アルベルティーネの研究室
「オナホールって、マニアみたいな人しか使わないんじゃないの?」
「――それは偏見だ」
僕の質問に対し、アルベルティーネはすかさず断言した。
「一般に、彼女がいない男が自らを慰める為に使うモノという認識があるが……それは間違いだな。
世の中には、彼女の有無にかかわらずオナホールがもたらす快感の虜になった男も多い」
「そ、そうなんですか……?」
それはそれで、問題がある気もするが。
「これは聞いた話なのだが、ホストなどがペニスを鍛えるために買っていく場合もあるようだ。
オナホールで毎晩、持続力を高めるために特訓するんだな……」
なんと。そんな使用法も……
「という訳で、オナホールには独特の魅力がある。彼女がいるにも関わらず、オナホの誘惑から逃れられない男も多いな」
アルベルティーネの言葉に、僕は別の意味で危惧し始めた。
そんな中毒性があるとは…… オナホールとは、意外に恐ろしいモノのようだ。
「オナホールって、高いの? 安いの?」
「千差万別だな。また、値段の高い安いは必ずしも質に比例しない。結構、アタリハズレもあると言うことだ」
アルベルティーネは、歯に衣着せず言った。
「いいんですか? そんな事言っちゃって……」
「適当なことを言って、来訪者をダマす訳にもいかんからな」
そう言って、アルベルティーネは机に肘をつく。
「オナホールというのは、安くても優良な品がある。また、高くても粗悪な品もしかり。
さらに問題なのが、個人によって良し悪しの差が出てくるものでなぁ……」
「なんか、色々複雑なんですね」
「この点に関しては、後ほど述べよう。とにかく値段はピンキリだ。男性器を内部に挿入するタイプの自慰器具と幅を広げれば――
カップタイプなら1000円クラスから、高級なものになると30,000円以上まで」
「そして、必ずしも値段と質は正比例しないと……」
「まあ、原則としてはそうだな。とりあえずお勧めは、後のコーナーで紹介するが」
アルベルティーネはそう告げると、軽くため息をついた。
「とは言え、余り安く済ませようとするのもお勧めできない。『安物買いの銭失い』というコトワザもあるしな」
「安かろう、悪かろうでは悲しいですね」
そう言いつつも、僕は納得した。
いかに値段と性能が正比例するものではないとは言え、やはり極上の快感を得るには高級なモノが必要という事か。
「オナホールって、本当に気持ちいいの?」
「この研究所に来て早々にオナホールで搾られた君がする質問なのか?」
意地悪げな表情を浮かべつつも、アルベルティーネは答えた。
「良いものに限定すれば、まさに極上。楽しむどころか、瞬殺されたりするぞ」
「そ、そうなんですか……?」
「ああ。メンタル面を別にすれば、女性器に匹敵する快感を送ってくれるとまで言われている」
そ、そうなのか…… まさに、中毒者が出る訳だ。
ただ問題は、さっき聞いた『値段の高い安いは必ずしも質に比例しない』という点――
「ただし、中にはホールと使用者の相性が悪い場合もある。
強い締め付けが好みじゃなかったり、吸い付かれても余り感じなかったり――
こればっかりは、オナホールに様々なタイプがある以上仕方がないな」
アルベルティーネは軽くため息をついた。
「さらに、モノ自体が粗悪な場合もある。私が紹介したショップには体験レポートもあるので、参考にしてくれ。
また、この特設コーナーには私からのお勧めもまとめてあるぞ」
「下調べをしっかり行うのは、重要ですね」
僕は大いに納得する。
モノを購入する以上、下調べは当然のことだろう。
「最近のオナホール業界は、性経験の豊富な中年層の使用をも視野に入っている。
つまり、適当なゴマカシが効かなくなってしまったという事だ」
「なるほど…… そんなニーズに合致し、より高い快感を与える製品が供給されている訳ですね」
「そういう訳で、もはやオナホールがジョークグッズとして扱われていた時代ではない。
男性器に強い快感を与え、射精に導くという機能が凝縮された産物――それがオナホールなのだ」
そう言って、アルベルティーネは話を締め括った。