けちゃって血がでてるんですよー」

  「バカかっ!?そんなになるまでするなよ!」

  「まーまぁ。処女なくした時は誰だって血を流すものですよ」

  「それは女だけだ!ばーかー!」

  「素直じゃないんだから…ほら、続けますよ」

  そういって、シェリアは僕の腰に手を回し、器用に持ち上げる。

  それと同時に自分の腰も動かし、小刻みに連続的な刺激を与えてくる。

  「うぁっ……ぁ」

  そして、思わず喘ぎ声をだしてしまった。

  「ふふっ…」

  それに気づき、薄く笑いながらシェリアは、尻尾を、僕の股間へと。

  「ま…っ!それは、まだっ」

  「焦らしっこはもうなしですよー……ほら」

  シェリアは容赦を見せず、僕のペニスを尻尾に咥えさせる。

  「う、あああ!?」

  未知の感覚だった。

  尻尾の中は柔らかく、人肌くらいの温度で生暖かい。

  それだけでなく、中はグニグニと締め付け、刺激を与えてくる。

  しかもペニスの先端から根元まで、等しい刺激を与えるのではない。

  全部に不規則な強さで動き、、自分では出来ないモノを与えてくる。

  本気で気持ちよかった。

  「ハイ、童貞卒業完了ですよー」

  「っ……っぁ……」

  「まだ動かしてもないのに気持ちよさそうですねぇ…本気でやったらどうなっちゃんでしょう?」

  「っ…まだ、やってないのか…?」

  「そりゃ当然ですよ。…ふふ、期待、しちゃってます?」

  「…、う……」

  「えへ…体だけじゃなくって、心も素直になってきたみたいですねぇ」

  言うなよ。

  訳わかんないうちに悪魔とセックスして。

  意味わかんないモノに犯されて。

  どうにかならないほうがオカシイじゃないか。

 

  「じゃ、そろそろ本気でいきますよぉ」

  とうとつに尻尾の動きが変わった。

  締め付けはより一層激しくなり、尻尾自体が上下に激しく動いてくる。

  それに―――

  「っっうあああ!!」

  「ほらほらぁ…我慢しないで精液出しちゃっていいんですよぉ」

  「ひつっ!?こ、これ、な、ああああああ!?」

  「感じすぎて喋れませんかぁ?ん?」

  尻尾なのに、ポンプのように尿道を吸い上げてくる。

  尿道の中を丸ごと絞り上げられそうな快感が襲ってくる。

  「ひゃ、ひゃめて!こぉれ、あ゛めぇ!」

  「……それ♪」

  シェリアは僕の懇願も聞かずに挿入していたペニスを思い切り突き上げる。

  それと全く同時に、尻尾まで一際強く脈動して―――

  「ひゃ、あ、あああああアアアア!?」

  射精した。

  耐えるもなにもなく、尻尾の中に吐き出した。

  「あはっ、私のなかにいっぱいでてますよぉ♪」

  「っ、は、はぁ、はぁ…」

  「どうです?お口みたいだけど、それよりも凄いでしょう?」

  「、っ…はぁ。分かったから、もう抜けって…」

  「へ?」

  シェリアはその、僕の言葉が分からないとでもいう風に声をあげ、

  「なに、いってるんですか?」

  暗に「まだまだ続ける」と、死刑宣告に等しいコトを口にした。

 

  「ひ、ああああ!も、ひゃめ、ちはっ、きもち、気持ち、いぃ!」

  「あはははは!シュウ君ったら、すっかり蕩けちゃってぇ!」

  どのくらいの時間が経っただろうか。

  あれから、何度も何度も、同じ運動で何回も何回もイかされた。

  「だめ、じゃなくて気持ちいいなんて言うなんてぇ♪そんなに続けて欲しいんですかぁ!?」

  シェリアは僕の体調なんてお構いなしに、体勢を変え僕を犯し続ける。

  今度は正常位から、僕を押し倒し、足を持ち上げて挿入してくる。

  「ほらほらぁ、シュウ君の全部、丸見えですよぉ…とってもいやらしいの、分かります?私が出した精液、お尻からこぼしちゃってぇ…フフッ!」

  「―――っ、あああ!」

  「やっぱり、私のおちんちんが入ってる時のほうがエッチな顔になりますよねえ?ほら、どうなんですか?私のおちんちん、気持ちいいんですかぁ?」

  「そ、そへはぁ…」

  「それは、どうなんですかぁ?言わないとやめちゃいますよぉ?」

  「っ、は、きもちいい、きもちいいからぁ!」

  僅かに残っていた羞恥心も捨てて叫んだ。

  悪魔がどうしたとかなんだとかは、とっくのとうに忘れてしまった。

  堕とされたといえば、とっくのとうに堕とされていた。

  アナルを犯されるのも気持ちよくなっていた。

  シェリアが出した精液が、それこそ潤滑剤になって挿入をスムーズにする。

  それが、最初に入れられたローションとは比べものにならないくらい凄く感じてしまって。

  まだ僅かに痛むも、それだって気持ち良いと感じてしまっていた。

  「あはは…すっごいですねえ。最初はいっぱい嫌がってたのに…」

  「う、く、あ―――」

  「そろそろ君の精液もでなくなってきたみたいですし、コレ、使っちゃいましょうかなぁ」

  そういってシェリアは、ペニスと尻尾を一旦抜き、何か粘液じみたものを持ってきた。

  粘液といわない理由はひどく簡単で。

  粘液は、自分で動かない。

  「スーライムちゃんですよー」

  「ス…ヒュライムぅ?」

  「ふふ、入れてないのに呂律が回らないんですかぁ」

  「ら、らって、それは…」

  「それは、なんですか?」

  「………………」

  喋れない。

  それは?

  それは誰のせいだ?

  「あは…かわいい」

  「う……」

  「でぇ、このスライムをですねえ。君のおっぱい苛めに使おうかと思いまして、それ」

  よいしょ、と持っていたスライムを3つに分け、両方の乳首に落とした。

  「うあ…!?」

  グニグニとした感触のモノが胸を愛撫してくる。

  時に乳首を摘み上げられ、先端をコリコリされる。

  「なぁ、なんら、これ…!」

  「気持ちいいでしょう?自分勝手に動いてくれますから、よくなりますよ」

  「っ、あ……そ、それ、は?」

  それ、というのは最後の残った最後の一つのこと。

  ああ、これですか?なんて悪戯げに笑って。

  「ほら、もうどうせ精液出せないんですし。もっとヤっちゃおうかなぁって」

  そういって、持っているスライムを僕のペニスの上に持ってきた。

  「ひ…ひゃめろ!それはぁ!」

  「ほら♪」

  スライムをペニスの上に落とされる。

  意志を持っているらしいソレは、躊躇うことなく尿道の中に入り込んできて―――

  「うあああああ!?ひゃめ!なか、なかにはいってきつぇる!?」

  「あははは、どうですか?本当に中から弄られるの?…ほら、そろそろ袋のほうにも行く頃じゃないですかぁ?」

  そう言われたとおり、玉袋が中から動かされる。

  スライムが入ってるせいで何も出せないのに、無責任に何かを出させるようにぐいぐいと蠢いている。

  「ああああ!?らめ!こ、こはれるぅ!」

  「キミは、壊しませんよ。…ほら、また尻尾とペニス入れますよ…」

  再び、出なくなるまで、出なくなっても僕のペニスを絞り上げた尻尾に咥えられる。

  「っく、あぁあ!?やぁああああああ!!」

  頭が吹っ飛びそうな快感に襲われる。

  何も出せないなんて、甘かった。

  尻尾の吸い上げと共にスライムが昇り、ソレが終わるとともに今度はペニスの中に勢い良く吐き出される。

  射精とその逆を数秒の感覚で延々と繰り返される。

  精液なんてモノは出せないのに、スライムが昇る感覚とともに絶頂し、イった感触を味あわされる。

  「ほらぁ!、私のおちんちんのほうも忘れちゃだめですよ……!」

  シェリアのペニスは、その存在を誇示するように激しくアナルの肉を押し、前立腺を突き上げる。

  「あ、ううゥあああああああああああ!!!!」

 

  その拷問に等しいモノからようやく解放された。

  およそ30分の間だろうか?休みもなくソレは続けられた。

  「う、あ……」

  「ちょっと、まだ終わりきってませんよ?ちゃんと私のおちんちんを掃除してくださいよ」

  シェリアは自分の精液と他の、多分、僕の腸液が交じり合い汚れたペニスを目の前に差し出す。

  それでもほとんど放心している僕を見て、彼女は容赦なく僕の頭を掴み顔を動かせた。

  「っ、んぐっ!?ん、んんん!!」

  「駄目じゃないですか、後始末はちゃんとしないと……ふぅ」

  何度か喉にペニスを突き当てて、綺麗になったと満足したのかシェリアはペニスを口から引き抜いた。

  「う……」

  それで、数秒程度だけだったのに、口のなかに咽返るような匂いが充満した。

  「ご苦労さまでした。もう、今日は終わりにしましょうか」

  今日、は。という意味も考えず。

  終わり、という言葉を聞き。

  意識を手放した。

 

  …………

  ………………

  「うぁ……」

  目を覚ました。

  一人でベッドに眠っていたようだ。

  見慣れない部屋だと思い見渡し、そこでさっきの出来事を思い出した。

  服は着ているし、慣れない匂いもない。

  「夢…じゃないよな。痛いし。尻が」

  悲しい現実確認である。

  本気で元処女か、僕は。

  「あれ…?シュウ君起きましたか!?」

  紅い髪の少女は、シェリアは嬉しそうにこちらに飛び込んでくる。

  それはさながらロケットダイブ。

  「ぐはぁっ!!」

  全体重が鳩尾にクリーンヒット。意識が飛びかける。

  僕を殺したいのか。貴様。

  「あ…あああごめんなさい!大丈夫ですか!?」

  「きっと無理」

  「と、えーとですね。シュウ君、これからどうしますか?」

  話がずらされた。

  無理なのは放置かよ。

  「どうする、というと?」

  「私、今のは謝りますが、その前のはあんまり謝るつもりないんですよ。だから…」

  「気に入らないのなら、出て行け……と」

  「まあ、はい……」

  俯かれる。

  何を考えているのだろう。

  出て行って、欲しくないのだろうか。

  分からない。

  分かるのはシェリアは、俯いているだけということ。

  見たとおりの意味。

  「そう、ですね…」

  最優先すべきこと。

  放置する気になっても解決していない問題のこと。

  言いたいコト。

  ああ、でも、きっと、この回答は―――

  「お腹が空いてマジで死にそうです。まだ、肉じゃがの余りとかってあります?」

  「あ―――はい!ただいまお持ちします!」

  振り返り走るときに見えた、彼女の顔は嬉しそうに見えた。

  見たとおりの意味。

  ああ、きっと、それはそういう、無責任な意味なんだ。

 

  優しい少女。

  怖い悪魔。

  僕のことを慮らない態度。

  僕のことを優しく包んでくれている態度。

  それは、きっと、どれも。

  それでも分からない。

  暗闇の中ばっかりで、明るい所から見てないから分からない。

 

  分からないから、分かるまで、分かっても一緒にいようと、僕は思った。

 

  「ああ、それにしても……」

  お待たせしましたー、と、笑顔でシェリアが肉じゃがを運んでくる。

  ああ……良い匂いだ。だから―――

 

  「ホームシックになりそうな時に肉じゃがって何の拷問だよ」

 

 

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