スウィートトラップにご用心♪




「――あッ」

 という声が聞こえても、俺は空耳だと思った。

 あまりにも場違いだ。聞こえてきたのは、笑みを含んだ可愛らしい女の子の声――だが俺が今いるのは、ランタンを持っていても薄暗い地下迷宮の一室である。

 かつて凶悪な邪神や悪魔が住み着いた跡地であり、現在もまたアンデットやモンスターの住処として「余程の腕がない限り、入った者は二度と帰ってこられない」と噂される辺境の迷宮。

 そして、七日前に俺が邪神の大将――山羊の頭に鷲の翼、それに人間に胴体を持つ"大魔王"と、配下である"七天王"を倒し、今はもう大した知能のない下端しか残っていないはずの場所だった。

 だが昨日 俺の恋人がさらわれた。

「返して欲しければ迷宮まで一人で来い」という手紙を残して。

 俺はすぐにいつものアーマーを着込み、聖剣を持って、地下迷宮の最深部まで走った。状態異常を一切遮断するアミュレットを装備し、MP回復ポーションとエリクサーを持てるだけ持って、カビ臭いダンジョンをここまで進んできた。

 もう二度と来ることはないと思っていた、普通の人間では決して来れない迷宮の最深部、かつて魔王と死闘を繰り広げた場所――

 だが俺はそこで、意外なものを見た。

「やっほ〜♪」

 大きな玉座がある広間のちょうど真中に立っている、いつものように屈託のない笑みを浮かべる彼女の姿を。

「………………………………………………………」

 何も言えずに立ち尽くす俺。

 そして、そんな俺をニコニコ笑ってみている彼女。

 俺は、本当に唖然とした。

 ……彼女は、俺が通う酒場のウェイトレスだ。

 男の子のようなショートカットは、動きづらい長髪を嫌う彼女のトレードマーク。目が大きくてクリクリッとしていて、幼さが目立つボーイッシュな女の子。化粧っ気もないし、しかも一人称も「ボク」なもんだから、顔だけ見れば「美少年」でも通るかもしれない。

 だが小柄な体型とはうらはらに胸とお尻の発育は同世代の平均を大きく上回り、彼女が店のテーブルを拭いている時にシャツの裾から見える胸の谷間や、フリフリするお尻がどれだけ酒場の馬鹿どもの注目を集めたことか。

 しかも俺が見るに見かねて注意しても気にした様子はなく、それどころか「キミにならもっともっと見られても良いよッ♪」とからかわれたこともあったっけ……

 子供っぽくて、いたずらもするけれど、いつも明るく元気で、どんなに辛いことがあっても俺はこの娘の笑顔を見て頑張れた。

 デートもした。

 手も繋げないまま、町を歩くだけでデートといえるなら、だが。 

 彼女はいつも楽しく笑っていてくれたし、俺も彼女と話すだけで楽しかった。

 ……って、それはいい。

 今は問題にすべきことじゃない。

「――どーしたの? 助けにきてくれたんでしょ? 駆け寄ってぎゅ〜っと抱き締めるくらいしてくれないの?」

 彼女はくすくす笑ってからかってくる。俺の目から見ても、偽者には見えない。いつものようにTシャツとハーフパンツという格好も、いつもと同じ明るい笑顔で出迎えてくれる姿も、全くいつもと同じだ。

 問題は――何者かに連れ去られたはずの彼女がなぜここにいるのかということだ。

 ここは地下100階。数は確実に減っているとは言え、凶悪凶暴な怪物がウヨウヨしている場所だ。

 多少ズレた性格の持ち主であっても、素人の女の子が怯えもせずに、しかも笑って出迎えてくれるなんて、どう考えてもおかしい。

「……………」

 俺は、幻影、罠、あるいは敵の化けた偽者ではないかと考えて、《魔法感知》の呪文を唱えた。

 かつての魔王の残り香か、かすかに魔力は感じられたが、本当に微々たるものだ。部屋中に漂ってはいるが、特出して大きな反応は感じられない。

 伏兵がいる訳でもば、何か魔法装置が作動している気配もない。

(……ラチが開かないか)

 俺は自分から尋ねることにした。

「お前……誰かに、さらわれたんじゃあ……」

「えへへっ。ゴメンね。それウソなんだ」

「……ウソ?」

「そだよ♪ 勇者様はまんまとボクの策略にハマッたの♪」

 彼女は可愛らしく舌を出して言った。

 俺には訳が分からなかった。

「な、何でそんなことを」

「だってさー」

 彼女は唇を尖らせて言った。

「勇者様がせっかく帰って来てくれたのに、全然二人っきりになれないんだもんッ」

「……………」

 いや、待て。

 確かにこのところ忙しかった。王城で勲章の授与式だとか、面倒臭い儀式だとか、繁華街でのパレードとか良く分からん行事ばかりしていて、彼女のいる酒場に行けなかったし、話も出来なかった。

 俺も、会いに行きたいという気持ちは確かにあった。

 だが――

「……………それだけか?」

「それだけだよッ」

 悪いか、と言わんばかりに大きな胸を張る彼女――俺は体の奥底から疲れが沸き上がってくるのを感じた。

 前々から無茶で無鉄砲だと思っていた。前にもおじいさんに絡んでいた不良騎士に挑みかかったり、迷子の子どもをどうにかお母さんに会わせようとして、自分が迷子になるような性格ではあった。

 だが――俺に会いたいが為だけに、このダンジョンに一人で来るなんてやるだろうか。

(でもなあ、やりそうな感じもするしなぁ……)

 俺は大きくため息を吐いた。

 彼女が無事だったことは嬉しいが、どんだけ心配したんだという怒りが湧き上がってくる。

 考えてみればこのダンジョン、今は国王の命令でかなり探索が進められているらしい。たかだか一週間とは言え、マッピングやお宝探索に力を入れてるみたいだし、俺の知らなかった抜け穴やらワープホールを見つけた奴もいないとは限らない。

 それに騎士団の中には彼女の酒場にわざわざ食いに行く奴等もいるし、口の軽い奴だって多い。可愛いウェイトレスに話し掛けるのに、ダンジョンのことを話題にする奴だっているだろう。酔っ払ってダンジョンの地図を落とすバカだっていないとも限らない。

 そして――地図を手に入れた彼女が、感情に任せて、ダンジョン最深部まで俺を誘き寄せたという行為も、有り得ない訳ではない。

 ……無茶ではあるが。

「あ。心配してくれたの?」

「――当たり前だろーがッ!!」

 彼女の軽い口調に、俺はつい怒鳴っていた。

 マイペースな彼女も今のは驚いたのか、軽く飛び跳ねて驚く。

「たまたま強敵に遭わなかったから良かったものの……女の子一人でダンジョンに入るなんて自殺するようなもんだろーがッ!! 何かあったらどうする気だよッ!!」

「……ゴ、ゴメンナサイ……」

 彼女は心底脅えたように謝罪してきた。

 ……無茶さえしなければ素直で良い娘なんだけどなぁ。

 俺は彼女に背を向けて、ため息を吐いた。

「・……本当に、心配してくれたの?」

「当たり前だろ。どれだけ急いで来たと思ってんだよ」

 意外そうに尋ねてくる彼女に、俺は言う。

 ここまで来るのに罪のないサイクロプスやらワイバーンをどれだけ殺してしまったか。本当に謝って済む問題ではない。

 俺はどう頑張っても地獄行きだな……

 もう一度大きなため息を吐いた。

「――そっか。そんなに心配してくれたんだ」

 彼女の声がすぐ後ろで聞こえ、俺は驚いて振り返る。

 そこには艶然と微笑む彼女の顔があった。

「じゃあ、たっぷりとお礼しないとね・……♥」

 彼女は俺の首に手を回して抱きつき、目を瞑って――

「――ッ!!」

 自分の柔らかな唇を、俺の唇にくっつけていた…… 

 一瞬ふわっとした、甘く柔らかい香りがしたと思った瞬間、柔らかい感触が唇に触れ、果物のような甘い味が、ふわりと口に広がる。

 柑橘系の果物のような甘い味がふわりと広がる……

(……キスって、こんなに気持ちいいんだ……)

 俺がそんなことを思っていたときだった。

「……………――ッ!!」

 彼女が、自分の舌を俺の口の中に滑り込ませてきたのは!!

「んっ……んん♥……ん……んん」

 彼女の舌は、はじめはゆっくり、次第に激しく、いやらしい音をたてながら、俺の舌を支配していく。

 俺を抱きしめる彼女の細い腕に少し力が加わった。

 俺の体にも、彼女の大きな胸の感触が伝わり、暖かなぬくもりとふわっと漂う甘い匂いも、心地良くて――もう、何もかもがとろけてしまいそうだ……

 彼女の方がずっと小柄なのに、包み込まれる幸福感と言えばいいのか、安らかな――春の日のまどろみのような、ずっとこのままでいたいと思ってしまう安心感がある……

 気持ち良い……

 こんな気持ち良さが世の中にあったのか……

 彼女は夢中になって、俺の舌を愛撫してくれる。柔らかくって、ねっとりとしていて、まるで俺の舌がとろけていくようだ……

 もっと……

 もっと舐めて欲しい……

 絡んで欲しい……

 何もかも彼女のなすがままになってしまいたい……

 頭がぼんやりとしてきて、考えがまとまらなくなってきた。それくらい、気持ち良い……

 もっと……もっと……

「んっ……えへっ♥ ごちそーさまっ♥」

 唇が離れていくと、そこには微笑を浮かべる彼女の顔があった。どこか得意げで、優越を感じているような、悪戯っぽく、それでいてどこか艶っぽい小悪魔の笑顔……

 何だ……頭がぼんやりとしていて、ちょうどいいぬるま湯に浸っているみたいで、気持ち良い……

「……あはっ♥ 勇者様。心配してくれてありがとッ♪ でも、ボクの心配なんていらないんだよ。どっちかって言うと、勇者様のことを心配しないと、ねッ?」

「えっ……? ――ッ!!」

 急激に、俺の体から力が抜けていた。、まるで知らぬ間に全力疾走したかのような疲労感が襲い掛かってきて、俺は咄嗟に足で踏ん張った。

 何だ……今、何が起こったんだ……?

「――えへへっ♪ ボクの《とろけるキス》、とっても美味しかったでしょ?」

 彼女は笑っている。可愛らしい微笑であるはずなのにどこか妖しげで……俺は、こんな彼女の表情を今まで見たことがなかった。

「――今のキスはねッ。特別なんだぁ♪ キミがボクのこと好きなら好きなほど、い〜〜っぱいキミの精気が吸い取れちゃうの♥ えへへっ。アミュレットなんて効かないよッ。恋の前に障害なんて関係ないんだから♪」

 彼女は本当に嬉しそうだった。

 だが何を言ってる……?

 俺には状況がまったく理解できなかった。

「えへへっ♪ サッパリ分からないって顔だねッ。じゃあ……勇者様は七天王のこと覚えてる?」

「……七…天王……?」

 もちろん、覚えている…このダンジョンの各階層のボスたちの総称だ……30階から10階ごとに登場し、強大な力を持って俺を苦しめた……しかも彼等はそれぞれ七大罪を司っており、その能力もまたそれぞれの大罪にまつわるものだった……

 30階は"傲慢"を司る幻術士タイプの悪魔……40階は"大食"を司る巨大なワーム……50階の"怠惰"では相手の特殊能力の影響で、ものすごい脱力感を感じながら亡霊タイプのボスと戦う羽目になった。

 60階の"嫉妬"では、俺が強ければ強いほど力を増すという厄介な蛇男……70階は"貪欲"で、俺の聖剣を奪取する執念に燃えた悪魔騎士と戦い……80階の"憤怒"では思い出したくもない記憶をわざわざ呼び起こされ、踏みにじられたせいで、我を忘れかけた……そして、

「――90階のこと、覚えてる?」

 彼女は面白がるように言った。

「……90?」

 確か・…そうだ。90階には誰もいなかった。

 はじめて行った時、罠かとも思ったのだが――本当に何もなくて拍子抜けした覚えがある。

 だがなぜ彼女が知っているんだ?

 俺がそう思った瞬間だった。

「――七天王最後の一人の司るものは"愛欲"」

「!!」

 彼女は艶然とした笑みを浮かべて言ったのは。

 突然の彼女の言葉に俺は息を飲んだ。

「……えへへっ♪ 今のキスでメロメロになってくれるってことはぁ――本当にボクのこと好きになってくれたんだ♥ ……両思いになれるなんて、本当嬉しいよ♪」

 彼女はすごく嬉しそうに言った。

 その時だった。

 彼女の衣服が黒く変色したのは!!

 まるで黒い液体――いや、スライムに変化したかのようにプルプルと震えながら、彼女の体の上を移動し、服の形が変わっていく……? そんな、まさか・……

「ず〜っと心配してたんだよ。だってちっとも好きだ〜とか、愛してる〜とか言ってくれないんだもんっ。でも、安心しちゃった。えへへっ、魔王様ももう死んじゃったし、ボクの一人勝ちだもんね♪」

「魔王……様ッ!!」

 見る見るうちに変身は進んでいき……

 突然、彼女はとてつもない《闇》に包まれた。

 靄や霧のように突然現れたそれは、彼女の姿を完全に覆い隠す。強大な魔力が現れたのはすぐに分かった。

 彼女の……いや、彼女の姿を模していたものの正体は――魔族!!

 俺は聖剣を構えて、闇から現れるものを待ち構えた。

 そして――

 不意に《闇の霧》が晴れていった。

「……………ッ!!!」

 再び、彼女が――彼女の姿をしているものが現れた。

 顔や体つきは変わっていない。

 ただ彼女の頭、ちょうど耳の上あたりに小さなコウモリの羽のようなものが生えており、彼女の背中からは大きな翼が広げられた。彼女の他に二、三人は包み込んでしまえそうな程に大きなこうもりの翼だ。

 ただそれより目に付いたのは、彼女の着ている衣装だった。

 黒のレオタードというただでさえ露出の多い格好なのに、胸元はハート型にくり貫かれて胸の谷間が全開だし、ヘソも丸出しで、下は食い込みの際どいビキニパンツ、それにひざ上までタイトストッキングとガーターベルトいう、男なら誰でも誘われてしまうような、本当にエッチな格好……

 ごくんっ。

「……ッ!!!」

 俺はつい生唾を飲み込んでしまっていた。

「クスクス」と笑う彼女の笑い声が聞こえてくる。

「――黒き翼に甘いささやき。一人頑張る勇者様の、心惑わす可憐な小悪魔。愛欲の堕天使スウィート・サッキュバス参上ッ♪

 ――キミのお○んちん、いっぱい、ぱふぱふして、あ・げ・る♥」

 彼女は胸を寄せてあげての悩ましいポーズを決めると、俺に向かってパチンとウインクする。

 ただでさえセクシーな体系なのに、過激な衣装は彼女を更に魅惑的に仕立て上げていた・……

 って、そんなことに気を取られてる場合じゃないッ!!!

「――サッキュバス……ッ!!」

 頭がぼんやりとしているのをどうにか振り払おうとしながら、俺は聖剣を抜き放った。

 寝ている男の夢に入り込み、淫らな行為によって相手の精気を吸い尽くす悪しき妖魔――いや、そんなことはいいッ!! 

「貴様ッ!! あの娘をどうした!!」

「あの娘って言うのは、酒場でウェイトレスやってて、明るくて綺麗で優しい――」

「そこまでは言ってねえ!!」

 俺はつい、いつものように言い返してしまった。

 いつも彼女が俺をからかう時に使う常套句――いつもと同じノリで、いつもと同じふざけ方をする姿は、俺のよく知る彼女と瓜二つ――いや、違う!!

 彼女が――彼女がサッキュバスであるはずがないッ!!

「――ボクのこと偽者だと思ってるでしょ?」

 彼女はとても愛しそうに目を細める。

「でもね、ボクが本物なの。キミが好きって言ってくれた、ボク自身なんだよッ♪」

「ウソだッ!! そんな……」

 彼女がサッキュバスだったなんて……そんなこと、信じられない。魔族が人を好きになるはずはない。特に淫魔など、人を食欲を満たす餌としか思わないような怪物だ。

 だったら……今まで好きだと言ってくれたことも、ずっといっしょにいたいと思っていたこともみんな――

「ウソじゃないってば。ボクはキミのことが大好きだよ♥」

 彼女はにっこりと微笑み、両手で俺の手をつかむと――

 彼女のふくよかなおっぱいに、導いたのだ!!

「ほら……こんなにドキドキしてる……♥」

 彼女のおっぱいは柔らかかった。人肌の温かさともちもちとした感触がダイレクトに伝わってくる。彼女の胸の高鳴りよりも、俺の心音の方が激しく鳴り響いていた。

「――ッ!!」

 俺は咄嗟に彼女のおっぱいから手を離した。色仕掛けで相手を自分のペースに引きずり込むのがサッキュバスの常套手段だ。

 ……揉んでいたい……

 心のどこかにある欲望を抑えながら、俺は聖剣を構え直した。

「好きって……ッ。自分の食欲を満たす餌としてだろうがッ!!」

「なら最初から襲ってるよ〜。それにボク、まだオトコのヒトとしたことないもんっ」

「う、ウソつけッ!! サッキュバスでそんなことありえる訳が――」

「あるもん。サッキュバスは成魔の儀を終えるまではお肉とか野菜食べて生活できるし、人間界の常識を知る為に旅に出るの」

「じゃあ、何で七天王なんかになったんだッ!!」

「だってお姉ちゃんがきまぐれでいなくなっちゃったんだもん。代わりにやらないといけなかったの」

「そ、そんな……」

 ウソだと思って、俺が反論しようとした時だった。

「信じてくれないの……」

 彼女の目に涙が溜まり始める。

 ジクッと俺は胸に痛みが走った。

「ボクとの愛って……ボクがサッキュバスだって理由だけで、冷めちゃうようなものだったの……?」

「い、いや……それは……」

「ボクだって……ずっと迷ってたんだよ。ボクの正体現したら嫌われるんじゃないかって……ずっと隠してたんだもん」

「………そ、そうなのか……?」

 彼女はコクリと頷いた。

「今日だって。大魔王様がいなくなったから、もう人間界が襲われることはないって伝えて……ボクも魔界に帰ることになったから」

「!!」

 魔界に……帰る!?

「今夜が成魔の儀の日だから。最後にキミに会いたくて呼んだのに……そんな……ボクがサッキュバスだからって……酷いよぉ」

 彼女は両手で目を覆って泣き出してしまった。

 本当に泣いているらしい。

 もし彼女の言っていることが本当なら――

 俺は……何て、酷いことを、言ってしまったんだろう。

「ご……ごめん。言い過ぎた」

「……」

「俺何て言うか。本当にごめん……」

 彼女の顔を覗き込みながら、俺は言った。

 すると――

「……ボクのこと、好き?」

 彼女が小さな声で尋ねてきた。

「え……あ、ああ」

「サッキュバスでも?」

「……ああ」

「本当に? ウソつかない?」

「ああ」

 その時――

「あうッ!!」

 突然、俺の股間に快感が走った。

 見ると、彼女の手が鎧の隙間を通って――男の最大の急所の上に触れている。

「――えへへっ♪ ダメだな〜。オトコノコの弱点丸出しだよ?」

 しかも彼女は笑顔で俺を見ていた。

「お、お前……騙し――ッ!?」

 俺が文句を言う前に、彼女は自分の柔らかい唇で、俺の口を塞いでいた。今度はディープではなく、恋人にするように優しいキスだ。

「くすくす。ボクは悪魔だよ♥ 甘い言葉には気を付けなくちゃね、勇者様♥」

 彼女はゆっくりと俺の体に圧し掛かり、大きなおっぱいを俺の胸に押し付けた。可愛らしく潤んだ瞳が、俺を真っ直ぐに見つめる。

「……キミのことが好きってことは本当だよッ♥ 人間界での修行のことも、お姉ちゃんがいなくなって代役やるハメになったのも、今日で魔界に帰るってこともね」

「……ッ」

 目の前が真暗になるのが分かった。

 帰る……彼女がいなくなるってことか……?

 そんな……

「――えへへ〜っ。そんな顔しないでよ♪」

 彼女はとても明るくこう言った。

「キミともお別れって訳じゃないんだし♪」

「……えっ?」

「言ったでしょ? 今日が成魔の日だって。今日でボクは立派なサッキュバスになれるんだ〜♪ お祝いだよお祝いッ♪」

 能天気に喜んでいたかと思ったら、急に彼女は恥ずかしそうに身を縮めて、両手の人差し指をつんつんとつっつきだした。

「ただねー、これ、キミの協力が必要なんだぁ♥」

「……協力?」

 何だ、ものすごく嫌な予感がする。

「えへへっ。儀式って言ってもね。あの、要は〜」

 彼女は頬を赤らめて言った。

「ボクが……キミを独り占めできればいいの♥」

「……えっ?」

 一瞬 俺には理解できなかった。

「まさかそれって……ッ」

「そ♥ ……キミをトリコにしちゃうってことだよ。勇者様♥」

 彼女はものすごく色っぽい表情を浮かべて囁いた。思わず生唾を飲んでしまいそうなくらいに、妖艶な――女の表情だ。

「今夜ここでボクがキミとエッチなことをするの♥ それで、キミがボクに魂あげます〜って言ってくれたら、成魔の儀は完了ッ。キミの魂はず〜っとず〜っと、ボクだけのものになるの♥ えへへ〜♪ やっぱり最初くらい、本当に好きな人としたいよね♥」

 彼女は本当に幸せそうに笑った。

 つい、見とれそうになったくらいだ。だが――

「い、いや。ちょっと待てよ。そしたら俺は……」

「だ〜いじょうぶだよッ♪ 勇者様が魂と交換しても良いって言うくらい、い〜っぱい気持ち良くしてあげるから♥ ねっ♪」

「そ、そう言う問題じゃねえ――ッ!!」

 俺はどうにか自分の主張を唱えようとした。

 だが――

「勇者様ぁ……」

 彼女は俺の耳元に近づき……

 妖しく囁いてくる。

「ボク、本当にキミのこと、好きだよ……好き。本当に好き。本当、独り占めしたいくらい。だから……ね? いっぱいイイ事してあげるから。ずっと……エッチなことをして暮らそ♥」

 彼女の優しげな囁きが、すーっと入り込ってくる……

 彼女の肌の感触とぬくもりが、俺の心をまるで真綿で包むように捕まえてくる。彼女からふわぁっと漂ってくる甘い匂いを感じて、俺の急所がまた疼き始めて……もう……頭の中が真白になってきた……

「あう……ああ」

「クスクス♥ 勇者様、ずっと言ってたよね? ここで戦っていた時、ずっと孤独だったって……自分以外、誰も頼れるものがなくって、ものすごく不安になることがあるって……」

 彼女は甘く優しい声で囁いてくる……

 まるで子供の頃 眠くなった時に、お母さんが枕元で歌ってくれる子守唄のような――何とも言えない安心感がある……

「でも、もう大丈夫だよ。ボクがずっと側にいてあげるから……勇者様が怖くなったら、いつでも甘えていいんだよ……寒くなったら、ボクをいっぱい抱きしめて……だから、ね? もう、何も心配しなくていいんだよ。ホラ、安心して……ボクに全部任せて……力を抜いて……」

 全身から力が抜けていく……彼女のぬくもりに包まれて、何もかもが分からなくなっていく……ただ分かるのは、彼女の慈愛に満ちた微笑だけ……

「ね、勇者様ぁ♥」

 甘えるような声を出して、彼女は上目使いで俺の顔を見つめていた……潤んだ瞳は何かを期待するように光り、誘惑するように唇を窄める……

「……エッチなこと、しちゃおッ♥」

「……――あッ!」

 彼女はすり、すり、と股間への愛撫を始めた……

 ゆっくりと、優しく撫で回すようにして、俺の急所を擦り、大きくさせていく……

「えへへ……どんどん大きくなっちゃった。ほ〜らほら、大きくなぁれ、大きくなぁれ♥」

「あ…あ…ああ……ぁッ!」

 快楽の波状攻撃が、俺の股間を攻め立てる。彼女はまるで、俺の弱点を知り尽くしているかのように、弄り続けた。

「えへへ。良い感じ♪ でも鎧が邪魔だなぁ。脱がしちゃお♪」

 彼女は股間への愛無を続けながら、俺の鎧の装着部を外して始めた……

 昔はいつも鎧を着るのを手伝ってもらっていたから、彼女も手馴れた感じで鎧を外していき、あっと言う間に俺は、服だけの格好になっていた。

 更に彼女は、俺の聖剣にまで奪い取ろうとする。

「お、おいッ! 聖剣は……――んんッ!!」

 彼女はまた俺の口を、自分の唇で塞いでしまった。彼女の舌が俺の思考を溶かし、俺の股間を体で愛撫しながら、聖剣を外してしまう。

 彼女が唇を離した時には、俺はもう丸腰だった。

 しかも彼女は俺のパンツとズボンを地に降ろす。

「うわぁ……」

 彼女は感動したように言った……

「立派な《聖剣》だね♥ でもぉ、まだまだ手入れが足りないみたいだよぉ? せめて皮余りの《鞘》から刃を取り出すくらいはしないとね。クスッ♥」

「ああッ!!」

 彼女は俺の急所をそっと掴み、皮余りの鞘から、俺の《聖剣》を引き出していた……

 ほんの少し触れられただけなのに自分で触った時とはまるで違う。

 激痛と似て非なる感覚。

 しびれるような感覚の後に訪れる快楽が全身を駆け巡り、俺はつい声を出していた。

「くすくす。ダメだな〜。こんな攻撃で声を上げてたら、魔王どころか、ゴブリンにも勝てないよ? ……ボクが鍛えてあげるね♥」

「あっ!! ああッ!! ……!!」

 彼女は自分の細くしなやかの指で、俺の《聖剣》をしごき始めた。最初は緩やかに、次第に激しく、俺の急所の全てを知り尽くしているかのように、シコシコしていく……

「えへへっ〜♪」

 彼女は目を細めると、右手の人差し指で、俺の急所の先端をゆっくりをなぞり始めた。

「ほらほらほら。気持ち良い? キミのおちんちん、すっごく気持ちよさそうだよ? えへへっ……もっともっとしてあげるね♥」

「ば、やめ……あッ!!」

 ゆっくりと、俺を、少しずつ、いじめる為に。何度も何度も繰り返されていく。

「あ〜。透明なおつゆが出てきたよ。これって気持ちいいと出てくるんだよね。確か、我慢汁っていうんだっけ♪ へ〜。はじめて見た。えへへっ。もっとも〜っと、気持ちよくさせてあげるね……♥」

 彼女は嬉々として言うと、上目使いにこちらの様子を見ていた。悪戯を思いついた子供のような表情を浮かべ、何かを狙っている。その時だった。

「――ああッ!?」

《ライトニング》の直撃を受けたかのような感覚が、俺の全身を駆け巡った。

 突然、何の宣言もなく、俺の急所の先端を、彼女はぺロッと舐めたのだ。突然の攻撃に、俺の下半身は打ち震えた。

「うふふっ。よっぽど気持ち良いみたいだね。なら、い〜〜っぱいしてア・ゲ・ル♥ 覚悟してね?」

 彼女が色っぽくウインクした、直後だった。

「あっ! ああっ! あっ! あ、あああああッ!!」

 彼女は俺を嬲るかのようにちょっとずつ急所を舐めていった。チョロ、チョロ、チョロと、少しずつ、細やかに、敏感な皮膚を刺激する。しかもわざと舌を乾かして摩擦の強い状態で舐めてくるのだ。

 俺の急所がビクビクしてきた。中から溢れ出そうになっているものを懸命に堪える。熱い脈動はすぐそこまで来ている。このままいけば、すぐに噴射されてしまうだろう。

「えへへっ。それじゃ、まず口で飲ませてもらうね♪」

 彼女は上目遣いのまま、サディスティックな笑みを浮かべていた。俺の頭の中で不安と期待が俺の中をグルグルと回っている。もう俺は彼女の行為の虜になっていた。

「あ〜ん♥」

 彼女は大きく口を開けたと思うと――

「あああああああああああああああああああああッ!!」

 俺の急所を口の奥深くにくわえ込んだ。ねっとりとしてやわらかい口の中は、すでに限界寸前になっていた俺の急所にとって最高の快楽をもたらし、くわえられただけで俺は激しく射精してしまった。

「……あんっ♥」

 彼女は俺の急所から口を離した。唇には糸を引く白い糸が残っている。だが彼女はなんの動揺もなく、糸を指でなぞり、そのまま自分の唇で舐め取った。ぞくっとするような笑みを浮かべる。まるで別人のようだ。

「えへへ。勇者様のミルク甘くってとっても美味しい♥ ……もっと、ボクに飲ませてね♥」

「えっ、おいちょっと……ああッ!!」

 再び彼女は、俺の急所を口に含んだ。しかも先ほどよりずっと強く、俺の急所から精液を吸い取ろうとしている。ねっとりとした舌が俺の敏感な皮膚をなぞり、俺の射精を誘う。

 ――我慢しないで。早く出して♥

 お尻をフリフリと揺らしながら、彼女は上目遣いの体勢で俺を誘う。また耐え切れなくなって俺は精液を放出した。限界から開放された快楽は自慰行為などとは比べ物にならない。しかも目の前で美味しそうに俺の精液を飲み干す彼女の恍惚の表情を見ていると、俺の中の何かがますます高鳴り、もっとより強い快楽を求めてしまう。すると彼女も、俺に答えてくれるように、ますます激しく俺の急所を舐め上げ、中のものを吸い取ろうとしてくる。俺はまた、彼女の口の中に全て出してしまった。

「……うわぁ。まだまだおちんちんかっちかちだよぉ♥ ……えへへっ。《聖剣》の鍛えは万全だね、さすが勇者様♪ じゃあ……」

 彼女は自分の柔らかそうな胸に手を当てて、俺の目の前で誘惑するかのようにもみ始めた。

「ボクのお胸に住んでる大きな二つの《魔物》をぉ、キミの聖剣でお仕置きしてくれないかな♥」

 彼女の胸が俺の目の前でたぷんたぷんと揺れている。

 ああ……ずっと……憧れていた……

 彼女の大きな胸……

 何て柔らかそうなおっぱいなんだ……

 ずっとずっと考えていた……

 彼女の胸に顔を埋める夢を……彼女の胸に挟まれる夢をずっと……口には言えなくとも思い続けていた夢……

「ほらぁ♥ 来て……勇者様」

 彼女の甘美な誘惑に、俺はもう何も考えられなくなった……

 俺は《聖剣》を彼女の大きなおっぱいの前に聳え立たせると――

「がおーっ♥」

 彼女はふざけ半分に自分のおっぱいで俺の《聖剣》を挟み込んだ。

 瞬間。

「あっ、ああああああああああああああああああああッ!!」

 柔らかくて暖かい巨大マシュマロが、俺の《聖剣》の最も敏感な部分を挟み込み、俺は一瞬にして天国へ舞い上がった。ムチムチとした表面が俺の敏感な部分にペタペタと吸い付き、ぷよんぷよんと柔らかく包み込んでくる……あ、ああ……まるで快楽の拷問だ……彼女は手で両脇を少しもみもみしているだけなのに、俺の《聖剣》は今までに味わったことのない程の快感の波が押し寄せてくる……ああ……

「クスクス……どお。勇者様ぁ♥ ボクのおっぱい、気持ちいいでしょ? どんなに勇者様が我慢したってムダだよ。ふふっ♥ どんなに強い勇者様でも、愛欲の前ではただのオ・ト・コ♥ ボクたちサッキュバスに勝てるワケないんだからッ♥」

「あっ……ああ……ッ!!」

「あとはボクにすべてを任せて、キミの甘くて美味しい精液を出してくれれば良いんだよ♥ 特にぃ……好きな女の子としている時は、と〜っても甘ぁいミルクを出してくれるからねッ♥ えへへっ。ボクのこと好きになってくれて本当に嬉しいよ♪」

 妖艶で楽しげに彼女は微笑み……もみんもみんとパイズリを続けた。ああ……まるで俺の体がゆっくりととろけていくようだ……ああ……彼女の柔らかいおっぱいに何もかも吸い取られてしまう……うっ……ああ……もう、ダメ……

「ああッ!!」

 俺は《聖剣》から勢い良く射精した。

 何度も何度も快楽と共に、白いミルクが、彼女の顔面めがけて放たれて、「あんっ♥」と彼女は恍惚の声をあげた。

 あまりの快楽に腰が砕けて、座り込んでしまう。

 だが彼女はおっぱい攻めをやめない。もっともっと強く、激しく攻め立ててきた!

「えへへ〜っ♥ キミがおっぱい大好きだってことはもう調査済みだよン♥ もっともっと出してもらわなきゃ♥」

「あ……ああ……」

「ずっと思ってたよね〜。キミのおちんちん、ボクのいやらしいおっぱいに挟まれたいって。この大きなおっぱいでもみもみされたいって、ずっとずっと思ってたよね? 心も、体も♥」

 彼女は流し目でこちらを見つめていた。

 彼女の瞳が妖しく光る。

 俺の視界がぐにゃりと歪んだ……

 次の瞬間。

「――ッ!!」

 俺の前に彼女がいた。

 パイズリ拷問を続ける彼女とは違う、もう一人の彼女が!!

「えへへっ。ボクのエッチなおっぱい……たっぷりと味あわせてあ・げ・る♥」

 二人目の彼女は俺のお腹にまたがると、その魅惑の巨乳を――

「えいっ♥」

「むぅぅッ!!!」

 ぷにゅっと俺の顔に押し付けてきた。

 柔らかぁいもち肌の塊は、俺の顔を覆い尽くした。暖かくて、柔らかくて、ずっとこうしていたいと思わせるそれは、俺の思考をとろけさせる……

 ……あ……ああ……

 彼女たちの囁きと更に下半身からはパイズリの快楽拷問が俺から精子を搾り出していく。

 朦朧とする意識の中で、彼女たちの楽しげな声が聞こえてくる。

「――えへへっ。勇者様。七天王との戦いのルール、覚えてるよね?」

「七天王はそれぞれ得意なフィールドがあるの。傲慢なら傲慢エリア。怠惰なら怠惰エリアって。七天王はキミの心に挑戦してくるんだよ」

「キミが傲慢になればなるほど、傲慢の力を持つものは強くなる。怒れば怒るほど、憤怒の魔王は強くなる……」

「じゃあ、愛欲の魔王はどうなると思う?」

 彼女が問い掛けた、次の瞬間だった。

 俺の後頭部にもまた、柔らかぁいマシュマロの感覚が伝わってきたのは!! まさか……

「――えへへッ♥ こうなるのだ〜♥」

 むにゅっ。

 むにゅっ。

「あ……ああ……ッ!!」

 三人目の彼女が背後から後頭部をぷよんぷよんと撫でてくる。 

 柔らかなマシュマロは、俺の脳みそまでをとろかそうとする……ああ。耐えられない……もっと……もっと……。

「キミが気持ち良くなれば気持ち良くなるほど、ボクの魔力は高まっていくんだよ?」

「魔力が高まれば高まるほどボクの分身もどんどん増えていく。キミはもっともっとボクたちのおっぱいに溺れてくんだよ♥」

「くすくす。ボクたちに勝ちたかったらエッチなことは考えちゃダメだよ♥」

 彼女たちは挑発するように囁いてくる。

 だが――

 俺はどうにかして、顔におっぱい攻撃をしてくる彼女を両手を使って引き離そうとした。だがもうすでに骨抜きになっているのか、手を使おうとするだけでも重労働だ。何度も何度も、おっぱい攻撃に意識が失いそうになるを堪えながら、俺は彼女の両肩に手を――

「――ッッ!!」

 直後、俺は何者かに両手を掴まれてしまった!!

 俺の左手は左側に、俺の右手は右側に導かれ――

 むにゅっ。

 むにゅっ。

「……………っ!!」

 柔らかい感触が、両手ともに伝わってくる。

 この感触は間違いない!!

 更なる彼女たちが、俺の両手をそれぞれのおっぱいに導いたのだ!

 柔らかい魅惑の果実を、俺の手は無意識にも揉みし抱いていた。

「あん♥ ……もう、エッチなんだから♥」

「今度は手でもみもみしたいの〜? くすくす。本当にボクのおっぱいが大好きなんだね〜♥」

「勇者様って、実は変態? くすくすくす……」

 彼女たちはみんなで笑っていた。

「変態なら変態らしく、もっともっといじめてあげないとね〜♪」

「ぐっ……ああッ!!」

 さらに彼女たちはおっぱい拷問のピッチを上げ始めた。

 もう……耐えられない。顔も、後頭部も、《聖剣》も彼女の柔らかなおっぱいに包まれて、何もかもどうでも良くなって来た……彼女のおっぱいが……柔らかい感触が……暖かな体温が……甘い甘い芳香が……全てがもう、俺を捕らえて離さない……

「気持ちいい? 勇者様♥」

「えへへっ。天国にいるような気持ちでしょ♥」

「それとも地獄かな〜♥」

「ふふっ♥ 大魔王様を倒した英雄も、サッキュバスの力には勝てないのかな?」

「あ。それともボクに対する《愛》かな♥」

 彼女は本当に楽しそうに語りかけてくる。

 もういい……

 もうこのまま彼女たちに吸い尽くされたい……

 死んだとしても、彼女の一部になれるのだ……

「くすくす。ど〜したの? 勇者様ッ♪ このままじゃ、邪悪な淫魔に魂取られちゃうよ〜ッ♪」

「それともギブアップしちゃう?」

「ボクたちのおっぱいに挟まれてこのまま昇天……ウウン。堕落しちゃぉ♥」

 彼女たちが甘い誘惑を掛けてくる……

 俺はもう、何を言う力もなかった。

 他の悪魔に殺されるなら、最後まで抵抗もしよう。

 邪悪な輩に殺されるくらいなら、最後には道連れにしてやる。

 だが彼女に、しかもエッチをしながら殺されるなら――それでもいいかな、と思った。

「勇者様はもう、ボクのおっぱいのトリコだよ♥ もう、キミはボクのおっぱいからは逃げられない・……ず〜っと、ず〜っと、勇者様のミルク、搾り出してあげるからね……クスクス♥」

 彼女の声が聞こえる……

 俺はもう、抵抗もしなかった。考えるのもやめた……

 こう、このままずっと快楽に身を捧げてしまおう……

 何もかもを彼女たちに任せて……



THE END


アナザー一覧に戻る